ブルーロック 休日の謎解き騒動
突然の「休日宣言」に沸き立つブルーロック寮。隠されたメダルを見つければご褒美の食事、見逃せば地獄のトレーニング――そんな単純な餌に全選手が本気で動き出す中、潔世一は相棒・蜂楽廻とコンビを組んでメダル探しに挑む……はずだった。
しかし蜂楽はスマホをトイレに水没させ、千切豹馬は靴下の片方を、國神錬介はプロテインを三ミリ、御影玲王は凪との思い出が詰まった財布を、それぞれ謎の消失に見舞われる。偶然か、それとも寮に潜む何者かの仕業か?
休日の穏やかな空気の裏で囁かれる、小さな「なくしもの」たちの謎。世界一のストライカーを目指す男・潔世一の負けず嫌いな好奇心に、ついに火がついた。
メダル探し、そして寮を揺るがす珍事件の真相やいかに――クセ強すぎるエゴイストたちが繰り広げる、休日限定の爆笑ミステリーコメディ、ここに開幕!
ブルーロック 休日の謎解き騒動 - メダル貫く、王者の一手
朝の光が、本館四階の廊下に、細長く差し込んでいた。
空気は、まだ、ひんやりとしている。
潔世一は、凪誠士郎の部屋の前に、立っていた。
黒髪のショートヘア。少し跳ねたアホ毛が、朝の光の中で、ふわりと揺れる。茶色の瞳は、真っ直ぐに、ドアを見つめていた。
(ここだ)
(今日、すべてを、終わらせる)
昨夜、ラウンジで、蜂楽に言った言葉が、胸の中で、繰り返される。
『このメダルがなくても、俺は世界一になる』
あの言葉は、凪に、届いただろうか。
いや。
届いたかどうかは、関係ない。
あれは、俺自身の、覚悟だ。
潔は、拳を握りしめた。
その時。
「あれ、潔?」
後ろから、明るい声が、聞こえた。
振り返る。
金髪に黒のメッシュが入ったボサボサ髪。金色の瞳が、キラキラと、こちらを見ている。
蜂楽廻だ。
「なんで、ここにいるの? 凪の部屋の前で」
「お前こそ、なんで」
「だって、潔が、なんだか、すごい顔してるから。何か、やるんでしょ?」
蜂楽は、首を傾げた。
潔は、小さく、息を吐いた。
「ああ。やるんだ」
「やるって、何を?」
「凪に、言うんだ。俺の、本気を」
その言葉に、蜂楽の金色の瞳が、一瞬、大きく見開かれた。
そして、すぐに、にこっと、笑う。
「そっか! ついに、やるんだね! 僕、見てていい?」
「ああ。見てろ。俺の、本気を」
潔は、ドアの前に、向き直った。
深く、息を吸う。
胸の奥が、熱い。
(報酬なんかじゃない)
(夕食のためでもない)
(トレーニングを避けるためでもない)
(俺は、世界一のストライカーになる)
(そのために、今、この言葉を、言うんだ)
潔は、ドアを、強く、三回、叩いた。
コン、コン、コン。
静かな廊下に、音が、響く。
「……あー、うるさい。朝から、なに」
中から、低く、気の抜けた声が、聞こえてきた。
「開けろ、凪。俺だ」
「やだ。めんどい。寝る」
「開けろ。今すぐ」
潔の声は、低く、力強かった。
しばらくの沈黙。
やがて、ドアの向こうで、のろのろと、動く気配がした。
ガチャリ。
ドアが、開く。
白髪のふわふわした髪。寝癖が、あちこちに跳ねている。眠そうな水色の瞳が、潔を、じとっと見た。
凪誠士郎。
「……なに。朝から。本当に、めんどいんだけど」
「凪。聞け」
潔は、凪の目を、真っ直ぐに見た。
「このメダルが、なくても」
言葉を、区切る。
「俺は、世界一になる」
静かな、宣言だった。
叫びでも、怒りでもない。
ただ、事実を、告げるように。
自分の、心の奥底から、湧き上がる、確信を、そのまま、声にした。
凪は、動かなかった。
眠そうな水色の瞳が、潔を、じっと、見つめている。
蜂楽も、後ろで、黙って、見ていた。
廊下の空気が、張り詰める。
静かだ。
やがて、凪の、口元が、微かに、動いた。
「……それだ」
小さな、呟きだった。
「お前が、一番、本気だった」
凪は、ポケットから、何かを、取り出した。
金色の光が、朝の光を、反射して、きらりと、輝く。
