幼馴染と、ふたりきりの夏が、熱を帯びるまで。
幼馴染と、ふたりきりの夏が、熱を帯びるまで。
大学二年の夏、俺、風間カイトは火事で家を失った。両親は海外に長期出張中で、頼れるのは幼馴染の水無瀬ミサキだけだった。「部屋、余ってるから住めば?」そんな気軽な一言から、俺たちの予期せぬ同居生活が始まった。
昔から完璧な優等生で生徒会長だったミサキは、大学でも人気者で、料理上手で優しくて、スタイルも抜群。そんな彼女と同じ屋根の下での生活は、刺激が強すぎた。
風呂上がりの薄着、干しっぱなしの下着、ソファでうたた寝する姿。彼女はそんなの気にするどころか、どんどん距離を詰めてくる。「昔みたいに、一緒に寝よっか?」無邪気な誘いに、俺の理性は毎日限界だった。
でも、それは全部計算だった。ある夜、俺は真実を知ってしまう。ミサキは何年も前から、俺だけを狙って全てを計画していたんだ。彼女の部屋は、長年にわたる俺の写真や記録の博物館だった。「やっと誰にも邪魔されないね、カイト」優しい笑顔で、彼女は俺のスマホとノートパソコンを取り上げた。逃げ場を失った俺は、彼女の執着愛に囚われてしまった。
外では毅然としているのに、家では何も隠さない。「外で女の子と仲
幼馴染と、ふたりきりの夏が、熱を帯びるまで。 - 窓の向こうの声——監禁7日目、砕かれたスマホと崩れゆく心
同棲七日目の朝。
カーテンの隙間から差し込む日差しが、カイトの目の奥を刺した。
頭が重い。昨夜もろくに眠れていない。
リビングへ出ると、もうミサキが出かける準備をしていた。黒くて長い髪が背中で揺れる。白いブラウスが窓の光を受けて、彼女の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせていた。
「[gentle]おはよう、カイト。今日は朝から生徒会なの。すぐ戻るから、大人しくしててね」
「ああ……わかった」
彼女は玄関に向かい、補助錠を一つひとつ外していく。金属の擦れる冷たい音が、朝の静けさに響いた。
「[gentle]あ、それとね」
ミサキが振り返る。金色の瞳が細められた。
「[gentle]今日はリオちゃんが来てくれるから。カイトが一人で寂しくないようにってね」
彼女が出ていってから十五分も経たないうちに、玄関の鍵がまわる音がした。
ガチャリ。
「[excited]お邪魔しまーす!」
銀色のショートボブが揺れる。リオが手をひらひらと振りながら入ってきた。手にはコンビニの袋。でもその笑顔の奥の水色の瞳だけは、獲物を探す猫のように冷たく光っていた。
彼女はリビングのテーブルに袋を置くと、椅子を一腳、カイトの部屋のドアの前に運んで座った。
「[cold]私はここで見てますから。逃げようとしたら、すぐわかりますよ」
カイトは何も言えず、ソファに座った。
しばらくして、腹が鳴った。テーブルにはミサキが朝に用意していったサンドイッチがラップに包まれている。
カイトが手を伸ばすと、リオが立ち上がってサッと皿を遠ざけた。
「[cold]ミサキ先輩が作ったんです。汚い手で触らないでもらえますか」
「……は?」
「[sarcastic]だってカイトくん、ここに住まわせてもらってるだけの居候でしょ。ミサキ先輩の優しさに甘えてるだけの」
カイトの手が、空中で止まった。
リオの顔にはまだ笑みが浮かんでいる。でも声は刃物みたいに鋭かった。
「[cold]それなのに、先輩に迷惑ばかりかけて。本当に情けないですね」
カイトは手を引っ込めた。胸の奥で何かがカッと熱くなって、でもそれを口に出すことすら許されない気がした。ここで怒鳴ったら、事態が悪化するだけだ。
リオはそれを見て、小さく鼻を鳴らした。
昼が過ぎても、彼女は同じ調子だった。サンドイッチはまだテーブルの端に置かれたままだ。
カイトが台所の方に向かおうとすると、リオが腕を掴んだ。細い指なのに、骨に食い込むくらいの力がこもっている。
「[cold]許可してません」
「腹が減ってるんだよ」
「[cold]だから何ですか。カイトくんって、ミサキ先輩がいないと何もできないんですね。ほんとに情けない」
リオの目の中で、歪んだ光がゆらゆらと揺れている。
それは多分、嫉妬と崇拝が混ざり合った光だ。
カイトは歯を食いしばった。唇の内側に、鉄の味がにじむ。
何も言い返せない自分が、情けなかった。
午後になっても、リオの見張りは続いた。時々彼女はスマホをいじり、あくびを噛み殺す。でもカイトが少しでも動こうとすると、すぐに水色の視線が飛んでくる。
