リムルのとなりで、君は泣いて、そして笑う
いつもみんなを引っ張る気の強い女・シュナには、リムルの前でだけ見せる秘密の顔があった。普段の強気な態度は、彼の役に立ちたいがために作った仮の姿。
ある日、ほんの小さな傷をきっかけにリムルはシュナの部屋を訪れる。しかし、二人きりになった途端、シュナは大粒の涙をこぼしてしまう。「リムル様の前だと、私、どうしても抑えられなくなるんです」。それは彼女の特別な告白だった。
ずっと痛みをこらえ、弱さを見せまいとしてきたシュナ。リムルは優しく彼女を抱きしめ、髪を撫で、戦いで溜め込んだストレスを解放するように、二人の身体は深く求め合う。その夜、シュナは初めての痛みと、それ以上の甘い悦びを知る。
しかし、それは秘密の恋の始まりだった。毎夜のように逢瀬を重ねながら、人前ではこれまで通りの主従関係を演じる日々。それが少しずつ、シュナの心を蝕んでいく。
そんなある夕暮れ、リムルの部屋から出てきたベニマルとソウエイの姿を目撃してしまうシュナ。問い詰める彼女に、「特別なのはお前だけだ、シュナ」と言うリムル。それでも拭えない不安。そこへ、シュナを心配したシオンが現れ、泣きじゃくるシュナを抱きしめながら、自分
リムルのとなりで、君は泣いて、そして笑う - 宴会の兄と夜の懇願~私だけを見てと言えた夜~
あの夜から、一週間。
セントラルオフィスの地下にある大食堂は、今日も馬鹿騒ぎの渦だった。
「はっはっは!酒だ酒!もっと持ってこい!」
逆立った紅蓮の髪を揺らし、金色の鋭い瞳をギラつかせた大男が、席にどっかりと腰を下ろした。燃え盛る炎のようなその髪が、食堂の薄暗い照明に照らされて揺らめいて見える。テンペスト軍総司令官、ベニマルだ。隣に座っていたシュナは、彼のあまりの豪快さに思わずため息をついた。
「ベニマル、少しは静かにできませんか」
シュナは手にした杯を口元に運んだが、酒はほんの少しだけ唇を濡らしたに過ぎなかった。腰まである艷やかな黒髪を、今日は赤い組み紐で一つに束ねている。いつもの執務中と変わらぬ、凛とした空気を纏っていた。
ベニマルが杯を傾けながら、横目でシュナをじっと見た。
「シュナ、最近目の下がやばいぞ」
直球だった。
「業務が多忙なだけです。ご心配なく」
シュナは淡々と返した。切れ長の藤色の瞳が、少しだけ強張る。
ベニマルは杯をドンと机に置いた。その音が、周囲の喧騒に紛れて消える。
「顔色が死人みてえだ」
シュナの指先が、かすかに震えた。
(リムル様のことを……夜のことを、知られたのか)
頭の中で警鐘が鳴り響く。しかし、彼女はシュナだ。テンペストの完璧な参謀だ。
「執務が立て込んでおりますので。幹部の皆様にご迷惑をおかけするわけにはいきません」
ベニマルはしばらく無言でシュナを見つめていた。ギラギラとした金色の瞳が、まるで彼女の心の奥底を覗き込むようだった。
「お前が無理してる時は、いつもそう言う」
低い声だった。
「俺が言ってんのは仕事の話じゃねえ」
シュナは言葉を失った。何も言えず、ただ手にした杯を見つめる。酒の水面に、自分の顔が歪んで映っていた。
ベニマルは杯をあおり、一息に酒を飲み干した。
「言いたいことがあるなら、俺は聞くぞ。別に今じゃなくていい」
それだけ言い残すと、彼は新しい酒を求めて席を立った。
シュナは一人、宴会の喧騒の中に取り残される。
(言いたいこと……)
リムル様への想いも、夜の秘密も、全部胸の奥に押し込めて蓋をした。言えるわけがない。でも——誰かに言いたかった。その気持ちが、胸の奥でじわりと滲んでくる。
──
宴会が中盤に差し掛かった頃だ。
「リムル様!リムル様のために特別に煮込みました!」
シオンが満面の笑顔で差し出したのは、小皿に乗った黒い物体だった。豊かな紫色の長髪を揺らし、意志の強い赤紫色の大きな瞳がキラキラと輝いている。
その物体は——漆黒だった。そして表面に蛍光がかった膜が張り、微かにブクブクと動いている。
