ヘタリア 世界めちゃくちゃ大騒動!? みんな逆になっちゃった!
イタリア=ヴェネチアーノが朝、悲鳴とともに目を覚ますと、自分が可愛い女の子になっていた! 慌ててドイツの家に駆け込むと、そこには裂けたドレスをかろうじてまとった、筋骨隆々の戦士のような女性になったドイツの姿が。
しかし、異変は彼らだけではなかった。日本は物静かな大和撫子の美女に、アメリカはハイテンションな金髪美女に、フランスは自分の新しい低い声に衝撃を受けるハンサムな青年に、そしてロシアは巨大で微笑みを浮かべる女性になっていた。この騒動の原因である呪いの本の責任者、イギリスは魔法の暴発で小さく怯えた子供の姿に。
刻一刻とタイムリミットが迫る。次の満月までに材料を集め、イギリスの家で対抗呪文を唱えなければ、この恥ずかしい姿のまま世界会議に出席する羽目になる。イタリアは女の子としてパスタを作ることを楽しみ始め、日本は剣術の代わりに優雅な仕草を練習し、大混乱が巻き起こる。
しかし、本当の問題は? それは「気持ち」だった。ドイツが女性になったイタリアに予想外の優しさで接し、日本に嫉妬の炎が燃え上がる。男性になったハンガリーは、オーストリアから複雑な視線を向けられる。誰もが元に戻りたいと願
ヘタリア 世界めちゃくちゃ大騒動!? みんな逆になっちゃった! - イギリスの大告白と28日間の恐怖!妖精に嫌われた魔法使いと、三つの材料集め作戦開始!
コッツウォルズの田園風景が、車窓いっぱいに広がっていた。
なだらかな丘陵に羊が点々としていて、石造りの小さな村がところどころに見える。六月の朝日が、すべてを金色に染めていた。
でも、車内の空気は重い。
「[sad]なんだか、おなかすいてきちゃった……」
後部座席のイタリアが、ふにゃりとつぶやいた。藍色のワンピースの裾を、指先でいじっている。
「[serious]さっきフェリーの中でパンを食っただろう」
ハンドルを握るドイツが、眉間にしわを寄せた。
「だって、あれからもう一時間もたったんだよ? おなかがすくのは自然の法則なんだから!」
「[serious]そんな法則は生物学の教科書にも載っていない」
「[gentle]ふふ」
助手席の日本が、小さく笑った。長い黒髪の三つ編みが、かすかに揺れる。
「[gentle]イタリアさんは、いつも通りですね。なんだか安心しました」
「えへへ。日本はほめ上手なんだから」
その時だ。
カーナビが、無機質な声で告げた。
『目的地周辺です』
ドイツがアクセルを緩める。
目の前に現れたのは、アイビーが壁を覆い尽くした、由緒ありげなカントリーハウスだった。築三百年はくだらないだろう。窓という窓にはカーテンがびっしりと閉められていて、まるで誰かを拒んでいるみたいに見える。
ここが、イギリスの魔法工房。
「[serious]着いたぞ」
車が停まる。
三人は外に出た。空気がひんやりとしている。どこかでヒバリが鳴いていた。
ドイツが、重厚なオークの玄関ドアを三回、強く叩く。
ドンドンドン。
「イギリス、いるんだろう。開けろ」
沈黙。
「[whispers]……来てしまったか」
中から聞こえてきたのは、消え入りそうな声だった。
ギィ……。
ドアが、ほんの五センチだけ開く。
隙間から顔を出したイギリスは、いつもの姿だった——いや、普段の彼とはまるで別人だった。腰まである長い金髪を後ろで束ねた、女性の体。エメラルドグリーンの目は、おどおどと泳いでいる。肩をすくめて、全身で「すみません」と言っているみたいだ。
「[surprised]わあ」
イタリアは思わず声を上げた。
「[surprised]イギリスも、女の子になってたんだ……きれいな髪だね」
「[sad]うるさい、ほっとけ。……入れよ。玄関で話すことでもない」
イギリスは顔を赤くして、ドアを開けた。
三人が中に入る。
廊下は薄暗く、古い紙とハーブの匂いが混ざっていた。壁には過去の魔法実験の焦げ跡が、黒々と残っている。何かを焦がしたような、苦い臭いもかすかにする。
イタリアはきょろきょろと周りを見て、そして、思わず日本の着物の袖をぎゅっとつかんだ。
「[scared]なんか、こわいよぉ」
「[gentle]大丈夫ですよ。何も噛みついたりしませんから」
日本が静かに答える。
