金色のガッシュ!! 〜魔界呪いで大逆転!?〜
ある朝、目を覚ましたガッシュ・ベルは、自分が女の子になっていることに気づく。悲鳴を上げて走り回るガッシュ。だが、異変は彼だけではなかった。清麿も女の子に、ティオとウマゴンは男の子に、そしてフォルゴレは息をのむほどの美女へと変貌していた。
魔界の王を決める戦いの影響で、古の呪いが発動してしまったのだ。呪いを解くには、一週間以内に「真実の心」を見つけ出さなければならない。しかし、「真実の心」とは一体何なのか。誰にもわからなかった。
パニックに陥る一同。それでも、困っている人を放っておけないガッシュは、元に戻る方法を探し始める。だが、身体が変わるにつれて、彼らの心にも変化が訪れる。清麿はガッシュを異性として意識し始め、ティオは急に男らしくなってガッシュを口説き、フォルゴレは自分の美貌に見とれて戦闘どころではなくなる。
次々と起こるドタバタ騒動。呪いを解く鍵「真実の心」を探す旅の中で、ガッシュはみんなの本当の気持ちを知っていく。特に、自分に向けられた清麿の特別な想いに、ガッシュの胸は高鳴るのだった。
しかし、その呪いには恐ろしい罠があった。一週間以内に「真実の心」を見つけなければ、みん
金色のガッシュ!! 〜魔界呪いで大逆転!?〜 - 図書館で発見!鏡の謎と消える記憶
さくら通り商店街での騒動から一夜明け、高嶺家にはいつもと変わらない朝が訪れていた。
「清麿ーっ!朝ごはんはまだなのかーっ!」
少し高くなった声が家中に響き渡る。階段をドタバタと駆け上がってくる音。呪いで少し伸びたブロンドの髪が、朝日を浴びてふわふわと揺れていた。
「うるさいぞ、ガッシュ。今行く」
清麿は机の上の手鏡を伏せた。ツインテールにまとめた艶やかな黒髪が、肩から滑り落ちる。切れ長の茶色の瞳は、少し寝不足で赤くなっていた。
(昨日のことが、まだ頭から離れない)
あの本屋での出来事。ティオがガッシュに壁ドンをした瞬間、自分の中で何かがはっきりと形になった気がした。ガッシュを取られたくない。この気持ちは、友情なんかじゃない。
でも、それを認めるのが怖かった。
「清麿、今日はどこに行くのだ?また本屋か?」
ガッシュがキラキラした目で見上げてくる。頭の上の小さな角のような突起が、心なしか昨日より目立つ気がした。
「いや、今日はモチノキ市立図書館だ。ハナゾノ台から歩いて十五分くらいのところにある。あそこなら、もっと専門的な資料があるはずだ」
「図書館!本がいっぱいあるところなのだな!」
「メルメル~」
部屋の隅で、ウマゴンがのんびりと伸びをした。もこもこした白銀の毛並みがふわふわと揺れる。頭のてっぺんにちょこんとついたリボン以外は、いつもと変わらない。穏やかな黒目がちの瞳だけが、全てを見通しているようにも見えた。
「おはよう!今日も俺がガッシュを守ってやるぜ!」
玄関のドアが勢いよく開く。ティオだ。短く刈り上げた紫色の髪が、朝日にキラキラと輝いている。意志の強いアメジスト色の瞳が、ガッシュを見つめるとクワッと輝いた。
「ティオ!朝から元気なのだな」
「当然だろ!ガッシュのためならいつでも全力だぜ!」
清麿は、そのやり取りを見て、また胸がチクッとした。
(……なんで俺が気にするんだ)
でも、もうわかっている。これは嫉妬だ。
「……さっさと出るぞ。時間がない」
清麿はわざと冷たく言い放って、玄関に向かった。
モチノキ市立図書館は、さくら通り商店街の端にある三階建ての建物だった。昭和の香りがする古い外観で、壁には所々ひび割れがある。でも、十二万冊もの蔵書を誇る、市内最大の図書館だ。
「うわぁ……すごく大きいのだ!」
ガッシュが目を輝かせて見上げる。
「静かにしろ。図書館では小さな声で話すんだ」
清麿は人差し指を口に当てた。
「わ、わかったのだ」
ガッシュが慌てて口を押さえる。そのしぐさが、なんだか小動物みたいで可愛らしい。