メダルだ。
凪は、そのメダルを、潔に、投げて、よこした。
弧を描いて、飛んでくる。
潔は、反射的に、両手で、受け止めた。
ずしりと、重い。
いや、重くは、ない。
でも、その手に、確かな、重みを、感じた。
「やるよ。お前が、一番、本気だったから」
凪は、それだけ言うと、あくびを、一つ。
「……じゃあ、寝る。おやすみ」
バタン。
ドアが、閉まった。
潔は、手の中の、メダルを、見つめた。
金色の、光。
(俺は、本気を、認められた)
(凪に)
(一番、本気だったって)
胸の奥が、じわりと、熱くなった。
「やったじゃん、潔!」
蜂楽が、後ろから、ぽんと、潔の肩を、叩いた。
「凪が、潔の本気を、認めたんだよ! すごいよ!」
「……ああ」
潔は、メダルを、握りしめた。
「でも、これで、終わりじゃない。俺は、世界一になる。これから、もっと、本気を、見せていく」
「うん! 僕も、負けないよ! サッカーは、自由だしね!」
蜂楽は、にこにこと、笑った。
その時、階段の方から、足音が、聞こえてきた。
複数の、足音。
「おい、何を騒いでいる」
赤紫がかった黒髪をオールバックにした、鋭い赤い瞳の男。
馬狼照英が、階段を、上がってきた。
その後ろに、千切豹馬、國神錬介、御影玲王の姿も、見える。
「あ、馬狼。みんなも」
「潔。お前、凪の部屋の前で、何をしている」
馬狼が、尊大な口調で、尋ねた。
「凪に、メダルを、もらった」
潔は、手の中の、メダルを、見せた。
金色の光が、廊下に、きらめく。
「なに!?」
千切が、驚きの声を、上げた。
「凪が、お前に、渡しただと?」
國神が、眉を、ひそめた。
「どういうことだ。あの、めんどくさがりの凪が」
御影が、信じられない、といった顔で、言った。
「凪は、一番、本気を見せた奴に、渡すって、決めてたんだ。で、俺が、一番、本気だった。それだけだ」
潔は、真っ直ぐに、みんなを、見た。
「ふん。面白い」
馬狼が、不敵な笑みを、浮かべた。
「だが、潔。このメダルが、貴様のものだと、簡単に、認めると思うなよ。王たる俺が、このまま、引き下がるわけがない」
「何が言いたい」
「今に、分かる。……ふん、まあ、昼飯で、会おう」
馬狼は、それだけ言うと、くるりと、背を向けた。
「おい、馬狼。どこへ行く」
「決まっている。王の務めだ。グラウンドを、走ってくる」
馬狼は、振り返らずに、言った。
「え、走るの? なんで?」
「負けたからだ。潔のチームが、メダルを、手に入れた。つまり、俺たちは、敗者だ。敗者は、罰則として、走る。当然だ」
馬狼の声は、妙に、堂々としていた。
「……あいつ、負けたのに、なんで、あんなに、楽しそうなんだ」
千切が、呆れたように、言った。
「王が、走るのは、王としての、義務だと、思っているんだろう。……まあ、俺も、走るか。負けたのは、事実だ」
國神が、苦笑いを、浮かべた。
「僕も、走るよ。……ああ、でも、財布、どこに置いたっけ。走る前に、飲み物、買いたいのに」
御影が、ポケットを、探り始めた。
「玲王、お前、財布、部屋に、忘れてきたんじゃないか?」
「え!? また!? ……マジか。……まあ、いいや。水で、我慢する」
御影が、がっくりと、肩を、落とした。
「みんな、行こうよ! 走るなら、僕も、一緒に、走る!」
蜂楽が、元気よく、言った。
「お前は、潔のチームだろ。走らなくていい」
「え、そうなの? でも、なんか、走りたい気分! サッカーは、自由だよ!」
蜂楽は、笑いながら、階段を、駆け下りていった。
「……自由すぎるだろ」
千切が、ため息を、ついた。
潔は、その様子を、見ながら、小さく、笑った。
(みんな、悔しいはずなのに)
(でも、なんだか、清々しい)
(これが、ブルーロックか)
潔は、メダルを、ポケットに、しまった。
そして、みんなの後を、追って、階段を、下りた。
昼食の時間。
