鳴潮学園へようこそ!~転生したらツンデレと甘えんぼとお姉さんに好かれすぎて修羅場なんだけど!?~
見たこともない教室で目を覚ました俺。隣に座っていたのは、ゲーム『鳴潮』のツンデレ剣士・ヨウオウだった。かつてはクールで強かった彼女が、今は制服姿で顔を赤らめ、もじもじしている。しかも、俺を「ダーリン」と呼んで甘えてくるアンコや、優しいけど怖いお姉さんタイプのキョウカまでいる! みんなゲームでは超強力なキャラだったのに、一体どうなってるんだ!?
大パニックの中、俺は悟った。どうやら俺たちは、『鳴潮学園』という普通の高校に転生してしまったらしい。戦いはなく、平和な日常。ほっとしたのも束の間、ヨウオウ、アンコ、キョウカの三人が、俺に好意を持っていることが発覚! 朝から晩まで、「お弁当作るわよ!」「ダーリン、ぎゅっとして!」「先輩、部活と私、どっち選ぶ?」と大騒ぎ。
でも、一番の問題は、三人の間に漂う危険なオーラ。え、まさかゲームの力がまだ残ってるの!? ヨウオウがキスしようとすると手が紫色に光り、アンコは嫉妬すると台風を巻き起こし、キョウカは笑顔で重力を使って俺をその場に凍りつかせる! 絶対に惚れてはいけない三人の女の子たちと送る、平和な学園での超危険なドキドキラブコメディ。俺、ここで生
鳴潮学園へようこそ!~転生したらツンデレと甘えんぼとお姉さんに好かれすぎて修羅場なんだけど!?~ - 転生者たちの入学式!俺の平穏を取り戻せ
「……は?」
気がつくと、俺は知らない教室にいた。
窓の外には海がキラキラ光ってて、潮のにおいがふんわりと鼻をくすぐる。四月のやわらかい日差しが、机に並んだ真新しい教科書を照らしてた。
「ここ、どこだ?」
頭の中がぐちゃぐちゃだ。ついさっきまで家でゲームしてたはずなのに、なんでこんなところにいるんだ?
制服——見たことないブレザーを着てる俺。胸ポケットには「鳴潮学園」って校章が光ってる。
鳴潮学園?
その名前を認識した瞬間だった。
ドクン、と心臓が跳ねた。
(違う。ここは——)
窓から見える高台の景色、潮の音、校庭に立つ大きなクスノキ。一つ一つが、なぜか懐かしい。でも、初めて来た場所のはずだ。
廊下からはしゃいだ声が聞こえる。入学式の朝。クラスメイトたちが新しい生活に胸を躍らせてる。
普通の高校の、普通の風景。
(そう、普通だ。何もおかしくない)
俺はカケル。16歳。今日からこの私立鳴潮学園の一年生——
「いたぁ!」
教室のドアが勢いよく開いた。
ピンク色の何かが、すごい速さで突っ込んでくる。
「[excited]ダーリン! やっと見つけたよぉ!」
ふわふわの桃色ボブカットが目の前で揺れた。大きな琥珀色の瞳が、まんまるに見開かれて俺を映してる。小柄で、制服のスカートをひらひらさせながら、その子は——
「うわっ!」
俺に飛びついてきた。
人前とか、そういうのを完全に無視して、ぎゅうっと抱きついてくる。シャンプーの甘いにおいがして、心臓がバクバク鳴った。
「ちょ、ちょっと待って! 誰!?」
「[surprised]えぇ? ダーリン、アンコのこと忘れちゃったの?」
アンコ。
その名前を聞いて、また頭の奥がズキンと痛む。
(アンコ……知ってる? いやでも、初対面のはず……)
混乱する俺をよそに、アンコは俺の腕に自分の腕をからめて、ほっぺたをすり寄せてくる。
「[gentle]もう、すっごく探したんだからね? 広い学園で迷っちゃってさぁ。でも、ダーリンの気配がわかったから、すぐ来れたの」
気配?