(……って、なに考えてるんだ俺は)
清麿は頭を振った。
自動ドアをくぐると、ひんやりとした空気と、古い紙の匂いが鼻をついた。館内は静かで、数人の利用者が本を読んでいるだけだ。
「俺は地下書庫を調べる。ティオ、お前は二階の郷土資料室を見てくれ。ガッシュは……」
「私はなにをするのだ!?」
「……おとなしくしてろ。本を破ったりするなよ」
「なんだそれはー!私だってちゃんとできるのだ!」
「メル」
ウマゴンが、まるで「まあまあ」と言うように、ガッシュの足にすり寄った。
「ウマゴンまで……私を役立たずだと思ってるのか?」
「メルメル!」
首をぶんぶん振る。違う、そうじゃない、というふうに。
「……わかった。じゃあ、俺と一緒に地下に行くか」
清麿が仕方なさそうに言うと、ガッシュの顔がパッと輝いた。
「うむ!任せるのだ清麿!」
その笑顔が、眩しすぎて。
清麿は思わず目を逸らした。
地下書庫は、図書館の一番奥にある鉄製の扉の向こうにあった。
「職員の人に許可をもらった。入れてもらおう」
清麿が重い扉を押し開ける。ギィィ……と、錆びた蝶番が嫌な音を立てた。
中は薄暗く、かび臭い空気が漂っている。天井まで届くスチール製の書架が迷路のように並び、何十年も前の古い本や資料がぎっしりと詰まっていた。
「なんだか、ちょっとこわいのだ……」
ガッシュが清麿の服の裾をぎゅっと握る。
その仕草に、胸がドキンと跳ねた。
「大丈夫だ。俺がついてる」
そう言ってから、自分の声が少し優しくなっていることに気づいて、またドキドキする。
(もう、なんなんだよ、この気持ち……)
清麿は気を取り直して、書架の間を歩き始めた。歴史書、哲学書、古い新聞の束。指で背表紙をなぞりながら、目当ての本を探す。
「清麿、これはなんだ?」
ガッシュが、床に積まれたダンボール箱を指さした。
「寄贈図書の未整理分だな。誰かが古い本を寄付したんだろう」
清麿はしゃがみ込んで、ダンボールを開けた。中には、明らかに古い洋書が数冊。背表紙には見慣れない文字が刻まれている。
「……これは」
清麿の目が、一冊の本に釘付けになった。
革装丁の分厚い本。表紙には、かすれた金文字で『ディムナ・ゾーラ遺物目録』と書かれている。
「それ、清麿の部屋にあったやつとおんなじなのだ!」
「ああ。でも、こっちはもっと状態がいい。それに……」
清麿は慎重にページをめくった。
「……あった」
最後のページの裏側。そこには、薄い石板のような紙が貼り付けられていた。手のひらサイズの、灰色の石のような質感。表面には、古代魔界文字がびっしりと刻まれている。
「ディムナの石板の複製だ。本物は魔界に散らばってるらしいけど、これはそれを紙に写し取ったものだな」
「なんて書いてあるのだ?」
ガッシュが覗き込む。
「待ってろ……解読する」
清麿は、以前に調べた古文書の知識を総動員して、古代魔界文字を読み解き始めた。
『己を偽らぬ者のみが鏡を砕く』
『真実の心を鏡に映し、呪いの柱に光を当てよ』
「鏡……?呪いの柱……?」
「まだ続きがある」
清麿の指が、最後の一文に触れた。
「……呪いは段階的に進行する。第三段階以降は、肉体だけでなく感情や思考に影響が出る。第五段階で記憶の改変が始まり、第七段階——168時間を超えると、対象者は元の自分を完全に忘れ、新しい人格が定着する」
清麿の声が震えていた。
「自分を……忘れる……?」
ガッシュの顔から、血の気が引いていく。
「そうだ。呪いが進めば、俺たちは今の姿のまま、自分が誰だったかも忘れてしまう。家族のことも、仲間のことも、何もかも」
「そんなの、やだ……!」
ガッシュが清麿にしがみついた。小さな体が、小刻みに震えている。
(あったかい……)
清麿は、ガッシュの体温を感じて、胸がぎゅっと締め付けられた。
「……大丈夫だ。絶対に、呪いを解いてやる」
気がつくと、そう言っていた。
「……うむ。約束なのだ、清麿」