息が詰まりそうだった。
カイトは立ち上がって、書斎の方へ歩いた。窓から外の景色でも見なければ、頭がおかしくなりそうだった。
書斎の窓はルミナス星海マンションの正面に向いている。
カイトは何気なく下を覗き込んだ。
エントランスの前に、見覚えのあるシルエットがあった。
明るい茶色の短髪。ラフな格好。
あれは——
「ユウタ……!」
親友がオートロックのインターホンを押している。スマホを耳に当て、何度も何度もボタンを押している。
カイトは反射的に窓に手をかけた。
「——!」
叫びかけた、その時。
背後から強い力で腕を捻り上げられた。
「[angry]なにしてるんですか!」
リオだ。彼女はカイトの背後に飛びつくと、羽交い締めにして窓から引き剥がした。予想外の力強さで、カイトの体が床に押し付けられる。
「[whispers]やめてください。ほんとに、やめて」
耳元で低く囁く彼女の声は、怒りと少しの怯えが混ざっていた。
「はなせ、ユウタが——」
「[cold]知りませんよ。そんな人」
リオがカイトの頭を床に押し付ける。頬に冷たい床の感触が広がった。
窓の外——
ユウタが、振り返って空を見上げる。何かを諦めたように、肩を落として。
その背中が、ゆっくりと遠ざかっていく。
「……やめろ……ユウタ……」
声が掠れた。床にへたり込むカイトの目に、友人の背中が焼きついた。
リオの手がカイトの頭を押さえたままだった。
「[cold]ミサキ先輩が帰ってくるまで、大人しくしててください」
窓の外はもう、誰もいなかった。
夕方近くになって、玄関の鍵が開いた。
「[gentle]ただいま」
ミサキが帰ってきた。手には小さな紙袋。彼女はリビングに入ると、床に座り込むカイトと、その横に立つリオを見た。
「先輩、お帰りなさい! あの、大野ユウタって人が来てました。インターホンに何度も出てて」
リオの声は、さっきまでの冷たさが嘘みたいに明るかった。
ミサキはインターホンのカメラ映像を確認した。画面の中には確かにユウタの姿が映っている。
「[gentle]そう。あの人、来てたんだ」
彼女は微笑んだ。でも金色の瞳だけは、一瞬で凍りついたように冷たくなっていた。
数十分後、またインターホンが鳴った。
ミサキは平然と受話器を取る。
「[gentle]はい、水無瀬です」
『あの、カイトいますか? 大野ですけど』
「[gentle]ええ、いますけど。体調が悪くて今日は無理みたいで。ごめんなさい。また連絡するよう伝えますね」
『……そうですか。わかりました』
ユウタの消えた声が、スピーカー越しに聞こえた。
カイトは廊下の角から、それを見ているだけだった。
口を挟もうとして、声が出なかった。声を出したら、そのまま床に倒れそうだった。
ミサキが受話器を戻す。
「[gentle]心配してくれる子がいるって、嬉しいことだよね」
振り返って、にっこりと微笑む彼女の顔。
でもその微笑みの下から、誰にも渡さない、という確かな意志が透けて見えて——
カイトの全身が冷たくなった。
夜が訪れた。
リオが帰った後、ミサキはカイトをリビングのソファに呼んだ。
「[gentle]ユウタくん、また来るかもしれないね。困っちゃうな」
独り言みたいに言いながら、彼女はテーブルに置いてあったカイトの古いスマホを手に取った。
ミサキに没収される前に使っていた、もう解約された端末だ。それでも、カイトにとってはまだ「外」との繋がりの象徴だった。
「[gentle]これで安心でしょ」
彼女はスマホを振り上げた。
カイトが息を呑むのと、スマホが床に叩きつけられたのは同時だった。
ガシャン。
液晶が砕け散る。破片が床を転がって、反射した光が部屋の中にちらちらと散った。
「……なんで」
それだけしか言えなかった。
「[gentle]誰にも渡さない。カイトは私だけのものだから」
ミサキはカイトの頬に手を当てた。彼女の指先の温度が肌に伝わった瞬間、カイトの呼吸が乱れた。
体が震えている。恐怖で。なのに。
彼女のもう片方の手が、カイトの胸をゆっくりと撫で下ろす。
拒絶の言葉を出そうとした。でも出てこない。代わりに、喉の奥から小さな吐息が漏れた。
(逃げられない)
頭の中で言葉が回る。
(もう終わりだ)
それでも彼女の指が服の下に入り込むと、肌がぴりぴりと熱を帯びた。
