闇堕ちプリキュア・エクリプス —楽園狂宴—
吉祥市――現代日本に似た世界で、プリキュアたちは人々の負の感情から生まれる怪物「ノロイ」と戦っている。真白と深紅は、公でも私でも強い絆で結ばれたパートナーだった。
漆黒の長髪をなびかせ、紅蓮の炎を操る深紅。銀色の三つ編みを揺らし、癒やしの光を放つ真白。息の合った連携で、二人は喝采を浴びる英雄になるはずだった。
だが、すべては幼稚園バスを救ったあの日から変わる。ノロイへの恐怖に駆られた保護者たちは「あんたたちがいるから化け物が来るんだ!」と叫び、石を投げつけた。痣を作り血を流しながら、深夜の公園に逃げ込んだ深紅と真白。真白は声もなく涙をこぼし、深紅は怒りに震える。
そんな心の隙間に、変身アイテムから甘い声が囁きかける。
「辛いだろう。正義なんて捨てろ。俺が解放してやる」
それはアイテムに宿る闇の精霊・ノワール。契約者の絶望を味わい、闇の快楽へと導く、光の精霊の裏の顔だった。深紅は最初こそ拒むが、日々のSNSでの中傷、マスコミの魔女狩り、何より救った人々からの裏切りが彼女の精神を削っていく。そしてついに、ノワールの誘惑に膝を折った。
堕ちた彼女の身体は淫らな闇の光に包まれ、胸元
闇堕ちプリキュア・エクリプス —楽園狂宴— - 永遠の狂宴、紫の夜明け
――決定的な夜だった。
世界が、もう後戻りできない場所へと落ちていく夜。
キサラギスカイタワーの螺旋は、紫の空へ向けて静かに脈動を続けている。かつてはガラスと鉄骨でできていたそれは、今は巨大な生きた角のようにうねり、頂上の「愉悦の玉座」からは甘い腐敗臭が風に乗って街へと降り注いでいた。
玉座の上で、深紅は真白を自分の膝の上に引き寄せた。
後ろから、完全に包み込むように。深紅の腕が真白の腰に回され、胸と背中がぴたりと重なる。深紅の燃えるような紅い髪が、真白の漆黒の髪と混ざり合い、どちらのものかわからなくなった。
深紅の唇が、真白の首筋に触れる。
熱い。
「お前の中に、今から私の全部を流し込む」
低く、甘い声。サディスティックな愉悦が紫の瞳の奥で揺らめいている。深紅は真白の耳元に唇を押しつけたまま、意識の回路を意図的に全開放した。
――その瞬間。
真白の全身を、深紅の記憶が貫いた。
深紅が初めてプリキュアとして覚醒した夜の、心臓が張り裂けそうな高揚感。最初のノロイを倒したときの、正義の味方になれたという純粋な誇り。そして、真白と初めて出会った日の、世界が色づいたような歓び。
それだけじゃない。深紅の怒りも、憎しみも、今はすべて流れ込んでくる。
石を投げられたときの、背中の痛みよりも深く胸を刺した屈辱。SNSで「人殺し」と書かれたときの、喉の奥が焼けるような怒り。家の壁に「消えろ」とスプレーで落書きされた朝の、絶望の味。
全部だ。深紅のすべてが、真白の内側に直接、まるで自分の記憶のように染み込んでいく。
「あ……ああ……」
真白の唇から、かすかな声が漏れた。自分の輪郭が溶けていく。どこまでが自分で、どこからが深紅なのか、もうわからない。ただ、深紅の熱が全身を満たしていく陶酔だけがあった。
深紅は真白の肩口に顔を埋めたまま、更に深く意識の層へと潜り込む。
「お前の全部が俺のものだ。俺の全部がお前のものだ。それが――永遠だ」
刻み込むような声。
真白は震える手を、深紅の腕に重ねた。握り締める。自分の感情を、意識の回路に乗せて深紅に返す。言葉はいらない。
(世界などいらない。深紅だけでいい。ずっと、このままでいたい)
純粋な依存の塊が、深紅の内側へと流れ込んでいく。
