リムルのとなりで、君は泣いて、そして笑う
いつもみんなを引っ張る気の強い女・シュナには、リムルの前でだけ見せる秘密の顔があった。普段の強気な態度は、彼の役に立ちたいがために作った仮の姿。
ある日、ほんの小さな傷をきっかけにリムルはシュナの部屋を訪れる。しかし、二人きりになった途端、シュナは大粒の涙をこぼしてしまう。「リムル様の前だと、私、どうしても抑えられなくなるんです」。それは彼女の特別な告白だった。
ずっと痛みをこらえ、弱さを見せまいとしてきたシュナ。リムルは優しく彼女を抱きしめ、髪を撫で、戦いで溜め込んだストレスを解放するように、二人の身体は深く求め合う。その夜、シュナは初めての痛みと、それ以上の甘い悦びを知る。
しかし、それは秘密の恋の始まりだった。毎夜のように逢瀬を重ねながら、人前ではこれまで通りの主従関係を演じる日々。それが少しずつ、シュナの心を蝕んでいく。
そんなある夕暮れ、リムルの部屋から出てきたベニマルとソウエイの姿を目撃してしまうシュナ。問い詰める彼女に、「特別なのはお前だけだ、シュナ」と言うリムル。それでも拭えない不安。そこへ、シュナを心配したシオンが現れ、泣きじゃくるシュナを抱きしめながら、自分
リムルのとなりで、君は泣いて、そして笑う - 影の守護者と、最後の決断~ソウエイの告白と四角関係の嵐~
夜明けの冷たい空気が、廊下の石畳をじんわりと冷やしていた。
二人は並んで座り込んでいた。シュナはぐちゃぐちゃに泣き腫らした顔を膝にうずめ、シオンはそんな彼女の肩にそっと手を置いて、もう何時間もそうしている。第五話の激情と涙が乾いた跡が、二人の頬に白く残っていた。
その時だった。
気配もなく、ソウエイが目の前に立っていた。深い藍色の髪が、朝の気配を含んだ風にほとんど揺れない。爬虫類を思わせる金色の縦スリットの瞳が、無表情のまま二人を見下ろしていた。
「ひゃっ!?」
シオンが飛び上がる。シュナもはっとして顔を上げた。
「お前たちが騒いでいた理由は、把握している」
ソウエイは壁に背を預けたまま、前置きもなく淡々と言った。
「どういうことですか」
シュナの声は掠れていた。それでも、いつもの凛とした参謀の仮面を必死にかぶろうとしている。
「情報管理課の権限だ」
テンペストの諜報・防諜組織、シークレットサービスのことだ。ソウエイはその統括者だった。セントラルオフィスの地下二階にある本部で、都市中の異常を監視している。
「第一話の夜から、シュナとリムルの密会を察知していた。直後に防諜網を展開。外部への記録漏洩を全て遮断した」
シュナの呼吸が止まった。
知られていた。最初から。あの夜からずっと。しかもソウエイは、ただ見ていただけじゃない。彼の組織を使って、リムルとシュナの秘密の夜を守っていたというのか。
「なぜ、今まで黙っていたんですか」
問い詰める声が、震えた。
「お前が自分で気づく必要があったからだ」
短い返答。金色の瞳孔が、微動だにしない。
「昨夜、ベニマルと共にセントラルオフィスを訪れたのは、リムル様がシュナとの関係を正式に公表すべきかどうか、俺たちに意見を求めていたからだ」
続いた言葉に、シュナの全身から力が抜けた。石畳の冷たさが、急に強くなる。
違った。裏切られたわけじゃない。秘密にされたわけじゃ、なかった。
リムルはあの夜、ベニマルとソウエイを呼んで——シュナのことを、話し合っていた。どうすれば、シュナが傷つかずに済むか。正式な恋人として、表に出しても大丈夫か。そんなことを、二人に相談していた。
昨日までシュナの胸を焼いていた嫉妬の炎の根拠が、砂のように崩れ去っていく。張り詰めていた緊張が、堰を切って溶け出した。
「ぅ、あ……」
膝から力が抜けた。石畳に座り込んだまま、両手で顔を覆う。今度は怒りでも絶望でもない。安堵の、涙だった。声を殺して、肩を震わせる。
「……よかったじゃないですか、シュナさん」
シオンが隣に座り直し、いつもの大きな声ではなく、びっくりするくらい静かな声で言った。その赤紫色の大きな瞳も、うっすらと潤んでいる。
「はい……はいぃ……」
涙で声がぐちゃぐちゃになりながらも、シュナは何度も頷いた。
しばらく、廊下にはシュナの小さな嗚咽と、夜明けの鳥の声だけが響いていた。
だが。
「ただし」
ソウエイが口を開いた。