「[whispers]大丈夫。私はずっとカイトのそばにいるよ。外の世界なんて、忘れちゃっていいんだよ」
ミサキはカイトをソファに押し倒すと、ゆっくりと服を脱がせ始めた。
彼女の唇が首筋を這う。ぞわりとした快感が背筋を走って、カイトはぎゅっと目をつぶった。
(やめろ……やめろ……)
頭は叫んでいるのに、体は逆らえない。
ミサキの舌が鎖骨をなぞり、胸の突起に触れると、腰の奥が熱くなって、ペニスが硬くなっていく。
「[whispers]気持ちいいでしょ。私に触られると、こうなっちゃうんだよね」
彼女の指が、カイトの下半身へと伸びる。
すでに硬く勃ち上がったペニスを握り込むと、ゆっくりと上下にしごいた。
「あっ……や、やめろって……」
口では拒んでも、腰が勝手に浮いてしまう。
ミサキはカイトの反応を面白そうに見つめながら、指の動きを速めた。親指で亀頭のくびれを擦り、先走りの汁を竿全体に塗り広げていく。ぐちゅぐちゅという濡れた音が、静かな部屋にやけに大きく響いた。
「[whispers]ほら、もうこんなに濡れてる。体は正直だね」
カイトの目から、涙がこぼれた。
情けなくて、悔しくて、怖くて。
それでも体はもっと触れてほしいと熱を帯びて、彼女の指を求めている。
(もう……諦めてしまおうか)
頭の中に、初めてはっきりとした形でその言葉が浮かんだ。
ミサキは自分の服も脱ぎ捨てると、裸の体をカイトに重ねた。彼女の秘所はもうぐっしょりと濡れていて、その熱い部分が太腿に押し当てられる。
「[whispers]カイトのこれ、私の中に入れて。私とひとつになろう」
彼女はカイトの上に跨がると、自分で亀頭を膣の入り口にあてがった。
熱くて、ぬめる肉の感触。
「[whispers]入れるよ」
彼女が腰を落とす。
ぬるり、とカイトのペニスが彼女の膣に飲み込まれていく。
「うぁ……ああっ!」
「[whispers]ああ……気持ちいい……カイトが私の中にいる……」
ミサキはうっとりと目を閉じると、ゆっくりと腰を振り始めた。彼女の膣壁がきゅうきゅうとペニスを締め上げ、そのたびに背筋に甘い痺れが走る。ピストンするたびに結合部から愛液が泡立って、淫らな水音が部屋に満ちた。
カイトはもう、何も考えられなかった。
ただ彼女の熱に全てを委ねて、与えられる快楽に体を震わせることしかできない。
「[whispers]好き……愛してる。だからずっと一緒だよ。誰にも渡さない」
彼女が動きを速める。自分でもクリトリスを擦りながら、何度も何度も腰を打ち付けてきた。
「[whispers]私、イく……カイトも一緒に……中に出して……」
彼女の膣がぎゅうっと痙攣して、カイトのペニスを奥まで締め上げた。その圧力に抗えず、カイトも射精した。どくどくと熱い精液が、彼女の子宮口に叩きつけられる。
「[whispers]ああっ……あったかい……いっぱい出たね」
ミサキは満足そうに微笑むと、カイトの胸に倒れ込んだ。
カイトは天井を見つめたまま、涙が止まらなかった。
深夜。
ミサキが隣で静かな寝息を立て始めてからも、カイトは眠れなかった。
暗い天井を見つめながら、頭の中で今日の光景がぐるぐる回る。
ユウタの遠ざかる背中。
砕け散ったスマホの破片。
そしてミサキの、あの凍った微笑み。
(もう逃げられない)
(全部終わったんだ)
胸の奥が塞がれて、息が苦しい。絶望が重くのしかかって、涙だけが止めどなくこぼれた。
それでも——
ふと、昼間のリビングの光景が蘇った。
リオが監視の合間に、バッグを無造作にテーブルに置いた時のことだ。
鍵束がバッグから滑り落ちて、テーブルの端に落ちた。彼女は慌てて拾い集めていたけれど——
全部、拾いきれたんだろうか。
カイトは音を立てないようにベッドから抜け出した。
暗いリビングは静まり返っている。月明かりだけが、カーテンの隙間から細く差し込んでいた。
テーブルの下に手を伸ばす。
床を手探りで這う指先が——
チリ、と冷たい金属の感触に触れた。
(あった……)
小さな鍵が一本。床の隅に転がっていた。
カイトはそれを握りしめた。
冷たい感触が、熱くなった手のひらに染み込んでいく。
これが何の鍵かはわからない。
でも——
(もしかしたら)
外に繋がる、たった一つの希望かもしれない。
カイトは鍵を胸に押し抱いたまま、静かに自分の部屋へ戻った。
窓の外では、雲の隙間から月が顔を出している。
その白い光が、まるで誰かが見ているかのように、カイトの手の中の鍵を照らしていた。