琥珀の罠 ~冷徹社長は夜だけ淫らに求める~
【琥珀の罠 ~冷徹社長は夜だけ淫らに求める~】
失恋の痛みを忘れようと、バーで出会った謎めいた男と衝動的に一夜を共にした28歳の広告代理店勤務・加賀美栞里。翌朝、緊急招集された会社の会議で現れた新社長は、昨夜の相手その人だった。
公私混同は一切許さないと公言し、冷徹な若き実業家として名高い西園寺怜真は、栞里を完全に無視する。だが、安堵も束の間、仕事終わりに「今夜9時、来い」とだけ告げられ、高級ホテルへと呼び出される。そこでは、昼間の氷のような態度が嘘だったかのように、怜真は彼女を灼熱の抱擁で包み込む。
「お前を誰にも触れさせない」——強烈な独占欲を叩きつけられ、二人だけの危険な秘密の関係が始まる。昼は他人、夜は恋人。ほろ苦い情事に心を溶かす栞里。だが、怜真の残酷さは留まるところを知らず、皆の前で叱責するためだけにオフィスへ呼び出したかと思えば、その夜には優しく抱きしめる。
混乱のさなか、怜真の元婚約者で大株主の妖艶な美麗が現れ、衝撃の事実を暴露する。「彼は復讐のためにあなたを利用しているの」。栞里の亡き父が怜真の父を裏切った過去があり、会社を乗っ取った上で栞里を心身ともに支配する
琥珀の罠 ~冷徹社長は夜だけ淫らに求める~ - 救出と告白——屋上の真実、そして初めての対等な夜
風が、栞里の指を冷たく撫でた。
手すりの鉄の感触だけが、今の彼女とこの世界を繋ぐ細い糸だ。眼下の東京の街は、何事もなかったかのようにきらめいている。
(あたし——)
頭が真っ白だった。さっきまで握っていた封筒は、もう風に舞って手の届かない場所にある。父の無実を証明する、たった一つの手がかりだったのに。
すぐ目の前に、神宮寺美麗の顔がある。漆黒の長い髪が風に舞い、猫のように切れ長の赤い瞳は、凍りつくほど冷たく笑っていた。
「[whispers]加賀美さん、少しだけ痛いかもしれませんわね。でも、すぐに終わりますわ」
美麗の白い指が、栞里の手首を掴んだ。万力のような力。一本、また一本と、手すりを掴む栞里の指が剥がされていく。
(いや——)
声が、出ない。恐怖が喉に栓をしたみたいに、言葉をせき止めている。
「[whispers]怜真は、私がいただきます。あなたのいない世界でね」
美麗が腕を引いた、その瞬間——
バァン!!
銃声のように重く、非常扉が開く音が屋上に響いた。
「そこまでだ」
低く、地の底から響くような声だった。
怜真が、一直線に歩いてくる。長いコートの裾が風に翻る。その青い瞳には、これまでの冷徹さとは全く違う、剥き出しの怒りと——かすかな焦りがあった。
美麗の腕を掴み、ねじり上げる。
「きゃっ……!」
美麗の細い体が、たたらを踏んだ。
栞里の体から力が抜けた。膝が折れ、地面に倒れ込む。頬に当たるコンクリートの冷たさが、生きている証拠だった。
「無事か」
気がつくと、怜真がすぐそばにしゃがみ込んでいた。両手で栞里の顔を包み、まっすぐに目を覗き込む。
その目が——震えていた。
(この人が、こんな顔をするなんて)
栞里の瞳から、ぼろぼろと涙がこぼれた。止まらなかった。恐怖と、安堵と、名前のつけられない感情が全部混じって、嗚咽に変わる。
怜真は一瞬だけ唇を噛みしめ、立ち上がった。そのまま、美しい獣のような動きで美麗に向き直る。
「[cold]いつから来ていたと思う」
声は、凍りつくように冷たかった。
「[cold]お前がこの屋上に栞里を呼び出した時から、すべて筒抜けだった」
風に散った白い紙片が、怜真の足元に落ちる。彼は屈み込み、その一枚を拾い上げた。
表情が、固まる。
それは、父・恭一郎からの直筆の手紙だった。『加賀美くん、君を信頼している——』。乱暴に折りたたまれた便箋の文字を、怜真は息を詰めて見つめる。
