推しの親友は、元アイドルで隣の席
高校2年の春、地味で友達ゼロの磯貝タクト(16)は、超人気VTuber・氷月ユイの隠れガチ勢。学校では誰にも言わず、放課後はアーカイブ配信を観る日々。ある日、長期休学から復帰したばかりのクラスメイト・黒瀬まりあが、消しゴムを拾った拍子にタクトのスマホをチラ見する。画面に映っていたのは、氷月ユイの限定歌配信。まりあの目が輝く。
「ちょっと……ユイ推しなの?」
まりあの正体は、伝説の地下アイドルグループ『ネオポルテ』元メンバーで、解散後にVTuberへ転身した氷月ユイのリアル親友。まりあ自身も元アイドルだった。二人は秘密の共有者となり、まりあは「いつかユイに会わせてあげる」と約束する。しかし、まりあには声を奪う病でアイドルを辞めざるを得なかったという悲しい秘密があった。
そんな中、タクトの幼なじみで彼に密かに恋するギャル・宇佐美ルカが爆弾発言。「あんたの推しの事務所、うちの姉の元カレが運営してるんだけど」。ルカはタクトとまりあを引き裂こうと画策する。一方、無理に声を出し続け倒れたまりあに、タクトは「俺がまりあの声を守る」と誓う。だが、まりあの本当の病は呪いのようなものだった——誰かを
推しの親友は、元アイドルで隣の席 - 全財産8万円のステージ、奇跡は叫びの後に
スマホの画面が、暗い部屋に四角く光っていた。
磯貝タクトは布団の上で丸まり、その画面をじっと見つめていた。表示されているのは、緋月ユイのファンクラブ専用連絡先。一周年記念の時に、意を決して登録したアドレスだ。
(押せば、何かが変わるかもしれない)
親指が、送信ボタンの上で震える。
篠崎からのメッセージが、頭の中をぐるぐる回っていた。
『明日、放課後、お前の教室でまりあの借用書と引き換えに返事を聞かせてくれ。返事次第では、彼女の配信アカウントと実家の住所をネットに流す』
(まりあの住所が、ネットに流れる)
(あいつは本気だ)
(俺が何とかしなきゃ)
タクトはスマホを握りしめた。画面には、緋月ユイの配信アーカイブのサムネイルが並んでいる。毎晩、孤独を癒してくれた笑顔。透き通るような歌声。
「ユイさんなら……助けてくれるかもしれない」
かすれた声が、暗い部屋に溶けていった。
でも。
まりあが言っていたことを思い出す。
『ユイには絶対に知られたくないの。私の病気も、声が出ないことも、それから……』
それから、とまりあは言いかけて、やめた。
あの時のまりあの顔。泣きそうで、でも笑おうとして、結局うつむいてしまった。
(まりあが一番知られたくないことを、俺がユイに伝える)
(それはまりあを守ることにならない)
(ただ、傷つけるだけだ)
タクトはスマホを布団に押し付けた。
ごす、と鈍い音。
「くそ……」
声が震える。
もう一度、画面を見る。連絡先が表示されている。
押せない。
押すのが怖い。
押してしまったら、まりあを裏切ることになる。
でも、押さなければ、篠崎にまりあを奪われる。
(どうすればいい)
(どうすれば、まりあの声を守れる)
(どうすれば、まりあを傷つけずに済む)
答えは、どこにもなかった。
タクトは一睡もできないまま、朝を迎えた。
窓の外が白み始める。鳥の声がする。
タクトは布団から起き上がると、スマホを手に取った。画面には、いつの間にか緋月ユイの連絡先が表示されていた。
(……違う)
(緋月ユイに頼る前に、俺にできることをやるんだ)
タクトは深呼吸した。
それから、カフェ「ルミナ」の番号を押した。
コール音が、三回。
「はい、カフェ・ルミナです」
低い、落ち着いた声。店主の鷹野誠一だ。
「あ、あの! 私、いや、俺、都立ソラミネ高校の磯貝っていいます! あの、今日、そちらのステージを一日借りたいんですけど!」
声が裏返った。恥ずかしい。
電話の向こうで、数秒の沈黙。
「……ステージを? 君、学生さんだよね? ライブでもやるの?」
「違います! 俺の、大切な人のために、どうしてもステージが必要なんです! お願いします! お金なら払います! 二万円、いや、三万円でも!」
タクトは食い気味に叫んだ。
また沈黙。
「……ふむ」
鷹野の声が、少しだけ柔らかくなった気がした。
「事情はわからないけど、その声を聞いていると、本気なんだろうね。いいよ、貸してあげる。レンタル料は学生割引で二万円。前払いでお願いできる?」
「あ、ありがとうございます! 二万円、今から持っていきます!」
「わかった。気をつけておいで」
電話を切ると、タクトは机の引き出しを開けた。
中に入っていた封筒を手に取る。
全財産、八万円。これまでコンビニバイトとお小遣いをコツコツ貯めた、タクトの全て。
その中から二万円を抜き取り、残りを封筒に戻した。
(これで何ができる?)