シュナが涙を拭い、顔を上げる。シオンも首を傾げた。
「俺もリムル様に対して、通常の主従関係を超えた感情を抱いている。先に言っておく必要があると考えた」
廊下に、三秒の完全な沈黙が落ちた。
「……え?」
シオンの口が、ぽかんと開く。
「あなた、まさか……!」
涙が、一瞬で止まった。
「私はリムル様を愛しています!大好きです!誰にも負けません!」
シオンが立ち上がって叫び、シュナも震える足で立ち上がる。そして、二人は同時にソウエイを指差した。
「だったら全員ライバルじゃないですか!!」
「あ、あなたまでリムル様を……!」
その時、ドタドタと大きな足音が近づいてきた。
「なんだなんだ、朝っぱらから騒がしいぞ!?」
逆立った紅蓮の髪を揺らし、ベニマルが廊下に顔を出す。手にはなぜか酒瓶を持っている。朝から飲む気満々だ。
「ベニマルさん!ソウエイさんもリムル様のことが好きだそうです!」
シオンが指を突きつけて報告する。ベニマルは一瞬固まった。
「はあ!?ソウエイ、お前……マジかよ」
「マジだ。俺も好きだ」
無表情のまま淡々と認める。
ベニマルが頭をガシガシ掻いた。
「いや、俺は別にそういうんじゃ……ないが……」
「顔が赤いじゃないですか!」
シオンが指をさす。ベニマルの頬は、確かにほんのり赤い。
「うるせえ!兄貴みたいな感情だって言ってんだろ!」
「兄貴みたいな感情で、顔が真っ赤になるんですね」
思わず、シュナの口から皮肉が漏れた。
「シュナ、てめぇまで……!」
廊下が、一気に修羅場と化した。泣きじゃくっていたシュナ、叫ぶシオン、無表情で追い打ちをかけるソウエイ、真っ赤になって否定すればするほど怪しいベニマル。四角関係の公式化である。
しかし、混乱が少しだけ落ち着きを取り戻した頃、ソウエイがもう一つ、と切り出した。
「シュナ、お前に渡すものがある」
彼は懐から、淡く光る小さな魔石を取り出した。聴音の魔石だ。情報管理課がリムルシティ中に設置している監視網の記録媒体である。
「第一話以降の夜間記録が全てここにある。リムル様とお前の夜の記録が、一度も外部に漏れていない証拠だ」
シュナの胸が、じわっと熱くなった。
単なる防諜活動——そう言ってしまえばそれまでだ。でも、これはソウエイが誰にも言わず、一人で守り続けてきたものだ。リムルのため、そしてシュナのため。
「リムル様はこの数日、ずっと考えていた。お前との関係をどう公表すべきかを。昨夜はその決断を、俺たちに相談していただけだ」
リムルがベニマルとソウエイを呼んでいたのは、自分のことを真剣に考えていたからだった。その事実が、胸の奥の冷えきった石のかけらを、溶かし始める。
「……リムル様、シュナさんのこと、そんなに考えてたんですね」
シオンがぽつりと言った。その声には、いつもの強烈なまでの明るさはない。代わりに、なんだかしみじみとした優しさがあった。
「まあ、リムルらしいっちゃらしいな」
ベニマルが頭を掻きながら、短くそう言う。
シュナは震える手で魔石を受け取った。目が、もう一度潤む。でも今度の涙は、さっきよりもずっと温かかった。
その時、ソウエイがおもむろに懐から何かを取り出した。
猫のぬいぐるみだった。
ふわふわの白い猫。無表情のまま、それを優しく撫で始める。
「ソウエイさん、なんで今それを出すんですか!!」
シオンが叫ぶ。緊張が張り詰めていた修羅場の空気が、一瞬にして脱力した。ラブコメの神は、やはりソウエイの味方をしているらしい。
「落ち着く」
「知るか!」
ベニマルが吹き出した。シュナも、思わず口元が緩む。
廊下に、乾いた笑い声が小さく響いた。
──
騒動が一段落した後、シュナは泣き腫らした目のまま、三人を順番に見渡した。シオン、ベニマル、そして猫のぬいぐるみを撫でるソウエイ。
皆、リムルに特別な感情を持っている。リムルも、シュナのことを考えてくれている。昨夜の決断も、その延長線上にある。
でも——まだ、終わっていない。
「私、逃げません」
静かな声が、廊下に落ちた。
「どういうことですか?」
「リムル様に、直接聞きます」
シュナは、地面をしっかりと踏みしめるようにして立った。
「皆の前でも、私を恋人として見てくれるのかどうか——それを、リムル様に問います」
「それ、最後通告じゃないですか!?」