ガッシュが涙をぬぐって、小さくうなずく。
「ああ。約束だ」
地下から一階に戻ると、ティオが待っていた。
「どうだった?」
「大きな手がかりを見つけた。『真実の心』を鏡に映して、呪いの柱に光を当てる。それが解除条件だ」
「呪いの柱って、ヴォルカ・メディーラのことだな?じゃあ、魔界に行かなきゃいけないのか?」
「ああ。でもその前に、もっと詳しい情報が必要だ。特に、『真実の心』が何なのか。それを知るには、魔界の専門知識がいる」
「でも、どうやって調べるのよ?魔界の本なんて、ここにはないでしょ?」
「ああ。だから、高価な文献を購入する資金が必要なんだ」
その時だった。
「それなら、私がなんとかするのだ!」
ガッシュが突然叫んだ。
「は?」
「私も役に立ちたいのだ!アルバイトをしてお金を稼ぐのだ!」
「ば、バカ!お前に何ができるっていうんだ!危ないことはするな!」
「大丈夫なのだ!私は正義の味方なのだ!なんとかなるのだ!」
ガッシュはそう言うと、全速力で図書館を飛び出していった。
「おい、待てガッシュ!」
清麿が追いかけようとしたが、書類の整理に手間取って、あっという間にガッシュの姿は見えなくなった。
「……あの子、ほんとに行動力だけはすごいわね」
「感心してる場合か!どこに行くかまったくわからん!」
「メルメル~」
ウマゴンが、まるで「まあ、なんとかなるでしょ」と言うように欠伸をした。
さくら通り商店街。
ガッシュは、商店街の真ん中で立ち止まった。
「アルバイトを探すのだ!誰か、私を雇ってほしいのだ!」
大声で叫ぶと、商店街の人々が振り返る。
「あら、かわいい子。どうしたの?」
八百屋のおばさんが声をかけてきた。
「私はガッシュ・ベルなのだ!アルバイトを探しているのだ!」
「まあ、えらいわね。でも、うちは大丈夫よ。ごめんね」
「あ……うん。ありがとうなのだ」
ガッシュは、次々と店を回った。たい焼き屋「ワカバ」、古書店「トモエ堂」、文房具屋、駄菓子屋。でも、どこも「ごめんね」と断られた。
「はあ……なかなか見つからないのだ」
肩を落として歩いていると、商店街の端にある、ひときわ怪しい店が目に入った。
看板には『モチノキ調剤薬局』と書いてある。でも、ショーウィンドウにはホコリが積もっていて、中は薄暗い。
「ここなら、雇ってくれるかもしれないのだ」
ガッシュは、恐る恐るドアを開けた。
カランカラン。
「……なんだ、客か?」
カウンターの奥から、しわがれた声が聞こえた。白髪の老人が、怪しげな液体の入ったビーカーを手にしている。
「私はガッシュ・ベルなのだ!アルバイトを探しているのだ!」
「アルバイト?お前みたいな子どもがか?」
「子どもじゃないのだ!魔物の子なのだ!なんでもやるのだ!」
「……ふん。まあいい。ちょうど助手が欲しかったところだ。薬品の整理と調合の手伝いだ。できるか?」
「やるのだ!なんでもやるのだ!」
「よし。じゃあ、まずはこの棚の薬品を整理しろ。ラベルの番号順に並べ替えるんだ。わかったな?」
「任せるのだ!」
ガッシュは元気よく返事をした。
十五分後。
「おい、小僧!なにをやっているんだ!」
「ご、ごめんなさいなのだ!」
ガッシュは、薬品の棚をまるごと倒してしまっていた。ビーカーは割れ、怪しげな液体が床に広がっている。ラベルの貼ってある瓶は、ぐちゃぐちゃに混ざっていた。
「番号順に並べろと言っただろ!なぜそんなこともできないんだ!」
「だって、番号がどこに書いてあるのかわからなかったのだ……」
「ラベルに書いてあるだろ!字が読めないのか!」
「魔界の文字とは違うのだ……」
「もういい!次は調合の手伝いだ!この青い液体と、赤い粉を混ぜるんだ。簡単だろ?」
「今度こそやるのだ!」
ガッシュは、店主から渡された二つのビーカーを見つめた。
「まず、青い液体をこっちのビーカーに入れて……」
手が震える。慎重に、慎重に。
「あっ」
手が滑った。
ガシャン!