(何ができるかわからないけど、やるしかない)
タクトは封筒を握りしめ、部屋を飛び出した。
朝の空気が、ひんやりと頬を刺す。
通学路を走る。コンビニの前を通り過ぎ、信号を渡り、駅前のカフェ「ルミナ」へ。
店の前で立ち止まり、深呼吸。
ガラス戸を押し開けると、カウンターの向こうから鷹野誠一が顔を出した。
鷹野誠一は三十八歳。元ミュージシャンというだけあって、長身で、無精髭を生やした無骨な雰囲気の男だった。壁一面には古いレコードジャケットが飾られていて、昔ながらの喫茶店の匂いがする。
「おはよう。君が磯貝くんか」
「おはようございます! あの、これ、レンタル料です!」
タクトは震える手で、二万円を差し出した。
鷹野はその手を見て、少し眉を上げた。
「……ずいぶん気合が入ってるね。何があるか知らないけど、無茶はしなさんな」
「ありがとうございます。……あの、ステージ、使わせてもらいます」
鷹野は黙って頷いた。
タクトは店の中を見渡した。
小さなステージ。マイクスタンド。スピーカー。古びたピアノ。
ここで、まりあの声を取り戻す。
(できるかどうかはわからない)
(でも、緋月ユイを呼ぶしかない)
(まりあの声を救えるのは、まりあが一番会いたい人のはずだ)
タクトはスマホを取り出した。
まりあにメッセージを送る。
『放課後、駅前のカフェ・ルミナに来てほしい。大事な話がある』
送信。
既読がつくかどうか。
つかない。
(来てくれるか? わからない)
タクトは、店の窓から外を眺めた。
朝の光が、街を白く照らしている。
タクトは、ステージの上に立った。
マイクの前に立つ。
高さを確かめる。
(ここで、ユイを待つ)
(まりあも、ここに来る)
(あとは……)
祈るしかなかった。
放課後。
カフェ・ルミナの店内は、ひっそりと静まり返っていた。
タクトはステージの前の椅子に座り、ドアを見つめていた。
カラン、とドアベルが鳴った。
はっとして立ち上がる。
「…………」
まりあが立っていた。
長い黒髪。白い肌。制服姿。
まりあはタクトを見ると、首をかしげた。
声が出ない。だから、スマホのメモ画面をタクトに見せる。
『何のために呼んだの?』
「まりあ……来てくれたんだな」
タクトの声がほっと緩む。
まりあはこくりと頷いた。
タクトはまりあをステージ前の椅子に座らせた。
「ちょっと待っててくれ。もうすぐ……たぶん、来るはずだから」
まりあは不思議そうな顔をした。
時間が過ぎる。
五分。十分。二十分。
ドアは開かない。
夕暮れの光が、窓から差し込み始めた。
タクトは何度もスマホを確認した。
緋月ユイに連絡を取れる手段は、ファンクラブの連絡先だけだった。
昨夜、結局、送信できなかった。
いや、違う。
正確には、送った。
今朝、カフェに向かう前に。
『緋月ユイ様へ。お願いがあります。あなたの親友、黒瀬まりあの声が失われています。今日、駅前のカフェ・ルミナで、まりあのために何か歌っていただけませんか。彼女を助けてください』
恥ずかしくなるくらい、必死な文章だった。
でも。
返信は、来ない。
配信やSNSを見る限り、既読になったかどうかもわからない。
(ユイは来ない)
(ファンの思いなんて、アイドルには届かないのか)
(それとも、あの連絡先は本当に存在しないのか)
タクトの手が、震えた。
その時。
タクトのスマホが震えた。
画面を見る。
篠崎からだ。
「出ないつもりか? 磯貝くん」
電話だ。
