伊織は目を覚ますと、そこは三年前だった。同じ夏の匂い、同じ光、同じ声──すべてがまったくあの頃のままだった。しかし彼の胸には、親しい友人が亡くなったあの日を含む、三年分の重い記憶が刻まれている。 伊織がここにいる理由はひとつ――あの人をもう一度死なせたくないのだ。夏の終わりに訪れる悲劇、みんなにとって大切な誰かを奪った致命的な事故を彼は知っている。今回は、それを止めるつもりだ。 だが簡単ではない。伊織はかつての自分として生きなければならない。ダイビング部「パラダイス」に入り、虎哉やみんなと毎日笑い、ふざけ合い、何も知らないふりをしながら、胸の奥に三年分の悲しみを抱え続けるのだ。 虎哉も千奈美も、以前と変わらず笑っている。先輩の梓は相変わらず辛辣だ。そして、死ぬはずの友人はそこにいて、何事もなかったかのように笑っている。伊織にとって、そのすべての笑顔が胸を刺す刃のように感じられた。 彼は静かに動き始める――事故現場の場所を確認し、その日の予定を変えようと試みる。しかし、うまくいかない。ほんの少しでも以前と違う行動をすると、友人たちは気づいてしまう。「伊織、今日なんか変じゃない?」