食堂が、水を打ったように静まり返った。
「シオン、それ何の動物だ……?」
ベニマルが青ざめて一歩後退る。
物陰から、無言でソウエイが姿を現した。彼は無表情のまま、その小皿とリムルの間に立ちはだかる。金色の縦スリットの瞳が、危険物を見るように細められた。
ハクロウが白い顎鬚を撫でながら、慎重に箸でその物体をつついた。
「む、動いておる」
瞬間、全員が一斉に椅子を引いた。
「愛情が光ってるんです!触ったらちょっとヌルヌルしますけど、愛情ですから!」
シオンは全くめげずに言い放つ。
リムルが引き攣った笑いを浮かべた。
「いや、愛情が発光するのはちょっと怖いかな……」
周囲の全員が凍りつく中、ベニマルがこっそりとリムルに耳打ちした。
「これに比べりゃ、シュナの作る飯が神に見えるな」
それを聞いた瞬間、シュナは思わず吹き出してしまった。
「ふっ……」
口元を抑えたが、遅かった。
「あっ!シュナさんが笑った!珍しい!」
シオンが指を差す。全員の視線が、一気にシュナに集まった。
シュナは慌てた。顔が少し熱くなる。
「何でもありません。……べ、別に」
凛とした参謀の仮面が、ほんの一瞬だが剥がれ落ちた。その隙間から覗いた素顔は、年相応の少女のようだった。
でも——その一瞬だけ、胸に重くのしかかっていた緊張が、ふわりと溶けていた。
──
宴会が終わったのは、深夜だった。
紅蓮館の二階、奥まった角部屋。シュナは寝間着に着替えて、窓辺に立っていた。月明かりが部屋に差し込む。机の上には整然と書類が並べられ、窓辺にはリムルから贈られた小さな観葉植物が置いてある。
外から足音が聞こえた。
シュナの心臓が、ドキリと跳ねる。
(リムル様だ)
もう、足音だけでわかる。ノックの前に、シュナはドアを開けた。
「待ってたのか」
リムルは少し驚いたように微笑んだ。
シュナは何も言わず、ただリムルの胸に額をそっとつけた。前髪の奥に隠した小さな角が、リムルの服に触れる。角を隠したいという彼女のコンプレックスも、リムルの前だけは溶けていく。
「どうした、宴会疲れか」
シュナは静かに首を振る。そして、リムルの服の裾を掴むと、そのままベッドへと誘った。
今夜のシュナは、いつもと違った。
積極的でも情熱的でもなく、どこか縋るような動きだった。その瞳は何かを必死に求めて、リムルを見つめている。
リムルがシュナの肩、鎖骨、そして胸元へと唇を落としていく。
「んっ……」
寝間着の合わせ目が解かれて、リムルの指が素肌に触れた。触れられるたびに、シュナの身体がかすかに震える。
リムルの舌が、シュナの乳首を優しく転がす。
「あっ……リムル様」
シュナは自分から腰を預け、脚を開いた。その仕草は、前の三回よりもずっと素直だった。でも——どこか必死で、まるで何かに追い詰められているかのようでもあった。
リムルの指が、シュナの下腹部をなぞる。そこはもう、とろりと濡れていた。指先が秘所に触れると、ぐちゅりと小さな音が立つ。
「シュナ、すごく濡れてる」
リムルの囁きに、シュナの理性が溶けていく。
リムルが、硬くそそり立ったペニスをシュナのまんこにあてがった。先端が、とろりとした愛液で濡れた入り口に触れる。
「入れるぞ」
「はい……来て、リムル様」
ずぶり、と熱いものが入ってくる。
「んああぁっ……!」
深く満たされる感覚が、シュナの全身を貫いた。膣がリムルのペニスをぎゅっと締め付ける。二人の息遣いが、静かな部屋に響いた。
リムルの腰が動き始める。
ゆっくりと、しかし確実に奥まで。
「はっ……ああっ……リムル様、リムル様ぁ……」
シュナは天井を見上げながら、声を漏らした。快楽が次第に高まっていく。膣の内側を擦られるたびに、背筋がゾクゾクと震える。自分でも、腰が自然に動いてしまう。
もっと奥まで。もっと深く。
