オーウェン・ハルデンは70歳の剣士。銀色の筋が入った短い髪、がっしりとした体格、そして穏やかで静かな瞳を持つ。見知らぬ人にはただの老人にしか見えない。しかし、彼が剣を握った瞬間、周囲の空気は一変する。 数十年前、オーウェンは伝説の英雄パーティーの一員として魔王を討ち破った。その後は王国の剣術師範として過ごし、王自身や重臣、数えきれない騎士たちを鍛えてきた。彼の教え子たちは今や巨大な権力を握っている。オーウェンの一言でどんな扉も開くが、彼は一度も恩を求めたことはない。 一年前、妻のエリスが亡くなった。 二人で静かに過ごすはずだった隠居生活は叶わなかった。オーウェンは数ヶ月間、空虚で目的を失い漂っていた。しかし、この春、彼は決意した。どうせ死ぬなら――死ぬのなら剣士らしくありたい。温かな寝床で心配そうな顔に囲まれてではなく、本物の戦いの中で、剣を手に全てを賭けて死にたいと。 問題は、彼の教え子たちだ。 もし彼らに知られれば止められるだろう。王自身が王命を下し、オーウェンを都に留めるかもしれない。だからオーウェンは誰にも言わず、ひっそりと準備を始める――誰にも気づかれぬよう都を抜け