プリキュア世界に放り出されてしまったけど
プリキュア世界に放り出されてしまったけど、高木恭一はついに怪物じみた魔神を打ち倒した。自分の世界に帰れると、そう思っていた。だが、最終決戦の大爆発に巻き込まれ、またしても異次元へと吹き飛ばされてしまう!
今度は、伝説の戦士『プリキュア』が怪物と戦っている最中の屋上に墜落した。チート能力は健在で、それは最高だったんだが、とんでもないことが起きる。なんと、プリキュアが変身したり強くなったりするために使う、妖精のような存在になってしまったのだ!
さらに最悪なことに、彼の魔力は伝説の戦士である、超クールで男前な美墨なぎさと完全にリンクしてしまった。こうして恭一は、事実上なぎさのパワーアップ妖精となる。好き嫌いにかかわらず、彼の戦いを助けなければならない。
生活は一変する。なぎさはぶっきらぼうでやや不機嫌だし、相棒は超がつくほど元気な女の子で、いつも恭一を振り回す。まさにカオス! だが、この世界の敵はただの間抜けな怪物じゃない。闇の力が、なぎさの秘めた弱さや悲しみにつけ込み、その心に侵入しようとしているのだ。クールな態度の裏で、なぎさは傷ついている。それを、恭一は放っておけなかった。
た
プリキュア世界に放り出されてしまったけど - 契約、そして初めての夜——仮契約は裸の魔力共有
路地裏での奇妙な出会いから一夜明け、美墨なぎさのアパートには静かな朝が訪れていた。
六畳一間の古い部屋。カーテンの隙間から差し込む朝日が、床に散らばったエロ本の山を容赦なく照らし出す。なぎさは深いため息をついた。
「……ありえない」
昨夜、グロームを倒した後にここへ戻り、高木恭一がポケットから取り出したものだ。伝説の聖剣やら万能薬やらに混じって、なぜか大量のいかがわしい本が出てきた。あの場はスリッパで叩いてお開きになったが、片付けは後回しにして寝てしまったのだ。
テーブルの上で、小さな金色の光の玉がふわふわと浮かんでいる。高木恭一だ。どうやらまだ寝ているらしい。光がゆっくりと明滅している。
(妖精って寝るんだ……)
いや、そもそもこいつは妖精なのか。なぎさは改めて恭一を観察した。確かに見た目は光の妖精そのものだ。掌サイズで、全身が淡い金色の粒子を纏っている。でも中身は面倒くさがりの男。
「おい、起きろ」
なぎさが指でつつくと、恭一の光が強くなった。
「……あと五分」
「ないわよ! 片付け手伝いなさい!」
なぎさは床の本を拾い集め始めた。表紙の女性が笑っている。次の本を手に取ると、もっと過激な表紙。次の本は——
「もうっ! なんでこんなのばっかり入れてるのよ!」
「男のロマンだ」
恭一はようやく起き上がり、伸びをした。小さな光の体がくにゃりと歪む。
「意味わかんねえ」
なぎさは最後の一冊を恭一のポケットに押し込んだ。この「魔力ポケット」と恭一が呼ぶ四次元収納魔法には、本当に何でも入っているらしい。便利なのか不便なのか、判断に困る。
なぎさはカーテンを開け、窓を少し開けた。冷たい朝の空気が流れ込む。遠くで救急車のサイレンが聞こえた。この街——双輝界ソルティアのトウキョウ都市圏——は、今日も平和に見える。でもその裏側では、人々の心の闇が生み出す怪物、グロームがうごめいている。
「恭一」
なぎさは振り返り、恭一を真っ直ぐに見つめた。青い瞳に強い意志が宿る。
「仮契約の話、昨日したけど——やるなら今よ」
「ああ、いいぜ。どうすりゃいいんだ?」
なぎさはテーブルの上の恭一をそっと手に乗せ、ベッドの上に移動した。スプリングがギシリと軋む。
「普通の妖精契約はね、妖精が一方的に魔力を送るだけなの。でもあんたは違うでしょ」
彼女は少し言いよどんだ。恭一は異世界から来た人間だ。しかも元日本人——見た目は日本人の青年だったという。それがこの世界の法則に適合して、妖精のような存在になってしまった。夕べの話では「妖精化現象」とか言うらしい。
