グレタ・ヴァルムは、自由港アルヴィンで傭兵として細々と生計を立てる元軍人。三年前、彼女の部隊は夜襲によって壊滅した――しかも、その手を下したのは、誰よりも信頼していた親友ラウル・ディースだった。 偶然にも生き延びたグレタの胸には、ただ一つの疑問が灼けつくように燻っている。なぜ、なのか。その答えを求めて彼女が頼ったのは、〈夜明けの鍵〉亭の主であり、かつて諜報部員として数多の秘められた情報網を持つ皮肉屋クルト・ハイゼンだった。 協力を承諾したクルトの調査は、単なる裏切りを遥かに超えた巨大な陰謀へと行き着く。ラウルの足取りは、大陸軍の上層部へと繋がっていた。グレタは戦慄の真実を知る。ラウルは強制されていたのだ。家族を人質に取られ、自らの戦友を虐殺することを余儀なくされていた。 だが、陰謀はそれだけでは終わらない。裏切りの背後に潜むのは〈灰の誓約〉――大陸の大いなる平和条約の水面下で進められた、組織的な民族浄化作戦。そして、その虐殺を指揮した張本人、ヴェルナー将軍は、自らが悪用した体制そのものに守られ、いまだ英雄として称えられている。 グレタは決意する。これは復讐ではない。武器は真実そ