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祖母の葬儀に向かう途中、塩見誠は見知らぬ無人駅のベンチで目を覚ます。 看板には「上辻」――聞いたこともない駅名。針の止まった時計、油の匂いがする灯り、そして一匹の猫。首輪には「ハル」と彫られていて、その字の癖には、なぜか見覚えがあった。 滑り込んできた電車に乗ると、行き先を示す幕には、祖母の暮らしていた町の名前。手にした切符には、すでに鋏の跡がついている。裏に、復路の欄はない。 車内では、誰もいないはずの席に人影が現れ、写真には撮った覚えのない一枚が増え、切符の余白は誠の知らないところで埋まっていく。ただ一つ、膝の上のハルの重みだけが、乗車したあの瞬間から変わらずにそこにある。 乗るべきか、降りるべきか。答えは、誰も教えてくれない。 全十六話。
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