「要するに、対等な魔力リンクが必要ってことだ。互いの魔力を共有するんだな」
「……理解早いわね」
「面倒な説明はいい。さっさとやろうぜ」
恭一はそう言って、小さな手を虚空に突っ込んだ。魔力ポケットから何かを取り出す。キラリと光る、銀色の腕輪だった。細かな魔法文字が刻まれ、中心には青い宝石が埋め込まれている。
「魔力共有の腕輪。こいつをつければ、契約がスムーズに行くはずだ」
なぎさは腕輪を受け取った。ずっしりと重い。魔法文字が呼吸するように明滅している。
「……これって、どうやって使うの?」
「腕につけるだけだ。ただし——」
恭一が言いかけた時、腕輪が突然まばゆい光を放った。なぎさの手の中で熱を帯び、彼女の魔力に反応している。
次の瞬間、なぎさは異変に気づいた。
自分の体が透けて見える。いや、正確には——服だけが透けている。
「……え?」
慌てて自分の体を見下ろす。制服のセーラー服が、まるで霧のように薄くなっていた。向こう側のベッドのシーツが見える。その下には——
「な、なによこれーっ!!」
なぎさは悲鳴を上げ、腕輪を放り投げた。ベッドの上で跳ねる銀の輪。
「あー、言い忘れてた。その腕輪、魔力を通すと服が透ける副作用があるんだ」
「なんでそれを先に言わないのよ! またえっちなアイテムじゃない!」
なぎさは枕を掴んで恭一に投げつけた。小さな光の玉はひらりと避ける。
「知るかよ。俺が作ったわけじゃねえし」
「あんたのポケットから出したんでしょ!」
しばらくの間、部屋の中では枕とスリッパが飛び交った。恭一は器用に避け続け、なぎさは息を切らしてベッドに座り込んだ。
「……はあ、もういいわ。やるしかないんでしょ」
なぎさは観念したようにため息をついた。腕輪を拾い上げ、再び手に取る。
「でも絶対に見ないでよ」
「見えねえよ。俺、今15センチだぞ」
「……そうだったわね」
なぎさは小さく笑った。緊張が少し解ける。
彼女はゆっくりとセーラー服のリボンを解いた。衣擦れの音が静かな部屋に響く。スカートが床に落ち、ブラウスのボタンを一つずつ外していく。
恭一は黙って壁の方を向いていた。光が少しだけ赤みを帯びている——妖精化しても、照れはするらしい。
肌が空気に触れる。少し寒かった。なぎさは無意識に自分の腕をさすった。
その時、恭一が振り返った。
「……お前、その傷」
なぎさの体には、無数の古い傷跡が残っていた。肩口の裂傷。背中の打撲痕。わき腹の火傷の痕。どれも治りかけてはいるが、完全には消えていない。
「……二年分、かな」
なぎさは小さな声で言った。
「一人で戦ってたから。誰にも治してもらえなくて。光の妖精がいなくなってから、変身の維持もギリギリで……」
声が震える。彼女は唇を噛みしめた。
恭一は何も言わず、彼女の傷跡を見つめた。
(ずっと一人で戦ってきたのか)
胸の奥がチクリと痛む。面倒なことには首を突っ込みたくない。でも、困ってるやつを放っておけない。それが高木恭一という男だ。
「もういい。さっさとやろう」
恭一は腕輪に手をかざした。金色の魔力が注ぎ込まれ、青い宝石が輝きを増す。
なぎさは腕輪を左手首につけた。冷たい感触。すぐに熱が広がり、彼女の魔力と共鳴し始める。
「……よし、契約を始めるわ」
彼女は恭一を両手で包み込み、目を閉じた。
瞬間、部屋中が光に包まれた。
なぎさの光の魔力——純白に輝く清らかな光——と、恭一の混沌とした魔力——金色と深紅が混ざり合う爆発的な光——が、火花を散らすように絡み合う。
部屋の中に魔法の奔流が溢れ、本棚が揺れ、カーテンが激しくなびく。
「……あっ!」
なぎさが小さく声を上げた。体中を未知の感覚が駆け巡っている。熱いような、冷たいような、くすぐったいような感覚。魔法の粒子が彼女の肌を撫で、魔力の流れが血管を通るたびに、指先がビリビリと痙攣した。
