リムルのとなりで、君は泣いて、そして笑う
いつもみんなを引っ張る気の強い女・シュナには、リムルの前でだけ見せる秘密の顔があった。普段の強気な態度は、彼の役に立ちたいがために作った仮の姿。
ある日、ほんの小さな傷をきっかけにリムルはシュナの部屋を訪れる。しかし、二人きりになった途端、シュナは大粒の涙をこぼしてしまう。「リムル様の前だと、私、どうしても抑えられなくなるんです」。それは彼女の特別な告白だった。
ずっと痛みをこらえ、弱さを見せまいとしてきたシュナ。リムルは優しく彼女を抱きしめ、髪を撫で、戦いで溜め込んだストレスを解放するように、二人の身体は深く求め合う。その夜、シュナは初めての痛みと、それ以上の甘い悦びを知る。
しかし、それは秘密の恋の始まりだった。毎夜のように逢瀬を重ねながら、人前ではこれまで通りの主従関係を演じる日々。それが少しずつ、シュナの心を蝕んでいく。
そんなある夕暮れ、リムルの部屋から出てきたベニマルとソウエイの姿を目撃してしまうシュナ。問い詰める彼女に、「特別なのはお前だけだ、シュナ」と言うリムル。それでも拭えない不安。そこへ、シュナを心配したシオンが現れ、泣きじゃくるシュナを抱きしめながら、自分
リムルのとなりで、君は泣いて、そして笑う - 恋のライバルは豪快ストレート~特製おにぎりと嫉妬の夜~
あの夜から、一週間が過ぎた。
シュナはいつも通り、セントラルオフィスの幹部会議室で議事録の準備をしていた。窓の外から暁の市の喧騒が聞こえる。野菜の値段を叫ぶゴブリン、武具を並べるドワーフ、人間の商人の声。いつもの朝の音だ。
でも、今日は違うことがひとつ。
リムル様が新しい秘書補佐を連れてくるという。誰だろう、と思っていた。
「おはよう、みんな」
リムル様が会議室に入ってきた。その後ろに、誰かいる。
紫色の長い髪。キラキラした赤紫色の大きな瞳。
シュナは、胸の奥がツキンと小さく痛むのを感じた。
「紹介する。今日から秘書補佐で入るシオンだ」
シオンは満面の笑顔で一礼し——それから、会議室中に響き渡る声で叫んだ。
「リムル様、大好きです! これからもずっとお側でお仕えします!」
会議室が、シンと静まり返った。
ベニマルが破顔する。
「おいおい、いきなりかよ! はっはっは!」
ハクロウが白い顎鬚を撫でながら、苦笑いを漏らす。
「相変わらずストレートじゃのう、シオンは」
ソウエイは無言で、壁際の影からシオンを見ていた。その金色の縦スリットの瞳には、何の感情も浮かんでいない。
シュナは、議事録を取る手を止めていた。
羽根ペンを持つ指先が、かすかに震える。
(リムル様に……あんな風に、公然と……)
胸の奥で、何かがギリッと締め付けられた。
「……では、議題に移ります」
自分の声が、いつもより冷たく響いた気がした。
会議の間中、シオンは事あるごとにリムル様に合いの手を入れた。
「リムル様、素敵です!」
「私もその提案、賛成です! リムル様の判断は完璧です!」
その度に、シュナの手元のペン先が微かに震えた。
(どうして……こんなに、苦しいんだろう)
リムル様が照れながらシオンを制する。
「シオン、少し静かに」
その声が、どこか優しい。
シュナの不安が、胸の中で膨らんでいく。
──
会議が終わった。
シュナが書類を整理していると、シオンがリムル様の前に駆け寄った。
「リムル様! 愛情を込めて作りました! 朝早起きして握った、特製おにぎりです!」
シオンが差し出したものを見た瞬間、その場の全員が凍りついた。
おにぎりは……紫色に発光していた。
表面からは不気味な湯気が立ち上り、微かにブクブクと泡立っている。
ベニマルが一歩後退る。
「おい、それ動いてないか? 今、動いたぞ?!」
リムル様の顔が、みるみる青ざめていく。
「あ、ありがとう……シオン。でも、これは……」
おにぎりから、微かに「キィィィ……」というモンスターの断末魔のような音が漏れた。
ソウエイが無言でリムル様の前に立ちはだかる。短剣を逆手に構えていた。
「毒性、致死量と推定。食べる前に死亡する可能性が高い」
ベニマルが腹を抱えて笑い転げる。
「シオン、お前の愛情は殺意と見分けがつかねえな! はっはっは!」
ハクロウがため息をついた。
「こりゃ封印処理じゃな。消防の魔石を持ってこい」
おにぎりは結局、ハクロウの指示で慎重に持ち去られ、封印処理されることになった。
シオンは全くめげていない。
「次はもっと美味しくなります! リムル様、楽しみにしててください!」
リムル様は机に突っ伏したまま、シュナに疲れた顔を向けた。
「シュナ……悪いけど、なんとかシオンに料理の基本を教えてやってくれ」
シュナは完璧な秘書の顔で答えた。
「承知しました」
(なぜ……私が……)
心の中では、唇を噛んでいた。
どうして私が恋敵の面倒を見なければならないの。
──
午後。
書類整理のため一人会議室に残ったシュナの元に、リムル様がやってきた。
「シュナ」
「何か御用ですか、リムル様」
シュナは書類から顔を上げずに答えた。
「シオンのこと、気にしてるだろ」
シュナの手が止まった。
「……別に。新しい同僚が増えただけです」
