幼馴染と、ふたりきりの夏が、熱を帯びるまで。
幼馴染と、ふたりきりの夏が、熱を帯びるまで。
大学二年の夏、俺、風間カイトは火事で家を失った。両親は海外に長期出張中で、頼れるのは幼馴染の水無瀬ミサキだけだった。「部屋、余ってるから住めば?」そんな気軽な一言から、俺たちの予期せぬ同居生活が始まった。
昔から完璧な優等生で生徒会長だったミサキは、大学でも人気者で、料理上手で優しくて、スタイルも抜群。そんな彼女と同じ屋根の下での生活は、刺激が強すぎた。
風呂上がりの薄着、干しっぱなしの下着、ソファでうたた寝する姿。彼女はそんなの気にするどころか、どんどん距離を詰めてくる。「昔みたいに、一緒に寝よっか?」無邪気な誘いに、俺の理性は毎日限界だった。
でも、それは全部計算だった。ある夜、俺は真実を知ってしまう。ミサキは何年も前から、俺だけを狙って全てを計画していたんだ。彼女の部屋は、長年にわたる俺の写真や記録の博物館だった。「やっと誰にも邪魔されないね、カイト」優しい笑顔で、彼女は俺のスマホとノートパソコンを取り上げた。逃げ場を失った俺は、彼女の執着愛に囚われてしまった。
外では毅然としているのに、家では何も隠さない。「外で女の子と仲
幼馴染と、ふたりきりの夏が、熱を帯びるまで。 - 夏の終わりの花火——君だけの檻で、溶けていく
リビングの窓から差し込む光が、いつもより柔らかく感じられた。
あの夜明けから、まだ一日も経っていない。カイトはソファに座ったまま、自分の手のひらを見つめていた。ミサキの背中に触れた感触が、まだ指先に残っている気がする。
(俺は、このままでいいのか)
答えは出なかった。
夕方近くになって、ミサキがクローゼットの奥から何かを取り出す気配がした。彼女がリビングに戻ってきた時、腕に抱えていたのは二枚の浴衣だった。濃い藍色の生地に、銀色の花火が散った柄。
「[gentle]今夜、星海浜公園で花火大会があるの。知ってる?」
カイトは顔を上げた。花火大会。去年はユウタと一緒に行った。屋台で焼きそばを買って、人混みの中で煙たい空気を吸いながら、終わったら涼みに行こうと言っていた。遠い記憶だ。
「[gentle]たまには外の空気を吸わないと、体に悪いわ。今夜だけ、特別。一緒に行きましょう」
彼女が微笑む。金色の瞳が夕日に照らされて、蜂蜜みたいに甘く光った。
カイトは浴衣を受け取った。布地はさらっとしていて、新品の糊の匂いがした。
(外に出られる)
人混みの中なら、逃げられるかもしれない。花火大会の雑踏で、もし一瞬でも彼女から距離を取れたら。
頭のどこかで、そう考える自分がいた。
「[gentle]着替え、手伝おうか」
「……自分でやる」
カイトは立ち上がり、書斎へ向かった。浴衣の帯を締めながら、窓の外に目をやる。ベランダの補助錠は、この八日間で見慣れてしまった。
頭の中に、昨日読んだ日記の文章が蘇る。
——カイトくんが隣に座ってくれた日から、世界が変わった——
小四の女の子が綴った言葉。転校を繰り返し、友達もいなかった彼女が、たった一人で掴んだ光。
(もし俺が逃げたら、この子はどうなるんだ)
カイトは帯をぎゅっと締めた。
玄関で待っていたミサキは、淡い桜色の浴衣に着替えていた。襟元から白い首筋が伸びて、結い上げた黒髪の襟足が艶めかしく揺れている。
「[gentle]よく似合ってる」
彼女が手を差し伸べた。カイトは少し迷ってから、その手を握った。ミサキの指先は、いつもより冷たくて、少し震えている気がした。
(こいつも、緊張してるのか)
初めて気づいたその弱さに、カイトの胸の奥がちくりと痛んだ。
二人でマンションを出た。
外の空気は湿っていて、潮の匂いと、遠くで焚かれる線香花火の甘い煙が混ざっていた。カイトの肺が、久しぶりの外の空気を深く吸い込む。
(懐かしい)
自由だった頃の、何でもない夏の夜の匂い。
星海駅からバスに乗り、海岸沿いの道を歩く。浴衣姿のカップルや、家族連れが次第に増えてきた。ミサキはカイトの手を離さなかった。人混みの中でも、彼女の手は確かな力でカイトを繋ぎ止めている。
逃げるなら、今かもしれない。
でもカイトの足は、自然と彼女の隣を歩いていた。
星海浜公園の砂浜近くまで来ると、もう空は濃紺に染まっていた。波の音と、人々のざわめきが混ざり合う。
