ダンダダン!呪われし性転換ラブコメ騒動!
オカルト好きギャルのモモと、宇宙人マニアのオタク・オカルンは、心霊スポットでの命がけバトルでおなじみのコンビ。今日も今日とて、捨てられたおもちゃから生まれた呪い『シーメールコレクター』を退治しようとするが、その最後っ屁のドジな呪いがとんでもない事態を引き起こす。モモの目の前で、オカルンが女の子に変身! そしてモモ自身も、まさかの男の体になってしまった!
「えっ……わ、私のアレが……!? ってかオカルン、めちゃくちゃ可愛いんですけど!」
「や、やめろよモモちゃん……そんな服ビリビリの格好で近づくなって!」
さらに学校では、元ヤンのジジが金髪ツインテのギャルになって現れ、みんなのアイドル・アイラちゃんは男装のイケメンと化して女子たちを悩殺。クラスメイトのシラトリくんに至っては、美少女になった自分にまんざらでもない様子で、もう大混乱!
呪いを解くには、一週間以内にシーメールコレクターのコアを破壊しなければならない。だが、慣れない体で過ごす毎日は、ドキドキの連続。着替えにトイレ、お風呂――何もかもがぎこちなくて、くすぐったいハプニングだらけ。
おまけに、元に戻りたい気持ちと、このままで
ダンダダン!呪われし性転換ラブコメ騒動! - プリティ・マリン!ふたりの声が重なった朝
光が、群れを割った。
五台のスマートフォンが放つ最大輝度の白い壁が、ガラクタ・ムシの黒い奔流を真っ二つに切り裂く。ギチギチギチギチ! プラスチックの翅が擦れ合う不快な音が、原野に木霊した。
「[excited]道ができた! 走るぞ!」
モモの声は男の子の低い声だった。それでも、その響きにはもう迷いがない。エピソード6で取り戻した、あの熱い意志の光が、目の中に宿っている。
先頭を走るモモの両手から、衝撃波が放たれる。ドオッ! 群れの真正面に撃ち込まれた霊力が、数十体の虫をまとめて吹き飛ばした。プラスチックの破片が、キラキラと朝焼けを反射して散っていく。
「[excited]モモ、右だ!」
金髪ツインテールを振り乱し、ギャル姿のジジが叫ぶ。その声と同時に、ジジは持ち前の腕力で、落ちていた廃材のパイプを掴んでぶん回した。ガガガッ! モモの右側面から迫っていた数体が、まとめて薙ぎ払われる。
「[gentle]私も、やります……!」
イケメンの顔をしたアイラが、長い手足を活かしてジジのフォローに入る。倒し損ねた虫を、長い脚で踏み潰した。メキメキと甲殻が砕ける音がする。
「[cold]……あと少し。あの廃冷蔵庫だ」
最後尾を走る、黒髪の美少女の姿をした白鳥が、淡々と指を差した。
その先には、かつて白かったであろう錆びついた業務用冷蔵庫が、ガラクタの山の頂上で横倒しになっていた。
「[excited]俺がひっくり返す!」
ジジが先頭に躍り出た。ギャルの細腕だけど、中身は元ヤンキーの魂が込められている。冷蔵庫の縁に手をかけ、渾身の力を込めて、ぐぐぐっと持ち上げた。
「[excited]おおおおおっ!!」
ギシギシと金属が軋む悲鳴を上げた、次の瞬間——。
ガッシャーーーーーン!!!
