湊あくあ、学園で恋の頭脳戦!? 〜転生したら5人の幼なじみがいました〜
湊あくあ、学園で恋の頭脳戦!? 〜転生したら5人の幼なじみがいました〜
バーチャルアイドルだった湊あくあは、目を覚ますと現代日本のごく普通の女子高生として転生していた。前世の記憶はおぼろげで、歌や配信の才能もリセットされている。ドジでオタクな少女として平穏な学園生活を送ろうと決意するが、その計画は初日から打ち砕かれる。クラスには見知った顔ぶれ——白上フブキや大神ミオ、友人の猫又おかゆといった、かつてのVTuber仲間たちが揃っていたのだ。なぜか後輩の灰原そらまで同じクラスにいて、しかも全員が前世の記憶を持っているらしい。しかし、喜びの再会もつかの間、彼女たちは大きな危機に直面する。全員が、学園の「完璧王子」こと生徒会長・雨宮奏多に首ったけになっていたのだ。さらに事態をややこしくするように、奏多の親友でクールな月城理央が、あくあにだけ妙に優しく、意味深な視線を向けてくる。秘密の恋心を抱えた友情は、少しずつ軋み始める。学園のどこかで、アイドルだった少女たちの、愚かで愛おしい恋の頭脳戦が再び幕を開ける。互いに助け合い、足を引っ張り合いながら、友情と小さな恋の行方を必死に追いかける——。これ
湊あくあ、学園で恋の頭脳戦!? 〜転生したら5人の幼なじみがいました〜 - 図書室で二人きり!はずが、親友たちの空回り大作戦
教室の窓から差し込む日差しが、ちょっとだけオレンジ色になってきた。
ホームルームが終わって、みんなが部活に行ったり、友達としゃべったりしてる。あたしは机の上に置いた日本史の教科書を見て、ため息をついた。
「あぅ……やっぱり戦国時代って、名前が多くてこんがらがるよぉ」
今日の授業でやった「関ヶ原の戦い」。武将の名前と、どっち側についたかがごちゃごちゃになって、頭の中がパンクしそうだった。
(真面目に聞いてたのになぁ。メモもちゃんととったのに)
あたしは腰まである黒い髪のツインテールを、指でくるくるといじる癖が出てた。左右で長さがちょっと違うから、左の方をいじるときは気をつけないと、リボンのヘアピンがずれちゃうんだ。
「あくたん! 帰りに『カフェ・ルポ』寄らない? 今日は新作のクレープが出たんだって!」
突然、耳元で声がして、あたしはびくっとした。
隣の席から、ふぶきが身を乗り出してこっちを見てる。腰まである銀色の髪がさらさらと揺れて、左側の三つ編みの先っぽで赤いリボンがぴょんぴょん跳ねてた。
「ふ、ふぶき! おどかさないでよぉ……」
「ごめんごめん! でも、あくたんがあんまり難しい顔してるから、元気づけようと思って」
ふぶきは金色の目を細めて笑うと、八重歯がちょこんと見えた。
「あのね、あたし、ちょっと図書室で調べものしてから帰る。授業でわかんなかったところを、ちゃんと復習したいの」
「へぇ、珍しい! あくたんが自分から勉強だなんて!」
「ひどいなぁ! あたしだって、やる時はやるんだからね!」
あたしがぷくーっとほっぺたをふくらませると、ふぶきはまた笑った。
「はいはい、じゃあ先に帰ってるね。あんまり根詰めすぎないでよ」
ふぶきが自分の荷物をまとめて、教室を出て行く。その背中を見送りながら、あたしも立ち上がった。
(よーし、図書室で集中するぞ!)
——
図書室は本館の二階にある。
放課後は部活の調べものをする生徒でけっこうにぎわってるけど、今日はなぜかすごく静かだった。
棚と棚の間を歩くと、古い本のにおいがふわっとして、なんか落ち着く。あたしは日本史のコーナーを探して、背表紙をひとつずつ見ていった。
「えっと……戦国時代、戦国時代……」
指でなぞりながら、目当ての本を探す。
あ、あった。
『図解 戦国武将のすべて』っていう、カラフルな表紙の本。これを取ろうと手を伸ばした——その時。
「——あれ?」
本棚の向こう側に、人がいた。
栗色の髪が、窓からの夕日に透けてキラキラしてる。背が高くて、すごくきれいな横顔。手に持ってる分厚い本を、真剣な目で読んでる。
(か、かなた先輩……!?)