二人は少し離れた場所にある、海の見えるベンチに腰を下ろした。
ドン、と腹に響く音がして、最初の花火が打ち上がった。
赤と金色の光が、漆黒の空に咲いては散る。ミサキは花火を見上げたまま、ぽつりと言った。
「[gentle]ねえ、覚えてる? 小四の秋に、カイトが言ってくれたこと」
カイトは首を傾げた。
「[gentle]ずっと一緒にいようねって」
彼女の横顔に、花火の明かりが当たっては消える。その顔はいつもの完璧な生徒会長でも、家の中の支配者でもなかった。ただの、十九歳の女の子の顔だった。
「[gentle]あの言葉、ずっと守ろうとしてたんだよ。私が今まで頑張ってこれたの、全部あれがあったから」
声が、少しだけ震えている。
カイトは思い出そうとした。そんなことを言った記憶は、正直なところあまりなかった。でも、日記に書いてあった転校続きの孤独な少女の姿が、今のミサキと重なって、胸の奥がきゅうと締め付けられる。
「[serious]だからって、あんなことしていいわけじゃないだろ」
絞り出すように言った。
ミサキはゆっくりと瞬きをした。
「[sad]わかってる。でも、他の方法がわからなかった」
彼女がカイトを見る。金色の瞳の縁が、ほんの少し濡れているように見えた。
正しい怒りと、この人がずっと一人だったというどうしようもない痛みが、カイトの中で激しくぶつかり合った。
花火が最高潮を迎える。
轟音とともに、次々と大輪の花が空を埋め尽くす。周囲から歓声が上がり、拍手が沸き起こった。
でも、カイトの耳には、その音は遠くに聞こえた。
(逃げたい)
それは本物だ。
(でも、この人がいないと、俺はもう息の仕方を忘れてる)
それも、多分、本物だ。
カイトはミサキの肩を引き寄せた。彼女の体が一瞬硬直して、何か言おうとした。でも、その前にカイトは自分の唇を、彼女の唇に重ねた。
柔らかくて、少し冷たい感触。
ミサキの目が、大きく見開かれた。
(これでいいのか、わからない)
それでも、今、この人の隣にいることが、俺の現実だ。
カイトは初めて、自分の意志でそれを選んだ。
花火の轟音が、世界を震わせる。
ミサキがゆっくりと目を閉じた。彼女のまつげが、かすかに揺れている。
唇を離した時、ミサキは自分の頬に手を当てて、泣きそうな顔で笑った。
「[whispers]カイトが、選んでくれた……初めて」
その声は震えていて、でも今まで聞いたどんな言葉よりも、嬉しそうだった。
マンションに戻ったのは、花火が終わって一時間ほど経った頃だった。
玄関の鍵を閉める音が、やけに大きく響く。
ミサキの雰囲気が、ふわりと変わった。彼女はカイトの浴衣の裾を、子どもみたいにそっと掴んだ。
「[whispers]今夜は、逃げないで」
その声の弱さに、カイトの胸が詰まった。
答えの代わりに、彼はミサキの手を引いて、リビングの照明を落とした。
窓から差し込む月明かりが、部屋をぼんやりと照らす。
カイトはミサキの浴衣の帯に手をかけた。自分の指が震えているのがわかる。それが、彼女に伝わっているのも。
ミサキが小さく息を詰まらせた。
帯がほどける。桜色の布が、するりと肩から落ちて、白い肌が月の光に浮かび上がった。彼女の乳房が露わになり、頂点の淡い色が空気に触れて硬くなっていく。
カイトはためらわなかった。自分から、彼女の胸に顔を埋めた。
「あっ……」
ミサキの小さな声が、暗闇に溶ける。カイトは舌を伸ばし、彼女の乳首にそっと触れた。まるで壊れものを扱うみたいに、優しく、でも確かに。
「[whispers]……もっと」
彼女の細い指が、カイトの髪を掴んで、そっと押し付ける。カイトは言われた通り、今度は強く吸い上げた。舌で転がし、歯を立てる。
「んっ……あぁっ、カイト……」
ミサキの腰が、ゆっくりと揺れた。
カイトは彼女をソファに横たえると、浴衣の裾を割って、太腿を露わにさせた。白い肌の奥、秘所を覆う布地はもうぐっしょりと濡れていて、愛液の甘い匂いが立ち上る。
「[whispers]見て……カイトがしてることで、こんなになってる」
ミサキが自分の指で布地をずらす。露わになったそこは、濡れて光っていて、ひくひくと小さく痙攣していた。
カイトは息を呑んだ。