シオンが目を剥く。ベニマルが、真顔になった。
「お前、本当にやるのか」
シュナは頷いた。ソウエイの撫でる手が、ピタリと止まる。金色の瞳が、静かにシュナを見つめていた。
震えそうになる手を、ぎゅっと握りしめる。
(私は、リムル様の特別になりたい)
(他の誰かじゃなく——私が)
夜が完全に明け、朝の光が廊下の石畳に長く差し込んでいた。シュナの藤色の瞳には、昨夜までの迷いや嫉妬とは違う、硬質な決意の光が宿っている。
この言葉を、リムルに届ける。
それは、まだこれからの話だ。
──
その夜。
シュナは紅蓮館の自室で、明かりをつけたまま、机の前に座っていた。机の上には、ソウエイにもらった魔石が置いてある。リムルが、自分のことを真剣に考えていた証。
窓の外には、セントラルオフィスの三階の灯り。
ノックの音がした。
「シュナ、いるか」
シュナは立ち上がり、ドアを開けた。リムルが、少しだけ心配そうな顔で立っている。
「昨日、お前を泣かせたまんまだったから、ずっと気になってた」
シュナは何も言わず、リムルを部屋に招き入れた。二人、ベッドに並んで腰掛ける。
「ソウエイから、全部聞きました」
シュナが短く言うと、リムルは少しだけ驚いたように眉を上げた。
「リムル様は、私のことをベニマルたちに相談していたんですって。関係をどうするか」
「……怒ってるか?」
「怒って、いません」
シュナは小さく首を振る。そして、彼の手にそっと自分の手を重ねた。怖がるな、自分。ただ、ありのままを伝えればいい。
「ただ、明日、ちゃんと話を聞いてください。大事な話です」
リムルは静かに頷き、シュナの手を握り返した。
それだけで、なんだかもう十分だった。
シュナから、そっとリムルの胸に額を預ける。沈黙の中で、リムルの胸の鼓動だけが、静かに耳に届く。
お互い、何も言わなかった。
代わりに、自然と身体が求め合った。リムルの手が、シュナの腰に回される。シュナは目を閉じ、リムルの胸に腕を回した。昨夜までの激情や不安、嫉妬——そんなものを吐き出すような激しい行為じゃない。ただ、優しく、互いの存在を確認するような、静かな官能だった。
服がはらりと床に落ちる。唇が重なり、指が素肌をたどる。リムルの口唇が、シュナの黒髪へと落とされる。そっと、角を隠す前髪を払いのけ、オーガの証である小さな二本の角に口づける。
「ん……」
シュナの、甘えたような小さな吐息。
リムルの指が、ゆっくりとシュナの胸元をなぞり、その先端を優しく摘まむ。
「あっ……」
体が、震えた。リムルが、硬くそそり立ったペニスをシュナのまんこにあてがう。とろりと濡れた入り口に、亀頭が吸い込まれるように沈む。
「リムル様……来て」
ずぶり。
熱いペニスが、シュナの膣をゆっくりと満たしていく。
「んあぁっ!」
シュナの背中がのけぞる。深く繋がった感覚に、全身の力が抜けた。リムルの腰が、優しく、しかし確実に奥まで動き始める。
「あっ、あっ……深い、ですぅ」
リムルの前でだけ見せる、甘えきった口調が自然と漏れた。膣内を擦られるたびに、頭の中が真っ白になって、何も考えられなくなる。快楽が、優しい波のように押し寄せては引き、また押し寄せる。
「ああっ、リムル様……もっと、奥に……」
リムルは応えるように、腰を深く打ちつけた。
「シュナ、お前が一番大事だ」
耳元で囁かれたその言葉が、シュナの全身を駆け抜け、絶頂を引き寄せる。
「ああぁぁっ……!!」
膣がぎゅうっとリムルのペニスを締め付け、その瞬間、熱いザーメンがどくどくと膣内に注ぎ込まれるのを感じた。白濁液が奥を満たしていく感覚に、全身が甘く痺れる。
そのまま、しばらく抱き合っていた。
「明日、話を聞くからな」
「……はい」
シュナは目を閉じたまま、小さく答えた。リムルの胸の中で、明日を迎えるための決意が、ひっそりと温められていく。
──
翌朝、リムルが部屋を去った後。
シュナは一人、窓辺に立っていた。握った拳には、昨日よりもずっと強い力が込められている。
今日、言うのだ。
「リムル様——皆の前でも、私をあなたの恋人として見てくれますか」
その言葉を、自分の口でリムルに届ける。
届けなければ、何も始まらない。
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