あたしの心臓が、いきなりドカンドカンと音を立て始めた。
(なんで先輩が図書室に……!? いつもは放課後、生徒会室にいるはずなのに!)
あたしは慌てて、本棚の影に隠れた。
でも、その時——
ガシャァン!
腰が本棚にぶつかって、一番上の本が雪崩みたいに落ちてきた。
「きゃああっ!」
頭の上に、バサバサッと本の雨。いたたたた……。
「大丈夫かい?」
気がつくと、先輩が隣にしゃがみこんでた。
透き通るような青い目が、まっすぐにあたしを見つめてる。近い。顔が近い。
あたしはもう、耳まで真っ赤になって、声も出なかった。
「ああ、君は入学式の時に転んでた……みなと あくあさん、だよね」
「お、おぼえててくれたんですか……!?」
「もちろんだよ。あんなに元気な新入生は、なかなかいないからね」
先輩はそう言って、落ちた本を拾い集め始めた。あたしも慌てて手伝う。
「あ、あの、すみません! あたし、お邪魔しちゃって……」
「いや、気にしないで。僕もつい夢中になってて、気づかなかった」
先輩が拾った本の表紙を見せてくれた。『真田三代記』——真田幸村のことが詳しく書かれた本だ。
「この本、すごく面白いんだ。あのアニメで見てから、ずっと読みたくて」
「……え? アニメ、ですか?」
「うん。『戦国魂-ソウル-』っていうアニメなんだけど……あ、もしかして知ってる?」
あたしは息が止まった。
(し、知ってるも何も——あれ、あたしが毎週録画して見てるやつだ! 先輩も見てるの!?)
でも、隠れオタクのあたしとしては、ここで「大好きです!」って言うのは危険すぎる。
「あ、あの、えっと……ちょっとだけ、その……」
「特に真田幸村がかっこよくてね! 最後の大坂の陣での突撃シーンなんて、何回見ても鳥肌が立つよ。赤備えの鎧で、敵陣に一人で突っ込んでいくところ——もう、あれはまさに漢の生き様だよ!」
先輩の目が、キラキラしてる。
いつもの穏やかな笑顔じゃなくて、子供みたいに無邪気な顔。
(うそ……先輩って、こんなにオタクっぽく話すんだ……)
なんか、すごく……ギャップがすごくて、かっこいいっていうより、かわいい。
「それからね、真田十勇士の話も最高で——」
「わかります! 特に猿飛佐助がかっこいいですよね! あの自由奔放な感じと、実はめちゃくちゃ忠義に厚いところがもう……!」
——しまった。
つい、勢いで言ってしまった。
「おお……! みなとさん、かなり詳しいんだね!」
「あ、あぅ……ち、違うんです! これはその、たまたまで……! お兄ちゃんが好きで、あたしは別に……!」
言い訳になってない。
でも先輩は、すごく嬉しそうに笑った。
「いやあ、このアニメの話ができる人に初めて会ったよ! よかったら、もう少し話さないかい? あ、そうだ、こっちの本にも面白いエピソードが——」
(やばい。先輩と二人きりで、しかも共通の趣味の話で盛り上がれるなんて……! これはチャンスだよ!)
