騎士サマの本音、まる聞こえですが何か?〜異世界ハーレム建国記〜
黒い企業で命を落とした20歳のタツヤは、女神の手違いで異世界に転生する。お詫びとして授かったスキルは、女性の本音が視える能力だった。
最初はその有用性に半信半疑だったが、冒険者ギルドで出会った金髪の女騎士リュネ・ヴァルデュール。冷たく棘のある外面とは裏腹に、その内なる声はまったく別物で――。
以来、戦闘中であれ浴場であれ、周囲の女性たちの本音が聞こえてくる。氷の女王と呼ばれる美貌の魔術師セリア・フィレンツァは実は寂しがり屋で、エルフの姫は人間の男に興味津々、女海賊船長は究極のツンデレ、計算高い女商人は一途な恋心を秘めていた。
スキルを駆使し、最強の美女たちの弱点や秘密を知ったタツヤは、次々とその心と身体を開いていく。だが、彼女たちの内なる声は愛情と同時に、昏い独占欲にも満ちていて、タツヤは日々の混沌に巻き込まれていく。
そんな中、女たちの本音から、この世界を統べる魔王が実は女であり、千年もの間『真実の愛』を探し求めていることを知る。タツヤは彼女すらも落とすことを決意する。
世界を救うのか、ハーレム王国を築くのか、それともヤンデレ地獄に堕ちるのか。本音が聞こえるからこそ、タツヤ
騎士サマの本音、まる聞こえですが何か?〜異世界ハーレム建国記〜 - ツンデレ騎士と同室生活、始まりました——本音は筒抜け、距離は縮まらない(縮まってる)
港の朝は早い。
空が白み始める頃には、もう魚市場から威勢のいいかけ声が聞こえてくる。波止場に打ち寄せる潮騒と、カモメの甲高い鳴き声。潮風に混じる潮の香りと、ほんの少しの生臭さ。
タツヤは港の片隅で、積み上げられた木箱と木箱の隙間で丸まっていた。
「……さみぃ」
昨夜は冷えた。異世界イストワールの春は、まだ朝晩が冷えるらしい。足はしびれて感覚がほとんどないし、空きっ腹はもう鳴る元気もない。
(これで転生三日目か)
元社畜としての忍耐力には自信があった。深夜残業なんて当たり前だったし、上司にどれだけ怒鳴られても平気な顔を作れた。でも、これは想定外だ。宿も金もない。ただ、道端で丸まって朝を待つだけの夜を、もう三日も過ごしている。
ぐぅ。
腹が鳴る。昨日、港の魚屋の親父が、売れ残りのパンの耳を恵んでくれた。それだけが、昨日の食事だ。
(でも、チャンスはある)
タツヤは頭の中で考えを整理する。
昨日会った、あの女騎士——リュネ。金髪の、蒼い瞳の、冷たい顔の美人。あの人が、この世界で生き抜くための、唯一の糸口だ。
理由は、あのスキルにある。
《女性の本音聴取》
死んで異世界に転生した時に、女神の使いとやらから押し付けられた能力だ。視界に入った女性の本音が、自動でぜんぶ聞こえてしまう。オンオフはできない。聞きたくないことも、強制的に流れ込んでくる。
昨日、リュネの心の声を聞いた。
——あれ? ぶつかった拍子に、顔が近かった。目が大きくて、まつげ長くて……なんか……ちょっと、かわいいかも。
——って、何考えてるの私!? 誰に見られるわけでもないのに、顔が熱い、最悪!