タクトは息を呑んで、通話ボタンを押した。
「まりあの借用書と、実家の住所を……もうネットに流したよ。今すぐ教室に来い。返事次第では、まだ間に合うかもしれないぜ」
「てめえ……!」
声が震える。
「ああ、それから。まりあちゃんの元仲間たちも、お前の学校に向かってるらしい。リオ、ナツキ、ヒナ。かわいそうに、彼女たちはまりあちゃんに会いたがってるよ。さあ、どうする? お前の教室で待ってる」
「ふざけんな……ふざけんなよ……!」
タクトは声を絞り出した。
「選択肢は二つだ。まりあちゃんを俺に渡すか、お前らが地獄を見るか。どっちも大差ないけどね。じゃあ、待ってるよ。救世主くん」
通話が切れた。
タクトは立ち尽くした。
足が震える。
視界が、じわじわと滲んでいく。
(何もできない)
(まりあの住所は流された)
(元仲間が、学校に来てる)
(緋月ユイは、来ない)
(俺は、何もできなかった)
まりあが、タクトの袖を引いた。
振り向くと、まりあは涙をいっぱいためていた。
まりあは震える指で、スマホに文字を打つ。
『私のせいで、タクトくんが苦しんでる。ごめんなさい。私が全部悪いの。私、もう、どこか遠くに行くから』
まりあの目から、涙が零れ落ちた。
声にならない「ごめんなさい」が、唇の形だけで動く。
タクトは、まりあのその姿を見て。
胸の奥が、熱くなって。
(違う)
(謝るのは、俺の方だ)
(守るって言って、何もできなかった)
(緋月ユイに頼ることしか、考えてなかった)
(でも、本当は……)
タクトは、ステージに上がった。
マイクを握った。
指が、震える。
息が、上がる。
(BGMもない)
(客もいない)
(でも、まりあがいる)
(それで十分だ)
タクトはマイクを握りしめた。
緋月ユイへの思いと、まりあへの恋心が、頭の中でぐちゃぐちゃに絡まる。
(助けてほしいのは、ユイじゃない)
(俺が、助けるんだ)
(俺の声で、まりあを)
タクトは、息を吸い込んだ。
「お前の声を返せえええええ!!」
喉が張り裂けるような叫び。
まりあが、びくっと震えた。
でも、タクトは止まらない。
「まりあが好きだああああああ!!」
「好きだ! 好きだ! お前のことが! 世界で一番! 好きなんだああああ!!」
声が枯れる。
喉が焼けるように痛い。
でも、叫ばずにはいられなかった。
「声が出なくても! 歌えなくても! 俺はお前のそばにいる! だから! だから……お前の声を、俺に聞かせてくれよ!!」
タクトの声が、涙でぐちゃぐちゃになる。
まりあは、両手で口を押さえて、泣いていた。
大粒の涙が、頬を伝って、床に落ちる。
そして。
まりあの唇が、震えた。
「わ、たし……も……」
かすかに、声が漏れた。
タクトは息を呑んだ。
まりあは自分の喉に手を当てて、目を大きく見開いた。
「わたしも……好き……だよ……」
震える声。
でも、確かに、まりあの声だった。
「もっと……タクトくんのそばに……いたい……」
まりあが、泣きながら、笑った。
その声は、か細くて、消えてしまいそうで、でも、確かに、まりあの声だった。
「まりあ……声が……声が戻ったんだな……」
タクトはマイクを落とし、ステージから飛び降りた。
まりあに駆け寄り、その小さな体を、ぎゅっと抱きしめた。
「まりあ……まりあ……!」
「ふぇ……ううっ……タクトくん……わたし、声、出た……歌えるかも……」
まりあが、タクトの胸に顔を埋めて泣きじゃくる。