声は冷静だった。でも、書類を揃える手が小刻みに震えているのを、自分でも止められなかった。
リムル様が近づいてくる。
そっと、シュナの手の上に、リムル様の手が重ねられた。
温かい。
「お前が一番頼りにしてる。それは誰にも変わらない」
シュナの胸の奥が、じわりと熱くなる。
(リムル様……)
でも——それでも。
「……お気遣いありがとうございます、リムル様」
シュナは完璧な参謀の顔で返した。
秘密は守らなければならない。この関係は、誰にも知られてはいけない。
リムル様はそれ以上踏み込まずに、会議室を出ていった。
一人になったシュナは、左手首を見つめた。
あの夜の傷は、もう完全に治っている。
(リムル様は私にとって特別なのに……どうして私は、シオンみたいに堂々と言えないの)
自分を責める言葉が、胸の中でぐるぐる回った。
──
深夜。
紅蓮館の二階、奥まった角部屋。
シュナは寝間着に着替えて、窓辺に立っていた。月明かりが部屋に差し込んでいる。
外から足音が聞こえた。
(リムル様……)
前回の夜から、シュナはリムル様の足音を聞き分けられるようになっていた。
ノックの前に、シュナはドアを開けた。
「待ってたのか」
リムル様が微笑む。
シュナは顔を真っ赤にした。
「違います、たまたまです」
でも、震える指先でリムル様の袖をそっと掴んだ。
二人は自然に抱き合った。
唇が重なる。
前回よりも深い口づけ。舌と舌を絡め合う。リムル様の手が背中から腰へ、そしてお尻へと下りていく。
「んっ……」
シュナの身体が、甘く震えた。
ベッドに押し倒される。リムル様の指が寝間着の合わせ目を解き、素肌に触れた。
「シュナ、綺麗だ」
リムル様の唇が、首筋から鎖骨へ、そして胸のふくらみへと下りていく。
「あっ、リムル様……そこ……」
乳首を舌で転がされると、背中が弓なりになった。
前回よりも、身体が素直に反応する。リムル様の指が、下腹部をなぞるだけで、もうそこは温かく濡れていた。
「シュナ、欲しい」
リムル様の囁きに、シュナの理性が溶ける。
脚を自分から開いた。
リムル様が、硬くそそり立ったペニスをシュナのまんこにあてがう。
「入れるぞ」
「はい……来て、リムル様……」
ずぶり、と熱いものが入ってくる。
「んあぁっ!」
前回の痛みはなく、深く満たされる感覚だけが全身を走る。
リムル様の腰が動き始める。
「はっ、あっ、あぁ……リムル様、リムル様ぁっ」
シュナは初めて、自分から腰を動かした。
もっと奥まで、もっと深く——。
膣がリムル様のペニスに締め付く。ピストンが速くなる。
「シュナ、イくぞ……」
「私も……私も、イっちゃいます……ああぁっ!」
リムル様が一番奥まで突き入れた瞬間、熱いザーメンが膣内にどくどくと注ぎ込まれた。
シュナの身体が大きく痙攣する。
快楽の波が全身を飲み込もうとした——その時。
ふと。
脳裏に、シオンの笑顔がチラついた。
(シオンも……リムル様に、こんな風に愛されたいと思ってるの?)
シュナの胸を、チクリと嫉妬の棘が刺した。
──
行為の後。
リムル様の腕の中で、シュナは天井を見つめていた。
リムル様はもう寝息を立てている。
(私だけを見てほしい)
そう思った。
初めてはっきりと、独占欲を自覚した。
(これが愛なのか、ただの執着なのか……自分でもわからない)
シュナは唇を噛み、目を閉じた。
──
翌朝。
リムル様が早朝に出て行った後、シュナは寝不足のまま廊下を歩いていた。
「シュナさん! おはようございます!」
シオンが、元気いっぱいに挨拶してきた。
「……おはようございます」
シュナが短く返すと、シオンはキョトンとした顔で首を傾げた。
「シュナさんもリムル様のこと、大好きですよね?」
あまりにもストレートな直球。
シュナの顔が、一気に真っ赤になる。
「な、なにを……」
「私、わかるんです! そういうの!」
シオンは無邪気に笑う。
「シュナさん、リムル様がいるときだけ声が柔らかくなりますよね。それって好きってことですよね?」
シュナは何も言えなかった。
「わ、私はただの秘書です。リムル様に仕えることが私の役目で——」
しどろもどろに言い訳する。
でも、シオンは笑顔のまま首を振った。
「えー? でもシュナさん、すごく素敵だと思いますよ。リムル様に恋するなんて!」
シュナはそれ以上耐えられなかった。
「失礼します!」
走り去るシュナの背中に、シオンの声が追いかけてきた。
「シュナさん、今度一緒にリムル様のためにお料理しましょうねー!」
廊下を走りながら、シュナは胸の奥が苦しくなるのを感じていた。
(シオンにすら、見抜かれてる)
自分の感情のわかりやすさが情けない。
それでも隠し続けなければならない立場の辛さが、胸に突き刺さる。
(私は——リムル様の恋人として、堂々と隣に立てる日が来るんだろうか)
振り返らずに走り去りながら、シュナの心の中に、小さな火種が確かに灯った。
それはまだ小さな火種だった。でも、いつか大きな炎になる——そんな予感が、静かにシュナの胸の奥で燻っていた。Noveliaとは?
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