食堂は、いつも通りの、賑やかさだった。
配膳カウンターには、栄養バランスの取れた、昼食が、並んでいる。
潔は、トレーを、持って、テーブルに、座った。
隣には、蜂楽が、座る。
「ねえ、潔。夕食、何を、食べるか、決めた?」
蜂楽が、目を、輝かせて、尋ねた。
「まだ、決めてない。でも、好きなものを、好きなだけ、食えるんだろ? 最高だな」
「だよね! 僕は、カレー! あと、ラーメン! あと、ハンバーグ! あと、オムライス!」
「食いすぎだろ」
「だって、好きなものを、好きなだけ、だよ? 夢みたいじゃん!」
蜂楽は、嬉しそうに、笑った。
その時、食堂の、スピーカーから、アナウンスが、流れた。
『本日の、メダル争奪戦の、結果を、発表します』
食堂が、一瞬、静かになった。
『メダルを、手に入れたのは、潔世一選手の、チームです。潔世一選手の、チームは、夕食で、好きなものを、好きなだけ、食べる権利を、獲得しました』
「おお!」
蜂楽が、声を、上げた。
『また、メダルを、獲得できなかった、選手は、本日、グラウンドを、走る、罰則を、受けます』
「……やっぱりな」
國神が、苦笑いを、浮かべた。
「走るのは、いいけど、靴下、片方ないんだよな。……まあ、走るのに、関係ないか」
千切が、自分の、足元を、見た。
「財布がないから、飲み物も、買えないし。……ああ、もう」
御影が、頭を、抱えた。
「ふん。王たる俺が、走るのは、当然だ。だが、ただ、走るだけでは、つまらない。俺は、一番、速く、走ってみせる」
馬狼が、立ち上がった。
「おお、馬狼、やる気だね!」
「当たり前だ。王は、常に、全力だ。お前たちも、さっさと、来い」
馬狼は、食堂を、出ていった。
「……あいつ、本当に、王様気取りだな」
「でも、あの、自信は、すごいよ。僕、ちょっと、尊敬するかも」
蜂楽が、笑った。
「蜂楽、お前、走らなくていいんだぞ」
「え、でも、走りたい! みんなと、一緒に、走りたい!」
「……お前は、本当に、自由だな」
潔は、呆れながらも、笑った。
「うん! サッカーは、自由だよ!」
蜂楽は、元気よく、立ち上がった。
「潔、行ってくる! 夕食、楽しみにしててね!」
「ああ。行ってこい」
蜂楽は、ぴょんぴょんと、跳ねるように、食堂を、出ていった。
潔は、一人、食堂に、残った。
窓の外では、蜂楽、千切、國神、御影、馬狼が、グラウンドを、走り始めていた。
馬狼が、先頭を、走っている。
妙に、堂々とした、走り方だった。
(あいつ、本当に、王様みたいだな)
(でも、まあ、憎めない)
潔は、窓の外を、見ながら、昼食を、食べた。
食堂の隅では、氷織羊が、静かに、本を、読んでいた。
時々、窓の外で、走る面々を、ちらりと、見て、微かに、口元を、緩めていた。
夜。
潔は、自分の部屋で、ベッドに、横になっていた。
枕元には、金色のメダルが、置いてある。
(これが、エゴイストの象徴)
(凪が、俺に、渡してくれた)
(一番、本気だったって、認めてくれた)
潔は、メダルを、手に取った。
冷たい。
でも、その冷たさが、心地よかった。
(明日から、また、トレーニングだ)
(でも、もう、迷わない)
(俺は、世界一になる)
(このメダルが、あっても、なくても)
潔は、メダルを、枕元に、戻した。
そして、目を、閉じた。
深い、眠りに、落ちていった。
翌朝。
カーテンの隙間から、朝日が、差し込んでいる。
潔は、ゆっくりと、目を、開けた。
(今日も、一日が、始まる)
体を、起こす。
枕元に、手を、やった。
(メダル、どうなったかな)
手を、動かす。
ない。
(あれ?)
もう一度、枕元を、探る。
ない。
ベッドの上を、見る。
ない。
机の上を、見る。
ない。
クローゼットの中を、見る。
ない。
「……また、か」
潔は、深く、ため息を、ついた。
(まさか、また、氷織か?)
(いや、氷織は、もう、メダルを、俺に、渡したはずだ)
(じゃあ、誰だ?)