次に、彼は別の紙片を拾い上げた。美麗の優雅な筆跡——内部資料に走り書きされた数字の改ざんの痕跡。
「[whispers]お前が……全てを」
怜真の声が、かすれた。
彼はゆっくりと美麗に向き直る。手にした紙片を握りしめ、指が白くなる。
「[angry]お前が全てを仕組んだのか。加賀美誠一郎の背任——あれは全部、お前の偽造だったのか」
美麗は——笑った。
それまでの冷たい微笑とは違う、諦めと狂気の境目のような、薄い笑みだった。
「[gentle]ええ、そうですわ」
美麗の声は、驚くほど穏やかだった。
「[gentle]私が作りましたの。あの捏造書類も、背任の証拠も、すべて。だって——加賀美さんが邪魔だったんですもの」
一歩、美麗が前に出る。怜真の胸元に、細い指を伸ばすように。
「[whispers]あなたのお父様が、加賀美さんを信頼しすぎていた。あのままでは、西園寺グループと加賀美家の絆は揺るがなくなる。そうなれば——あなたは、私からもっと遠くなる」
漆黒の瞳が、怜真だけを捉えている。
「[whispers]怜真。私はずっと、あなたを愛していた。あの政略結婚の話が白紙になった時、私は決めたんです。邪魔者を消してでも、あなたを手に入れようと」
「[cold]だから無実の人間を貶めたのか」
「[sarcastic]無実?あの男は、あなたの父親の信頼を得ていた。それだけで十分、罪ですわ」
美麗の声が、初めて震えた。
「[angry]あなたが彼女なんかに目を向けなければ、全部うまくいったのに!」
憎悪のこもった視線が、地面に座り込んだままの栞里へと向けられる。
怜真が、体で栞里を庇うように立ちふさがった。
美麗の表情が、はじめて崩れた。
完璧だった魔性の美女の顔から、血の気が引いていく。赤い唇が、言葉を失ったように小さく開いた。
「[whispers]……そんな顔も、できるのね」
怜真は答えない。代わりに、胸ポケットから銀色の小さな機器を取り出した。録音機——赤いランプが規則正しく点滅している。
「[cold]全部、録れている。藤堂」
怜真の声に呼応するように、非常階段の影から秘書の藤堂が姿を現した。彼女は無表情のまま、タブレットを美麗へと向ける。
「警察にはすでに連絡済みです。神宮寺様、しばらくの間、ご協力をお願いいたします」
美麗の顔から、表情が消えた。
笑みも、怒りも、狂気も——何もかもが抜け落ちた、静かな顔だった。
「[gentle]そう」
一言だけ呟いて、美麗は藤堂に連れられ、非常階段へと消えていった。最後に振り返ることもなく、ただ静かに。
屋上に、怜真と栞里だけが残された。
東京の夜景が、二人を静かに包み込む。遠くのビル群の窓明かりが、星のように瞬いていた。
「……すまない」
低い声だった。
栞里が顔を上げると、怜真が——膝をついていた。
スーツの膝が、冷たいコンクリートに触れている。いつもあれほど威圧的で、社員を見下ろすことしかなかったあの人が、今は自分を見上げていた。
「[sad]俺は……間違えていた」
怜真の声が震える。こんなことは初めてだった。
「[sad]お前の父を信じなかった。お前を道具にしようとした。昼は傷つけ、夜は縛り付けた。それでも——それでもお前を傷つけることで、自分の正しさを証明しようとしていた」
青い瞳が、苦しみに歪む。
「[sad]父を殺した犯人は、俺の思い込みだった——父とお前の父親は、本物の信頼で結ばれていた。それを、俺が見ようとしなかっただけだ」
怜真が、震える手を差し出した。
「[sad]だから——何を言われても仕方ない。罵ってもいい。殴ってもいい。でも——」