二人の感情が反響し合い、増幅する。
その瞬間――玉座の周囲の歪みが、激しく脈動した。
ドクン。
空気が震える。
ドクン、ドクン。
脈動が波紋となって広がり、キサラギシティ全域に向けて巨大な歪曲の波動が放出されていく。それは二人が意図したものではなかった。ただ純粋に、互いを求める感情の強度が、世界の理を根本から書き換えるだけの力を帯びてしまったのだ。
空が、恒久的な紫色に染まっていく。
太陽の光が遮断され、街全体が薄暗い紫の薄明かりに包まれた。残っていた正常なビル群が、一斉に生体化を始める。コンクリートの壁面がぐにゃりと歪み、脈打ち、窓という窓が意思を持った口のように開閉を繰り返した。
道路網も変わった。
アスファルトが裂け、そこから無数の黒い触手が噴き出す。太く、ぬらぬらと光る触手は、絡み合いながら街路を埋め尽くし、有機的な迷宮へと変貌させていく。
そして――最も恐ろしいことが起きた。
蓄積されていた負の感情の塊が、一斉に実体化したのだ。
人々の恐怖、絶望、苦痛。それらが形を成し、歪曲ノロイとなって市内各所に出現する。不定形の影のようなもの、獣の形をしたもの、人間の泣き顔を貼り付けたもの――無数のノロイが徘徊を始めた。
「これが……私たちの世界なのね」
真白は玉座の上から、変わり果てた街を見下ろした。触手を通じて、市内に残留していた市民たちの恐怖と絶望が、真白の内側に一斉に流れ込んでくる。
冷たい。苦しい。息ができない。
おびただしい他者の苦痛。
でも――それと同時に、深紅の意識も流れ込んでいた。深紅の満足、深紅の支配欲、深紅の快楽。それらが恐怖を包み込み、歪んだ充足へと変えていく。
(怖くない。深紅がいるから)
真白は目を閉じた。
キサラギシティは今この瞬間、二人の感情が法則となる完全な異界――混沌の楽園として完成したのだ。
* * *
スザク工業地区の廃工場。
旧サカキ金属精錬所の地下作戦室は、重苦しい沈黙に包まれていた。
壁に張られた簡易結界が、かすかに軋む音を立てている。外からは歪曲ノロイの気配が近づく振動が伝わり、天井の蛍光灯が微かに揺れていた。
瑠璃は一人、粗末な机の前に座っていた。
机の上には双眼鏡。ついさっきまで、黒崎鉄也が座っていた椅子は空っぽだ。彼はシンワシティへと向かう車を出したばかりだった。
瑠璃の左手首で、淡い光のアザが疼いている。
右のこめかみから首筋にかけての光の筋も、かすかに点滅を繰り返していた。精霊の接触は続いている。でも――完全な変身には至らない。
瑠璃は左手首を右手で強く握り締めた。
意志を込めて、光を引き出そうとする。しかし光は弱く揺れるだけ。指の隙間から漏れる白い輝きは、すぐにしぼんでしまう。
「……なんでだよ」
震える声。体育会系の崩した敬語が、今はただの弱音に変わっている。
第6話――深紅の歪曲に浄化の光を消された、あの瞬間。
衝撃が、精霊との最後の接続を塞いでいた。でもそれだけじゃない。瑠璃は自分でわかっていた。
力が足りないんじゃない。
真白の微笑み――あの、純粋な幸福の表情。
(先輩は……幸せそうだった)
それが、戦う根拠そのものを揺るがしている。
瑠璃は壁に背を預けて、ゆっくりと床に座り込んだ。ミントグリーンのウルフカットが、汗で額に張り付いている。目の下の隈は、ここ数日の眠れない夜をそのまま刻み込んだようだった。
「取り戻したい。絶対に……取り戻したいんだ」
声がかすれる。
「でも……先輩は幸せそうだった。あれが偽物だって、あたしは言えねえ」