「またビーカーを割ったのか!」
「ご、ごめんなさいなのだ!」
「もういい!赤い粉だけでも入れてみろ!それなら割れないだろ!」
「わ、わかったのだ……」
ガッシュは、赤い粉の入った袋を手に取った。それを、別のビーカーに慎重に注ぎ込む。
ザザザ……
「できたのだ!これでいいのか?」
「ああ。次は、それをかき混ぜて……」
その時だった。
ゴボゴボゴボ……
ビーカーの中で、赤い粉と、さっきまで中に入っていた透明な液体が混ざり合い、泡立ち始めた。
「な、なんだこれは!?」
「馬鹿者!それは『スルファミン酸ナトリウム』だ!さっきお前が割ったビーカーに入っていたやつだ!それと赤い粉を混ぜると化学反応が——」
ボンッ!!!
大きな爆発音とともに、店の中に煙が充満した。
「うわああああん!」
ガッシュの悲鳴が、煙の向こうから聞こえる。
「ガッシューーーッ!!!」
その時、店の外から清麿の叫び声が響いた。
走る足音。ドアが勢いよく開け放たれる。
「ガッシュ!!どこだ!!」
清麿は、異臭と煙が立ち込める店内に飛び込んだ。ツインテールの黒髪が乱れ、額には汗が光っている。
「せ、清麿……ここなのだ……」
ガッシュが、棚の陰から泣きながら出てきた。顔中がススで真っ黒になっている。青い服の裾は焦げていた。
「バカ!死ぬ気か!」
清麿は、ガッシュの腕をぎゅっと掴んで、外に連れ出そうとした。
「ごめんなのだ……私、役に立ちたかったのだ……」
「だからって、こんな危ないことして——」
言いかけて、清麿の声が詰まった。
(よかった……生きてる……)
ガッシュの腕を掴む手が、震える。涙が、あふれてきた。
「お前が死んだら……俺は……!」
「……清麿?」
ガッシュが、驚いた顔で清麿を見上げる。
「俺は……お前を……守りたいんだよ……!」
清麿は、ガッシュを抱きしめていた。
全力で。ぎゅっと。
(離したくない。失いたくない。こいつだけは、絶対に)
腕の中の温もりが、泣きたいほど愛おしい。
「……清麿。ありがとうなのだ」
ガッシュが、小さな手で清麿の背中をポンポンと叩く。
「あんた、こんなに僕のことを心配してくれてたんだな」
「……当たり前だろ。お前は、俺のパートナーなんだから」
清麿はそう言って、ガッシュから身を離した。
涙で濡れた顔を、袖で乱暴にぬぐう。
「もういい!二度と来るな!」
薬局の店主が、怒鳴りながら煙の中から現れた。
「すみませんでした。ガッシュ、謝れ」
「ご、ごめんなさいなのだ……」
「もうたくさんだ!出て行け!」
二人は、文字通り薬局を追い出された。
薬局の外で、ティオとウマゴンが待っていた。
「なにがあったの!?爆発の音が聞こえたけど!」
「……私が、薬品を爆発させたのだ」
「はあ!?爆発!?あんた、正気!?」
「もういい。とにかく、今日は帰ろう」
清麿は、ガッシュの手を引いて歩き出した。
「清麿……怒ってるのか?」
「……怒ってない。ただ……心配しただけだ」
「……うん。わかってるのだ」
ガッシュは、清麿の手をぎゅっと握り返した。
それだけで、胸の中がじわりと温かくなる。
その夜。
高嶺家の二階、清麿の部屋。
「……ふう。やっと寝たか」
清麿は、隣の布団で眠るガッシュを見下ろした。
スヤスヤと寝息を立てている。呪いで伸びたブロンドの髪が、月明かりにキラキラと輝いていた。
(今日は本当に、心臓が止まるかと思った)
薬品の爆発。ガッシュが死ぬかもしれないと思った瞬間。
(俺は、あの時……)
清麿は、ガッシュの頬にそっと触れた。
(こいつがいなくなるのが、怖かった)
それはもう、パートナーとか友達とか、そういうのを超えた感情だ。
「……ガッシュ」
小さく名前を呼ぶ。
(俺は、お前のことが——)
そこまで考えて、頭を振った。
「ダメだ。これは呪いのせいかもしれない。石板に書いてあっただろ。感情が変化するって……」
清麿は布団をかぶって、目を閉じた。
——気がつくと、清麿は真っ暗な空間に立っていた。
「ここは……?」
周りを見渡す。何も見えない。足元も、壁も、天井も、全てが闇に溶けている。
