領地を花開かせるまで、彼に恋をしていた
桜井美咲は、ただの普通の大学院生で、農業経済学を学んでいただけだった。ところが、気がつくと別の世界の忘れ去られた片隅にある、崩れかけた館の中にいた。
彼女はグレイシア辺境領の領主の妻候補という役割を押し付けられていた――前の候補者は文字通り逃げ出したというポジションだ。土地は貧しく、人々は苦しみ、誰もが疲れ果てている。
「待って、私が知っているのは農業だけ??」
だが、美咲は落ち込むタイプではなかった。畑を一目見ただけで問題点を次々と指摘する。土壌はゆるすぎる、排水が間違っている、作物の選択は最悪だ。誰にも止められないまま、彼女は地元の農民たちと泥まみれになって働き始める。
領地の領主、ルシアン・フォン・グレイシアは冷たく厳格で、彼女に感心することはなかった。最初はただの厄介者として彼女を一蹴する。しかし、彼女が泥だらけになって誰よりも懸命に働く姿を見ているうちに、目が離せなくなってしまう。
何十年も館に仕える五十歳の執事ギルバートは、美咲が新しい計画――トウモロコシの栽培!水車!交易路!――を発表するたびに、信じられない思いで瞬きをし、結局は手助けしてしまう。
十四歳の農
領地を花開かせるまで、彼に恋をしていた - 甘い毒と嫉妬の霜
執務室の「入れ」という一言が、まだ胸の奥のどこかに残っていた。
あれから三日。美咲は毎朝北の畑に出て、排水溝の様子を確かめ、農民たちと言葉を交わし、夕方になるとギルバートに進捗を報告した。ルシアンへの報告書は、いつも通り丁寧に仕上げた。緑肥の鋤き込みが終わったこと。東側の排水溝第二区画に着工できたこと。ミナが農民の子供たちに種蒔きの手順を教え始めたこと。
そして今朝、その報告が現実のものになっていた。
「[excited]ミサキ様! 見てください、ここ!」
ミナが蹲んで、震える指先で土をそっと掘り返した。粘土質の茶色い地面の中から、細い緑の芽が二本、か弱く頭を持ち上げている。淡い緑色。光を求めるように、真っ直ぐ上を向いた小さな命。
美咲はその場に膝をついた。
(咲いた。本当に咲いた)
胸の真ん中が、じわりと温かくなる。三週間分の泥と疲労と「本当にうまくいくのか」という不安が、その二本の芽の前でするりと溶けていった。
「[gentle]良かった……本当に良かったね」
「ですよね! ちゃんと育ってますよね!?」
明るい茶色の瞳が涙でうっすら光っている。ミナの頬のそばかすが、朝の光に浮かんで見えた。美咲は笑って、土だらけの手のひらをミナの頭に乗せた。
「うん。この調子でいけば、秋には本当に収穫できる」
その時、後ろで蹄の音が聞こえた。
振り返ると、グレイシア館の門の前に、見慣れない馬車が止まっていた。見慣れないどころか、この村で一度も見たことのない代物だ。深い紫紺の幌に金色の紋章。四頭立て。扉には細工の入った金具がついている。御者が馬から降りながら何か言っている。
そこから男が一人、降り立った。
金色の長髪を後ろでゆるく縛っている。仕立てのいい淡いグレーのジャケット。陽光にきらりと光る胸のブローチ。そして何より——振り向いた顔が、あまりにも整っていた。目が合った瞬間、相手はにっこりと笑った。白い歯。完璧な笑顔。まるで絵画から抜け出てきたみたいな男だった。
ミナが小声で「……誰ですか」と呟いた。美咲も正直、同じ気持ちだった。
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ギルバートがすっ飛んで来て、その男を玄関で出迎えた。
「ユリウス・ド・ソレル様。これは、ご連絡もなく……」
「急な訪問をお許しください、ギルバート殿。美しい季節の朝に、ご挨拶が遅れていたのを思い出しまして」
ユリウス・ド・ソレル——隣のソレル領の若き当主だ、とギルバートがあとで教えてくれた。グレイシア館から南西へ約六十キロ。丘陵地帯でワインと果樹を作る豊かな領地の領主。ミルディス川沿いの商人たちの組合とも太いパイプを持っていると、EP2の夕食の会話でそういえばギルバートが言っていた。