外見は鋼のような女騎士。でも、内面はあまりにも乙女だった。
(あのギャップは、使える)
そして、もう一つ、もっと大事な本音も聞こえていた。
——今日も一人か。まあいい、慣れてるし。誰かに頼るなんて、私には無理だ。
孤独で、寂しくて、でも誰にも弱みを見せられない。本当は、誰かに必要とされたいのに。
(あの人が求めているのは、自分を理解してくれる誰かだ)
なら、どうすればいいか。
元社畜としての処世術が、頭の中で自然と働き始める。相手が欲しいものを、言葉にしてあげる。それだけでいい。ただ、それだけだ。
胸の奥で、ちくりと罪悪感が刺す。
(人の本音を盗み聞きして、それを利用するのか)
でも、生き延びるためだ。それに、リュネにとっても悪い話じゃないはずだ。俺がパトロン契約——この世界で新人冒険者を支援する制度——を結べば、彼女だって一人じゃなくなる。
「……決めた」
タツヤは立ち上がろうとした。
でも、足がしびれて、力が入らない。
「うおっ」
転びそうになって、積み上げた木箱に手をつく。ガタガタと音がして、近くで網を繕っていた漁師がこっちを見た。タツヤは苦笑いを浮かべて、ぺこりと頭を下げる。
(かっこ悪いったらありゃしない)
しびれが取れるのを待って、よろよろと歩き出す。まずは、昨日と同じように港の魚屋に顔を出す。親父はもう店を開いていた。
「おう、お前か」
「[gentle]また来ちゃいました。すみません、何か手伝えることありますか?」
「いや、大したことじゃねえが……これ、昨日売れ残った干物だ。食え」
「[surprised]ありがとうございます!」
親父の心の声は、もちろん聞こえない。相手は男性だから。でも、その無骨な手つきと、ぶっきらぼうな口調に、タツヤは少しだけ救われた気持ちになった。
干物をかじりながら、タツヤは歩き出す。目指すは銀翼の会だ。
石造りの建物が立ち並ぶ通りを抜けて、港から五分ほど歩くと、三階建ての大きな石造りの建物が見えてくる。看板には、銀色の翼をかたどった紋章。ここが、冒険者ギルド「銀翼の会」のカルナック支部だ。
中に入ると、一階は広い酒場と依頼所が一体になった空間だった。朝だというのに、もう何組かの冒険者たちが、壁に貼られた依頼書を眺めている。かび臭い汗と安酒の匂いが、むわりと漂っていた。
「【スライム討伐・E級・報酬:銅貨10枚】」
「【ゴブリン討伐・D級・報酬:銀貨5枚】」
「【霧深き森の薬草採取・C級・報酬:金貨2枚】」
壁に貼られた依頼書を横目に、タツヤは視線を走らせた。
いた。
依頼掲示板の前に、リュネが立っている。
白い鎧に青いマント。腰に下げた長剣。背筋をまっすぐに伸ばして、微動だにしない。周りの冒険者たちが、彼女を避けて通っているのがよくわかる。まるで孤高の白い塔みたいだった。
昨日の夕日の中で見た時よりも、さらに美しく見える。
(よし、行くぞ)
タツヤは心の中で気合を入れて、リュネの背後に近づいた。
「[gentle]おはようございます。昨日は失礼しました、リュネさん」
リュネが振り返る。その蒼い瞳が、タツヤを射抜いた。
「[cold]……あんた、あの時の。まだいたの」
相変わらずの冷たい口調。周りの空気が一瞬で凍るような、鋭い声だ。
でも、タツヤの頭には、同時に彼女の本音が流れ込んでくる。
——また来た。なんで? なんで、また私のところに来るの? この人、私のこと何とも思ってないんじゃ……って、そんなこと気にしてる自分が一番むかつく。最悪。
(よし、これだ)
タツヤは心の中で拳を握った。昨日と変わらず、リュネの内面は乙女全開だ。
「[serious]リュネさんにお願いがあって来ました」
「……話だけ聞くわ。言いなさい」
