ワトソン・アメリアのもう一つの世界線 ~タイムループを抜けた先の、君~
四千回。
ワトソン・アメリアが繰り返したタイムループの数だ。九月の七日間で七人が消える「セプテンバー・ノット事件」――その正史では、後輩のイリスがいつもアメリアを守るために道を踏み外し、全てを闇に葬ってきた。
幾千もの絶望の果て、アメリアはようやく正史から逸脱した世界線にたどり着く。ループの記憶を持たない、優しいだけのイリスと、平穏な日常を送れるはずだった。
なのに、よりによって隣の部屋に越してきたのは、他ならぬイリスだった。しかも今度の彼女は、驚くほどまっすぐにアメリアを慕っている。好みの味付けも、好きな店も、何もかも――まるでループの記憶が身体のどこかに刻まれているかのように。
「好きになっちゃいけない」
そう自分に言い聞かせるアメリアの前で、懐中時計の針が、カチリと音を立てて動いた。
静かだったはずの街で、若い女性が夜道で忽然と消えるという奇妙な噂が広がり始める。それは、あの忌まわしい事件の始まりと、あまりにもよく似ていて――。
本当の幸せは、何度繰り返しても手に入らないものなのか。それとも、今度こそ違う結末に辿り着けるのか。
タイムループの果てに見つけた"もう一