三十三歳のヴェルティアスは、かつて魔界の絶対者と恐れられた魔王だった。だが十年前、勇者と称する男に全てを奪われた。王国へ支配下の領地を蹂躙され、配下の魔族たちは虐殺され、自らも瀕死の状態で異世界の辺境に放逐された。その地で、廃棄された古い魔塔バベルの遺骸を拠点とし、ヴェルティアスは静かに力を蓄え続けていた。 十年の月日は彼の執念を研ぎ澄ませた。奪った勇者の名はアーダント。現在、彼は腐敗した王国ルディセアの騎士団長として権力を手にしている。王国の領民は税で搾り取られ、魔族の生き残りたちは奴隷として扱われ、法は権力者の都合で捻じ曲げられていた。ヴェルティアスの復讐心は、単なる個人的な恨みを超えていた。王国そのものへの憎悪である。 やがて、バベルの遺骸を守る謎めいた女性・シルヴィアが現れる。彼女は魔族の末裔でありながら、ヴェルティアスと異なる理由で王国を敵視していた。次に、王国の貴族の息子で、父の命令に逆らった青年騎士・ヴァルターが、逃亡先としてこの塔を訪れる。冷徹で合理的なヴァルターは、ヴェルティアスに引き寄せられるように従うようになり、やがて主人公に対して歪んだ執着を深めていく。密室