リュネは腕を組んだ。つんと顎を上げて、タツヤを見下ろすようにしている。
——お願いって何? まさか、昨日のことでお金でもせびるつもり? あ、でもこの人、本当にお金がなさそうだし……私、また何か言われるんじゃ……。
「[serious]リュネさんは、一人で全部を背負いすぎている。そう感じました」
リュネの表情が、わずかに固まった。
「[cold]……何を根拠に」
「[gentle]根拠なんて、ありません。でも、昨日ぶつかった時に、思ったんです。この人は、すごく孤独なんじゃないかって」
リュネの心の声が、一気に流れ込んでくる。
——なんで。なんでこの人が、そんなことを言うの? 誰にも、そんなこと言われたことないのに。家族にも、騎士仲間にも。それなのに、なんでこのみすぼらしい男が——。
「[serious]俺、冒険者になりたいんです。でも、まだ登録もできていない。だから、リュネさんに、パトロン契約をお願いできませんか」
「[cold]パトロン契約? あんた、私にどれだけ迷惑をかけるつもり」
口ではそう言いながら、リュネの本音はまったく違った。
——嫌、じゃない。むしろ、悪くない提案。だってこの人、なんでかわからないけど、私のことをわかってくれてる気がする。それに、パトロン契約を結べば、私、一人じゃなくなる。誰かと一緒にいられる。
(……ああ、この人は本当に寂しいんだな)
タツヤの胸の奥が、少し痛んだ。同時に、罪悪感も湧いてくる。
(俺は、彼女の本音を盗み聞いて、それに合わせた言葉を選んでるだけなのに)
でも、今はそれでいい。生き延びるためだ。
「[cold]……わかった。いいでしょう。ただし、契約書を交わした以上、あんたに課す訓練は厳しいものになるから、覚悟なさい」
「[excited]ありがとうございます!」
——やった。うそ。ほんとに引き受けてくれた。この人、やっぱりいい人だ。それに、顔が近い。昨日よりも、もっとよく見える。目の色、透き通った蒼で、きれい。
リュネの心の声が、またもや乙女全開で流れ込んできた。タツヤは、思わず口元が緩みそうになるのを必死にこらえた。
受付で契約手続きを済ませる。担当したのは、昨日の受付嬢、マリスだった。
「[gentle]まあ、リュネ様がパトロン契約を。おめでとうございますね、ええと……タツヤさん」
マリスの笑顔は完璧だった。でも、タツヤの頭には、彼女の本音も当然のように流れ込む。
——まさか、あのみすぼらしい男がリュネ様と契約を結ぶなんて。どういう手品を使ったの? でも、どうせすぐに死ぬわよ。リュネ様も、こんな役立たずに構ってる時間はないはずだし。
(……変わらず、手厳しいな)
でも、タツヤはもう動じなかった。元社畜として、陰口には慣れている。それに、今はリュネの本音の方が大事だった。
手続きが終わり、リュネがタツヤを連れて向かったのは、港を見下ろす丘の中腹にある宿だった。
看板には「貝殻の宿」の文字。潮風で少し色あせた、三階建ての木造の建物だ。入り口には、貝殻で作った飾りが風に揺れて、かすかな音を立てている。
「[gentle]大きい宿ですね」
「[cold]この街では一番まともな宿よ。……来なさい」
リュネが重い木の扉を押し開けると、ロビーには暖炉の火が燃えていて、ふわりと魚介のいい匂いがした。
「まあ、リュネ様、今日はお早いのね」
カウンターの奥から、恰幅のいい女将が出てきた。五十代くらいの、肝っ玉母さんといった風情の女性だ。
「[cold]ええ。今日から、この者もここに滞在します」
「[gentle]まあ、お連れ様。お名前は?」
「[gentle]タツヤです。よろしくお願いします」
「[cold]使用人です。私の」
タツヤは心の中で叫んだ。
(使用人!?)
