闇堕ちプリキュア・エクリプス —楽園狂宴—
吉祥市――現代日本に似た世界で、プリキュアたちは人々の負の感情から生まれる怪物「ノロイ」と戦っている。真白と深紅は、公でも私でも強い絆で結ばれたパートナーだった。
漆黒の長髪をなびかせ、紅蓮の炎を操る深紅。銀色の三つ編みを揺らし、癒やしの光を放つ真白。息の合った連携で、二人は喝采を浴びる英雄になるはずだった。
だが、すべては幼稚園バスを救ったあの日から変わる。ノロイへの恐怖に駆られた保護者たちは「あんたたちがいるから化け物が来るんだ!」と叫び、石を投げつけた。痣を作り血を流しながら、深夜の公園に逃げ込んだ深紅と真白。真白は声もなく涙をこぼし、深紅は怒りに震える。
そんな心の隙間に、変身アイテムから甘い声が囁きかける。
「辛いだろう。正義なんて捨てろ。俺が解放してやる」
それはアイテムに宿る闇の精霊・ノワール。契約者の絶望を味わい、闇の快楽へと導く、光の精霊の裏の顔だった。深紅は最初こそ拒むが、日々のSNSでの中傷、マスコミの魔女狩り、何より救った人々からの裏切りが彼女の精神を削っていく。そしてついに、ノワールの誘惑に膝を折った。
堕ちた彼女の身体は淫らな闇の光に包まれ、胸元
闇堕ちプリキュア・エクリプス —楽園狂宴— - 愉悦の玉座、復讐の夜明け
夜明けが、来た。
でもそれは、誰も見たことのない夜明けだった。
キサラギシティ中央区の上空。紫がかった空気が渦を巻き、ビル群が微かに震えている。その震えは遠くから見れば単なる蜃気楼のようでありながら、実際はもっと恐ろしいものだった。建物が息をしているのだ。
その震央。
かつてキサラギスカイタワーと呼ばれた高さ300メートルのランドマークが、今は生き物のようにうねっていた。ガラスと鉄骨が悲鳴をあげ、螺旋状にねじ曲がっていく。頂上はどろりと溶け、二つの人影を包み込むように結晶化しつつあった。
堕天の乙女。深紅と真白。
融合した身体を持ちながら、個別の意識を保つ歪な存在。深紅の意識が支配的人格として前面に出ていた。漆黒に染まった変身衣装が朝風に揺れ、背中から伸びる触手が空気を撫でている。隣で真白もまた、銀色だった髪を闇色に変え、血のように紅い瞳で眼下の街を見下ろしていた。
「見ろ、真白」
深紅が両腕を広げる。
瞬間、中央区一帯の物理法則が完全に崩壊した。
道路が波打ち、ビルの窓ガラスが一斉に砕け散る。ガラスの破片は重力を無視して空中に浮かび、次の瞬間には鋭い刃となって街路を駆け抜けた。コンクリートの壁面がぐにゃりと歪み、あちこちで生きた肉の膜のように脈動し始める。
「すごい……これが、私たちの力なのね」
真白の声は甘く蕩けていた。闇堕ち前の丁寧な口調は影を潜め、代わりに誘惑的な語尾が混じる。彼女は自分の手を見つめた。指先から黒い光が溢れ、周囲の空間を歪めている。
(これが、復讐の始まり)
深紅の意識が、直接真白の中に流れ込んでくる。思考が共有されているのだ。深紅の怒り、深紅の支配欲、深紅の——快楽。それら全てが、境界のない感覚として真白の全身を満たしていく。
キサラギスカイタワーの頂上で、二人のための玉座が形を成した。黒曜石のように光る表面に、無数の紅い紋様が浮かび上がる。それはまるで、この世界の理を書き換えた証だった。
深紅はゆっくりと玉座に腰を下ろし、真白を自分の膝の上に抱き寄せた。
「かつて私たちを石で打った者たちがいる」
深紅の右手が真白の額——かつて石が当たった場所をそっと撫でる。その仕草は優しいのに、指先からは冷たい怒りが伝わってきた。