冷蔵庫が派手に裏返り、泥の海が跳ね上がった。
「[laughing]どわっ、泥が!」
間近にいたジジは、当然のように全身泥まみれだ。金髪ツインテールも、ギャルのメイクも、全部が茶色い泥に覆われて、まるで泥人形みたいになっている。
「[laughing]ぷっ……ジジくん、ひどい顔」
アイラが長い手で口を押さえて笑った。
「[angry]うっせえ! 俺がやらなかったら、誰がやるんだよ! お前、そのイケメン面で泥かぶりたかったのか!?」
「[laughing]いや、私はいいかな」
「[cold]……二人とも、うるさい。早く掘って」
白鳥の冷たい一言で、ジジとアイラは慌てて冷蔵庫があった地面を掘り返し始めた。
五分後。
アイラの大きな手が、土の中から何かを掴み上げた。
「[surprised]……あった」
泥を払うと、それは現れた。
ピンク色の髪をした、三十センチほどの着せ替え人形。左目が欠損していて、それが妙に不気味だった。一九八七年製の「プリティ・マリン」——この怪異の、本体だ。
「[excited]これが……」
オカルンが、小さな女の子の手を伸ばす。
その指先が、人形に触れた瞬間——。
ずきん。
六人全員の体に、脈打つような痛みが走った。
気がつくと、周囲に白い靄が立ち込めていた。
さっきまでいた廃冷蔵庫も、朝焼けの空も、全部が消えている。
「[scared]な、なに……?」
モモが周囲を見回す。そこは、モモだけの、白い空間だった。
そして、目の前に——。
映像が、映し出された。
それは、エピソード4で見た光景だった。
ガラクタ原野の闇の中。二人の男女が、言い争っている。
「お前なんか知らない!」
男の子の姿をしたモモが、女の子の姿をしたオカルンに叫んでいる。
違う。やめてくれ。
でも、口は勝手に動き続けた。
「無理してるだけなら来るな!」
「一人で全部やってろ!」
幻影のモモが、オカルンを怒鳴りつけるたびに、オカルンの顔がくしゃくしゃに歪んでいく。
「[crying]もう、やめろ……」
モモは手を伸ばした。
でも、映像は手をすり抜ける。
「[crying]モモちゃんが、怒鳴ったから……」
幻影のオカルンが、泣きながら言った。
その言葉が、モモの胸に突き刺さる。
「[crying]違うんだ、違うんだって……!」
モモは膝から崩れ落ちた。耳を塞いでも、映像は頭の中に直接流れ込んでくる。守りたかっただけなのに。守るどころか、一番傷つけてた。
両手で地面を叩いた。
ドン! ドン!
男の子の手が切れて、血が滲む。でも、痛みよりも、胸の奥の方がずっと痛い。
一方、別の白い空間で。
オカルンは、自分が一番見たくない映像を見ていた。
昔のニュース映像だ。交通事故の現場。ぐしゃぐしゃに潰れた車。そのナンバープレートに見覚えがあった。
父さんの、車だ。
映像が切り替わる。
幼い頃のオカルンが、テレビの前で泣きじゃくっている。
「[crying]パパ……パパ!」
部屋の壁には、宇宙のポスターが貼ってあった。でも、泣きじゃくる幼いオカルンは、そのポスターを一枚ずつ剥がし始める。
「[crying]どうせ僕なんか……」
小さな指先が、星の絵をぐしゃぐしゃに丸めていく。
「[crying]どうせ、僕なんか……」
「[crying]やめろ……やめてくれ……」
オカルンは、小さな女の子の手で、自分の頭を抱えた。
僕のせいだ。僕が宇宙に夢中になって、父さんを夜のドライブに誘ったりしたからだ。だから、父さんは死んだんだ。ずっと、ずっとそう思って生きてきた。
「[crying]僕なんかじゃ、誰も守れない……」
幻影の声が、耳の奥でこだまする。
——どうせ、僕なんか。
——どうせ、僕なんかじゃ。
だが、それは違う。
違うんだ。
違うって、知ってるはずだ。
なぜなら、モモちゃんがいたから。僕なんかじゃないって、言ってくれた人が、いたから。
オカルンの手が、ぐっと強く握りしめられた。
「[crying]違う……」
小さな女の子の口から、絞り出すような声が漏れる。
「[excited]違う!!!」
叫んだ。
自分の、弱さに。
「[angry]僕は……父さんの死を、言い訳にしてきたんだ! 僕なんかじゃ何もできないって、ずっと逃げてきた!」
涙が、止まらなかった。
でも、もう逃げたくなかった。
「[excited]でも……違う! 僕は、守りたいんだ! モモちゃんを守れる、自分になりたかった!!!」
その声が、白い空間を突き破って、響き渡った。
暗闇の中で、膝をついていたモモは——その声を、確かに聞いた。
オカルンの、声だ。
「[crying]オカ……ルン……?」
顔を上げる。
今の叫びが、モモの胸の奥にあった何かを、粉々に打ち砕いてくれた。
ああ、そうだ。
私も、そうだった。
「[crying]私も……そうだ……」
モモは立ち上がった。
「[crying]ずっと、お前のことを……守りたかっただけだ。照れ隠しも、強がりも、全部くそくらえだ!」
そして、叫んだ。
心の底から。
「[excited]私は……ずっと、お前のことが——お前のことが、好きだったんだよ!!!」
——ドオオオオオオオオン!!!