でも、すぐにリュネの本音が聞こえてきた。
——パトロン、って言えばよかった。でも、なんか恥ずかしくて。だって、私が自分からパトロン契約を結ぶなんて、誰も思わないでしょ。ああ、もう、何を考えてるの私。
(なるほど、照れてるのか)
タツヤは危うく吹き出すところだった。なんとかこらえる。
「[laughing]まあ、そうですか。では、いつものお部屋に、もう一つお布団を追加しますね。タツヤさん、リュネ様をよろしくお願いします」
マルガが、にこにこと笑いながら階段を上がっていく。
リュネに案内されたのは、三階の角部屋だった。窓からは、港と、その向こうに広がる嘆きの海が一望できる。
部屋の中は、思ったより広かった。大きなベッドが一つ、窓際に鎧掛け、壁際に小さな机と椅子。床は磨き込まれた木製で、素足で歩いたら気持ち良さそうだ。
「[cold]あなたは床で寝なさい。私はベッドを使うから」
「はい」
即答した。もともと路地裏で寝ていた身分だ。床があるだけで、もう天国みたいなものだ。
でも、リュネの本音は、また聞こえてくる。
——床は硬いし、ちょっと申し訳ない気もする。でも、ベッドは一つしかないし、仕方ない。責めてるわけじゃないのよ。ただ、言葉がうまく出ないだけで。ずっと一人で、こんなこと言ったことなかったから。
(……この人、ほんとに不器用なんだな)
タツヤは床に転がった。天井の木目を見つめながら、これから始まる生活に思いを馳せる。
夕方、マルガが食事を運んできた。焼きたてのパンに、魚のスープ、野菜の煮込み。湯気が立ち上って、それだけで腹が鳴りそうだった。
「[gentle]リュネ様、タツヤさんの分もちゃんとありますからね。お二人とも、ちゃんと食べてください」
「[cold]……効率的な投資です」
リュネはボソリと呟く。
マルガの心の声が、タツヤの頭に流れ込んできた。
——リュネ様、また若い子の分まで頼んでくれて。優しいんだから。素直になればいいのにねえ。
(ああ、やっぱりか)
タツヤは、スープを一口すする。温かくて、体の芯までしみる味だった。
食事が終わり、リュネが窓辺に立った。鎧を外して、ゆったりとした部屋着姿だ。窓の外では、夕日が嘆きの海を真っ赤に染めている。
その横顔が、光の中に溶けていった。金色の髪が、風に揺れて、輝く。
(……きれいだ)
タツヤは目を離せなかった。心臓が、変な音を立てている。昨日よりも、もっと強く。
——暗くてよかった。顔が赤くなってるのがバレる。
リュネの小さな本音が、また聞こえた。
タツヤもまた、自分の顔が熱いことに気づいて、慌てて目を逸らした。
しばらくして、階段を上ってくる重い足音が聞こえた。
ノックもなしに、扉が開く。
「これは、これは」
現れたのは、四十代の太った男だった。脂ぎった髪を後ろに撫でつけて、安物の香水の匂いがきつい。視線が、ねちっこくて、気持ちが悪い。
銀翼の会カルナック支部の副マスター、ドルフ・ガンドールだ。
彼が初めて登場した時の印象は、とにかく不快だった。ネズミのような目つきで、部屋の中をじろじろと舐め回すように見てから、最後にタツヤで視線を止める。品定めでもされているようだった。
「[sarcastic]ヴァルデュール嬢。このような——素性も知れぬ男と、パトロン契約とは。ご家名を汚すおつもりですか?」
声がねっとりとしている。リュネの肩がわずかに強張ったのがわかった。
「[cold]私の契約に、副マスターが口を出す権限はありません」
リュネは毅然と返す。でも、彼女の本音は震えていた。
——気持ち悪い。でも逆らうと、お父様の耳に入る。家名に傷がつくことはできない。
(彼女、脅されてるのか……)
「君」と、ドルフがタツヤに視線を向ける。そのねちっこい目が笑っているように見えて、タツヤの背筋に冷水を浴びせられたような感覚が走る。
「[cold]そんなに長くは、続かないだろうな。覚えておくといい」
スキルは反応しない。相手は男性だから。なのに、その虚ろな目と口元の笑みが、不気味さを何倍にもしていた。何を考えているのか、全く分からない。だから、底知れない恐ろしさがある。
ドルフはそれだけ言うと、背を向けて部屋を出て行った。
沈黙が降りる。
リュネは、何も言わなかった。窓の外をじっと見つめて、唇を噛んでいる。
——心配かけたくない。でも、あの男がここに来たこと、すごく嫌だった。それに、あんた、いてくれてよかった。あいつと私一人で相対しなくて済んだから。
リュネの本音が、かすかに、しかしはっきりと、タツヤの頭に届いた。
タツヤは何も言わず、それを胸にしまう。
(あの女将の言う通り、ほんとに不器用な人だ)
ドルフが去り際、廊下で何か呟いているのが聞こえたような気がしたが、確認はできなかった。
深夜。
タツヤは床に敷かれた毛布の上で、目を閉じていた。しかし、まだ眠れてはいなかった。
窓の外から、遠く波の音が聞こえてくる。月明かりが、窓から差し込んで、部屋の中を青白く染めていた。
その時だった。
——ガンッ!!
