ダンダダン!呪われし性転換ラブコメ騒動!
オカルト好きギャルのモモと、宇宙人マニアのオタク・オカルンは、心霊スポットでの命がけバトルでおなじみのコンビ。今日も今日とて、捨てられたおもちゃから生まれた呪い『シーメールコレクター』を退治しようとするが、その最後っ屁のドジな呪いがとんでもない事態を引き起こす。モモの目の前で、オカルンが女の子に変身! そしてモモ自身も、まさかの男の体になってしまった!
「えっ……わ、私のアレが……!? ってかオカルン、めちゃくちゃ可愛いんですけど!」
「や、やめろよモモちゃん……そんな服ビリビリの格好で近づくなって!」
さらに学校では、元ヤンのジジが金髪ツインテのギャルになって現れ、みんなのアイドル・アイラちゃんは男装のイケメンと化して女子たちを悩殺。クラスメイトのシラトリくんに至っては、美少女になった自分にまんざらでもない様子で、もう大混乱!
呪いを解くには、一週間以内にシーメールコレクターのコアを破壊しなければならない。だが、慣れない体で過ごす毎日は、ドキドキの連続。着替えにトイレ、お風呂――何もかもがぎこちなくて、くすぐったいハプニングだらけ。
おまけに、元に戻りたい気持ちと、このままで
ダンダダン!呪われし性転換ラブコメ騒動! - 叫べ、私の名前で!迷宮崩壊と全員集合の大逆転
地面が冷たい。
ガラクタの破片が突き刺さる膝の痛みも、今は遠い。
「オカルン……」
涙が止まらなかった。声を殺して泣き続ける。男になった大きな手で地面を叩く。
ドン! ドン!
手のひらが切れて、血が滲む。でも、痛みなんて感じない。それよりも、胸の奥の方がずっと痛かった。
(私が、ちゃんとしてれば)
(ちゃんと、言葉にできてれば)
「オカルンを守りたかっただけなのに……」
その時だった。
——この力は、あなたを強く見せるためじゃない。
頭の奥で、声がした。
優しくて、ちょっとだけ厳しい、祖母の声。
綾瀬星子の声だった。
——誰かを守りたいって気持ちが、源なんだよ。
モモの涙が、止まった。
顔を上げる。暗闇の中、自分の大きな手を見つめた。
(守りたかったんだ)
オカルンに怒鳴ったのだって、全部、守りたい一心で。
(男の体になっても、ちゃんと戦えるって)
(オカルンを、守れるって、証明したくて)
必死だった。
必死で、空回りして、全部めちゃくちゃになった。
「……私は、バカだ」
モモは、ゆっくりと立ち上がった。
膝の痛みが走る。でも、構わない。
「男とか女とか、そんなの関係ない」
声に、力が戻る。
「私は綾瀬桃だ! 私として戦うんだ!」
その瞬間、体の内側が熱くなった。
今までズレていた霊力が、体の輪郭にぴたりと収まる感覚。
怒りじゃない。
焦りでもない。
ただ、オカルンを守りたいという、たった一つの意志——それだけで、霊力がモモの言うことを聞き始める。
涙で濡れたモモの目に、強い光が戻った。
「これだ……これが、私の力だ!」
モモは、正面の廃材の壁に向かって両手を突き出した。
「オカルンを守りたかった! それだけが本当だ!!」
全解放。
——ドオオオオオオオン!!!