恭一も同じだった。光の体が一瞬、人間サイズに膨れ上がる。ぼんやりと、元の姿——黒髪の青年のシルエットが浮かび上がり、すぐにまた縮んだ。
二人の魔力は反発し合い、それでいて引き寄せ合い、やがて一つの大きな渦となって部屋の中央で輝いた。
そして——
ドクン。
心臓が一つになったような感覚。
契約が完了した瞬間、なぎさの過去の記憶が、恭一の中に流れ込んできた。
——それは、雨の降る夜の屋上だった。
なぎさは一人でサイファーと戦っていた。もう何体目か分からない。光浄拳の連続使用で体はボロボロで、左腕は折れているかもしれない。それでも彼女は笑っていた。
(誰かがやらなきゃいけないんだから)
誰にも見せない笑顔で、一人で戦い続ける。学校では明るく振る舞って、友達と笑い合って。誰にも本当の自分を話せなくて。
(私、男なのにプリキュアで)
(変だって思われるかな)
(気持ち悪いって言われるかな)
誰にも相談できず、誰にも頼れず、二年。
——記憶の奔流が治まった時、恭一は静かに呟いた。
「……めんどくせえけど、お前を一人にしねえよ」
なぎさは目を見開いた。涙がこぼれそうになるのを、ぐっと堪える。
「……なによ、それ」
「そのまんまだ」
二人の間に、温かい沈黙が流れた。
――――――――――――――
その夜。
なぎさのグローム探知機が、けたたましい警報を鳴らした。
「反応三つ! 場所は——郊外の廃工場!」
なぎさは素早く変身した。白を基調とした戦闘服に、輝く髪。男でありながらプリキュアの力を持つ、特異存在。
恭一を肩に乗せ、窓から飛び出す。夜のトウキョウの街並みが眼下に広がり、冷たい風が頬を切る。
廃工場は街外れの工業地帯にあった。錆びついた鉄骨、割れた窓ガラス、打ち捨てられた機械たち。月明かりだけが頼りの薄暗い空間に、三つの巨大な影が揺らめく。
サイファー。黒い靄を纏う体長三メートルの怪人たち。頭部のコアが赤黒く脈打ち、獲物を探すように周囲を見回している。
「行くわよ!」
なぎさは廃工場の中に飛び込んだ。着地と同時に一体目のサイファーに肉薄し、右拳に光を集中させる。
「光浄拳!」
光の奔流がサイファーを貫く——が、サイファーは黒い靄を盾のように広げ、衝撃を吸収した。
「なっ!?」
「連携してきやがるな。面倒だ」
恭一が言う通り、三体のサイファーはバラバラに動いているようで、明らかにお互いをカバーし合っていた。一体が囮になり、もう一体が背後に回り、残る一体が遠距離から靄の弾丸を放つ。
「くっ……!」
なぎさは背後からの一撃をかわしきれず、肩に衝撃を受けた。廃材の山に叩きつけられる。
(このままじゃジリ貧だわ)
「恭一、何かある!?」
「おう、任せろ!」
恭一は魔力ポケットに手を突っ込み、ごそごそと探る。
「これだ! 伝説の魔導砲! ぶっ放せば一発で——」
恭一が取り出したのは、巨大な砲身だった。メタリックな光沢、複雑な魔法陣が刻まれた砲口。
「ちょっと待って——」
なぎさが止める間もなく、魔導砲が火を噴いた。
ドゴォォォン!!!
廃工場の壁を粉砕し、轟音と閃光が走る。衝撃波でなぎさの体が吹き飛び、壁に激突した。
「あんた、少しは考えなさいよ!!」
「わりい! 適当にぶっ放せば当たると思ったんだよ!」
「そんなわけないでしょ! もうっ!」
だが、魔導砲の一撃でサイファーたちの陣形は崩れた。三体が散り散りになり、連携が乱れている。
「今のうちだ。こいつを使え」
恭一が次に取り出したのは、銀色に輝く鎖だった。魔法文字が浮かび上がり、蛇のようにうねる。
「拘束魔法の鎖。動きを止められる」
「それよ! そういうのを先に出しなさい!」
なぎさは鎖を掴み、サイファーたちに向かって投げつけた。鎖は意志を持つかのように空中で分岐し、三体のサイファーにそれぞれ巻きついていく。
ギャアアアア!!
