ダンダダン!呪われし性転換ラブコメ騒動!
オカルト好きギャルのモモと、宇宙人マニアのオタク・オカルンは、心霊スポットでの命がけバトルでおなじみのコンビ。今日も今日とて、捨てられたおもちゃから生まれた呪い『シーメールコレクター』を退治しようとするが、その最後っ屁のドジな呪いがとんでもない事態を引き起こす。モモの目の前で、オカルンが女の子に変身! そしてモモ自身も、まさかの男の体になってしまった!
「えっ……わ、私のアレが……!? ってかオカルン、めちゃくちゃ可愛いんですけど!」
「や、やめろよモモちゃん……そんな服ビリビリの格好で近づくなって!」
さらに学校では、元ヤンのジジが金髪ツインテのギャルになって現れ、みんなのアイドル・アイラちゃんは男装のイケメンと化して女子たちを悩殺。クラスメイトのシラトリくんに至っては、美少女になった自分にまんざらでもない様子で、もう大混乱!
呪いを解くには、一週間以内にシーメールコレクターのコアを破壊しなければならない。だが、慣れない体で過ごす毎日は、ドキドキの連続。着替えにトイレ、お風呂――何もかもがぎこちなくて、くすぐったいハプニングだらけ。
おまけに、元に戻りたい気持ちと、このままで
ダンダダン!呪われし性転換ラブコメ騒動! - ガラクタ原野の怪異と、入れ替わった金曜日
「[scared]やばっ、服が破れるぅぅ!」
夕暮れのガラクタ原野に、今まで出したことのない低い声が響き渡った。
ついさっきまで、私は確かに女の子だった。なのに今、自分の口から出てるのは、どう考えても男子の声だ。
横を見ると、そこには小柄な女の子が立っていた。さらさらの黒髪、大きな瞳、小さな唇。制服のスカートがやけに大きくて、肩のあたりの生地が余っている。
「……オカルン?」
その子は自分の体を見下ろして、ガタガタと震えていた。
「[crying]も、モモちゃん……俺、なんで……」
声も、女の子のものだった。
心臓がバクバクする。頭が真っ白になる。
何が起きた?
さっきまでの戦いを思い出そうとした。今日は金曜日の放課後、いつものように怪異退治に来たんだ。神衝町の北東にあるこのガラクタ原野は、駅から歩いて四十分もかかる。捨てられたおもちゃや家電が山になってる、いわくつきの場所だ。
「ここ、なんかヤバい気配がするんだよね」
放課後、私は教室でオカルンにそう言った。窓から差し込む夕日が、机の上のオカルト雑誌をオレンジ色に染めていた。
「[serious]ガラクタ原野か……確かに最近、あの辺りで怪異目撃情報が増えてる」
オカルンは――本名・高倉健。クラスでいちばんの宇宙人オタクで、UFOの話になると止まらなくなる。いつも緑色のジャージみたいな服を着てて、髪はボサボサ。でも顔は結構イケメンで、女子からはそこそこ人気がある。
……って、なんで私がオカルンの顔をイケメンなんて思ってるんだ。
いや、そうじゃなくて。
「[excited]行こうぜ!絶対すごい怪異に違いないって!」
私はガタッと席を立った。オカルンはちょっと困ったような顔をしてたけど、結局ついてくる。いつものパターンだ。
私、綾瀬桃は、霊感がめちゃくちゃ強い。祖母ちゃんから教わった霊力で、怪異を見たり戦ったりできるんだ。左のこめかみにある小さな傷跡は、小さい頃に怪異と戦った時の勲章。見た目は普通の女子高生だけど、こう見えて結構な数の怪異を倒してきた。
神衝町――ここは東京の多摩地方にある、人口四万二千人の小さな町だ。でも実は、怪異の出現率が周辺の三倍もある。町の地下には「レイ・ノット」っていう地脈の交差点があって、それが原因らしい。
だからこうして、しょっちゅう怪異退治に出かけることになる。
「[whispers]なんか今日、空気が重い」
ガラクタ原野に着いた時、私はそう感じた。捨てられた人形やぬいぐるみが山になってる。夕暮れの光を浴びて、その影が気味悪く伸びていた。この場所にはガラクタ・ムシっていう虫型の小怪異もウヨウヨいる。夜になると危険度が跳ね上がるから、早めに片をつけないと。
「[serious]いるぞ」
私は霊力を込めて、廃材の山の奥を見つめた。
ガタン、と廃冷蔵庫が動いた。
そこから現れたものは、身長二メートル以上の化け物だった。
上半身はマネキンみたいな白い胴体で、顔の部分にはたくさんの人形の顔がパッチワークみたいに貼り付いてる。どの顔も泣いてるような、怒ってるような、歪んだ表情だった。下半身は溶け合ったプラスチック人形の山がウネウネと動いてる。右腕は大きなハサミ、左腕は縫い針の形。
「シーメール・コレクターだ!」
「[scared]なぜ、私だけが捨てられるの……」
怪異の声は、たくさんの子供の声が重なったみたいだった。
「……だったら、お前たちも着せ替えてやる」
その瞬間、怪異が襲いかかってきた。
「[excited]オカルン、いつものパターンで!」
私は叫びながら、霊力で周囲の廃材を浮かせた。壊れたテレビ、へし曲がった自転車の部品、壊れた電子レンジ――それらが青白い光に包まれて、ブワッと空中に舞い上がる。
「[serious]了解!」
オカルンが動いた。超高速移動。ターボババアの力が宿ってる彼は、目で追えないスピードで怪異の周りを駆け回る。シュンッ、シュンッという音だけが聞こえて、人影が一瞬見えるだけだ。
「[angry]もらった!」
私は念動力を込めた廃材を、怪異めがけて投げつけた。テレビが怪異の胸に直撃して火花が散る。電子レンジがハサミの腕にぶつかって、鈍い音がした。
怪異もやられてばかりじゃない。
「[scared]捨てないで……」
ザシュッ!
