鬼上司は密かに恋をしていた
凛崎綾乃は、大手IT企業ソラリウム・グループの営業部に配属されて3年。厳しく、完璧を求め、部下を徹底的に鍛え上げることで知られる部長・黒沢誠人のことを鬼上司と呼んで憚らない。毎日のように厳しい指摘と無理な期限を押し付けられ、綾乃は彼を恐れ、嫌い、そして心のどこかで諦めていた。
ところが、ある夜、綾乃の個人スマートフォンに見知らぬ番号からメッセージが届く。今日の会議、完璧だった。お疲れ優しく、丁寧な言葉。その後も毎晩メッセージは続く。仕事で傷ついた綾乃を励ます言葉、彼女が誰にも言えない悩みに寄り添う返信——それらは、鬼上司からの折檻と打って変わって、これ以上ないほど優しかった。
やがて、黒沢は彼女の人生に深く関わる人物たちとの複雑な関係を見せ始める。綾乃を守ろうとする古い友人の会社役員・雨宮、綾乃への好意を隠さないソラリウムの営業本部長・矢吹、そして謎のメッセージを送り続ける相手の正体を追い求める綾乃自身の葛藤。
メッセージの相手が黒沢本人だと知った時、綾乃の心は揺らぐ。年の差は大きく、立場も違う。だが、仕事では厳しく、夜には優しく、すべてを見守る黒沢の本当の姿を知ってしまった綾乃