世界を影から支配せんとした企業、アメマツリ社。その計画は「心の怪盗団」によって打ち砕かれ、首謀者であるシンジ・アサクラは、歪んだ欲望の結晶たる「ヨルドノオウ」の内部で敗れ去った。誰もがそう思っていた。だが、シンジの意志は死んでいなかった。 崩壊する器の中で、彼は最後の力を振り絞り、自らの人格をデータ化してネットワークの深淵へと逃亡していたのだ。それから数年後、彼は小さなオカルトサイトの管理者を装い、再び現実への干渉を開始する。表向きは、胡散臭い超常現象を扱うだけのサイト。しかしその裏で、シンジはかつての「神なき秩序」の野望を塗り替えるべく、新たな異世界アプリを密かに開発していた。その名は「ツキノミヤ」。心の歪みではなく、その「最強の願い」を具現化するアプリである。 自らを救済者と称し、シンジは絶望を抱える者たちへとアプリを配布し始める。彼らの願いは新たな歪みを生み出し、街の平穏を加速度的に蝕んでいった。怪盗団が去り、すべてが解決したはずの東京で、静かに、しかし確実に広がりつつある未曾有の異変。これは、正義を全否定された男による、静かなる復讐劇の幕開けである。