あたしの心の中で、小さいあくあが小躍りしてる。
「じ、じゃあ……ちょっとだけ」
あたしがうなずくと、先輩はさらに笑顔になった。
——
それから十分くらい、あたしと先輩は夢中で話し込んだ。
先輩は戦国武将の話になると、ほんとに止まらなくなる。
「信長の革新性もすごいけど、僕はやっぱり幸村の生き様に惹かれるんだ。最後まで自分の信じる道を貫いた——あの潔さが」
「そうですよね! それに、あのアニメの最終回で、幸村が言うセリフがもう……」
「『我が生涯に、一片の悔いなし』——だよね! あそこはもう、僕も泣いてしまったよ」
「え、先輩も泣いたんですか!?」
「はは……ちょっとだけね。でも本当にいい作品だ」
あたしはもう、胸がいっぱいだった。
(先輩と、こんなに話が合うなんて……。好きなアニメが一緒で、好きなキャラも同じで……)
まるで夢みたい。
もっと、もっと話したい。
——その時だった。
「待ったあああああ!!!」
図書室の入り口で、ものすごい声がした。
あたしと先輩が同時に振り返る。
そこには、カーテンをマントみたいに体に巻きつけたふぶきが立ってた。しかも、なぜか目元にマジックで黒いアイマスクを描いてる。ものすごく、にじんでる。
「怪盗フブキ、ただいま参上! お宝……もとい、かなた先輩とのおしゃべりタイムは、私がいただくわ!」
「……え?」
先輩が、きょとんとした顔でふぶきを見てる。
(ふ、ふぶき!? なんでここに!? っていうかその変装、なに!?)
「あくたんだけズルいわよ! 私だって先輩と話したいんだから!」
ふぶきはカーテンをバッサバッサ言わせながら、ずんずん近づいてくる。
「ちょ、ちょっとふぶき! 図書室では静かに——」
「あら、ここにいたのね、みんな」
今度は、反対側の入り口から、みおが現れた。
背筋をピンと伸ばして、手には書類の入った封筒を持ってる。
「かなた先輩、生徒会に提出する緊急資料を預かってきました。今すぐご確認を」
「緊急資料? それは大変だ。どれ、見せてくれるかい?」
みおが封筒から取り出した紙——
それを見た瞬間、あたしとふぶきは、ぽかんと口を開けた。
紙には、でっかい字で「給食当番表(一週目)」って書いてある。しかも、隅っこにたこ焼きの落書きまである。
「ち、違います! これはその……! あ、あれ? 確かに緊急資料を入れたはずなのに……!」
みおが真っ赤になって、鞄の中をガサゴソやり始める。
「……ふふっ」
先輩が、小さく笑った。
「みんな、戦国武将に興味があるのかい? 良かったら、一緒に話さないか?」
「はい! もちろんです!」
「ぜ、ぜひ……お願いします……」
二人は、さっきまでの慌てぶりが嘘みたいに、すぐ先輩の両隣をキープした。
あたしは、一歩後ろでそれを見てた。
(……あたし、もっと二人で話したかったのにな)
胸の奥で、チクッと何かが刺さった。
今まで感じたことのない、モヤモヤ。
でも、先輩が楽しそうに話し始めたから、あたしは慌てて笑顔を作った。
——
結局、図書室が閉まる時間まで、四人でおしゃべりした。
先輩の戦国武将トークは、三人になっても止まらなくて、むしろパワーアップしてた。
「それからね、関ヶ原の戦いでは——」
「はいはい! 私、関ヶ原のこともっと知りたいです!」
「わ、私も、西軍と東軍の戦略の違いについて、ぜひ……」
(ふぶきもみおも、絶対ぜんぜん歴史に興味ないのに……)
あたしは心の中で、ちょっとだけ意地悪なことを思った。
(あ、でも、あたしも人のこと言えないか。先輩と話せるだけで嬉しいもん)
そう思うと、また胸がチクッとした。
——
図書室を出て、先輩と別れたあと。
三人で駅までの「息切れ坂」を下りながら、しばらく誰も口を開かなかった。
坂の途中にある自動販売機の前で、みおが立ち止まった。
「……あくあ、今日はなんで図書室に?」
「え? だから、日本史の調べもので……」
「……そっか。偶然、かなた先輩に会ったんだ」
みおの声が、ちょっとだけ震えてる。
「でも、ずるいわよ、あくたん。私だって、先輩と二人きりで話したかったんだから」
ふぶきが、いつもの明るい声じゃなくて、ぼそっと言った。
(……あぅ。やっぱり、怒ってるよね)
