1990年代後半。アメリカ東海岸のさびれた工業地帯の町。閉鎖された工場がひび割れたアスファルトの上にそびえ立ち、街には行き場のないベトナム帰還兵や中毒者たちが溢れている。この忘れ去られた場所のはずれにあるモーテルの一室で、二人の男がまったく別の世界に存在していた。 アレフは23歳。かつてはラビの学生だったが、小悪党に転身し、不死という呪いに囚われている。かつてはその呪いからの解放を望んだが、死の向こう側の一端を垣間見てその願いは消えた。今はただ漂い、自分本位で不安定なまま、その才気を残酷さの武器に変えている。 バアルは25歳。アレフによって召喚された悪魔で、契約が続く限りこの生の世界に縛られている。がっしりとした肩幅の男の姿を取り、短気で暴力的な性格を持つ。決して愚かではないが、努力を拒む。アレフに全身全霊で反感を抱きながらも、決して離れようとはしない。 二人の関係は機能不全の層で成り立っている。浮気、身体的暴力、薬物乱用、言葉による破壊。アレフは聖遺物を使ってバアルを脅し、バアルはアレフを壁に押し付け、所有を宣言しながら絞めつける。朝には手をつなぐ。どちらもこれを愛と呼ばないが