檻の小宇宙 — 接収されし美声 国営放送の美貌のアナウンサー安部渉也と、帝国大学の若き准教授小鳥遊歩。接点のなかった二人の男は、ソ連との内通という捏造された罪で憲兵隊に逮捕される。 冷酷非情なサディストの西崎剛中尉と、退廃的な美を愛でるパトロン村山忠敬子爵の手に引き渡された彼らは、洋館の地下に造られた秘密の拷問室へと連行される。《尋問》の名のもとに、その肢体は縄と革の拘束具で飾られ、夜ごと歪んだ陵辱が繰り返される。 絶望の檻の中、互いの存在に力を見出した二人は、密かに絆を育み始める。西崎の部下である田所孝は、一欠片の憐憫に突き動かされ、彼らの脱走を手引きする。闇夜に紛れて逃げ延びた二人は、老夫婦の営む農家にかくまわれる。しかし、老人たちは子爵の命により、粥に痺れ薬を混入させ、官憲へ通報する。 連れ戻された二人に加えられるのは、《二度と逃げようという意思を持たせない》ための凄惨な調教。歳月は流れ、一九四五年、終戦。安部と小鳥遊は解放の時が訪れたと信じた刹那、進駐軍が洋館を接収する。地下牢の《所有者》は、日本の貴族から黒人のアメリカ兵たちへと変わる。村山子爵と西崎中尉は残忍な笑みを