強制女性化女装物語:ユウタがユウカに変わるまで
親友が、女の子になっていく。
幼馴染のアキラは、ある日突然スカートを履いて登校してきた。戸惑う周囲をよそに、アキラは静かに「女子」としての日常に溶け込んでいく——華奢な体、柔らかな声、男子たちを惹きつける笑顔。かつて無口でぶっきらぼうだった親友の変貌を、ユウタはただ黙って見つめることしかできない。
「お前、最近アキラのこと見すぎじゃね?」
友人の何気ない一言が、ユウタの中に眠っていた感情を暴き出す。これは心配なのか、それとも——。
図書室で見つけた古い校内新聞の切り抜きには、「女子化現象」「セイレーンの魔法」という不穏な言葉が記されていた。そして届く、アキラからの謎めいたメッセージ。『今夜、屋上に来て』
揺れ動く友情と禁断の感情、そして学園に隠された不可解な秘密。
ユウタは今夜、屋上で何を知り、何を失い、何を得るのか——。
変わっていくのは、アキラだけなのか。
それとも、ユウタ自身も——?
強制女性化女装物語:ユウタがユウカに変わるまで - セイレーンの涙 ――親友の告白と、唇の記憶
放課後の海沿いの公園は、潮の香りが強かった。
ユウタはベンチに座ったまま、何度目かわからないため息をついた。スマホの画面には、アキラからの短いメッセージ。
『話したいことがある。海辺の公園、ベンチで待ってる』
それだけだった。
昨日の朝、鏡で見た自分の胸のふくらみが、まだ頭から離れない。制服の下に、まだ女物の下着をつけている。脱ごうとしたのに、どうしても脱げなかった。指が震えて、布に触れることすら怖かった。
(俺、どうなっちまうんだ)
メガネのフレームを押し上げる。指先が、ほんの少し震えている。
夕日が、ミラージュ湾の水面を橙色に染めていた。波の音が、規則正しく耳に届く。遠くでカップルが笑い合っている声がして、ユウタは余計に居心地が悪くなった。
(アキラは、何を話すつもりなんだ)
昨日の夜、ミコトからのメッセージもあった。『今夜、また音楽室に来て。今度こそ、最後までやるから』。あれを無視した。スマホの電源を切って、布団に潜り込んだ。
でも、今こうしてアキラに呼び出されて、結局来てしまった。
(俺は、逃げられないのか)
波の音が、やけに大きく聞こえる。
────────
「ユウタ、来てくれたんだ」
声がして、顔を上げた。
アキラが、夕日を背にして立っていた。
茶色の髪が、海風にふわりと揺れる。セーラー服のスカートの裾が、白い太ももに張り付いている。色素の薄い茶色の瞳が、夕日を受けて金色に透けていた。
(また、綺麗になってる)
そう思ってしまった自分に、ユウタは内心で舌打ちした。
アキラは、ゆっくりとユウタの隣に腰を下ろした。ベンチが、わずかに軋む。
「待った?」
「……いや、今来たとこだ」
声が、少し上ずった。
アキラが、ふっと笑う。その笑い方が、前よりずっと柔らかくて、女の子みたいで。
「ごめんね、急に呼び出したりして」
「……別に、いいけど」
二人の間に、沈黙が落ちた。
波の音だけが、満ちては引いていく。
アキラは、遠くの水平線を見つめていた。その横顔が、夕日に照らされて、なんだか泣き出しそうに見えた。
(何を、話すんだ)
ユウタは、アキラの次の言葉を待った。
────────
「ユウタ、俺さ」
アキラが、ぽつりと切り出した。
「俺、ミコトちゃんに、女装させられたんだ。最初は、マジで嫌だった」
ユウタの体が、固くなった。
「あれは、三ヶ月くらい前。放課後、ミコトちゃんに呼び出されてさ。『お願い、ちょっとだけ』って言われて、断れなかった。あの子、笑顔で頼むくせに、断ったら何されるかわかんない空気、出すだろ?」
「……ああ、なんとなく、わかる」
ミコトの笑顔を思い出す。あの、有無を言わせない微笑み。
「それで、言われるままに、女子の制服着せられて。鏡見た時、マジで死にたいって思った。男が、女の服着てるんだぜ? 気持ち悪いだろ」
アキラの声が、わずかに震えた。
「でも、ミコトちゃんが、俺の手を握ってさ。『綺麗だよ、アキラ』って、本気で言うんだ。あの目で見つめられると、なんか、頭がおかしくなりそうで」
