AIの文章が薄くなる理由 — 全部を等しく書くと、どこも読まれない

AIの文章を読んで「うまいけど薄い」と感じたことがあるはずです。誤字はなく、文法も整っていて、それでも何も残らない。この薄さには、はっきりした正体があります。密度が均一であることです。そして均一さは、三つの分かりやすい形で表に出ます。

人間の文章は、密度が波打っている

人が書く時、力の入る場所と抜ける場所が勝手にできます。どうでもいい移動は一行で飛ばし、指が触れた瞬間には三段落使う。この凸凹が、読んでいる人の呼吸になります。

AIは凸凹を作りません。移動にも、指先にも、同じ丁寧さで同じ分量を割り当てます。どこにも力が入っていないので、読者はどこで息を止めればいいのか分からない。それが「読めるのに残らない」の中身です。

直し方は単純で、書く量を場面ごとに極端に変えることです。うまく書こうとするより効きます。

密度が均一

 彼は部屋を出た。廊下は静かだった。階段を下りると、玄関に靴が並んでいた。

 彼は靴を履いた。外は少し寒かった。彼は歩き出した。空には雲があった。

密度に差をつけた

 彼は部屋を出て、玄関で靴を履いた。

 ドアノブに手をかけたところで、動けなくなった。

 外に出れば、もう戻れない。それが分かる程度には、彼は自分の性格を知っていた。

 十秒。長く感じたが、時計の針は動いていなかった。

仕組みから見ると — どこにも力を入れられない理由

人間は「ここが山場だ」と思った瞬間に筆圧が変わります。モデルにはその判断がありません。次の一語を選ぶ時に見ているのは確率であって、物語全体の中でのその場面の重要度ではないからです。

結果として、移動にも告白にも同じ丁寧さが配られます。どこにも力が入っていないのではなく、力を入れる場所を判断する機構がない。 薄さの正体はここです。

もう一つ効いているのが、直前の文章に引きずられる性質です。整った文が続くと、次も整った文になります。長い文が続けば長い文が続く。私たちのサービスで測った時、読点の密度が回を追うごとに0.04→0.08→0.15と上がり続けたことがあります。モデルが自分の直前の出力を真似ていたためで、渡す履歴を整えたら0.018まで戻りました。

だから対策も機構に沿ったものになります。山場の前に、短い文の見本を置く。 指示で頼むより、直前の文章で示すほうが確実に効きます。

兆候1 — 一文の長さが揃っている

AIの文章を三十行ぶん眺めると、一文がだいたい同じ長さで並んでいることに気づきます。二十字から三十字の文が、延々と続く。

人間は揃えません。「彼は走った。」の次に、息が続く限りの長い一文が来て、また「止まった。」で切れる。長短の差が、そのまま速度になります。

一段落だけでいいので、極端に短い文を入れてみてください。それだけでリズムが戻ります。

兆候2 — 比喩がこなれすぎている

「温度のない丁寧さ」「値踏みするような目」「喉の奥で言葉が溶けた」。うまいのですが、これらは既に何万回も書かれた比喩です。AIは読んだ中から最も自然なものを選ぶので、必然的に手垢のついた表現に落ちます。

見分け方があります。その比喩を、その作品から抜き出して別の小説に貼っても違和感がないなら、それは借り物です。 その人物、その場面でしか成立しない比喩だけが残ります。

直すなら、比喩を消すのが一番早い。「温度のない丁寧さで頭を下げた」は「深く頭を下げた。目は合わなかった」で足ります。

借り物の比喩

 彼女は、値踏みするような目で彼を見た。

 その微笑みには温度がなかった。

事実だけにした

 彼女は彼の靴を見てから、顔を見た。

 それから、笑った。

兆候3 — 全員が同じ知能で喋る

AIの会話は、登場人物全員が同じくらい賢く、同じくらい話が通じます。全員が相手の言いたいことを正確に受け取り、的確に返す。

現実の会話はそうなりません。片方が誤解し、片方が話を逸らし、片方は聞いていない。噛み合わなさが人物を作ります。

一人だけ「話を最後まで聞かない人物」を置いてみてください。その場面だけ、急に生々しくなります。

薄さは、量ではなく配分の問題である

長く書けば濃くなる、ではありません。三千字を均等に使った文章より、八百字のうち二百字を一点に注ぎ込んだ文章のほうが濃い。

AIで書く時、量は無限に出ます。だから書き手の仕事は、どこに山を作るかを決めて、それ以外を削ることになります。削る前提で大量に出させるのが、正しい使い方です。

読み返して「どこが山場か」を指で差せないなら、まだ削り足りません。

薄さの反対は、濃さではない

文章が薄いと言われたとき、多くの人は濃くしようとします。比喩を足し、描写を増やし、感情を強く書く。たいてい悪化します。

薄さの反対は濃さではなく、出所が一人であることです。誰が書いても同じになる文章が薄いのであって、情報量が足りないわけではありません。むしろ平均的な描写を足すほど、平均に寄ります。

AIは五感と人生を持たないので、放っておけば必ず「誰が書いても同じ文章」を出します。これは欠陥ではなく、統計から引いている以上そうなるという話です。分布の外に出る材料を持っているのは、人間の側だけです。

一行でいい。自分が実際に見た細部を入れると、その段落だけ質が変わります。足すべきなのは描写ではなく、出所です。

薄さの自己診断

  • 一文の長さが揃っていないか(極端に短い文が一つも無いなら危険)
  • どこが山場か、指で差せるか
  • 比喩を別の小説に貼っても違和感がないか(あるなら借り物)
  • 登場人物が全員、話の通じる人になっていないか
  • 無くなって困らない段落が残っていないか

大量に出して、削って形にする。Noveliaなら何度でも書き直せるので、削る前提で書けます。

無料でAI小説を作る

登録で5,000ポイント付与。

よくある質問

AIっぽさを消すには、文体を変えればいいですか

文体より配分です。語尾や一人称をいじっても、密度が均一なままだと薄さは消えません。まず、一箇所に字数を集めて他を削ってください。

AIに「薄くならないように」と指示できますか

直接は効きません。形容詞と同じで、薄さは結果の評価だからです。代わりに「この場面だけ倍の長さで、他は半分に」のように配分を指定すると効きます。

どこを山場にすべきか分かりません

書き終えてから決めても構いません。読み返して一番好きな三行を探し、その前後を伸ばして、残りを削る。これで形になります。

続けて読む