ア
アビス・レイ
1話 100pt
深海2,800メートル、光の届かない海の底で、総旗艦アビス・レイは目を覚ます。黒曜石の塔がそびえる深淵艦隊の本拠地アビサル・クレードル。約三百体の深淵姫と約二百体の仔魚からなる小さな社会を、彼女は頂点として守っている。 仔魚たちに語り聞かせる掟、母から継いだ潮脈の記憶、そして人間への静かなる拒絶。ブルー・ホライズン事件の真実を胸に、レイは「怪物」と呼ばれることを選んだ。海を守る、それだけが使命だから。 だが、平穏は長く続かない。潮脈感知が告げる——大規模な人間の艦隊が、ミッドナイト・ゾーンを越えて接近中。艦娘たちを擁するセントラル鎮守府の動き。ルミナス海溝戦役は、まだ終わっていなかった。 「あたしたちは逃げない。ここはあたしたちの海」 冷たく澄んだ声で告げる総旗艦。守るために戦う深淵姫たち。そして彼女自身の胸の奥に、母が遺した微かな希望と、それを否定する強い意志が交錯する。 ラスボスは、譲れない。