「私たちを化け物と呼び、SNSで嘲笑った者たちがいるわ」
真白が応える。彼女の声にも、もはや迷いはなかった。深紅への依存と愛が歪んだ形で昇華され、今は深紅と共にあることだけが至上の快楽だった。
その時——
中央区の通りで、最初の悲鳴が上がった。
道路の舗装が割れ、そこから無数の黒い触手が噴き出したのだ。触手は太く、ぬらぬらと光り、意思を持っているかのように素早く動く。しかし無差別ではなかった。
かつて幼稚園バス事件の夜、真白の額を石で傷つけた父親がいた。彼は今、中央区のオフィスビルで警備員として働いていた。触手は迷わずその男に伸び、足首を絡め取って引き倒す。
「うわああっ!? なんだこれ、なんなんだよ!?」
男は必死にもがいたが、触手は容赦なく彼を路上に引きずり出した。
商店街で深紅の背中に石を投げた佐武という男もいた。彼はちょうど早朝の配達仕事で中央区を訪れていた。触手は軽トラックごと彼を捕らえ、車体をぐしゃりと押し潰す。
「た、助けてくれ! 誰か——」
佐武の叫びは途中で途切れた。触手が彼の口を塞いだからだ。
SNSで二人を「人殺し」と書き立てた報道関係者もいた。彼が勤めていたテレビ局のビルは、外壁全体が生きた肉の膜に覆われていく。ガラス越しに、中にいる人々がパニックに陥る様子が見えた。
真白は玉座の上からそれを見下ろしていた。
触手に絡め取られた人々の恐怖が、感覚として彼女の中に流れ込んでくる。冷たい。苦しい。息ができない——そんな叫びが、遠くの騒音のように聞こえる。
でも。
(ああ……これが、復讐なのね)
真白は自分の胸の奥に広がる感覚に気づいた。それは嫌悪ではなかった。恐怖でもなかった。重くて甘い、満たされるような陶酔だった。かつて自分たちを傷つけた者たちが苦しむ様子を見て——気持ちいいと感じている。
「真白」
深紅が後ろから真白の肩に顎を乗せた。熱い吐息が首筋を舐める。
「お前の中に、私の快楽が流れているのが分かるか」
「ええ……分かるわ、深紅。これが、あなたの感じていることなのね」
二人の意識は共有されていた。深紅が感じるサディスティックな愉悦が、真白の感覚としても直接流れ込んでくる。それは通常の身体的接触とは全く異なる、意識の深部への直接侵入だった。
(もっと、見せて)
真白は言葉ではなく思念で応えた。深紅の支配の快楽が、もっと欲しい。深紅の怒りが、もっと欲しい。深紅の——全てが。
深紅は真白の願いに応えるように、触手の動きを加速させた。
中央区のあちこちで、新たな触手が噴き出した。かつて深紅と真白に罵声を浴びせた群衆の中にいた者たちが、次々と捕らえられていく。商店街で「出ていけ」と叫んだ女店主。公園で「化け物」と囁いた母親。SNSで「死ねばいいのに」と書き込んだ匿名のアカウントの主——深紅の記憶と怒りの残滓が、一人一人を正確に選び出していた。
捕らえられた人々の苦痛が、触手を通じて二人に逆流する。
肉の裂ける感触。骨の軋む音。恐怖で喉が張り裂けるような叫び。それら全てが、生暖かい快楽に変換されて真白と深紅の感覚を満たしていく。
「気持ちいい……気持ちいいわ、深紅」
真白の声が震えた。自分の内側で何かが溶けていく。今まで正義や善意と呼ばれていたものが、復讐の陶酔に塗り替えられていく。深紅の意識が「これが当然の報いだ」と伝えてくるたびに、真白の中の迷いや罪悪感が薄れていった。
——正午過ぎ。
