ニャターシャ・ニャンナーズ:ラストソングは猫のために
杉並区荻窪、築十八年のマンションの一室。登録者数二十八万人を誇る人気VTuber「ニャターシャ・ニャンナーズ」。その正体は、人付き合いが苦手でひとり暮らしをする、ごく普通の女性だった。
彼女の心の支えは、雨の夜に拾った三毛猫・もなか。たった一匹の家族であり、唯一の理解者。
ある夜の配信中、猫の殺処分ゼロを掲げる過激団体「キャットリベレーション」への何気ない軽口が、取り返しのつかない悲劇を招く。自宅住所の流出、そして翌朝――冷たくなったもなかの亡骸。
「猫の本当の声を聞かせてやる」
優しい声で視聴者に笑いかけていた配信者は、絶望のどん底で誓う。愛する家族を奪った者たちへの、静かな復讐を。
事務所の建前、ファンの心ない言葉、そして正体不明の組織の影。虚構のアバターの裏に隠された、ひとりの女の牙が今、剥き出しになる。
これは、涙と怒りを燃料に、失われた温もりを取り戻すための戦いの物語。
「ニャターシャ・ニャンナーズ」が、本当の声で歌う最後の歌(ラストソング)とは――。