二人の絶叫が重なった瞬間、幻影が轟音と共に霧散した。
ハッとして、顔を上げる。
そこは、元のガラクタ原野だった。
目の前には、地面に転がったプリティ・マリンの人形。その周りに、仲間たちが立っている。ジジは泥まみれのギャルのまま、アイラはイケメンの顔をくしゃくしゃにして泣いている。白鳥は無表情で、でも、目が少しだけ赤かった。
「[surprised]……え? な、なんで、お前ら泣いて……」
モモの問いに、ジジがニヤリと笑った。
「[laughing]お前、今、はっきり言ったじゃん」
「[surprised]は……!?」
ブワッと、モモの顔が赤くなる。
「[angry]ち、違う! 今のは、その、叫んだだけで、別に、言った意味じゃ——」
「[cold]聞こえてたよ、全部」
白鳥が静かに補足した。
「[crying]うう、よかった……本当によかったね、モモちゃん……」
アイラが、うるうると大きな目を潤ませて立っている。イケメンが泣きそうな顔をしているのは、なかなかにシュールな光景だった。
「[angry]あ、あんたたち! 忘れなさいよ、今の! 今すぐ忘れろー!!」
モモが真っ赤になって顔を覆って叫んだ、まさにその時——。
地面に転がったプリティ・マリンが、不気味な紫色の光を放ち始めた。
「[serious]っ……みんな、構えろ! タイムリミットが近い!」
モモが、瞬間で戦闘モードに切り替わる。まだ顔は赤いけど、その目はもう戦士の目だ。
オカルンが、小さな腕の時計を見る。
「[serious]残り、二分を切ってる……!」
人形から放たれる光が、周囲のガラクタを浮かび上がらせ始めた。最後の抵抗だ。
「[excited]私が押さえ込む! オカルンは、お前の一番速い一撃を叩き込め!」
「[surprised]……え!?」
「[angry]できるだろ! さっき、迷宮で見せたみたいに!」
モモは最初から、信じ切った目をしていた。
オカルンは、しばらく呆けた顔をしていた。でも、すぐに小さな女の子の顔が、ぎゅっと引き締まった。
「[serious]……わかった」
二人が、動く。
モモが両手を人形に向けて突き出す。感情じゃない。意志で制御された霊力が、プリティ・マリンを地面に縫い付けるように押さえ込む。ドドドド……と、小刻みに地面が震えた。
「[excited]うおおおおお!!!」
オカルンが走り出す。女性化した体を、普段より低い重心で安定させ、ターボババアの力を自分の意志で加速させる。足の爪先が、廃材の破片で切れる。血が出る。それでも、止まらない。
ゴウッ!
空気が裂ける。
最高速に達した瞬間、オカルンの口が開く。
「[excited]プリティ——」
モモも、叫んだ。
「[excited]——マリン!!!」
二人の声が、完全に重なった。
そして、オカルン渾身の一撃が、人形に炸裂した。
パァァァァァン!!!
プラスチックが、粉々に砕け散る。
だが——。
「[scared]あっ、止まらな——」
加速しすぎたオカルンは、人形を砕いた後も、その勢いのまま制御を失い、前方の廃材の山に突っ込んでいった。
ガラガラガッシャーン!!!