鈍く、重い音が暗がりに響く。
続けて、
「[scared]……っっ!!」
必死に抑えた悲鳴。
そして、リュネの本音が、爆音で流れ込んできた。
——痛い痛い痛い小指痛い死ぬ! タンスにぶつけた! 今の音、聞かれた!? 絶対聞かれた! でも痛い! 何、このタンス、角が鋭すぎる!! なんで、私、こんなところで小指なんてぶつけてるの!? き、気づかれてない? 気づかれてないよね!? ああ、でも痛い……!!
タツヤは毛布の中に顔を埋めた。
笑いを堪えるのに、全神経を集中させる。肩が震えるのを、必死に抑える。
(タンスにぶつけて悶絶する女騎士……反則だろ、それは)
爆笑しそうになるのを、腹筋に力を込めてこらえる。暗がりの中で、リュネが片足でぴょんぴょん跳ねている気配がした。たぶん、小指を押さえながら。
しばらくして、平静を装った声が聞こえた。
「[cold]……何か?」
リュネがこっちを向いた。闇の中で、彼女の姿がうっすらと見える。部屋着姿で、必死にすまし顔を作っている。
でも、心の声は絶叫だった。
——気づかれた気づかれたどうしよう最悪恥ずかしすぎるこんなの私のキャラじゃない!!
「[laughing]いや……プッ……!」
堤防が決壊した。笑いがもう止まらない。
「[angry]今、笑いましたね!!」
「わ、笑ってないです……ッ」
「笑った! 笑いました! 目が笑ってる!」
「……笑いました」
二人の間に、静寂が流れる。でも、それはさっきまでの、堅い沈黙じゃない。
ぷっ……と、今度はリュネの方が、小さく吹き出した。
「[sad]もう……最悪だわ」
月明かりに照らされた彼女の顔が、わずかに赤らんでいる。いや、俺も顔が熱い。タツヤは、毛布を引き上げて顔を隠した。
——ありがとう。こんな風に誰かと笑ったの、久しぶり。
リュネの本音が、小さく、でもはっきりと聞こえた。
「[whispers]今のは、見なかったことに」
「何のことですか」
タツヤは、そう答えながら、心の中で思う。
(次は、俺の番だ)
翌朝。
窓から差し込む朝日で、タツヤは目を覚ました。リュネはもう起きていて、いつもの完璧な鎧姿で立っている。
「[serious]今日から、あんたの訓練を始める。まずは基礎体力の確認から。文句は?」
「[gentle]ありません。よろしくお願いします」
リュネがポケットから、一枚の羊皮紙を差し出した。
「[serious]まずは、これ。スライム討伐の依頼書よ。基本から始めなさい」
タツヤはそれを受け取る。
(敵は、スライムだけじゃない。あのドルフって男、明らかに俺たちを潰そうとしてる)
男の本音は聞こえない。だからこそ、行動で示さなければならない。自分が役立たずではないことを。
窓の外を見る。廊下では、ドルフの使いらしい男が、こちらをちらりと見て立ち去るところだった。
タツヤは依頼書を握りしめる。昨夜の、あの不器用な笑い声が、まだ耳の奥に残っていた。
(この生活を、守るために)