ユウタは、黙って聞いていた。
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。
「それから、毎日。放課後になるたびに、ミコトちゃんが俺を呼び出して、女装させて。俺、抵抗したんだよ。最初の一週間は、本気で。でも、あの子、俺が逃げようとすると、泣くんだ。『アキラがいないと、私、ダメになっちゃう』って」
アキラが、自分の髪を耳にかけた。その仕草が、もう完全に女の子のものだった。
「それで、気づいたら、体が変わってた。胸が膨らんで、腰が細くなって、声も高くなって。魔法だって、ミコトちゃんに聞かされた。セイレーンの魔法。女装した男を、女に変える魔法だって」
「……そんな」
「信じらんないだろ? 俺も、信じたくなかった。でも、現実に、俺の体は変わってる。お前も、もう気づいてるだろ」
アキラが、ユウタの方を向いた。
夕日を背にしたその顔は、もう、ユウタが知っている「親友のアキラ」ではなかった。
「俺、男だったのに。バスケ、お前と一緒にやってたのに。今じゃ、スカート履いて、男に媚びる笑い方してる。最低だろ?」
「……そんなこと、ない」
声が、震えた。
「あるよ。俺が一番、わかってる」
アキラが、自嘲するように笑った。
「でも、今は、ミコトちゃんに甘えてる自分もいる。あの子に撫でられると、嬉しいって思っちゃう。女の子の体も、気持ちいいって、思っちゃってる。俺、もう、どうしようもないんだ」
────────
ユウタは、何も言えなかった。
(アキラは、苦しんでる)
(でも、同時に、女の子になったことを、受け入れてる)
その両方が、痛いほど伝わってきた。
海風が、二人の間を吹き抜ける。
アキラの髪が、ふわりと舞った。
(俺は、こいつを、綺麗だと思ってる)
夕日に照らされたアキラの横顔が、あまりにも美しくて。
ユウタは、自分の感情が、同情なのか、それとも別の何かなのか、わからなくなっていた。
「ユウタ、聞いて。もっと、話したいことがあるの」
アキラが、声を潜めた。
「ミコトちゃんのこと」
ユウタは、アキラの顔を見た。
「ミコトちゃんも、何かを失ってるみたいなの。魔法を使うたびに、記憶が抜け落ちていくらしくて」
「……記憶が?」
「うん。この前の儀式の時も、ミコトちゃん、急に倒れて。『また、記憶が……』って、呟いてた。最近では、自分の名前すら、危うい瞬間があるみたいで」
アキラの声が、震え始めた。
「私を女にしたのは、ミコトちゃんなのに。そのミコトちゃんが、消えそうで、怖い。あの子、私のせいで、どんどん記憶を失ってる。なのに、あの子は笑ってるの。『アキラが可愛くなれば、それでいい』って」
アキラの目から、涙がこぼれた。
夕日を受けて、涙の粒が、金色に光る。
「私、どうすればいいの。ミコトちゃんを助けたい。でも、私には、何もできない。魔法のことも、よくわからない。ただ、あの子の言う通りに、女になっていくことしか……」
アキラが、両手で顔を覆った。
肩が、小さく震えている。
────────
ユウタの胸の奥で、何かが、はっきりと動いた。
(ミコトさんも、犠牲者だったのか)
支配者だと思っていた。全てを操っている、恐ろしい存在だと思っていた。
でも、違う。
ミコトも、魔法に記憶を削られている。自分の名前すら、わからなくなるほどに。
(単純な、善悪じゃ、割り切れない)
ユウタは、唇を噛んだ。
アキラを助けたい。
ミコトの暴走も、止めたい。
でも、どうすればいいのか、何もわからない。
「アキラ」
ユウタは、アキラの手を、握った。
アキラの手は、冷たかった。
「俺、お前を一人にしない」
アキラが、顔を上げた。
涙で濡れた瞳が、ユウタを見つめる。
「ミコトさんのことも、放っておけない。二人とも、助ける方法を、絶対に見つける」
ユウタは、自分の言葉に、自分で驚いていた。
(俺、今、何を言ってるんだ)
(助ける方法なんて、あるのか)
(でも、言わずには、いられなかった)
アキラの手を、強く握る。
アキラの瞳に、安堵の色が浮かんだ。
でも、その奥に、別の感情が、一瞬よぎった。
(……寂しさ?)