廃材の山が崩れて、オカルンの姿が完全に埋もれる。
「[scared]オ、オカルン!?」
慌ててモモが廃材の山に走り寄ると、山のてっぺんから、小さな女の子の手だけが、にょきっと生えていた。
「[laughing]ぶっ……!」
「[laughing]ぷ、あはははは!」
緊張の糸が切れて、ジジとアイラが吹き出す。モモは必死で手を掴み、思い切り引っ張った。
ガサガサッ!
廃材の中からオカルンが引っ張り出される。バランスを崩した二人は、そのまま地面に倒れ込んだ。
「[surprised]……あ」
「[surprised]……う」
気がつくと、モモの鼻の先に、オカルンの顔があった。互いの吐息がかかる距離で、二人揃って固まる。
「[angry]……な、なに見てんだ、バカ!!」
モモが叫んでオカルンを突き飛ばした、その瞬間——。
砕け散った人形の破片が、金色の光の粒になって舞い上がった。
その光が、六人の体を包み込んでいく。
温かい。
まるで、朝日を浴びている時のような、優しい熱だ。
「[surprised]あ……」
モモの手だ。
ごつごつした男の子の手が、みるみるうちに、もとの女の子の手に戻っていく。
胸のつかえが取れて、身長が縮む感覚。男物の服が、ぶかぶかになった。でも、この体の方が、しっくりくる。
「[gentle]戻った……」
自分の声が、ちゃんと自分の声に戻っている。嬉しくて、少し泣きそうになった。
「[excited]あーっ! また、俺のデカいこの体かー!」
隣で、ジジが叫んだ。ギャルの服がはち切れそうになっている、元の強面男子の姿だ。文句を言いながらも、その声はどこかほっとしている。
「[gentle]あ……スカートだ。よかった……」
イケメンから元の美少女に戻ったアイラが、自分のひざを確認して、にっこり笑った。
「[cold]……………………」
黒髪の美少女から元の男子に戻った白鳥は、何も言わずに、自分の手をじっと見つめていた。
それから、一拍置いて。
「……また頑張るか」
静かに、自分に言い聞かせるように呟いた。
その肩を、ジジが無言でポンと叩く。白鳥は一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに小さく、本当に小さく、口元を緩めた。
そして。
モモは、ゆっくりと振り返った。
数メートル先の廃材の山に、男子の制服を着た、内気そうな男子が一人、ぺたんと座り込んでいる。
「[whispers]……モモ、ちゃん」
オカルンだった。
元の、オカルンの顔だ。
「[gentle]……うん」
モモも、小さく返事をした。
気がつくと、朝日が原野いっぱいに差し込んでいた。ガラクタの山々が、黄金色に縁取られている。呪いは、完全に解けたのだ。
二人は並んで、廃材の山に腰掛けた。
ちょっとだけ、距離がある。
「[whispers]……さっきの、あれ」
モモが、もじもじと指をもじもじさせながら言った。
「[whispers]うん」
「[whispers]……ちゃんと、言うから」
「[whispers]うん」
今はまだ、こんなぎこちない言葉だけで十分だった。これが、まともなスタートラインだ。
その時、朝日を反射してキラリと光るものが、オカルンの目に留まった。
「……?」
砕けた人形の残骸に混じって、小さな金属部品が転がっている。オカルンはそれを拾い上げた。
指でつまめるほどの、小さな望遠鏡のような形をした部品。レンズの部分が、朝日を受けて青白く輝いている。
「[surprised]これ……」
オカルンは、目を細めた。
あの憧れを諦めた日から、ずっと脳裏に焼き付いている、父さんと一緒に見た本の一ページ。
「……宇宙人の、観測器に、似てる」
その呟きは、誰にも聞こえないほど小さくて。
でも、確かに、未来への小さな一歩だった。
砕けた人形の横で、小さな望遠鏡だけが、静かに新しい物語の始まりを告げているようだった。