大正十年、京都。陰陽師の名門・式部家に生まれた娘・桐藍(きりあい)は、幼い頃から厳格な父と冷淡な母のもとで、伝統的な陰陽術を叩き込まれてきた。家の跡継ぎとして、人間と妖の境界を守る運命を背負わされた彼女は、禁忌を犯すことなく、ただ家の期待に応え続けることが人生だと信じていた。 しかし十六歳の春、封印された社の調査へ向かった夜、すべてが変わる。そこで出会ったのは、人間の姿をした一人の妖——名を蛍(ほたる)という。奇妙な美しさを持つ彼は、本来ならば桐藍が退治すべき存在だった。だが、その瞳に映る切実な想いが、桐藍の心を揺さぶる。蛍は桐藍の父によって長年封印されていた妖で、自分の民を守るために封印を破ってほしいと懇願した。 桐藍は家の教えに背くことになると知りながらも、蛍を助けることを選ぶ。その瞬間から、彼女の周囲に奇妙な変化が生じ始める。家の期待と禁忌の恋との間で引き裂かれる桐藍の心情を察した家中の人間たちが、彼女に好意を抱き始めたのだ。冷淡だった母は急に親身になり、厳格な父は不安げな表情を隠せず、家の護衛を務める武士・雨宮は桐藍を守ろうと執着する。さらに、陰陽師の修行仲間である同い年の