(いや、これは……決意?)
ユウタが、その意味を考える前に、アキラが、ユウタの手を握り返した。
「……ありがとう、ユウタ」
アキラが、微笑んだ。
でも、その笑顔は、どこか悲しげで。
二人の間に、沈黙が流れた。
波の音だけが、静かに、響いていた。
────────
どれくらい、そうしていただろう。
夕日が、ほとんど沈みかけていた。
空が、紫から藍色に変わっていく。
「……違う、ユウタ」
アキラが、静かに首を振った。
「私、もう、元の私じゃないの」
「……え?」
「ユウタが思ってるような、『助ける』は、もうできないの。私の体は、もう、戻らない。心も、戻れない。女の子の体も、ミコトちゃんに甘えるのも、全部、私の一部になっちゃった」
アキラの目が、赤く潤んでいく。
「だから、お願い。ユウタ、あなたもこっちに来て。私と同じ道を、選んでほしい」
「な……何を、言って……」
「ユウタ、私は、一人で女になるのが、怖かった。でも、ユウタが一緒なら、怖くない。二人で、女の子になろう? ミコトちゃんも、喜ぶわ」
アキラが、ユウタの頬に、手を添えた。
ひんやりとした、細い指。
「やめろ、アキラ。俺は……」
「ユウタ君、女の子になろう?」
アキラの顔が、近づいてくる。
甘い香りが、鼻をくすぐる。
(逃げなきゃ)
(でも、体が、動かない)
アキラの唇が、ユウタの唇に、重なった。
────────
柔らかかった。
そして、しょっぱかった。
アキラの涙が、唇の端から、流れ込んでくる。
(これが、アキラの、味)
ユウタは、一瞬、肩を引いた。
抵抗しようとした。
でも、できなかった。
アキラの唇の柔らかさと、涙の味が、ユウタの体を、金縛りにした。
心臓が、痛いほど脈打つ。
胸の奥で、抗う心と、受け入れたい心が、激しくぶつかり合う。
(やめろ)
(離れろ)
(……もっと)
自分の心の声が、ぐちゃぐちゃになる。
アキラの舌が、ユウタの唇を、そっとなぞった。
びくっ、と体が跳ねる。
でも、逃げられない。
長いキスだった。
永遠に続くような、でも、一瞬で終わってしまうような。
────────
唇が、離れた。
「……ごめんね。でも、本気よ」
アキラが、泣き笑いの顔で、そう言った。
「また、明日。学校でね」
アキラは、ベンチから立ち上がった。
スカートの裾が、夕闇の中で、ひらりと揺れる。
「……アキラ」
声をかけた。
でも、アキラは振り返らずに、公園の出口へ向かって、歩いていった。
その後ろ姿が、藍色の闇に、溶けていく。
ユウタは、ベンチに一人、残された。
────────
唇に、指を触れる。
まだ、アキラの感触が、残っている。
柔らかくて、しょっぱくて、温かかった。
(俺、今、キスされたんだ)
(アキラに)
(男だった、親友に)
頭の中が、真っ白になる。
波の音が、遠くで聞こえる。
空には、一番星が、ひとつだけ、光っていた。
ユウタは、しばらく、動けなかった。
────────
家に着いたのは、すっかり暗くなってからだった。
「ただいま……」
誰もいない家に、声が吸い込まれていく。
親は、まだ仕事で帰っていない。
ユウタは、自分の部屋に入ると、カバンを床に放り投げて、ベッドに倒れ込んだ。