でも、彼女の視線は、さりげなくドイツの背中をちらりと追った。
(ドイツさんは……やはり、落ち着いていますね)
「[serious]イギリス。状況を説明しろ。どこからだ」
ドイツが腕を組む。
「[sad]……わかった。こっちだ」
イギリスは重い足取りで、階段を下り始めた。
地下工房に続く、石造りの階段だ。
地下第二層。書庫。
壁一面に本棚。革装丁の魔導書が、ぎっしりと詰まっている。空気はひんやりと冷たく、ろうそくの火だけがゆらゆらと揺れていた。
イギリスは、奥の施錠された棚から、古びた大判の本を取り出した。
革装丁の表紙には、見たこともない文字が金箔で刻まれている。
「[sad]これが、グリモワール・オブ・カランドリアだ。俺が十六世紀にスコットランドの古城で発見した魔導書で、十二世紀にケルトの魔女が書いたものらしい。全十三章、うち第七章が『変容の術』だ」
彼は本を机に置いた。
「[angry]で、第七章をちょっと確認しようと思って、開いたんだ。一ページだけ、ちらっと見るつもりだった。それだけだ」
「[cold]……それだけ、か?」
ドイツの声が、一段低くなる。
「[sad]……開いた瞬間に、自動発動した。この呪いは、発動者の意思に関係なく、半径約二千キロ以内の『魔力的に縁のある存在』全員に効果が及ぶ欠陥呪文だったんだ」
「[angry]欠陥だと!? そんなものを持っていたのか!」
ドイツがテーブルをバンと叩いた。
本がビリビリと震える。
「[crying]うわあ! ど、ドイツ、落ち着いて!」
イタリアが慌てて、ドイツの腕にしがみついた。
「[gentle]ドイツさん。まずは、解呪の方法を聞きましょう。怒るのはそれからでも遅くありません」
日本が静かに間に入る。
「[sad]……解呪には、三つの材料が必要だ」
イギリスは目をそらしながら、早口でまくしたてた。
「第一に、エーデルモント山の山頂に咲く月光花。満月の夜にしか開花しない高山植物だ。第二に、ヴェネツィアのサン・マルコ運河の底に沈む人魚の涙石。百年に一度の大潮の時しか取れないんだが……今回は偶然、条件が合う。そして第三に、ストーンヘンジ近郊の妖精の泉、ティルナ・フォウンテの水」
「[serious]それらをどうするんだ」
「銀の大釜で煮出して、満月の光を浴びせながら、逆呪文を唱える。今夜の満月までに全部そろえないと……呪いは次の満月まで、二十八日間固定される」
「[surprised]に、二十八日間!?」
イタリアの顔が、さっと青ざめた。
「[scared]それって、世界会議に、この姿で出るってこと……!?」
「[cold]……そうだ」
ドイツが拳を握りしめた。
「[serious]残り時間は、あと十時間か。絶対に阻止する」
その横顔があまりにも真剣で、イタリアは、ぼんやりと見つめてしまった。
(ドイツ、ほんとに頼りになるなあ)
日本は、その視線に気づいた。
胸の奥が、ちくりと痛む。
(……また、だ)
「[serious]だが、問題がある」
ドイツがイギリスを厳しい目で見た。
「妖精の泉の水は、誰が交渉する。お前が行くんだろうな」
イギリスの顔が、さらにこわばった。
「[whispers]……それが、できなくなった」
「[cold]どういう意味だ」
「[sad]三年前の魔法実験で、俺は妖精の森の一部を、こう……黒焦げにしてしまってだな。その時に、妖精の女王リアノンに『二度と近づくな』と言い渡された。出入り禁止なんだ」
シン、と静まり返る。
「[angry]つまり、お前は何もできないのか」
ドイツの声が、氷のように冷たくなった。
「[sad]……今回ばかりは、そうだ。誰か別の者が交渉するしかない」
イギリスが、うつむいた。
張りつめた沈黙が、ろうそくの火だけを揺らす。
その空気に耐えかねて、イタリアが飛び出した。
「[excited]だ、大丈夫だよ!」
イタリアはイギリスの手を、両手でぎゅっと握った。
「[excited]みんなで一緒に考えよう! 僕だって、なにか役に立てるかもしれないし! ね、ドイツ!」
ドイツの眉が、わずかに動いた。
眉間に、一本だけしわが増える。
(……なぜだ。今、少しだけ、腹が立った)
イタリアが他の誰かに、ああやって笑いかける。それだけで、こんなに——。
(いや、違う。これは怒りじゃない)