ただ一つ、目の前に大きな鏡だけが、ポツンと立っていた。
鏡の中に、二人の自分が映っている。
一人は、男の姿の自分。これが、本来の自分。
もう一人は、女の子の姿の自分。これが、今の自分。
『お前はもう、自分が誰だか分からなくなる』
男の自分が、冷たい声で言った。
『ガッシュへの気持ちは、呪いが見せている幻だ』
女の子の自分が、悲しそうに言う。
「違う……俺は、俺だ……!」
清麿は叫んだ。でも、声が届かない。
『本当にそうか?その気持ちは、本当にお前のものか?』
『呪いが作った、偽りの感情じゃないのか?』
二人の自分が、同時に問いかける。
「違う……違う……!」
否定すればするほど、自分の心がわからなくなる。
(ガッシュ……助けて……)
心の中で、そう叫んだ。
「清麿!清麿!」
耳元で、ガッシュの声がする。
「……ガッシュ……?」
目を開けると、そこには心配そうな顔のガッシュがいた。
月明かりが、部屋の中を青白く照らしている。
「うなされてたのだ。大きな声で、僕の名前を呼んでたのだ」
「……そうか。悪い、起こしたな」
清麿は起き上がろうとした。でも、体が動かない。汗でびっしょりだ。
「大丈夫なのだ。私はここにいるのだ」
ガッシュが、清麿の布団に入り込んで、優しく手を握ってきた。
「お、おい……なにして……」
「清麿が怖い夢を見ないように、添い寝してやるのだ。昔、僕が怖い夢を見た時に、清麿がしてくれたのと同じなのだ」
ガッシュの手は、小さくて、あたたかかった。
「私はここにいるのだ。だから、安心して寝るのだ。大丈夫なのだ」
ガッシュが、子守唄のように優しく語りかける。
(……なんで、お前はそうやって、いつも、俺の心の中に入ってくるんだ)
清麿は、そのまま目を閉じた。
ガッシュの体温が、怖い夢を溶かしていく。
(この気持ちは、本物だ)
(例え呪いのせいでも、それでも……俺は)
「……好きだ、ガッシュ」
それは、言ってはいけない言葉だった。
でも、今は寝言だってごまかせる。そう思ったから、こっそり呟いたのだ。
「……清麿?」
しまった。聞こえていた。
「……なんでもない。寝言だ」
「ふふ。私も、清麿のことが好きなのだ」
ガッシュが、無邪気に笑う。
(……こいつは、絶対にわかってない)
清麿は、苦笑いしながら目を閉じた。
でも、ガッシュの手を離せなかった。
そのまま、朝まで二人は手を繋いで眠ったのだった。
翌朝。
「……はっ」
清麿は、目を覚ました。
隣では、ガッシュがまだスヤスヤと眠っている。
「……ガッシュ」
寝顔を見つめる。
(俺は、こいつのことが——)
胸の奥で、何かが激しく脈打つ。
ドキン。ドキン。ドキン。
(友情じゃない。パートナーでもない。これは、もっと……)
清麿は、ガッシュの頬にそっと触れた。
触れた指先が、熱い。
(これは、恋だ)
認めざるを得なかった。
「……でも」
頭をよぎるのは、あの石板の警告文。
『呪いが感情を書き換える』
『元の自分を完全に忘れる』
(この気持ちは、本物か?それとも、呪いが作った偽物か?)
答えは出ない。
「……これ以上、ガッシュと一緒にいると、俺は」
清麿は、静かに布団から抜け出した。
音を立てないように、部屋を出る。
台所に向かい、冷たい水を一杯飲んだ。
「次の手がかりは、魔界の王立大書庫だ。ヴェルティスにある、最大の知識の殿堂……」
石板の情報では、ディムナ・ゾーラに関する資料が最も多く残っているのはそこだ。
(もう、迷ってる時間はない)
(呪いが進む前に、絶対に解いてみせる)
清麿は、自分に言い聞かせるように呟いた。
「でも……ガッシュには、この気持ちを悟られないようにしなきゃ」
もしこの感情が呪いのせいなら、解放された時にどうなるかわからないから。
でも、窓の外を見つめる清麿の胸の中は、もう自分を偽れないところまできていた。
ガッシュに触れるたびに鼓動が跳ね、声を聞くだけで心が震える。
(本当の気持ちは、もう——鏡に映ってしまっている)Noveliaとは?
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