先輩を取り戻したいという執念は、先輩が不幸だという前提の上に立っていた。しかし、先輩は幸せそうに笑っていた。その矛盾が、精霊との回路を塞いでいる。
瑠璃は涙も出ないまま、天井を見上げた。
力で倒すんじゃない。別の何かが必要だ。
でも、その「何か」がわからない。
ただ、左手首の光だけが、諦めるなと言うようにトクトクと脈打っていた。
「……諦めない。絶対に」
唇だけで、口癖を動かす。
それが今の、瑠璃にできる精一杯の抵抗だった。
* * *
市の異界化が落ち着いた夜明け前。
紫の空が、わずかに白み始める。しかし太陽の光は届かない。ただ紫の濃度が薄まるだけだ。
玉座の上で、深紅は真白を横たえた。
そして、その上に覆いかぶさる。深紅の両手が真白の両手首を掴み、頭上でひとつにまとめて押さえ込んだ。
「動くな」
命令ではない。もっと甘い、支配の宣言だった。
深紅は共有意識の回路を使って、真白の感覚の全てを自分の制御下に置いた。真白が見るもの、聞くもの、肌で感じるもの――すべてを深紅が掌握する。
真白は身動きを奪われながらも、抵抗しなかった。
それどころか、深紅の重みと意識の支配に全身を委ねて、細く息を吐く。
深紅の唇が、真白の首筋に押しつけられた。鎖骨へと、ゆっくりと下りていく。熱い吐息が肌を舐めるたび、真白の身体が小さく震えた。
「お前は俺のものだ」
言葉が、意識の回路を通じて真白の骨の内側に直接刻み込まれる。
「この世界で唯一、俺だけのものだ」
更に深く。
真白の胸の奥で、深紅の声が反響する。まるで自分の一部になったみたいに。いや――もう、自分と深紅の境界はとっくに溶けていた。
「はい……あなたのものです」
真白は細い声で応え、深紅の背中に爪を立てて引き寄せた。
深紅が支配の快楽を全解放した瞬間、真白も同時にその快楽を自分のものとして受け取る。融合体の特性――与える側と受け取る側が完全に逆転し続ける、ループ状の官能の渦。
深紅の手が真白の身体をまさぐる。闇堕ちして漆黒に染まった変身衣装の上から、胸の膨らみをゆっくりと揉みしだく。真白の口から熱い吐息が漏れた。
「感じているな。俺の快楽が、お前の中に流れているのがわかるだろう」
「ええ……深紅の感じていることが、私の感じていることになるの……あぁっ」
深紅の指が真白の衣装の合わせ目を開き、露わになった乳房に直接触れる。指先が乳首をかすめると、真白の背中が弓なりにしなった。深紅の意識が、その快感を増幅して真白に返す。
「もっとだ。お前の全部を俺に寄越せ」
深紅は真白の下肢に手を伸ばした。太腿の内側を撫で上げ、秘所へと指を滑り込ませる。真白はもうぐっしょりと濡れていた。愛液が太腿を伝い、玉座の黒曜石の表面に染みを作る。
「ここまで濡らして……俺のことを考えていたのか」
「はい……ずっと、深紅のことだけを……んぁっ」
深紅の指が膣内に侵入する。ゆっくりと、しかし確実に奥まで押し込まれ、真白の内壁がそれを締め付けた。深紅は指を抜き差ししながら、真白の反応を楽しむ。
「奥がいいか。ここがそうだな」
「あっ、ああっ……そこ、奥……いやぁっ」
深紅は指を引き抜くと、今度は自分の衣装をはだけさせた。硬く勃起したペニスが露わになる。闇堕ちと同時に獲得した、この支配のための器官。深紅は真白の両脚を大きく開かせ、その間に体を割り込ませた。
「入れるぞ。お前の一番奥に、俺を刻み込む」
「きて……あなたので、私の全部を満たして……」
深紅は腰を進めた。亀頭が真白の膣口に当たる。ぬるぬるとした愛液がそれを迎え入れ、深紅は一気に奥まで押し込んだ。
「あああっ……!!」