中央区の変容が一段落した頃、玉座の上で二人の融合は新たな段階に入った。
深紅は真白の身体を後ろから強く抱き込み、背中の触手で二人の体を縛り上げた。漆黒の触手が、まるで一つの繭のように二人を包み込む。
「真白、お前は私のものだ」
深紅の唇が真白の首筋に押しつけられた。熱い。深紅の心臓の鼓動が、背中越しに直接伝わってくる。
「ええ……私は、あなたのものなの……」
真白は全身を震わせた。深紅の意識が自分の内側で広がっていく。どこが自分で、どこが深紅なのか——境界が、融けていく。
(深紅……深紅だけが、私の全て)
真白の思念が、言葉ではなく直接深紅に流れ込んだ。それは懺悔のようであり、祈りのようでもあった。
深紅はそれを受け取り、歪んだ満足に唇を歪めた。彼女は自分の支配の快楽を、意図的に真白の感覚へと流し込んでいく。復讐の愉悦。所有の快感。真白が自分のものだという、絶対的な充足。
「ああっ……!」
真白の口から、抑えきれない吐息が漏れた。
深紅の左手が真白の胸元に滑り込み、衣服の上からゆっくりと撫で上げる。右手は真白の腹部を押さえ、彼女の震えを感じ取っていた。
「感じろ、真白。これが私たちの復讐だ。これが、お前と私の——快楽だ」
触手が二人を縛る力を強めた。それは拘束でありながら、最も親密な抱擁でもあった。深紅の指が真白の肌の上を這い、触れるたびに真白の意識に快楽の信号が直接流し込まれる。
通常の性行為とは根本的に異なっていた。肉体の接触が伴うが、それ以上に意識の融合による感覚の共有が、二人の快楽を何倍にも増幅させていた。
真白は深紅の指が自分の乳首に触れた瞬間、背中を大きく反らせた。
「んんっ……! 深紅、そこ……っ」
「ここか。ここが感じるんだな。お前の中に、私の快楽が流れているのが分かるぞ」
深紅の指が真白の衣服の下に潜り込み、直接肌に触れた。指先が乳首を摘み、優しく転がす。その一つ一つの感覚が共有された意識の中で増幅され、真白だけでなく深紅自身の快楽としても跳ね返ってくる。
「あ、あぁっ……深紅が、私の中で……っ」
真白は深紅の腕を握り締めた。脚が震え、太腿の内側が自然に開いていく。漆黒のスカートの裾から、白い太腿が覗いた。深紅の左手がその太腿をゆっくりと撫で上げ、内腿の柔らかい部分に指を這わせる。
「濡れているな。これが、復讐の味だ」
深紅の指が真白の下着の上から、既に湿り気を帯びた場所をそっとなぞった。
「あっ……それは、違うの……あなたがいるから、私は……っ」
真白は首を振った。違う。復讐の快楽だけじゃない。深紅が触れているから。深紅が自分を求めてくれているから——それだけで、自分は。
深紅は真白の言葉に満足げに微笑み、下着をずらして指を中に滑り込ませた。
「あああっ!?」
真白の腰が跳ね上がる。
深紅の長い指が、真白の中をゆっくりと探り、内壁を撫で上げた。共有された感覚の中で、真白が感じる快楽が深紅にも直接流れ込む。深紅は自分の中に広がる真白の快感に、低く息を漏らした。
「真白……私も、感じている。お前の全てが、私の中に……」
深紅の指の動きが速くなる。膣内を掻き回すたびに、真白の全身が痙攣した。愛液が溢れ出し、深紅の指を濡らしていく。ぐちゅぐちゅという水音が、玉座の上で卑猥に響いた。
「深紅、深紅……! 私、もう……っ」
真白は深紅の腕に爪を立てた。腹部の奥から、何かが込み上げてくる。深紅の快楽と自分の快楽が混ざり合い、境界が完全に消えていく。
(イく……イってしまう……!)