タクトの目からも、涙が止まらなかった。
二人は、そのまま、小さなカフェのステージ前で、抱きしめ合った。
その時。
カラン。
ドアベルが鳴った。
タクトは顔を上げた。
夕暮れの逆光に、人影が浮かび上がる。
長い黒髪。白い肌。
まりあと同じくらい、いや、それ以上に、華奢で、どこか神秘的な雰囲気をまとった女性。
タクトは、時間が止まったような感覚に陥った。
(あれは……)
その女性は、泣いていた。
涙をぼろぼろと流しながら、立っていた。
「まりあ……」
タクトは、頭が真っ白になった。
(緋月ユイ……本人……?)
緋月ユイは、ふらふらとした足取りで、まりあに近づいた。
まりあは、タクトの腕の中から、顔を上げた。
「まりあ……ずっと、探してた。あの日から、ずっと……あなたのことを……」
ユイの声は、配信で聞く声と同じだった。
でも、今は、涙でぐちゃぐちゃに震えていた。
まりあは、ユイの顔を見て。
「……ユイ」
声が、出た。
今、確かに、まりあの口から、ユイの名前が出た。
ユイは、まりあに抱きついた。
「会いたかった……ずっと、ずっと、会いたかった……!」
「ゆい……わたしも……わたしも、会いたかった……!」
二人は、泣きながら、しがみつき合った。
タクトは、その光景を、ただ呆然と見つめた。
(緋月ユイが、本当に来た)
(俺の送った連絡が、届いたんだ)
(それで、来てくれたんだ)
推しが、目の前にいる。
毎晩、画面越しに見ていた存在が、今、現実に。
でも、タクトの胸には、嬉しさと同時に、言いようのない痛みが広がっていた。
(ユイは、まりあのために泣いている)
(まりあの声が戻ったことを、心から喜んでいる)
(それは、わかる)
(でも……)
ユイは、涙を拭いながら、タクトを見た。
「あなたが、まりあの声を返してくれたのね」
その言葉が、タクトの胸に、深く突き刺さった。
(違う。俺が返したんじゃない。返ってきたんだ。まりあの、自分自身の力で)
「……あの、俺、緋月ユイさんのファンで……いつも配信見てます」
タクトは、震える声で言った。
「ありがとう。……あなたのおかげで、まりあに、また会えた。本当に、ありがとう」
ユイが、深々と頭を下げた。
タクトの心臓が、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられた。
(推しにお礼を言われた)
(夢みたいだ)
(でも、違う)
(俺が喜ぶのは、今じゃない)
まりあが、ユイの背中に、そっと触れた。
「ゆい……ごめん。わたし、ずっと、ゆいに会いたかったけど、会えなかった。会いたかったのに、会えなかったの」
まりあの声が、涙で震える。
「わかってる。わかってるよ、まりあ。あなたが、どんなに苦しんでたか、私……何も知らなかった。声が出なくなったことも、病気のことも……ごめん。私のそばに、いられなかった。ごめんね」
ユイが、まりあを抱きしめ返した。
まりあは、首を振った。
「ちがうの。ゆいのせいじゃないの。わたしが……わたしが、弱かったから……」
まりあの声が、再びかすれ始める。
タクトは、それに気づいた。
(まりあの声が、また……)
(いや、まだだ。まだ出てる)
(でも、辛そうだ)
タクトは、二人の間に割って入った。
「あ、あの! まりあは、まだ本調子じゃないんで! 無理に喋らせないでください!」
ユイは、タクトの言葉に、ハッとした。
「そ、そうね。ごめんなさい、まりあ。私、嬉しくて……」