ハサミが私のすぐ横の廃材を切り裂いた。ブリキの人形が真っ二つになって飛び散る。縫い針がチカチカ光りながら降ってきて、地面に小さなクレーターを作る。
でも、私たちのコンビネーションは完璧だ。
「[excited]オカルン、そっち行った!」
「[serious]捕まえた!」
オカルンが超高速移動で怪異の背後に回り込む。怪異がそっちに気を取られた隙に、私は霊力を最大に込めた。
体中の霊力が集まってくるのを感じる。髪の毛先がわずかに逆立つ。指先から青白い光が溢れて、手のひらに集中する。
「これで――」
トドメを刺す。そう思った瞬間だった。
怪異が急に笑った。
「[crying]だったら、お前たちも……着せ替えてやる!」
ドレースアップ・カース。
怪異が最後の力を振り絞って放った呪いだ。ピンクと青の光が混ざった閃光が、半径八十メートルに広がった。眩しくて目を閉じる。何かが体中を駆け巡る感覚。まるで風呂のお湯みたいに温かいのに、同時にぞっとする冷たさがある。
そして、気がついた。
胸が軽い。
ずっと背負ってた重みが、なくなってる。
代わりに、背が伸びてる。肩幅も広がってる。
「なにこれぇぇぇぇぇ!」
声が低い。男の声だ。
見下ろすと、白いTシャツがパンパンに張り裂けそうになってる。ジーンズもつんつるてんで、足首が見えてる。手を見ると、血管が浮き出た大きな手になっていた。
そして、股の間には――
「[scared]やばっ、服が破れるぅぅ!」
今ここです。
「[crying]も、モモちゃん……俺、なんで女の子に……」
横を見ると、そこにいたのは可憐な美少女だった。
黒髪が肩までかかって、大きな目が涙で潤んでる。肌は白くて、細い腕と細い足。もともとオカルンは中性的な顔立ちだったけど、今は完全に女の子だ。それも、めちゃくちゃかわいい。
ドキン、と胸が高鳴った。
なにこれ?
なんで私、今オカルン見てドキドキした?
しかも、見ただけで顔が赤くなる。守ってあげたくなる。抱きしめたくなる。ちょっと待って、何考えてるの私!
「[whispers]モモちゃん……顔、赤くない?」
「[angry]う、うるさい!お前こそ変な顔になってんじゃん!」
私は怒鳴った。でも、声が野太くて、ぜんぜんいつもの感じが出ない。
照れ隠しのつもりだった。でも今の自分じゃ、ただの怖いおっさんみたいな声で、余計に恥ずかしくなった。
オカルンも困ったような顔をしてる。ついさっきまではイケメンだったのに、今は守ってあげたくなるような女の子の顔で、まっすぐこっちを見てくる。
どうしていいか分からなくて、二人とも黙った。
夕暮れの風が吹いて、ガラクタの山がカタカタと音を立てた。
「[serious]と、とにかく……キョウハク状況を確認しよう」
私は変な言い間違いをしながら、怪異が消えた場所を調べ始めた。
廃材の山をかき分ける。壊れた冷蔵庫、錆びた自転車、ボロボロのソファ。そして。
「あ」
見つけた。古ぼけた人形の左腕だけが、そこに落ちていた。
ピンク色の髪の毛がついた、小さな腕。表面はひび割れてて、ひどく汚れてる。でも、触れた瞬間――
脳裏に映像が流れ込んだ。
三十年以上前。
どこかの家の玄関。小さな女の子が、この人形を抱きしめて泣いてる。引っ越しのトラックが外に止まってて、お母さんらしき人が「早くしなさい」と呼んでる。
「ごめんね、マリン……」
少女は涙をポロポロこぼしながら、人形を玄関の脇に置いた。それから走ってトラックに乗って、二度と戻ってこなかった。
人形はひとりぼっちになった。
「[whispers]プリティ・マリン……それが俺の名前」
頭の中に直接、声が響く。幼い女の子の声だった。
「七日以内に、わたしの本体を壊さなければ、お前たちの体はそのままだ」
映像が消えた。
「[scared]七日……?」
私は自分の手を見た。大きな男の手。
これがあと一週間だけのことで、戻れなかったら――
「[serious]モモちゃん、これ見て」
オカルンが人形の腕の裏側を指さした。かすかに刻印がある。
『1987年 トイ・ルミナス社』
「[serious]この会社、九二年に倒産してる。多分、大量の売れ残りが不法投棄されたんだ。その怨念が固まって、今回の怪異になった」
オカルンはこういう知識がすごい。オカルト雑誌を山ほど読んでるから、怪異の由来にも詳しい。今はかわいい女の子の声で解説してるけど、中身は相変わらずのオタクだ。
「[excited]それなら、解決策も分かるはず!明日から調査しよう!」
私は強がって言った。
でも、内心は焦ってる。
(七日……一週間だけ?その間に戻れなかったら、ずっとこのまま?)
