ダンダダン!呪われし性転換ラブコメ騒動!
オカルト好きギャルのモモと、宇宙人マニアのオタク・オカルンは、心霊スポットでの命がけバトルでおなじみのコンビ。今日も今日とて、捨てられたおもちゃから生まれた呪い『シーメールコレクター』を退治しようとするが、その最後っ屁のドジな呪いがとんでもない事態を引き起こす。モモの目の前で、オカルンが女の子に変身! そしてモモ自身も、まさかの男の体になってしまった!
「えっ……わ、私のアレが……!? ってかオカルン、めちゃくちゃ可愛いんですけど!」
「や、やめろよモモちゃん……そんな服ビリビリの格好で近づくなって!」
さらに学校では、元ヤンのジジが金髪ツインテのギャルになって現れ、みんなのアイドル・アイラちゃんは男装のイケメンと化して女子たちを悩殺。クラスメイトのシラトリくんに至っては、美少女になった自分にまんざらでもない様子で、もう大混乱!
呪いを解くには、一週間以内にシーメールコレクターのコアを破壊しなければならない。だが、慣れない体で過ごす毎日は、ドキドキの連続。着替えにトイレ、お風呂――何もかもがぎこちなくて、くすぐったいハプニングだらけ。
おまけに、元に戻りたい気持ちと、このままで
ダンダダン!呪われし性転換ラブコメ騒動! - 迷宮の夜、それぞれの本音と、一人で泣く君へ
暗闇だった。
ガラクタの壁に四方を囲まれた通路だ。廃冷蔵庫のドアが、壊れたテレビの画面が、無数のプラスチック人形の手足が、壁からにょきにょきと突き出している。
懐中電灯の光もない。
ただ、どこかから漏れてくる、かすかな月明かりだけが頼りだった。
「[angry]くそっ……!」
金髪ツインテールが、暗がりでぶんぶんと揺れる。ギャル姿のジジが、壁を蹴飛ばした。ガン、と鈍い音。でも、壁はびくともしない。
「[angry]いてえ……この体、力が全然入らねえ!」
ジジがもう一度蹴ろうとした、その時だった。
「……ジジくん?」
通路の向こうから、かすかな声。
ジジが振り返る。暗がりの中から、長身のシルエットが現れた。月明かりに照らされたイケメンの顔。アイラだ。
「[surprised]アイラ! 無事だったか!」
「[sad]うん……でも、あちこちぶつけて」
アイラの男子制服の袖が、破れていた。どうやら転んだらしい。イケメンの顔に、かすり傷がついている。
「[serious]お前もか。俺もだ。よかった、一人じゃなくて」
ジジがほっと息をつく。
その時、別の気配があった。
振り返ると、黒髪の美少女が、静かに壁にもたれかかっている。いつからそこにいたのか。まったく気配がなかった。
「[cold]……二人とも、うるさい」
白鳥だった。
「[angry]な、なんだよ、心配したんじゃねえか!」
ジジが顔を赤くする。白鳥は肩にかかる長い黒髪を、そっと耳にかけた。
「[cold]……火を起こした方がいい。この暗闇だと、ガラクタ・ムシが来る」
「[surprised]火って……こんなとこでどうやって」
白鳥は無言で、廃材の山から乾いた木の破片と、壊れたプラスチックの塊を拾い集めた。そして、ジジのポケットを指差す。
「[cold]ライター、あるだろ」
「[surprised]あ、ああ……中学んときから、なんとなく持ち歩いてて」
ジジがスカートのポケットからライターを取り出す。でも、ギャルの細い指では、うまく力が入らない。カチカチと音だけが空しく響いた。
「[angry]くっそ、なんで回んねえんだよ!」
「[serious]貸して、私が——あっ」
アイラが手を伸ばした瞬間、今度はアイラの大きな手が、ジジの手にぶつかった。ライターが転がる。
「[sad]ご、ごめん……この体、手が大きくて」
「[angry]謝ってる場合か! 火つけねえと——」
二人がどたばたやっている間に、白鳥がさっとライターを拾い上げた。
カチッ。
小さな火が灯る。廃材の山に、オレンジ色の光が揺れた。
「[cold]……三秒」
ジジとアイラ、二人揃って口を開けて固まった。
「[laughing]は、早業かよ……」
ジジが力なく笑う。アイラもほっとしたように、イケメンの顔で微笑んだ。
三人は、小さな火を囲んで座り込んだ。
ガラクタの迷宮の中、たったこれだけの明かりでも、不思議と気持ちが落ち着く。ぱちぱちとプラスチックが燃える音が、静寂の中でやけに大きく響いた。
火の光が、三人の顔を下から照らしている。
金髪ツインテールのギャル。イケメン男子。黒髪の美少女。
誰一人として、元の姿ではない。
しばらく、誰も口を開かなかった。
最初に沈黙を破ったのは、ジジだった。
「[serious]なあ、白鳥」