「[sad]寂しかったよぉ。ずっと一緒にいたかったのに……」
琥珀の瞳が潤んで、今にも泣き出しそう。
どうすればいいんだ、これ。
「おい、アンコ! 離れろ!」
今度は凛とした声が響いた。
声の方を向くと、そこにはポニーテールの黒髪を揺らした女の子が立ってる。
腰まである長い黒髪を高い位置で結い上げて、切れ長の黒い瞳がキッとアンコをにらんでた。
「[angry]朝からなにやってるのよ! 教室で抱きつくなんて、恥ずかしくないの!?」
「[sarcastic]べっつにぃ。アンコはダーリンに会えて嬉しかっただけだもん。ヨウオウだって、本当は抱きつきたいくせに」
「なっ……!」
ヨウオウの顔が真っ赤になる。
「[angry]ち、違う! あたしは別にそんなんじゃ……!」
俺を見て、一瞬だけ泣きそうな顔をした。でもすぐにプイッと横を向く。
「ただ、やっと見つけたから……ちょっと安心しただけ」
声が震えてる。
(……ヨウオウ?)
その名前にも、胸がざわつく。
腰のあたりに手をやって、何かを握ろうとして——何もないことに気づく。
(俺、何を探してるんだ?)
「あらあら、みんな元気ね」
また新しい声。
今度は教室の後ろのドアから、長い黒髪の女の子が入ってきた。
背が高い。170センチはあるだろうか。腰までまっすぐに伸びた艶やかな黒髪が、歩くたびにサラサラと揺れる。深緑色の瞳が、穏やかに細められてた。
「[gentle]久しぶりね、カケルくん」
二年生の制服を着てる。先輩だ。
「入学おめでとう。よかった、ちゃんと同じ学園で」
微笑みながら、スッと俺の近くまで歩いてくる。
(キョウカ……先輩?)
その名前が、最後の鍵だった。
——ドン。
頭の中で何かが弾けた。
景色が歪む。教室が消えて、代わりに広がるのは暗い空と荒れ果てた大地。
剣を振るうヨウオウ。紫の電撃が走る。
風をまとい、嵐を呼ぶアンコ。
重力を操り、敵を地面に這いつくばらせるキョウカ。
そして——
「俺は……」
漂泊者。
異世界を渡り歩き、戦う者。
彼女たちと肩を並べて戦った記憶が、一気に流れ込んでくる。
「[scared]……え? え? ちょっと待って!?」
俺、ただの高校生じゃなかったの!?
足がふらついて、机に手をついた。
「[worried]大丈夫?」
キョウカが心配そうに覗き込む。
「顔色が悪いわ。保健室に行く?」
「[scared]いや、その……大丈夫、です……」
大丈夫なわけがない。
でも、どう説明すればいいんだ。さっきまでゲームのキャラだと思ってました、なんて言えるわけない。
チャイムが鳴った。
ホームルームの始まりを告げる、普通の音。
先生が入ってきて、入学式の案内を始める。
アンコは俺の隣の席にこっそり移動して、机の下で俺の手を握ってきた。離してくれない。
ヨウオウは窓際の席から、時々こっちをチラチラ見てる。目が合うと、すぐにそっぽを向くけど。
キョウカは上の学年だから教室に戻ったけど、去り際に俺の耳元でささやいた。
「[whispers]放課後、少し話しましょう。二人だけで」
(二人だけで!?)
背筋がゾワッとした。
優しい笑顔なのに、なんかすごく怖い。なんかもう、その笑顔が怖い。
放課後——
俺は教室の真ん中で、完全に固まっていた。
「ダーリンの隣はあたし!」
「[angry]なんでよ! あんたはずっとくっついてたでしょ!」
「[excited]足りないの! もっとダーリンとくっつきたい!」
二人が俺の机を挟んでにらみ合ってる。
教室に残ってたクラスメイトたちは、とっくに逃げ出してた。
無理もない。
だって、ヨウオウの右手が紫色に光り始めてるんだ。
「[angry]アンコ、あんたさっきから近すぎ。少しは離れたら?」
ピリピリとした空気。
ヨウオウの手の中に、電気が走るみたいに紫光がチカチカ瞬いてる。
「[cold]やだ。離れない」
アンコの周りの空気が、ぐるぐる回り始めた。
初めはそよ風くらいだったのに、だんだん強くなって、机の上のプリントがバサバサ舞い上がる。
「ちょ、ちょっと二人とも落ち着いて!」
止めようとしたけど、時すでに遅し。
「[angry]アンコ、あんたにだけは負けないんだから!」
バチッ!
ヨウオウの手から紫電が走った。
電気が俺のすぐ横を通り抜けて、黒板に当たる。
「きゃっ!」
アンコがとっさに身をかわした瞬間——
ビュオッ!