(綺麗だと思った)
初めて、恐怖じゃない感情で、彼女を見た気がした。
カイトは自分の浴衣も脱ぎ捨てた。すでに硬く勃ち上がったペニスが、空気に触れてぴくりと震える。先走りの汁が、亀頭を濡らしていた。
「[whispers]入れて。私の中に、カイトをちょうだい」
ミサキが両腕を伸ばす。カイトはその腕の中に倒れ込むように、彼女に覆い被さった。
ペニスの先端を、ぬめる入口にあてがう。熱い。とろけるような熱さが、亀頭を包み込もうとしている。
「[whispers]お前だけだ」
自分でも驚くほど、確かな声が出た。
そして、カイトは腰を進めた。
ぬぷり、と亀頭が膣に飲み込まれる。
「あああっ……!」
ミサキの背中が弓なりに反り返り、膣壁がぎゅうとカイトのペニスを締め付けた。温かくて、柔らかくて、でも強くて。カイトはその感覚に、頭の奥がじんと痺れるのを感じた。
もっと奥へ。
腰を押し進めると、ペニス全体が彼女の中に収まった。結合部から、ぐちゅりと濡れた音がする。
「[whispers]ずっとこうしたかった」
ミサキが涙声で言った。彼女の金色の瞳から、ほんの少しだけ涙がこぼれて、こめかみを伝う。
カイトはその涙を舐めとると、ゆっくりと腰を動かし始めた。
「あっ、あぁっ、カイト……!」
ミサキがカイトの背中に腕を回し、爪を立てる。その痛みすら、今は愛おしかった。
カイトはペニスを引き抜き、また奥まで突き入れる。ピストンを繰り返すたびに、彼女の愛液が泡立って、ぐちゅぐちゅという淫らな水音が部屋に満ちた。
「[whispers]お前だけだ。ミサキだけだ」
「[crying]嬉しい……嬉しいよ、カイト……!」
もっと、もっと。
カイトは腰を速めた。ミサキも自分から腰を押し付けてきて、お互いの体が激しくぶつかり合う。彼女の膣がきゅうきゅうと痙攣し始め、亀頭を搾り取るように締め付ける。
「[whispers]イく……私、イっちゃう……!」
「[serious]ああ、俺も——」
カイトは最後に深く腰を突き入れ、彼女の一番奥に精液を放った。どくどくと熱い液体が、ミサキの子宮口に叩きつけられる。
「ああああっ……!」
ミサキの体が大きく跳ね、膣がぎゅううっとカイトのペニスを締め上げた。長い絶頂の余韻が、彼女の体を何度も震わせる。
二人は荒い息を繰り返しながら、しばらく抱き合っていた。
絡み合ったまま、汗で湿った肌が冷めていく。でも、心の奥だけは、不思議と温かかった。
ミサキがそっとカイトの胸に顔を埋める。
「[whispers]愛してる。ずっと、ずっと」
カイトは何も言わずに、彼女の髪を撫でた。
(これが正しいとは思わない)
(でも、これが俺の選んだことだ)
歪でも、いつか壊れるとしても。今は、この温かさに浸っていたかった。
窓の外で、夜風がベランダの補助錠を軋ませる。
翌朝、カイトがミサキの腕の中で眠っている頃。
ルミナス星海マンションの裏手、閉鎖されたパーキング跡地に、一人の男が立っていた。
明るい茶色の短髪を、朝の風が撫でる。目元の小さなほくろが、強く日差しを浴びて黒く浮かんで見えた。
大野ユウタはスマホを操作し、数日かけて集めた情報をまとめたメモを、共通の友人グループのメッセージアプリに送信した。
『カイトが心配だ。ミサキとの同棲に何かある』
『マンションの防犯カメラの死角は確認した。誰か一緒に動ける人いないか』
送信ボタンを押す。
ユウタは画面を閉じて、そびえ立つタワーマンションを見上げた。
「[serious]待ってろ、カイト。必ず助け出す」
その声は、誰に聞かれるでもなく、朝の静けさの中に消えていった。
これが、外部からの救出劇の本格的な始まりだった。
同じ頃。
星海市内の、あるネットカフェの個室。
スマホの画面だけが、暗い室内を照らしている。画面には、未送信のメッセージが表示されたままだった。
『ミサキ先輩が全部わかった日に、後悔させてやる』
白鳥リオはブースの簡易椅子にうずくまり、膝を抱えていた。銀色のショートボブは乱れて、水色の瞳は泣き腫らした跡で赤く染まっている。
彼女のスマホは、電波の弱いこの場所で、静かに眠っていた。
カイトとミサキの歪んだ愛の檻は完成した。
でも、その外側では、二つの波乱が静かに動き始めている。