真白の全身が大きく痙攣した。深紅のペニスが膣内を満たし、奥の子宮口にまで届く。深紅は動きを止めず、すぐに腰を打ちつけ始めた。
「俺の形がわかるか。お前の中に、俺がいる」
「はい、はい……深紅が、中に……あぁっ、激しく……!」
深紅のピストンが速くなる。真白の腰が浮き、深紅を受け入れるたびに淫らな水音が玉座の上に響いた。深紅は真白の両脚を抱え直し、更に深く突き入れる。
「イけ。俺と一緒に……俺の快楽を受け取って、一緒にイくんだ」
「ああっ……イく、イっちゃう……深紅と一緒にぃっ……!!」
深紅は最後の一突きを奥深くに叩き込み、熱い精液を膣内に放った。どくどくと注がれるザーメンの感覚に、真白も同時に絶頂を迎える。膣が激しく痙攣し、深紅のペニスを締め付けた。
二人の絶頂が、意識の回路で反響し合い、無限に増幅されていく。
真白の自我は、これまで以上に深紅の意識と不可分に絡み合い、深紅なしでは自己を認識できない依存の深さに到達した。
かつての真白――正義を信じた少女――は、この瞬間に完全に消滅した。
* * *
紫の空が、ゆっくりと夜明けの光を滲ませ始めた頃。
玉座の傍らの虚空が、静かに歪んだ。
まず異様に長い指先が現れ、次に漆黒の長髪、深い紅い瞳――ノワールが、音もなく顕現した。背中まで届く長い黒髪は、前髪が右目を完全に隠し、残った左目だけが覗く。その瞳は、光を吸い込むかのように暗く、今は何かを見定めるように細められていた。
深紅と真白は、互いに寄り添いながら眠りに落ちている。深紅の腕が真白の腰に回され、真白は深紅の胸に顔を埋めていた。
ノワールは二人を見下ろし、それから――珍しく、誰にも語りかけず、独り言のように言葉を紡いだ。
「これだけの負の感情が蓄積されれば……十分だ」
彼は両手を広げ、キサラギシティ全域から立ち上る恐怖と絶望と苦痛の総量を受け取るような仕草をした。長く艶めかしい指が、紫の空気を撫でる。
「あれを引き出すのに、ちょうどいい燃料だよ」
ノワールの瞳の奥に、深紅と真白の陶酔への満足とは明らかに異質な、より深い計算の光が揺れる。
彼が見ているのは、二人ではない。
二人が生み出し続けるノロイの群れであり、その群れが積み上げる負の感情の総量であり、その総量が臨界点に達した時に呼び覚まされる――別の何か。
ノワールはキサラギシティの紫の夜空を見上げ、口の端をわずかに持ち上げた。
「お前たちは最高の燃料だ。私の……真の目的のための、ね」
それは、眠る二人には絶対に届かない声量だった。
* * *
シンワシティへと向かう一本道。
夜明け前の闇の中を、黒崎鉄也の運転する四駆が疾走していた。ヘッドライトが、歪みの影響でわずかに曲がった道路を照らし出す。
助手席のノートパソコンに、新しいデータが届く。衛星から撮影された最新の画像だ。
黒崎はちらりと画面を見た。
キサラギシティを中心に、歪みの境界線がハルミ市を越え、アキツ市方向へと静かに、しかし確実に拡大していく様子が映し出されている。紫色に染まった地域は、まるで生き物のように脈動しながら、その範囲を広げていた。
黒崎の茶色い目が、無表情のままデータをスキャンする。
事態は、自分の想定を大きく超えている。
「……時間がないな」
短く呟き、アクセルを踏み込んだ。
エンジン音が夜闇に響き、車はシンワシティへと速度を上げていく。その後ろで、紫の空がゆっくりと、しかし確実に東へと侵食を続けていた。Noveliaとは?
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