自分自身でも、理由がわからずに戸惑う。
「[sarcastic]……好きにしろ」
ドイツは、視線をそらした。
その横で、日本は静かに二人を見つめていた。
その時だ。
スゥゥゥ……。
突然、書庫の窓がひとりでに開いた。
朝の光が、さあっと差し込む。
そして——。
「[laughing]やあ、みんな。おはよう」
庭から窓枠に手をかけて、一人の美青年が、ひらりと室内に飛び降りた。肩までのプラチナブロンドがキラキラと輝き、深い青色の瞳がいたずらっぽく光っている。手には、いつものバラの花。
フランスだった。
「[laughing]イギリスの失敗の後始末は、相変わらずだね」
「[angry]なぜ窓から入る! ドアを使えと何度言ったらわかるんだ、このバカ!」
イギリスが真っ赤になって怒鳴った。
「ドアより窓の方が絵になるだろう? こう、朝日を背負って、美青年がひらりと登場する。絵画みたいじゃないか」
「[angry]絵になるかどうかは今はどうでもいいんだよ!」
張りつめていた空気が、一瞬でかき回された。
フランスは、さっそくドイツとイタリアの立ち位置を、目ざとくチェックする。イタリアが、まだドイツの腕にしがみついているのを確認すると、にやりと口元をゆがめた。
「[sarcastic]あれ? ドイツとイタリアは、ずいぶん仲よさそうだね。この旅で、何かあった?」
「[angry]な、何もない! 余計なことを言うな!」
ドイツが一歩後ずさる。
でも、イタリアは無邪気に答えた。
「えへへ、ドイツがいっぱい助けてくれたんだよ!」
「[whispers]こ、このバカ。言うな」
ドイツの顔が、みるみる赤くなる。
日本は、その光景をじっと見つめながら、心の中で何かをそっと押し込んだ。
(私も、ドイツさんに助けてもらったのに)
そう思う自分が、なんだかとても、小さく思えた。
「[laughing]さて、作戦会議と行こうか」
フランスがパチンと指を鳴らす。
「三つの材料を、それぞれ別のチームで同時に集める。そうしないと、今夜の満月に間に合わない。異論はないね?」
「[serious]……ああ。それが合理的だ」
「えっとね、えっとね!」
イタリアがぴょんぴょん跳ねながら手を挙げた。
「人魚の涙石って、ヴェネツィアの運河の底にあるんだよ! 僕の地元だから、絶対にわかる!」
「[serious]なら、イタリアとロマーノがヴェネツィア担当か」
「ちょっと待った」
フランスが、わざとらしく口をはさんだ。
「[sarcastic]ドイツ、君はイタリアと一緒に行ったほうがいいんじゃないかい? 二人きりで。ヴェネツィアはロマンチックな街だし、水路をゴンドラで下りながら……恋が芽生えるには最高のシチュエーションじゃないか?」
「[angry]な、何を言っている! 月光花の採取には登山知識と体力が必要だ。俺がアルプスチームに入るに決まっている!」
「[sarcastic]そっかあ、残念だったね、イタリア」
「え? 何が?」
イタリアは、首をかしげた。
「[angry]フランス、いい加減にしろ!」
ドイツの額に、青筋が立つ。
日本は三人のやり取りを、凧が風に揺れるのを見るみたいに、ただ静かに見守っていた。
(私が、彼の隣に立てる日は……)
最終的なチーム分けが決まった。
アルプスチームは、ドイツ、フランス、オーストリア。月光花を担当。
ヴェネツィアチームは、イタリア、日本、ロマーノ。涙石を担当。
そして、イギリスは——一人で、妖精の泉の交渉を模索することに。
「[sad]べ、別に、俺がやらかしたことだからな。なんとかしてみせる。出入り禁止だが、抜け道を探す」
出発の時だ。
イタリアが、ドイツの前に立った。琥珀色の大きな目が、じっとドイツを見上げている。
「[gentle]ドイツ」
「[serious]なんだ」
「山から帰ってきたら、パスタ作るね。絶対に、戻ってきてよ」
ドイツは、少しだけ言葉につまった。
「……ああ」
それだけ言って、視線をそらす。
フランスはそれを見て、満足げにほほえんだ。日本は、荷物をまとめながら、その二人を横目でそっと見つめていた。
こうして、それぞれのチームが動き出した。
残り時間は、わずか十時間。
今夜の満月までに、すべての材料をそろえられるか——。
それは、まだ誰にもわからなかった。