何て言っていいかわからなくて、あたしはうつむいた。
「まあ、でも……仕方ないわよね。今回はたまたまだし」
みおが、ため息をつきながら言った。
「うん、そうだね。でも……次は、負けないから」
夕日が、三人の影を長く伸ばしてる。
ハナミチ通り商店街の灯りが、ぽつりぽつりとつき始めてた。
「……あたし、先に帰るね」
あたしは、そう言って二人に背を向けた。
「え、カフェ・ルポは?」
「ごめん、なんか、ちょっと疲れちゃった」
それだけ言って、あたしは走り出した。
後ろから、ふぶきとみおが何か言ってたけど、聞こえないふりをした。
——
カフェ・ルポの二階席。
窓際のソファ席で、ふぶきとみおは向かい合って座ってた。
ふぶきの前にはクリームソーダ、みおの前にはホットコーヒー。
「……で、どうする? このまま指をくわえて見てるだけじゃないわよね?」
みおが、コーヒーカップをテーブルに置いた。カチャリと小さな音がした。
「もちろん、そんなわけないでしょ。今日みたいなことが続いたら、あくたんだけ、どんどん先輩と仲良くなっちゃう」
ふぶきの金色の目が、いつもよりずっと真剣だ。
「……そうね。私たちも、もっと積極的に動かないと」
「同盟を結ばない? あくたんだけ、先輩に近づけさせない同盟」
ふぶきが、テーブル越しに手を差し出した。
「……あくあを、邪魔するってこと?」
「邪魔っていうか……まあ、そうなるわね。でも、あくたんが先輩と二人きりになったら、絶対に割り込む。それは協力できるでしょ?」
みおは、少しだけ迷ってから、その手を握った。
「……わかったわ。ただし、これはあくあのためでもあるのよ。早く誰かを選ばないと、あの子、どんどん傷つくだけだから」
「……そうね。うん、そういうことにしておきましょう」
二人は握手をした。
でも——
ふぶきの心の中で、別の声がささやいてる。
(本当は、みおもライバルなんだけどね。今はあくたんを抑える方が先。みおは、あとでどうにかすればいいわ)
みおもまた、心の中で思ってる。
(ふぶきは協力すると言ってるけど……本当は私だって、先輩に近づきたい。この同盟がいつまでもつか、わからないわね)
窓の外では、カスミヶ丘の街に夜のとばりが下り始めてた。
商店街のネオンがチカチカと瞬き、遠くで踏切の警報機が鳴ってる。
——
あくあの部屋。
六畳の部屋の壁には、お気に入りのアニメのポスター。机の上にはフィギュアが並んでる。
あたしはベッドに寝転んで、天井を見つめてた。
(今日は、すごく楽しかった。先輩と二人で話せたし、共通の趣味もわかったし)
でも。
(なんでだろう……なんだか、すごくモヤモヤする)
胸のあたりが、ぎゅーっと締めつけられるみたいに苦しい。
ふぶきとみおが来た時のこと、思い出すだけで、なんかイライラする。
(あたし、親友に対して、こんな気持ちになるの初めてだよ……)
ごろりと寝返りを打つ。
壁に貼った『戦国魂-ソウル-』のポスターが目に入った。
真田幸村が、赤備えの鎧でこっちを見てる。
「先輩も、これ見て『かっこいい』って言ってたなぁ……」
好きな人と、好きなものが一緒。こんなに嬉しいことってないのに。
(どうして友達と好きな人がかぶると、こんなに苦しいんだろう)
あたしは枕をぎゅっと抱きしめて、目をつぶった。
耳の奥で、先輩の声がこだましてる。
『みんな、戦国武将に興味があるのかい? 良かったら、一緒に話さないか?』
あの時、先輩はあたしだけを見てくれてたのに。
ふぶきとみおが来てから、あたしのことは、ただの「みんな」の中の一人になっちゃった。
「……あたし、もっと先輩と話したかったよぉ」
声に出したら、涙が出てきた。
明日、学校でふぶきとみおに、どんな顔で会えばいいんだろう。
仲直りしたい。でも、心のどこかで「先輩に近づかないで」って思ってる自分もいる。
友情と恋。
どっちも大事なのに、両方は手に入らないみたいだ。
窓の外で、星がひとつ、流れた。
あたしは、願い事をする気にもなれなくて、ただぼんやりと夜空を見てた。Noveliaとは?
Noveliaは、AIでライトノベルや二次創作を「読んで・数タップで作って・キャラクターと会話できる」プラットフォームです。挿絵つきの新作が毎日届き、無料で始められます。