サイファーたちがもがくが、鎖はますます強く締め付ける。一体にまとめて拘束された。
「今度こそ——光浄拳!!」
なぎさは恭一から供給される魔力を右拳に集中させた。いつもの三倍はある輝き。恭一の魔力が、彼女の光を増幅している。
眩いばかりの光が廃工場を満たした。三体のサイファーが悲鳴を上げ、黒い靄が霧散していく。
ドサリ。
後に残ったのは、三つの黒い結晶——グロームコア。
「浄化するわ」
なぎさはグロームコアに手をかざした。光浄拳の残滓がコアを包み込み、ひび割れさせ、純白の光に変える。これで三人の楔の魂が救われた。
戦いが終わった廃工場には、静寂が戻っていた。
なぎさは膝をつき、荒い息を吐く。戦闘服が解け、普通の私服に戻る。傷はない。でも、魔力の消耗は激しい。
「……勝った」
小さく呟き、そして——笑った。
初めての連携勝利。一人じゃない戦い。
「……あはは。なにこれ、楽しい」
心からの笑顔だった。月明かりの下で、汗に濡れた顔が輝いている。
恭一は黙ってそれを見ていた。
「まあ、悪くねえな」
照れ隠しに空を見上げる。トウキョウの夜空は星が見えにくいけど、今日はなんだか綺麗に感じた。
――――――――――――――
アパートに戻った二人は、ベッドに腰掛けていた。
時刻は深夜。部屋の明かりは豆電球だけ。
「疲れた……」
なぎさがぐったりと天井を見上げる。恭一は彼女の隣で、小さな光の玉のまま浮かんでいた。
その時、異変が起きた。
ドクン。
心臓が跳ねる——いや、恭一の心臓と、なぎさの心臓が同時に鼓動を打ったような感覚。
「……なに、これ」
なぎさが自分の胸を押さえる。恭一も同じ感覚に戸惑っていた。
次の瞬間、感情の奔流が二人の間を駆け抜けた。
契約の後遺症——魔力の共鳴だった。
恭一の心に、なぎさの感情が流れ込んでくる。
(誰かに頼りたい)
(でも迷惑かけられない)
(一人で戦わなきゃ)
(本当はすごく怖い)
(誰か——助けて)
二年分の孤独と、恐怖と、それでも立ち向かう強さと。ぐちゃぐちゃに混ざった感情が、恭一の胸を締め付ける。
一方、なぎさにも恭一の過去の断片が流れ込んでいた。
血の匂い。燃え盛る戦場。崩れ落ちる城。
そして——血まみれで倒れる女性の姿。長い黒髪が血の海に広がっている。
(ユキ——)
恭一の声にならない叫び。伸ばした手は届かず、彼女の目がゆっくりと閉じられていく。
守れなかった。自分のせいで死なせてしまった。その自責の念と、深い悲しみと、二度と失いたくないという強い決意。
なぎさは息を呑んだ。
「……恭一、あんた」
恭一は何も言わなかった。光が少しだけ暗くなる。
気まずい沈黙が部屋を包む。お互いの感情が流れ込みすぎて、プライバシーがぐちゃぐちゃだ。
「……気にすんな」
ようやく恭一が口を開いた。
「俺も似たようなもんだ。お前の気持ち、なんとなくわかる」
「……恭一」
「だから、無理すんな。全部一人で抱え込もうとすんな。めんどくせえけど——たまには頼れ」
恭一の言葉に、なぎさの目から涙がこぼれた。
二年間、誰にも言えなかった言葉。誰にも見せられなかった涙。
「……ばか。簡単に言わないでよ」
でも、少しだけ心が軽くなった。
この変な妖精なら——隣にいてもいいのかもしれない。
二人はしばらく、何も言わずに座っていた。互いの感情が静かに共鳴し合い、温かい波のように押し寄せては引いていく。
やがて恭一がポツリと言った。
「……この共鳴、戦闘で使えるかもしれねえな」
「え?」
「相手の動きがなんとなくわかる。連携には便利だろ」
「それはそうだけど……プライバシーが」
そう、常に感情がだだ漏れになるのは厄介だ。さっきのエロ本のことも、これから先のことも。
二人は同時にため息をついた。
「……これ、絶対面倒なことになるわ」
「だな」
気まずい沈黙が再び訪れた。
深夜のアパートの部屋。豆電球の頼りない光。
――――――――――――――
その時、アパートの外。
街灯の下に、一人の少女が立っていた。
黒に赤のメッシュが入ったショートボブ。右耳の上だけが長く垂れたアシンメトリーな髪型。左目が赤く、右目が黒いオッドアイ。
闇月アカネ。
彼女はなぎさの部屋の明かりを、じっと見つめていた。
暁光学園の制服のまま、左手には指抜きグローブ。その下には——黒い紋様がうっすらと浮かんでいる。影憑きの証。
アカネの左目が、一瞬で黒く濁った。
(……この気配)
恭一の魔力を感じ取ったのだ。通常の光の妖精とはまったく異質な、混沌とした魔力。
(美墨なぎさ。あんた、何を連れてきたんだ)
アカネは小さく呟き、街灯の明かりから離れて、夜の闇に溶けるように消えた。
部屋の中の二人は、まだそれに気づいていない。
窓の外には、ただ静かな夜が広がるだけだった——が、その静けさは、長くは続かない。Noveliaとは?
Noveliaは、AIでライトノベルや二次創作を「読んで・数タップで作って・キャラクターと会話できる」プラットフォームです。挿絵つきの新作が毎日届き、無料で始められます。