潔は、部屋を、飛び出した。
「蜂楽!」
隣の部屋の、ドアを、叩く。
「んー……なに、潔。朝から、うるさいよ」
中から、寝ぼけた声が、聞こえた。
「メダルが、また、消えた!」
「え!? また!?」
ガチャリと、ドアが、開く。
蜂楽が、ボサボサの、金髪を、さらに、ボサボサにして、出てきた。
「本当に? また、氷織?」
「いや、違う。……多分」
その時。
廊下の、向こうから、高らかな、笑い声が、聞こえてきた。
「はっはっは! 潔! 貴様、探しているな?」
馬狼照英が、廊下に、立っていた。
オールバックの、赤紫がかった黒髪。鋭い、赤い瞳。
その手に、金色のメダルが、握られていた。
「馬狼! お前——!」
「俺が、本気で、探してないと、思ったか? お前らが、寝てる間に、取り返したぜ」
馬狼は、不敵な笑みを、浮かべて、メダルを、ひらひらと、見せびらかした。
「なんで、そんなことを……」
「王たる者、一度、手にしたものを、簡単に、手放すわけがないだろ。潔、このメダルは、俺が、もらう。世界一になるのは、この、俺だ」
馬狼は、そう言い放つと、くるりと、背を向けて、去っていった。
「……あいつ」
潔は、しばらく、ぽかんとしていた。
そして、小さく、笑った。
「まあ、いっか。また、探せばいいさ」
「そだね! 今度は、僕の、直感で、絶対、見つけるよ!」
蜂楽も、笑った。
「でも、馬狼らしいな。寝てる間に、取り返すとか」
「うん! やっぱり、馬狼は、すごいぜ!」
蜂楽が、親指を、立てた。
潔は、笑いながら、首を、振った。
朝食の後。
潔と蜂楽は、寮の廊下を、歩いていた。
窓から、青空が、見える。
「結局、メダルは、なくなったけど、お前は、勝ったんだろ?」
蜂楽が、尋ねた。
「ああ。俺は、自分の、本気を、証明できた。メダルが、あっても、なくても、世界一になるのは、変わらない」
潔は、真っ直ぐ、前を、見て、言った。
「それで、いいんだぜ」
蜂楽が、親指を、立てた。
「潔は、潔の、ままで、いいんだよ。だって、それが、一番、強いから」
蜂楽の、金色の瞳が、きらきらと、輝いている。
「……ああ。ありがとな、蜂楽」
潔は、小さく、笑った。
(こいつが、相棒で、よかった)
(この七日間で、俺は、また、強くなれた)
(いや、強くなった、じゃない)
(自分の、本気を、思い出せたんだ)
廊下の、窓から、青空が、広がっている。
休日が、終わりに、近づいている。
日没前。
寮の、共用ラウンジに、自然と、みんなが、集まってきた。
潔、蜂楽、凪、馬狼、氷織、千切、國神、御影。
八人が、それぞれの、場所に、座っている。
夕日が、窓から、差し込んで、ラウンジを、オレンジ色に、染めていた。
「次の課題は、俺が、勝つ」
馬狼が、唐突に、宣言した。
「……めんどいけど、お前が、言うなら、やるか」
凪が、ソファに、沈みながら、珍しく、応じた。
「お、凪が、やる気だ!」
「やる気じゃない。めんどいけど、やるだけ」
「それでも、すごいよ! 凪が、やるって、言うなんて!」
蜂楽が、嬉しそうに、笑った。
「ふふ。みんなの、本気、また、見せてよ」
氷織が、静かに、微笑んだ。
「もちろん、だ」
潔は、力強く、答えた。
「俺は、世界一になる。そのために、次の課題でも、全力を、尽くす」
「僕も! サッカーは、自由に、楽しく、やるよ!」
「俺は、王として、当然、勝つ」
「……まあ、適当に、やる」
「僕は、みんなの、本気を、見てるよ」
「俺も、負けない」
「次こそは、勝つ」
「僕は、財布を、忘れないように、する」
御影の言葉に、みんなが、笑った。
夕日が、沈んでいく。
ラウンジに、笑い声が、響く。
メダルは、消えた。
でも、みんなの、本気は、残った。
次の、競争へと、繋がっていく。
ブルーロック寮の、日常は、騒がしく、少し、おかしく、そして、前を、向いて、続いていく。
「……めんどい」
凪が、小さく、呟いた。
氷織は、静かに、本を、開いた。
その口元は、微かに、笑っていた。
(今日も、ブルーロックは、騒がしい)
(でも、それが、一番、面白い)
氷織は、静かに、本を、読み続けた。
夕日が、沈み、夜が、訪れる。
休日が、終わる。
そして、また、新しい、一日が、始まる。
彼らの、本気の、物語は、まだ、始まったばかりだ。Noveliaとは?
Noveliaは、AIでライトノベルや二次創作を「読んで・数タップで作って・キャラクターと会話できる」プラットフォームです。挿絵つきの新作が毎日届き、無料で始められます。