「ううん。だいじょうぶ。……でも、ごめん。わたし、ちょっと、外の空気、吸いたい」
まりあはそう言うと、ふらりと立ち上がった。
「まりあ! 待てって!」
タクトが呼び止める間もなく、まりあはカフェのドアを開けて、走り出した。
「まりあ!!」
ユイも、すぐに追いかける。
タクトも、慌てて店を飛び出した。
夕暮れの駅前通り。
まりあの黒い髪が、風になびいて、街の中に消えていく。
タクトとユイは、必死に走って追いかけた。
まりあが向かった先は、多摩川の河川敷だった。
堤防の上で、まりあは膝をついて、泣いていた。
「まりあ!!」
タクトが追いつき、まりあの肩を抱く。
「ごめん……ごめんね、タクトくん。わたし、嬉しいのに……嬉しいのに、泣いちゃう……」
まりあの声は、涙でぐちゃぐちゃに濡れていた。
ユイも、息を切らして駆けつけた。
「まりあ……」
まりあは、ユイを見て、首を振った。
「どうして……どうしてゆいが来たの……来ないでほしかった……」
まりあの本心が、涙と一緒に溢れ出した。
「まりあ……私、連絡をもらって、いてもたってもいられなかった。あなたが、私のせいで声を失ったなら、私が、絶対に取り戻すって。だから……」
「違う! ちがうの! ゆいのせいじゃない! ゆいが来ないでほしかったのは……わたしが、一番、知られたくなかったことがあるから……」
まりあは、胸の奥から絞り出すように叫んだ。
ユイは、まりあの両肩を、そっと掴んだ。
「なに? 知られたくないことって、なに? ねえ、まりあ。あなたが声を失ったのは、私のことを忘れられないからでしょ? ネオポルテが解散して、私があなたを置いて、VTuberになった。それを、あなたはずっと恨んでる。だから……だから、あなたの病の原因は、私への未練なんでしょ?」
ユイの言葉に、まりあの体が、びくりと震えた。
タクトは、はっとした。
(違う)
(ユイは、誤解してる)
(まりあの病の原因は、ユイへの未練じゃない)
(タクトへの、恋心だ)
まりあは、泣きながら、首を横に振った。
「ちがう……ちがうの……ゆい、ちがうの……」
まりあは、それ以上、何も言えなかった。
本当の原因を、打ち明けられない。
だって、それを言ったら。
(タクトくんが、わたしのことが好きだから、声が出なくなったって……)
(そんなこと、言えない)
(言ったら、みんな、余計に苦しむ)
まりあは、自分の喉を押さえて、うずくまった。
「まりあ、ごめん……私、何も知らないで……ほんと、ごめん」
ユイは、まりあの背中を、さすった。
タクトは、二人のそばに立って、動けなかった。
まりあの声は、戻った。
でも。
まりあの病は、まだ、終わっていない。
まりあの恋心が、タクトに向いている限り、病は再発する。
そして、まりあの親友・緋月ユイが、今、ここにいる。
まりあの秘密は、もう、誰にも隠し切れない。
タクトの胸には、二つの感情が、同時に渦巻いていた。
(緋月ユイがいる。俺の推しが、目の前にいる)
(でも、まりあの声は、まだ、危うい)
(俺は、どっちを、どうすればいいんだ)
夕日が、多摩川の水面を、赤く染めていた。
三人の影が、河川敷に長く伸びている。
まりあの声が、奇跡のように戻ったというのに、空気は、むしろ、重く、冷たく、張り詰めていた。Noveliaとは?
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