ルシアンが応接間に姿を現した時、その表情は普段通りの鉄面皮だった。銀色の瞳がユリウスをさっと見て、また静止する。
「ソレル。何の用だ」
「[sarcastic]ご挨拶ですね、グレイシア。久しぶりに会ったというのに」
ユリウスは全く動じた様子がない。むしろ楽しんでいる顔だ。視線がすっと美咲の方に移った。
「あなたが、噂の夫人候補様ですか」
さらりと言って、軽くお辞儀をする。
「ユリウス・ド・ソレルと申します。グレイシア領のご復興、ソレル領まで話が届いておりますよ。このたびはお祝いに参りました」
美咲は「あ、桜井美咲です」と答えながら、内心でちょっとドキッとしていた。
(なんか……すごく、華やかな人だな)
ルシアンが年中冬みたいな空気を纏っているとすれば、ユリウスは初夏の陽光みたいな男だった。近づいてくるだけで、なんとなく温かくなる。あの整った顔で、あんなに自然に笑えるのか、とちょっと感心した。
ギルバートがお茶を用意し始め、四人が応接間に落ち着いた——はずだった。
ユリウスが「ところで」と言って、薄い微笑みのまま美咲の方を向いた。
「北の畑を拝見しましたが、排水溝の設計が見事でした。あれは、あなたのお考えで?」
「はい。粘土質で水はけが悪かったので、傾斜を計算して……」
「傾斜の計算を? 素晴らしい。ソレル領でも同様の問題を抱えた区画があるのですが、私の農地管理人では解決できていないのですよ」
美咲の耳がぴくりと動いた。
(農地管理の問題? ソレルは丘陵地帯だから……)
「ソレルの地形って、傾斜があるから逆に排水は楽なんじゃないですか? 問題は保水の方じゃないですか」
「おや、さすがですね」ユリウスが少し目を細めた。「果樹の根には一定の水分量が必要ですが、乾燥期に水が抜けすぎてしまう区画がありまして」
「それなら……ブドウ栽培と麦の混作を試してみましたか? 根の深さが違うから、土の中の水分層を共有できるんです。グレイシアの麦と組み合わせたら、両方の収益が安定する可能性があって——」
気がついたら、前のめりになっていた。
頭の中で試算が走り始めていた。ソレルの果樹農地とグレイシアの麦の組み合わせ。交易のルートさえ整えれば、互いの弱点を補える複合モデルができる。面白い。これは本当に面白いかもしれない——
ユリウスが穏やかに笑っていた。完璧な笑顔で。
「そのような話ができる方が、この辺境においでだとは思いませんでした。ソレル領に来ていただけるなら、農地も予算も人手も、いくらでもご用意できますが」
美咲の口が「そ、それはちょっと……」と言いかけた、その瞬間。
廊下でかすかな音がした。
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ミナはその日の午後、珍しく血相を変えて執務室の前まで来た。
扉の前で深呼吸して、ノックしようとして——やめた。また深呼吸。ノックしようとして——やめた。
廊下を掃除していたマルタが「何をやってるんだ」という顔でちらりと見たが、ミナは気にせず三回目の深呼吸をして、こんどこそノックした。
「ルシアン様、少しよろしいでしょうか」
「何だ」
「あの、応接間でミサキ様が……ソレル様と、すごく楽しそうにお話しされていまして……農業の話で、ミサキ様がキラキラした目で——」
「それが何だ」
ルシアンの声は完全に無感情だった。ミナはちらりと部屋の中を覗いた。ルシアンは机に向かって書類を処理している。書類を右から左へ動かしながら、右手がなぜかじわじわと書類の端を握り締めている。
紙が、ちょっと歪んでいた。
「……いえ、その、お知らせしようかと思いまして」
「分かった。下がれ」
ミナは退室した。廊下に出て、ひとりで「あー……」とため息をついた。
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翌朝から、ルシアンの様子が変わった。
美咲が進捗報告書を持って執務室のドアをノックすると、ドア越しに「忙しい」と返ってきた。
(……え?)