考えただけでゾッとする。明日から学校なのに。クラスのみんなに何て説明すればいいんだ。
「[sad]……俺、この一件、俺たちだけで済むと思えない」
オカルンが小さく呟いた。
「だって、呪いは半径八十メートルに放たれた。もしかしたら、他の誰かも……」
その言葉に、背筋がヒヤリとした。
もしそうなら。
クラスメイトにまで影響が出てたら。
とんでもないことになる。
「[serious]とにかく、今日はもう帰ろう。日が暮れるとガラクタ・ムシが増える」
私たちは、ガラクタの山を後にした。
帰り道はずっと、ぎこちなかった。
だって、隣を歩いてるのは可憐な女の子の姿をしたオカルンだ。普段なら肩を並べて歩いてるだけなのに、今はその姿を見るたびに胸がドキドキする。
なんで?
ずっと前から、オカルンのことは気になってた。でもそれって、怪異退治の相棒としての信頼だと思ってた。
でも、さっきからずっと、違う。
「守りたい」って思ってる。
オカルンが女の子になったから?それとも、自分が男になったから?
分かんない。
でも、もともと抱いてた気持ちが、急に大きくなった感じがする。
「[whispers]……何で俺、こんな小さくなっちゃったんだろ」
オカルンがポツリと言った。
「[serious]仕方ないだろ、怪異の呪いなんだから」
「[sad]でも、これじゃもう……モモちゃんと一緒に怪異退治できない」
「[surprised]なんでだよ!」
「だって、力が弱くなってる気がする。それに……俺、もうモモちゃんを守れない」
そういうことか。
オカルンは、私のことを守るのが自分の役目だと思ってたんだ。それなのに、自分が女の子になってしまって、立場が逆転してしまった。
「[gentle]別に、守ってもらわなくていいし」
私は言った。できるだけ優しい声で言ったつもりだけど、今の野太い声じゃ、どうしても強く聞こえてしまう。
「……それに、今度は俺がお前を守るから」
言ってから、ハッとした。
何言ってんだ私!
「[embarrassed]べ、別に深い意味はないからな!」
照れ隠しに怒鳴ると、オカルンは少し笑った。
「[gentle]うん……ありがと、モモちゃん」
その笑顔が、またかわいくて。
胸がきゅっとなった。
ダメだ、これ以上見てると変な気持ちになる。
私は視線を前方に戻した。街灯がポツポツと灯り始めて、神衝町の住宅街が夕闇に包まれていく。
「[serious]明日、絶対に戻る方法を見つけるからな!」
オカルンのアパートの前で、私はそう言い放った。
コーポ・ミナヅキの二階。窓からは少しだけ明かりが漏れてる。お母さんは今日も夜勤かな。
「[gentle]うん」
オカルンは小さく頷いて、階段を上がっていった。スカートの裾がヒラヒラ揺れてる。
私はそれを見送ってから、踵を返した。
家に帰る道すがら、考えた。
七日間。たった七日。
でも、もし戻れなかったら?
もし他のクラスメイトにも影響が出てたら?
腕時計を見ると、もう夜の七時だ。
まだ金曜日は終わらない。
この異変が、明日になったらどんな大混乱を引き起こすのか。
私たちはまだ、何も知らなかった。
町のあちこちで、今夜も誰かが自分の体の異変に気づいて、悲鳴を上げているかもしれない。
空を見上げると、星がひとつ、キラリと光っていた。
まるで何かの始まりを告げるように。