半径十メートルの廃材の壁が、爆発するように外へ吹き飛ぶ。
壊れたテレビ、冷蔵庫のドア、無数のプラスチック人形——全部が、一瞬で粉々だ。
衝撃波が迷宮全体に響き渡った。
「うわっ!」
反動で、モモは尻もちをついた。
そんなモモの顔に——
べちっ。
飛んできたプラスチック人形が、ぶつかった。
「いって……なんだこれ!?」
モモが人形をつかんで投げ捨てる。その背後で、崩れた廃材の山がガラガラと音を立てて崩れ、別の人形がまたモモの頭に落ちてきた。
べしっ。
「もう! なんでこうなるのよ!」
感動の覚醒シーンが、一瞬で台なしだ。
それでも、モモは立ち上がる。
顔に人形がぶつかった跡がついているけど、まったく気にしていない。
その目は、もう前だけを見ていた。
「……今の、なんだ?」
別の区画。
ジジはツインテールを揺らしながら、暗闇の中で顔を上げた。遠くから、轟音が聞こえてきたのだ。
「モモの声……あれは、モモの声だ」
ジジが立ち上がる。
「突破口を作ったんだ! アイラ、白鳥、聞こえたか!?」
「ええ……壁が、揺れました」
イケメンの顔をしたアイラが、長い手で廃材の壁に触れる。
微かに、振動が伝わってきていた。
「……モモちゃんが、壊したんだね」
白鳥が、静かに言った。
それから、三人を見渡す。
「ジジのコミュ力。アイラのカリスマ。私のしなやかさ」
「は?」
「全部、使えばいい。内側から、壊せる」
白鳥の声は、いつも通り冷たい。
でも、その一言で、ジジとアイラの顔に決意が浮かんだ。
「……言うじゃねえか、白鳥!」
ジジが、にやりと笑った。
「ギャルの体、舐めんなよ! この体型、狭いとこスルッと入れるんだぜ!」
ジジは廃材の隙間に体を滑り込ませた。
——が。
「あ、やば——ちょっと、引っかかっ——」
ギャル体型が、見事に挟まった。
「何やってんですか、ジジくん」
アイラが笑いながら、ジジの背中を押す。
「笑ってねえで押せ! ぐっ……くそ、これでだめなら蹴り崩す!」
ジジとアイラが押し合いへし合いしながら、じわじわと進む。
その間、白鳥は一人で狭い隙間を颯爽と抜けて、壁の先で待っていた。
「……早く」
「お前だけ余裕かよ!」
三人はそれぞれの力で壁を突破した。
ジジはギャルの大声で廃材を揺らし、崩壊を誘発。
アイラはイケメンの長い腕で天井の梁を押し上げ。
白鳥は女性のしなやかな体で壁の弱点を正確に蹴り抜いた。
——ガラガラガラガラ!!!
音を立てて、壁が崩れていく。
そして。
「わああああっ!!!」
「きゃあああっ!!!」
崩れた廃材の山から、三人が転がり出てきた。
「なっ……!?」
モモが目を丸くする。
ジジは金髪ツインテールを埃まみれにして、アイラはイケメンの顔に擦り傷をつけ、白鳥だけは平然と髪を払っていた。
「いてて……なんだよ、もう着いてたのかよ!」
「モモちゃん、無事……?」
「お、お前ら……よく、ここが……」
その瞬間だった。
迷宮の上方から、轟音が響いた。
——ドドドドドドド!!!
全員が、上を見上げる。
天井近くの廃材の山を、誰かが垂直に駆け上がっていた。
ターボババアの加速。
女性化した体で、低いG加速——壁を蹴り、足場を蹴り、一直線に頂上へ。
そして。
「モモちゃーーーん!!」
オカルンが、廃材の山の頂上から飛び降りた。
「ば、バカ! 危な——」
モモが叫ぶ。
着地の瞬間、オカルンの重心がぶれた。
「あっ——」
よろめくオカルン。
モモはとっさに、両腕を伸ばした。
——ドサッ。
柔らかな衝撃。
モモの腕の中に、オカルンがすっぽりと収まった。
一瞬の、静寂。
二人の目が、間近で合った。
モモの心臓が、ドクンと跳ねる。
(ち、近い……!)