ベニマルの言葉も、シオンに笑いを見られた恥ずかしさも、三話で答えを聞けなかった夜のことも——全部、頭の中に残ったままだった。
でも今は。
今だけは。
「リムル様……」
シュナは、リムルの背中に両腕を回した。
「私だけを……見ていてください」
初めて、声に出して懇願した。
自分の声が震えているのがわかった。でも、止められなかった。
三話で問えなかった問いよりも、もっと切実な願いだった。
リムルの動きが、一瞬止まる。
そして。
「わかってる。お前だけだ」
リムルはシュナの腰に手を回し、深く、深く動いた。
「あああぁっ……!!」
シュナの身体が、大きな痙攣に襲われる。
リムルのペニスが奥まで突き上げられ、膣がぎゅうっと締まった。その瞬間、リムルの熱いザーメンが、どくどくと膣内に注ぎ込まれるのを感じた。白濁液が奥を満たしていく感覚に、シュナの全身が震える。
「あっ……あっ……リムル様の、中に……」
快楽の波が、頭のてっぺんから爪先までを駆け抜けていった。
──
絶頂の後。
リムルの腕の中で、シュナは天井を見つめていた。リムルの呼吸は深くなり、やがて規則正しい寝息に変わる。
部屋が静まり返る。
(私だけ……)
さっきもらった言葉を、頭の中で繰り返した。確かにリムルは「お前だけだ」と言った。
でも——なぜだろう。
胸の奥に、満たされていない何かが、まだ沈んでいる。それはまるで、重たい石のようにシュナの胸の底に居座っている。
(「私だけ」という言葉は、いつまで本当なのか)
声に出せない問いを抱えたまま、シュナはゆっくりと目を閉じた。
──
夜明け前。
リムルが静かに身体を起こし、音もなく服を着る。去り際に、一度だけシュナの髪を撫でた。
ドアが閉まる音。
シュナは眠れないまま窓辺に座り、庭の朝露を眺めた。夜露に濡れた草木が、薄明かりの中でキラキラと光っている。
「私だけ、ですか……」
誰もいない部屋で、小さく呟いた。答えが返ってくることはない。
──
朝の廊下。
紅蓮館を出て、セントラルオフィスへ向かう途中だ。
「昨夜ちゃんと休めたか」
ベニマルがいつの間にか隣を歩いていた。彼は短く問いかけるだけで、それ以上は何も言わない。
「ええ。大丈夫です」
シュナが短く返すと、ベニマルは満足そうに小さく鼻を鳴らした。
「宴会の後片付け、ゲルドに頼んどいたから。今日は無理するな」
それだけ言い置くと、彼は大股で歩き去っていく。その広い背中を見送りながら、シュナは思った。
(ベニマルに打ち明けたら……少しは楽になれるだろうか)
そんな考えが、一瞬だけ頭をよぎった。
「おはようございます、シュナさん」
背後から声がした。
振り返ると、シオンが立っている。いつもの元気な笑顔ではなく、どこか静かな表情だった。
「昨夜、答えはもらえましたか」
それは、三話の中庭で交わした問いの続きだった。
シュナの足が止まる。
(答え……)
言葉が出てこなかった。
シオンはそんなシュナの沈黙をじっと見つめていたが、やがて小さく微笑んだ。
「私もまだ、もらえてないです」
それだけ言うと、彼女はシュナの横を通り過ぎていく。
一人、廊下に残されたシュナは、その場に立ち尽くした。
(もらえた。もらえたはずなのに——)
でも、胸の奥の重石は、まだそこにある。
ふと顔を上げると、廊下の窓から、セントラルオフィスの棟が見えた。リムルの執務室がある三階の窓には、まだ明かりが点いている。
(ああ……まただ)
満たされていない。もらったはずの言葉が、なぜか胸の奥まで届かずに、宙に浮いている。
シュナは、小さく息をついた。
胸の不安が、一段と大きくなる予感がした。
その夜。
深夜のセントラルオフィス。誰もいないはずの廊下で、かすかな足音が響いた。執務室から出てくる一つの人影が、月明かりに一瞬だけ照らし出される——。Noveliaとは?
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