白鳥が、ゆっくりと顔を上げる。
「[serious]なんでお前、こんな状況で、そんな平気な顔してられるんだよ」
白鳥は、火を見つめたまま、少しだけ首をかしげた。
「[cold]……別に、平気じゃない」
「でも、全然怖がってねえじゃん」
「[cold]……怖いのは、前からだ」
その言葉に、ジジとアイラは顔を見合わせた。
また、沈黙。
今度は、ジジが口を開いた。
「[serious]……俺はよ」
火を見つめたまま、絞り出すような声だった。
「[serious]俺は、早く元に戻りてえ。それだけだ」
強がっているのが、ありありとわかった。
でも、アイラも白鳥も、何も言わない。
ジジは、しばらく黙ってから、また話し始めた。
「[sad]中学の頃から……俺、弱い奴を守りたいって気持ちだけで、ずっとやってきたんだ」
ツインテールが、火の熱でゆらゆら揺れる。
「[sad]ヤンキーやってたのも、強い見た目があれば、誰も俺の周りの奴らに手が出せねえと思ったからだ」
「……ジジくん」
アイラが、そっとジジの横顔を見つめる。
「[crying]でも、本当は……ぬいぐるみとか好きだし、泣いてる子見ると放っておけねえし、かわいいもの見ると嬉しくなるんだよ」
声が、震え始めた。
「[crying]それをずっと隠してきたのに……今は、外見が、そのまんま、その通りになっちまって」
ジジの大きな目から、涙がこぼれた。
ギャルの顔で、涙がつーっと頬を伝う。
「[crying]もう、何一つ、隠すものがなくなった気がして……怖いんだよ」
声が割れた。
涙が、ぽたぽたと、ジジのスカートに落ちる。
「[scared]ジ、ジジくん!」
アイラが慌てて、ジジの背中をさすった。イケメンの大きな手が、ぎこちなく、でも優しくジジの背中を叩く。
白鳥は、火を見つめたまま、静かに呟いた。
「[gentle]……隠さなくていいものを、隠してたんだな」
「[crying]うるせえ!」
ジジは鼻をすすりながら、それでも少しだけ笑った。
その時、アイラの胸の中で、不思議な温かさが広がった。
(ジジくん……こんなに弱いところを見せてくれたんだ)
ギャルの体で、泣きじゃくるジジ。
でも、その涙は、誰かを守りたい一心で、自分を偽ってきた男の子の、本当の姿だった。
アイラは、無意識に、ジジの背中をさする手に、もっと力を込めていた。
火の前。
ジジが落ち着いたのを見計らって、アイラが口を開いた。
「[whispers]……私も、言っていいかな」
ジジと白鳥が、頷く。
アイラは、自分の手を見つめた。
大きくて、ごつごつした、男の子の手。
「[sad]私ね……オカルンくんのことが、好きだった」
ジジが、息を呑む気配がした。
「[sad]ずっと。でも、モモちゃんも、オカルンくんのことが好きなの、知ってた」
アイラの声は、震えていなかった。でも、それは、ずっと心の中で整理し続けてきたからだ。
「[sad]だから言えなかったし、言う気もなかった。友達でいる方が、大事だったから」
「……アイラ」
ジジの声は、さっきまでと違って、低くて落ち着いていた。
「[crying]でも、TSでオカルンくんが女の子になって」
アイラの声が、かすかに震え始める。
「[crying]なんか、チャンスかもって……一瞬、思った自分がいて」
大粒の涙が、アイラのイケメンの目から、ぽたりと落ちた。
「[crying]それが、すごく、嫌だった。モモちゃんのこと好きなのに、そんなことを考える自分が、最低で」
涙が、止まらなくなった。
「[crying]謝りたくても、謝れなくて……ごめん、モモちゃん、ごめん……」
両手で顔を覆って、アイラは泣いた。
ジジが、ぐいっと涙をぬぐいながら言った。
「[serious]……泣き虫だな、お前も」
「[crying]ジ、ジジくんだって、泣いてたじゃない!」
アイラが顔を上げて言い返す。涙でぐしゃぐしゃのイケメンの顔。
「[laughing]は、違いねえ」
ジジが笑った。アイラも、涙を流しながら、少しだけ笑った。
涙と笑いが混ざった、奇妙な空気。
でも、それは、とても温かかった。
そして、白鳥が、静かに口を開いた。
「[cold]……僕も、話すよ」
ジジとアイラが、白鳥を見る。
白鳥は、膝を抱えて、火を見つめていた。
長い黒髪が、火の光を受けて、さらさらと揺れている。
「[gentle]僕は……生まれた時から、ずっと、自分の体が間違っている気がしてた」
静かな声だった。
「[gentle]男の子として、育てられたけど」
火の粉が、ぱちんと弾けた。
「[sad]鏡を見るたびに、これは自分じゃないと思ってた」