教室の中に突然の突風が吹き荒れた。
プリントどころじゃない。教科書も、筆箱も、カバンも、全部が宙を舞ってる。
「[scared]うわわわっ!」
机にしがみつく俺。
(これ、絶対に普通じゃない! 前世の力が残ってるんだ!)
ゲームで見たことある。ヨウオウの「紫電の剣気」、アンコの「嵐声」。
でも、これ現実だし! 全然ゲームじゃないし!
「[calm]ダメでしょ、二人とも。喧嘩しちゃ」
教室のドアに、キョウカが立ってた。
いつの間に来たんだ。
微笑んでる。すごく優しい笑顔で。
でも——
「[gentle]みんな、少し落ち着きましょうか」
その言葉と同時に、体が重くなった。
「えっ?」
何もできない。
体が鉛になったみたいに、動かない。
いや、動けない。
ヨウオウもアンコも、その場にペタンと座り込んでる。
「[gentle]少しの間だけ、我慢してね」
キョウカの「縛律」——重力操作の力。
それも、残ってるのかよ!?
俺たち三人を床に這いつくばらせたまま、キョウカはゆっくり近づいてくる。
「[gentle]誰がカケルくんの隣に座るか、なんて些細なことで喧嘩してちゃダメよ。せっかく同じ学園で再会できたんだから、仲良くしなくちゃ」
(再会……て、あなたもさっきまで俺たちと戦ってましたよね!?)
心の中で叫ぶ俺。
キョウカも前世じゃ、敵をまとめて重力で潰すようなキャラだったじゃないか。
「[gentle]でも、誰が隣に座るかは、ちゃんと決めないとね」
え?
「[gentle]やっぱり、先輩の私がカケルくんのお世話をするのが自然だと思うの。一年生はわからないことも多いでしょうし」
「[angry]ちょ、ちょっとキョウカ! それずるい!」
「[sad]先輩だけ抜け駆けなんてひどいよぉ……」
床に這いつくばったまま、二人が抗議する。
でも、キョウカは微笑みを崩さない。
「[gentle]抜け駆けじゃないわ。先輩としての役目よ。ね、カケルくん」
俺に話を振らないでほしい。
もう、どうしていいかわからない。
(こんなのってアリか!?)
平穏な学園生活を送りたいだけなのに。
なんで初日からこんな修羅場なんだ。
「……もうダメだ」
夜。
俺はアパートの布団にくるまりながら、天井を見上げてつぶやいた。
コーポ潮風203号室。築25年の古いアパートだけど、家賃4万5千円は高校生の一人暮らしにありがたい。両親は転勤で大阪に行ってて、仕送りしてくれてる。
6畳の部屋に、机と布団と小さなテレビ。
「なんで俺の周りだけ、こんなことに……」
思い返せば、今日一日だけでめちゃくちゃだった。
幼なじみでも恋人でもない美少女三人に追いかけられて、その全員が前世の記憶持ちで、しかも超能力使い。
「誰かを選んだら、他の二人が暴走する……」
想像するだけで怖い。
ヨウオウが嫉妬して教室を電撃だらけにするところを。
アンコが怒って学校ごと突風で吹き飛ばすところを。
キョウカが微笑みながら全員を床に縫い付けるところを。
「無理だ、絶対無理」
恋愛なんてしてる場合じゃない。
まずは身の安全を確保しないと。
「よし、決めた。明日からは絶対に三人と距離を——」
翌朝。
俺は教室のドアを開けて、固まった。
自分の席に、誰かが座ってる。
銀色の長い髪。
サラサラと背中まで流れる銀髪が、朝日にキラキラ輝いてた。
女子だ。
見たことない。
誰?
彼女は——じっと、俺を見てる。
無言で。
まっすぐに。
綺麗な瞳だった。何色かわからないけど、すごく深くて、吸い込まれそうになる。
「えっと……君、誰?」
彼女は答えない。
ただ、俺を見てる。
(なんだこれ、新手の嫌がらせか? それとも——)
心臓がドキドキ鳴ってる。
多分、いい予感じゃない。
「[scared]もう勘弁してくれ……」
俺のささやかな願いもむなしく、銀髪の少女は、ほんの少しだけ首をかしげた。
そして——
何かを言おうとした、その瞬間。
チャイムが鳴った。
今日も、騒がしい一日が始まる。