三日前は「入れ」だった。それが今日は「忙しい」。
美咲はドアをじっと見た。何かしたか、と記憶を探った。怒らせるようなことは言っていないはずだ。報告書の内容も、特に問題はないはずだ。
(なんで急に……)
答えが出ないまま、廊下を引き返した。
夕食の席も、なんとなくおかしかった。ルシアンは美咲の方を一度も見なかった。食事に視線を落としたまま、ギルバートの話にだけ短く返事をする。美咲がスープの感想を言っても、そちらへ顔が向く気配がない。
ギルバートが必死に話題を提供していた。天気の話。レンテ川の水位の話。村の鍛冶屋トーマが農具の修理を進めているという話。ルシアンは全部に三文字以内で返事をして、ギルバートの努力を律儀に無駄にし続けた。
美咲はスープを半分ほど飲んだところで、ギルバートに小声で聞いた。
「[whispers]私、何かまずいことしましたか」
「そ、それは……」
ギルバートが歯切れ悪く口ごもった。その時、廊下の方から小走りの足音が近づいてきた。扉が少し開いて、淡い緑色の短い髪が覗く。
「[whispers]あ、ミサキ様。ルシアン様が嫉——」
次の瞬間、ギルバートの手がすっと動いて、ミナの首根っこを掴んだ。そのまま扉の外へ、静かに、しかし確実に連行した。扉がぱたりと閉まる。
食堂に静寂が戻った。
美咲はスープを一口すすった。向かいでルシアンが、やはりこちらを見ないまま黒パンをちぎっている。
(……何だったんだろう、今の)
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ユリウスは滞在を延ばした。
三日目の夜、夕食の後に「ソレル領のワインを持参しておりまして、よろしければ」と言って、美咲を中庭に誘った。断る理由もなかったので、美咲はついていった。
中庭には小さな石のベンチがある。石造りのグレイシア館の壁が月光に白く浮かんで、庭の端にある荒廃した薬草園の枯れ草が、風に揺れている。
ユリウスがワインを二つのグラスに注いだ。ソレル領産の深い赤。
「月が綺麗ですね」
「そうですね」
美咲はワインをひと口飲んだ。確かに美味しかった。ソレル領の果樹農業がいかに本物かを、この一口で理解できた気がした。
ユリウスが静かにグラスを置いた。そしてゆっくりと、美咲の方を向いた。月明かりが金色の髪を照らす。整った横顔が、夜の空気の中で柔らかく見えた。
「美咲さん。あなたのような才能が、こんな辺境に埋もれているのは惜しい」
「…………」
「ソレル領に来てください。広い農地と、潤沢な予算をご用意します。あなたがやりたいことの、全部を試せる環境を」
ユリウスの手が、美咲の手の上に重なった。
胸の中で何かがドキッとした——のは確かだった。この人の笑顔は本当に完璧で、声は穏やかで、言葉はきれいで。なのに。
(……なんか、変だ)
変、という感覚が消えなかった。ドキドキしているのに、同時に、何かが引っかかっている。ユリウスの笑顔が完璧すぎる。台本を読み上げているみたいに、一ミリのずれもない。まるで——この会話を、最初から計算して進めているみたいな。
「でも、私はグレイシア領で始めたことがあるので……」
「急かしません。ただ、覚えておいてほしいのです」
ユリウスは柔らかく微笑んだまま、手を引いた。その余裕が、逆に怖かった。
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その夜、喉が渇いて美咲は廊下に出た。
水差しを取りに一階へ下りながら、ふと気がついた。書庫の扉が細く開いている。中から、薄いランタンの光が漏れていた。
(誰か……?)
美咲は足を止めた。ギルバートは夜は早く寝ると言っていた。マルタも同じだ。ルシアンが書庫に来ることはあるが、ギルバートが今日は不在だという話を美咲は聞いていた——実家の用事があると言っていた。
扉をそっと押し開けた。
ランタンの明かりの中、書棚の前にユリウスが立っていた。棚から一冊の書類束を取り出して、目を走らせ、また元に戻す。また別の束を手に取る。
「[cold]……何してるんですか」
ユリウスが振り返った。表情が揺れなかった。一瞬も揺れなかった。
「[sarcastic]ああ、驚かせてしまいましたね。少し歴史に興味がありまして。眠れなかったもので」
完璧な微笑みで、完璧な言い訳だった。
だが美咲は、さっき彼が手に取っていたものを見ていた。農地台帳——グレイシア領の全農地の面積と状態が記載された記録。そしてもう一冊は、開墾奨励令の法令集。荒廃地を三年以内に農地化すれば五年間年貢が半額になる、あの制度の詳細が書いてある本だった。
(なんで……ユリウスがあれを?)