指先が、栞里の手に触れるか触れないかの距離で、止まった。
「[crying]愛している。お前だけを守りたい」
栞里は、動けなかった。
頭の中では、父の無念。罵られる日々。美しい嘘。引き裂かれた服。冷たい声。あの夜の、痛みと快楽——
全部が渦を巻いていた。
でも——。
それでも、今、膝をついているこの男を。
憎めなかった。
「……あたしも」
声が、涙でぐしゃぐしゃだった。それでも、笑おうとした。
「[crying]あたしも、ずっと——あなたが好きでした」
栞里の手が、怜真の手に触れた。
怜真が顔を上げる。その青い瞳が、信じられないものを見るように見開かれた。
「[surprised]お前——」
栞里は返事の代わりに、一歩前に出た。両手で怜真の肩を掴み、膝立ちのままの彼を見下ろす。
「[crying]憎もうと、しました。何度も。それでも、どうしても好きだったんです。あたし——どうしてなのか、自分でもわからないんです」
涙が、怜真のスーツの肩に落ちた。
怜真が立ち上がる。そのまま、壊れものを扱うように、そっと栞里を胸に引き寄せた。
「……すまない」
耳元で、同じ言葉が繰り返される。
「それでも、手放せない。許せとは言わない——でも、もう一度だけ、チャンスをくれないか」
返事の代わりに、栞里は怜真の胸に顔を埋めた。
静かに、優しく、怜真の唇が栞里の唇に重なる。
これまでの、貪るようなキスではなかった。支配でも、征服でもない。傷つけたことを謝るように、慈しむように——ただ、触れ合うだけの口づけだった。
長い長い、沈黙が続いた。
東京の夜景だけが、二人のまわりで静かに瞬いていた。
——
ヴァンベールのスイート「月華」に、静かに照明が灯る。
窓の外には、いつもの東京タワー。部屋の中は、柔らかな間接照明だけが、二人の影を壁に映していた。
怜真は玄関で立ち止まると、栞里の顔を正面から見つめた。
「[gentle]嫌なら言え。今日は、それで終わりにする」
いつもと同じ言葉。なのに——今夜は、違っていた。選択を、ゆだねている。初めてのことだった。
栞里は何も言わず、ただ首を横に振った。
怜真の手が、震えながら栞里の髪にかかる。耳の後ろにそっと指を差し入れ、こめかみに唇を落とした。
「[gentle]お前が、信じられない」
その声は、泣いているようでもあった。
怜真の唇が、首筋をなぞる。鎖骨のくぼみに、熱い吐息がかかった。いつもは乱暴だった手が、今夜はまるで初めて触れるように慎重で、戸惑っている。
栞里は震える指で、怜真のシャツのボタンに触れた。
一番上のボタンを、外す。
二つ目。三つ目。
「[surprised]お前が……」
怜真の声が驚きに震える。
栞里は顔を上げて、怜真の目をまっすぐに見つめた。
「[gentle]私も——あなたを求めていい、ですか」
その言葉に、怜真の表情が溶けた。
氷のような青い瞳が、信じられないほど柔らかく細められる。口元に、初めて見る優しい笑みが浮かんだ。
「[gentle]ああ。求めてくれ」
二人はベッドにゆっくりと沈み込んだ。
怜真の手が、聖書をめくるように丁寧に、栞里のブラウスのボタンを一つひとつ外していく。露わになる鎖骨、肩、胸の谷間——そのすべてに、確認するように唇が降りてきた。
下着のホックが外される。怜真の大きな手が、栞里の乳房をそっと包み込んだ。親指で頂点をなぞられ、栞里の口から小さな吐息が漏れる。
「あっ……」
怜真の唇が、乳房のふくらみを辿り、乳首を口に含んだ。舌先で転がされ、そっと吸い上げられるたび、背筋が甘く震えた。
「声を、聞かせてくれ」
その言葉が、優しかった。
いつもの命令ではない。ただの願いだった。
栞里は素直に、声を漏らした。