天井を見つめる。
(アキラの、唇)
(涙の味)
(『女の子になろう?』)
全部、頭の中で、ぐるぐる回っている。
「……くそ」
呟いて、目を閉じた。
でも、目を閉じると、余計に、アキラの顔が浮かぶ。
夕日に照らされた、泣き笑いの顔。
────────
ユウタは、起き上がった。
無意識に、部屋の隅にある、姿見の前に立っていた。
鏡の中の自分と、目が合う。
角フレームのメガネ。
黒い髪。
少し疲れた顔。
(……いつもの、俺)
でも、違う。
ユウタは、震える指で、制服のシャツのボタンを、外し始めた。
一つ、また一つ。
シャツを、ゆっくりと開いていく。
胸元が、鏡に映る。
「……っ」
胸のふくらみが、昨日より、ほんの少しだけ、大きくなっている。
ほんの少し。
でも、確実に。
乳首は、桜色に色づいていて、触れてもいないのに、じんと熱を持っている。
「やべえ……」
呟いた。
でも、目が、離せない。
鏡の中の自分の胸を、じっと、見つめてしまう。
おそるおそる、指を伸ばす。
乳首に、触れる。
「……っ、ぁ」
甘い痺れが、胸から全身に走った。
足の力が、抜けそうになる。
(なんで、俺、こんなことしてるんだ)
(やめなきゃ)
(でも、気持ちいい)
指が、勝手に、もう一度、触れる。
「……あ」
声が、漏れた。
その声が、自分でも、少し高くなっている気がした。
────────
そのとき、スマホが震えた。
ベッドの上で、画面が光る。
ユウタは、シャツを閉じて、スマホを手に取った。
通知。
送信者は、『ミコト』。
指が、震える。
画面を、タップする。
『明日、放課後。最後の仕上げをするわ。逃げたら、アキラの秘密を全校にバラすから』
「……!」
心臓が、凍りついた。
(アキラの秘密を、全校に)
(そんなことされたら、アキラは……)
ユウタの頭の中に、アキラが学校中から好奇の目で見られる光景が浮かぶ。
噂をされて、笑われて、追い詰められて。
(それだけは、ダメだ)
でも、ミコトの言う通りにすれば、自分は。
『最後の仕上げ』
その言葉が、頭の中で、こだまする。
(最後の仕上げって、なんだ)
(俺は、どうなるんだ)
恐怖が、全身を駆け巡る。
でも、その恐怖の奥に、別の感情が、確かにあった。
(……知りたい)
(最後の仕上げを、受けたら、俺は、どうなるんだろう)
アキラのキスの感触が、唇に蘇る。
鏡の中の、自分の胸のふくらみが、頭から離れない。
「……俺は、どうかしてる」
ユウタは、スマホを握りしめたまま、ベッドに倒れ込んだ。
天井を見つめる。
アキラの涙の味。
ミコトの脅迫。
自分の体の変化。
全部が、頭の中で、ぐちゃぐちゃに渦巻いている。
「……逃げたい」
呟いた。
「……でも、逃げられない」
小さく、続けた。
「……それに、少しだけ……期待してる」
その言葉は、暗い部屋の中に、消えていった。
窓の外では、月が、雲に隠れていた。
セイレーン学園の校舎が、闇の中に、静かに、そびえている。
ユウタは、一睡もできずに、朝を迎えた。Noveliaとは?
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