胸の奥で、ざわりと何かが動いた。不安、というより、確信に近いもの。この男は、ただお祝いに来たわけじゃない。最初から、何かを調べにきた。
「お休みなさい」
ユリウスはランタンを持って、静かに書庫を出ていった。足音もなく、廊下に消えた。
美咲は書庫に一人残った。棚の背表紙を眺めながら、頭の中で考えをまとめようとした。でもまとまらなかった。ただ「おかしい」という感覚だけが、はっきりしていた。
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翌朝、ルシアンが美咲を執務室に呼んだ。
扉を開けると、ルシアンは窓の外を向いたまま立っていた。振り返らない。北の畑の方角を見ている。美咲は部屋の中に入って、扉を閉めた。
沈黙が数秒あった。
「ソレル領への移籍を持ちかけられていると聞いた」
低く、平坦な声だった。怒りも、悲しみも、何もない。ただ冷たい。
「行きたいなら止めない。好きにしろ」
美咲の胸の中で、何かがひっそりと崩れた。
(……なに、それ)
好きにしろ。三日前は「入れ」と言ってくれた。同じ声、同じ部屋、同じ人。なのに今日の声は、別人みたいに遠かった。縮まっていた距離が、一瞬でゼロに戻ったみたいだった。いや、ゼロ以下かもしれない。
「なんでそんなこと言うんですか。私はグレイシア領で始めたことがあって、ソレルに行く気なんて全然——」
「報告は今後ギルバートを通せ。以上だ」
ルシアンは窓から振り返らなかった。
それ以上の言葉がなかった。美咲は何か言おうとして、口を閉じた。言葉が出てこなかった。扉を開けて、廊下に出た。
グレイシア館の廊下はいつも通り、石の床が冷たく、薄暗く、静かだった。美咲はしばらく動けなかった。
(なんで……)
足音が後ろから聞こえてきた。小走りで、軽い。
「[gentle]ミサキ様、大丈夫ですか」
ミナだった。心配そうに、でも一生懸命平静を保こうとしながら、小さな顔が美咲を見上げている。頬のそばかすが、廊下の薄明かりに浮いていた。
「大丈夫だよ」
「あの、その……」
ミナが少し迷った顔をして、それから思い切ったように続けた。
「ルシアン様、最近ずっとミサキ様のことを窓から見てましたよ。絶対、嫉妬ですよ、あれ!」
美咲は「え?」と顔を上げた。
「嫉妬? まさか。ただの領地の確認でしょ、あれは」
「そんなわけないじゃないですか!」
ミナが少し強い口調で言った。珍しく、眉を寄せて、本気の顔だった。
「昨日の朝も、一昨日も、朝の巡回じゃなくてミサキ様の方向の窓からずっと……。それに、さっきも書庫でルシアン様がソレル様の客間の位置を地図で確認していて、書類をすごく強い力で閉じてましたよ。あれは絶対そういう——」
「いや、それは領地管理的な観点から——」
「もー!」
ミナがぽんと足を踏んだ。
「ミサキ様は鈍すぎます!」
美咲は「……え?」と固まった。
(私、そんなに鈍いの?)
本気でショックだった。自分でそう思ったことが一度もなかっただけに、余計に。
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その日の昼過ぎ、ユリウスの馬車が門を出た。
美咲は偶然、中庭でそれを見かけた。出発の準備をしているユリウスの隣に、農民のハンスが立っていた。二人は声を低くして、何かを話している。美咲が近づくと、ハンスがさっと後ずさって、そのまま足早に立ち去った。
「[sarcastic]美咲さん、お見送りありがとうございます」
ユリウスはいつも通り、完璧な笑顔だった。
「さっき、ハンスと何を話してたんですか」
「ああ、世間話ですよ。今年の農作物の話とか、そういった」
そう言って、ユリウスは馬車に乗り込んだ。
ハンスを呼び止めて「さっきソレル様と何の話を」と聞くと、ハンスは目を逸らして「いえ……ソレル様はいいお方ですね」とだけ言って、その場から逃げるように離れていった。
馬車が門の外に消えるのを、美咲は一人で見ていた。
(農地台帳。開墾奨励令。ハンスとの会話。引き抜きの提案)
全部がバラバラに、頭の中に転がっている。繋がりそうで、繋がらない。でも何かある。それだけははっきりしている。
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夜、美咲は自室の窓辺に座った。
月明かりの下に、北の畑が見えた。三週間前は何もない荒れ地だった。今は、細い芽が二本、土の中から顔を出している。あの小さな緑が、今夜も月光に揺れているはずだった。
(あの緑を守りたい)
それだけは、はっきりしていた。ルシアンに「好きにしろ」と言われても。ユリウスに甘い言葉を囁かれても。それは変わらない。この土地で始めたことを、中途半端には終わらせない。
でも——ユリウスが農地台帳と開墾奨励令を調べていた理由が、どうしても頭から離れなかった。
開墾奨励令。グレイシア領がまだ一度も使っていない制度。荒廃地を三年以内に農地化すれば、五年間の年貢が半額になる。美咲が利用しようとしている、まさにその制度を——なぜ、隣の領主が夜中に書庫で調べる必要があったのか。
答えは出ない。ただ、胸のざわつきだけが、部屋の暗さの中で大きくなっていた。
窓の外。グレイシア館の石の壁が月に照らされ、北の畑の方へと影を落としている。あの畑に、あの二本の芽が、今夜も揺れているはずだった。
明日も、美咲は鍬を持って出るつもりだった。どんな夜が来ても、それだけは変わらない。そのつもりだった——まだ、その時は。