「……んっ」
怜真の指がスカートの下に滑り込み、太腿の内側をそっと撫で上げる。ストッキング越しに感じる熱に、腰が自然と動いた。下着の上から、すでに熱く濡れた割れ目を指の腹でなぞられる。布越しに感じる圧力に、栞里の口からは切なげな声が続いた。
「あ、や……ああっ」
「綺麗だ」
囁きと同時に、下着が足から引き抜かれた。怜真は自分の服を脱ぎ捨て、すでに硬く勃起したペニスを解放する。先端からは透明な先走り汁が光っていた。彼は栞里の脚を優しく開かせ、その中心に顔を埋める。
「ひあっ……!」
生暖かい舌が、敏感に充血したクリトリスを捉えた。ねっとりと舐め上げられ、吸い付かれ、栞里はシーツを握りしめた。恥ずかしいほどに濡れたそこから、ぐちゅぐちゅと水音が響く。
「やだ、そんな、音……」
「気にするな。もっと聞かせろ」
舌が膣の入り口をまさぐり、熱い蜜を掬い取るように舐められる。腰が浮き、声が止まらなくなった。
「あっ、ああっ、だめ、イっちゃ——」
絶頂が近づくのを感じた瞬間、怜真の指がそっと膣内に侵入してきた。中を探るように動かされ、子宮の入り口をクッと押し上げられる。
「ああああっ——!!」
視界が真っ白に弾けた。膣が怜真の指をぎゅうっと締め付ける。全身がビクビクと痙攣した。
絶頂の余韻でぼんやりする栞里を、怜真は優しく抱き起こした。そのまま向かい合うように座らせ、彼のペニスを濡れそぼった膣口にあてがう。亀頭がひくつく入り口に触れる感触に、栞里の体が小さく跳ねた。
「自分で、入れてみるか?」
怜真の問いに、栞里はこくりと頷いた。震える手で、熱く硬いペニスを支える。自分の一番敏感な場所に、先端を押し当てた。
ずぶり、と音を立てて、先端が埋まる。奥へ、奥へと沈み込む感覚に、二人は同時に息を詰めた。
「あ、ああ……熱い……」
「栞里……中が、すごい……」
初めて、怜真が名前を呼んだ。
栞里はゆっくりと腰を落とし、根元まで咥え込む。最奥を亀頭がノックし、お互いの存在を深く感じ合った。
「動くぞ」
怜真が腰を下から突き上げ始める。パンパンと肌がぶつかる小気味良い音が部屋に響いた。そのたびに、栞里の口からは甘い悲鳴が漏れた。
「あっ、ああっ、怜真、さん……」
「もっと、呼べ」
「怜真! ああっ、ああっ、すごい、中、きてる……!」
栞里の声に応えるように、怜真も低くうめく。彼は栞里の腰を掴むと、射精のタイミングを計るように、より深く、より速く突き上げた。
「イく——一緒に、イってくれ」
「あああっ、イく、イっちゃう——!!」
ドクン、と最奥でペニスが膨張した。熱い精液が子宮の入り口に叩きつけられるように放たれる。その熱に誘われるように、栞里も二度目の絶頂を迎えた。膣が痙攣し、怜真の精液を搾り取るように収縮する。
「あ……あ……」
長い射精が終わり、怜真が栞里の背中に手を回す。繋がったまま、優しくシーツの上に倒れ込んだ。
互いの汗と体液で濡れた体を寄せ合い、荒い息を整える。怜真の手が、栞里の乱れた髪をゆっくりと撫でた。
「……もっと、そばに」
栞里がそう呟くと、怜真は彼女の額に唇を押し当てた。
まだ繋がっていた。
熱も、鼓動も、吐息も、すべてが一つだった。
幾度も重なり合いながら——夜が深まっていった。
——
明け方近く。
窓の外が白み始める頃、栞里は怜真の胸に顔を当てたまま、静かに目を開けた。規則正しい心臓の音が、耳に心地よい。
「……明日、社内で全部話す」
怜真が、ぽつりと言った。
「父のこと。美麗のこと。そして——お前の父親が、無実だったこと」
栞里は顔を上げないまま、こくりと頷いた。
その目には、新しい涙が滲んでいた。
でも——それはもう、絶望だけの涙じゃなかった。