「……白鳥」
アイラが、涙をぬぐいながら、そっと名を呼ぶ。
「[sad]誰にも言えなかった。言ったら、変な目で見られると思ったから」
白鳥の細い指が、膝の上でぎゅっと組まれた。
「[whispers]でも、今」
白鳥は、自分の手を見つめた。
白くて、細くて、女の子の手。
「[gentle]TSで、女の子の体になって——初めて、あ、これが自分だって、思えた」
ジジとアイラの動きが、止まった。
「[whispers]だから、僕は……正直なところ、元に戻りたくないと思ってる」
迷宮の中の空気が、変わる。
「[sad]でも、みんなが戻りたいのは、わかってる。みんなのために戦うことは、本当だし、それは変わらない」
白鳥は膝を抱え直して、火に視線を落とした。
「[whispers]……ただ、ごめん」
最後の言葉は、ほとんど消え入りそうだった。
沈黙。
ジジもアイラも、声が出ない。
数秒が、とても長く感じられた。
先に口を開いたのは、ジジだった。
「[serious]……謝んな」
いつもより、ずっと低くて、真剣な声。
「[serious]お前は、悪くねえよ」
白鳥の肩が、かすかに震えた。
アイラが、そっと立ち上がった。そして、白鳥の隣に座り直す。
「[gentle]……教えてくれて、ありがとう」
白鳥の目に、うっすらと光るものが浮かんだ。
三人の間に、これまでになかった空気が満ちていく。
それは、信頼だった。
本物の、信頼。
誰かが誰かを守るとか、助けるとか、そういうことじゃない。
ただ、ここにいる三人が、互いの一番深いところを見せ合って、それでいて、誰も否定しなかった。
火が、ぱちりと音を立てる。
小さな、でも確かな温かさが、三人を包んでいた。
一方。
モモは、一人だった。
暗闇の中を、あてもなく歩き続ける。男体化した体は疲れ切っていた。廃材の壁に何度も霊力を叩きつけたが、壊しても壊しても、新しいガラクタが補充されて、前に進めない。
「[angry]くそ……!」
壁を拳で殴る。
ガツン。
男の拳が、鋭い廃材の縁で切れて、血が滲む。
でも、痛みなんて感じなかった。
「[sad]オカルン……どこだ」
声が、かすれていた。
何時間も歩いて、叫んで、それでも誰にも届かない。
(お前なんか知らない)
自分の言葉が、耳の中でリプレイされる。
「[crying]……違うんだ」
膝から力が抜ける。
壁に寄りかかって、ずるずるとしゃがみ込んだ。
その時だった。
闇の中に、ぼうっと光が灯った。
顔を上げる。
目の前に、映像が浮かんでいた。
懐中電灯の光に照らされた、小さな通路。その真ん中に、うずくまる人影。
黒髪の、小さな女の子。
オカルンだ。
「[surprised]オカ——」
モモが叫ぼうとした瞬間、映像の中のオカルンの背後から、無数のガラクタ・ムシが現れた。
オカルンが、逃げようとする。でも、足がもつれて転ぶ。
「[scared]いや……助けて……」
映像の中のオカルンが、泣きながら手を伸ばす。
「[crying]モモちゃんが……怒鳴ったから……」
モモの体が、凍りついた。
「[crying]怖くなって、動けなかった……」
ガラクタ・ムシの群れが、オカルンに覆いかぶさる。
「[angry]やめろ!!!」
モモは叫んで、手を伸ばした。
霊力を込めた拳を、映像に叩きつける。
でも——
手が、空を切った。
映像が、霧のように散る。
幻影だ。
頭ではわかっていた。
わかっていたのに。
「[crying]……私の、せいだ」
モモの膝が、地面に落ちた。
ドサッ。
(私が、ちゃんとしてれば)
「[crying]ちゃんと……言葉にできてれば……」
両手で地面を叩いた。
ドン! ドン!
男になった大きな手が、廃材の破片で切れて、血まみれになる。
でも、やめられなかった。
「[crying]オカルンを守りたかっただけなのに……」
涙が、止まらなかった。
声を殺して泣く。喉の奥から絞り出すような嗚咽が、暗闇に吸い込まれていく。
「[crying]それだけは……本当なのに……」
立ち上がる気力が、完全に消えた。
迷宮の暗闇の中で、モモは一人、膝をついたまま泣き続けた。
誰も来ない。
声も届かない。
自分が傷つけた相手を、もう一度守るチャンスすら、与えられていない。
(私……どうすれば)
涙の中に、ただ一つだけ、消えない気持ちがあった。
オカルンのことを守りたかった。
それだけは、嘘じゃない。
でも、その想いが強ければ強いほど、今は胸を引き裂く刃となって、モモを刺し続けるのだった。
ガラクタの山が、遠くで軋む音がした。
迷宮は、まだ夜の底で、獲物たちを閉じ込めたまま、沈黙を続けている。