真白の思念が深紅に届いた瞬間——
深紅は指を最も奥まで突き入れ、同時に親指で真白のクリトリスを強く押しつぶした。
「行け、真白。私と一緒に」
「——っっ!!」
真白の視界が真っ白に弾けた。
全身が激しく痙攣し、膣内が深紅の指を締め付ける。同時に、深紅もまた自分の内側で真白の絶頂の快楽を受け取り、小さく息を呑んで身体を震わせた。
二人の意識が完全に重なり合う。復讐の快楽も、支配の愉悦も、被支配の陶酔も——全てが溶け合って、一つの巨大な快楽の塊となった。
その瞬間、キサラギスカイタワー周辺の歪みが一際強く脈動した。
ビル群の壁面がどくどくと波打ち、道路からは新たな触手が一斉に噴き出す。遠く離れたサクラミダイ公園では、桜の木々が完全に黒く変色し、血のように赤い花びらを舞い散らせ始めた。
二人の感情の高まりが、都市の歪みに直結していたのだ。
* * *
日が傾いた頃。
玉座の傍らの虚空が、静かに歪んだ。
まず異様に長い指先が現れ、次に銀白色の長髪、漆黒の瞳——ノワールが、音もなく顕現した。端正な中性的な美貌に、満足げな微笑みが浮かんでいる。
「計画は順調だ。お前たちは最も美しい形で解放された」
甘く低い声が、詩を吟じるように響く。
深紅は真白を抱き寄せたまま、冷たい視線でノワールを一瞥した。
「道具としての役割を終えたなら、消えろ」
ノワールはその言葉に動じない。むしろ、口元にうっすらと笑みを浮かべたまま、ゆっくりと瞬きを一つ。
「道具か。そうだね——しかし、いいのか? お前たちの力が生み出す歪みは、新たなノロイを際限なく生み続ける。そしてそのノロイが積み重ねる負の感情は——」
彼は言葉を打ち切った。含意だけを残して。
深紅の紫の瞳が険しくなる。
「何が言いたい」
「いや、何も。ただ——燃料は多い方がいい、というだけの話だよ」
そう言い残し、ノワールは虚空に溶けるように消えた。痕跡すら残さず、最初からいなかったかのように。
真白はノワールの言葉の断片に、胸の奥で何かが引っかかるのを感じた。
「深紅……今の、何のことを」
しかし深紅の意識が、共有された感覚の中で真白の疑問を押し包むように伝えてくる。
(考える必要はない。今は——私たちのものだ)
真白は深紅の腕の中で、再び目を閉じた。疑念は、まだ陶酔の中に沈んでいく。
* * *
同じ夕刻。
スザク工業地区の廃工場——旧サカキ金属精錬所の屋上。
一人の少女が、キサラギシティ中央区の方角を双眼鏡で見ていた。
瑠璃。ミントグリーンのウルフカットの髪が強い風に煽られ、目の下には濃い隈がある。先輩たちの堕天を目撃してから丸一日。ほとんど眠れていない。
螺旋状に変形したキサラギスカイタワーの頂点。そこに二つの小さな影——真白と深紅——が並んでいる。
「……先輩……」
瑠璃の唇から、かすれた声が漏れた。
双眼鏡を持つ手が震える。視界の中で、漆黒に変わった真白と深紅の姿が、かつての優しい先輩たちとはまるで別人に見えた。
(あたしが、もっと早く気づいていれば——何かできたはずなのに)
自責と無力感が、喉の奥で詰まる。
涙は出なかった。出すことさえ許されない気がした。
その時——
左手首に、淡い光の疼きが走った。
「——っ!?」
瑠璃は双眼鏡をコンクリートの床に落とし、左手首を右手で強く握り締めた。光のアザが、皮膚の下で脈打っている。4話の廃ビル屋上で感じたのと同じ——でも、前よりも強い疼きだった。
光は一瞬だけ強く輝き、それから静まる。
瑠璃は震える息を吐き、膝から崩れ落ちた。
(諦めない。絶対に——諦めない)
声には出さず、唇だけで口癖を動かす。
先輩たちを取り戻す。何があっても。この光が何か分からなくても——自分がやるしかないのだ。
瑠璃はゆっくりと立ち上がり、中央区の空を最後にもう一度だけ見つめた。紫色の歪んだ空が、ゆっくりと夜闇に染まっていく。
彼女は廃工場の内部へと戻っていった。
屋上に残された双眼鏡の傍らで、淡い光の残滓が微かに揺れてから、消えた。Noveliaとは?
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