オカルンの顔が、見る見る赤くなる。
「な、ななな——」
モモは慌ててオカルンを離した。
いや、離そうとしたが、うまく力が抜けずに、抱きしめるような形になってしまった。
「なんで一人で突っ込んでくるんだ! 危ないだろ、バカ!!」
怒鳴りながら、ようやくオカルンを解放する。
オカルンは、小さな女の子の手で、自分の制服の裾をぎゅっと握った。
「……モモちゃんが、迷宮、壊してくれたから」
「は?」
「上が薄くなって……それで、ターボババアでも抜けられるって」
オカルンは俯きながら、早口で言った。
「一人で行けばいいって言ったけど……私も、言い過ぎたって……だから——」
「……バカ」
モモの声が、震えた。
怒っているんじゃない。
心配だった。
心配で、心配で、たまらなかった。
でも、その気持ちを、今も「怒り」にしか変えられない自分がいる。
(なんで素直になれないんだよ……!)
モモは、自分の不器用さに泣きそうになった。
「お〜、いちゃついてるな〜よ」
ジジが、にやにやしながら言った。
「いちゃついてない!!」
「ふふ、二人とも顔が真っ赤ですよ」
アイラが、二人の顔を見比べて、にこりと笑った。
「……それより、タイムリミットは、あと何時間だと思う?」
白鳥の一言で、全員が我に返った。
そうだった。
今は、いちゃついている場合じゃない。
「……えっと、今がだいたい、金曜日の明け方だよな」
ジジが、真面目な顔になる。
白鳥が、スマートフォンを取り出した。
画面の明かりが、暗闇に五人分の顔を映し出す。
「金曜日の午前四時十二分。呪いを受けたのが、先週の金曜日の深夜零時頃だから——」
「残り、二十時間を切ってるのか」
アイラの言葉に、全員の表情が引き締まった。
モモは、蔵前老人からもらった地図を広げる。
汚れてボロボロになった紙切れ。でも、まだ読める。
「ここが、今、あたしたちがいるところ。ここが、プリティ・マリンの眠ってる廃冷蔵庫」
モモの指が、地図の上を走る。
「距離は、約二百メートル」
「二百!? 結構あるな……」
「問題は距離じゃない。あれだ」
白鳥が、通路の先を指差した。
そこには——
ガサガサガサガサ……。
無数の黒い影が、蠢いていた。
ガラクタ・ムシ。
体長十センチから三十センチ。黒い甲虫のような外見。プラスチック片の翅が、カサカサと音を立てている。
「二百体はいるだろ……これ」
ジジの声が、引きつった。
「正面突破は……さすがに厳しいかも」
アイラが、冷静に分析する。
その時だった。
「……スマートフォン、みんな持ってるだろ」
白鳥が、ぽつりと言った。
「は? あるけど……それが?」
「懐中電灯。最大輝度。五台分、一斉に照射する」
「…………は?」
ジジが、口を開けて固まった。
「ガラクタ・ムシの弱点は光よ。強い光を当てれば、群れを分散させられるはず」
「作戦は、それだけじゃない。モモの霊力と、この光を合わせる」
白鳥が、自分のスマートフォンを構える。
「光で嫌がって、固まったところを、霊力で吹き飛ばす」
五台分のスマートフォンが、全員の手のひらの上に並んだ。
「……地味だな、作戦が」
ジジが、力なく笑った。
「でも、やるしかないだろ」
モモが、スマートフォンの電源を入れる。
「行くよ! 五、四、三——」
全員が、息を呑む。
「二、一——今!!」
パッ!!!
五台のスマートフォンが、一斉に最大輝度で光を放った。
ガラクタ・ムシの群れが、ざわめく。
——ギチギチギチギチ!!!
黒い甲虫たちが、光を嫌がって一斉に後退した。
「今だああああ!!!」
モモの霊力が、一点に集中する。
もう、ズレはない。
意志が、力と一体になる。
——ドオオオオオオン!!!
光の道が、一直線に開かれた。
「走るぞ!!」
五人は、光の道を全速力で駆け出した。
廃冷蔵庫まで、あと少し。
その手前で、群れが更に密集しているのが見えた。
まだ、終わっていない。
でも——
「行くしかないなら、全員で行く!」
モモは、叫んだ。
その声に、もう迷いはなかった。
夜空の向こう、東の空が、うっすらと白み始めていた。
タイムリミットは、刻一刻と迫っている。
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