ヘタリア 世界めちゃくちゃ大騒動!? みんな逆になっちゃった!
イタリア=ヴェネチアーノが朝、悲鳴とともに目を覚ますと、自分が可愛い女の子になっていた! 慌ててドイツの家に駆け込むと、そこには裂けたドレスをかろうじてまとった、筋骨隆々の戦士のような女性になったドイツの姿が。
しかし、異変は彼らだけではなかった。日本は物静かな大和撫子の美女に、アメリカはハイテンションな金髪美女に、フランスは自分の新しい低い声に衝撃を受けるハンサムな青年に、そしてロシアは巨大で微笑みを浮かべる女性になっていた。この騒動の原因である呪いの本の責任者、イギリスは魔法の暴発で小さく怯えた子供の姿に。
刻一刻とタイムリミットが迫る。次の満月までに材料を集め、イギリスの家で対抗呪文を唱えなければ、この恥ずかしい姿のまま世界会議に出席する羽目になる。イタリアは女の子としてパスタを作ることを楽しみ始め、日本は剣術の代わりに優雅な仕草を練習し、大混乱が巻き起こる。
しかし、本当の問題は? それは「気持ち」だった。ドイツが女性になったイタリアに予想外の優しさで接し、日本に嫉妬の炎が燃え上がる。男性になったハンガリーは、オーストリアから複雑な視線を向けられる。誰もが元に戻りたいと願
ヘタリア 世界めちゃくちゃ大騒動!? みんな逆になっちゃった! - 満月の前に、涙と花と本当のこと——妖精と月光花と、胸の奥のドキドキ
ストーンヘンジから北東へ三キロ。
古い樫の木の根元にある、小さな泉のほとり。
「[cold]……だから、今回は本当に、悪かったと言っている」
イギリスの声は、震えていた。
長い金髪を後ろで束ねた、女性の姿。エメラルドグリーンの目は、泉の水面を見つめたまま、決して顔を上げようとしない。
泉の中央で、小さな光が揺らめく。
光は、蝶の羽を持った小さな人影になった。身長十五センチほどの、妖精の女王リアノンだ。
「[angry]三年前、お前は私の森の一部を黒焦げにした。そして今日、この聖なる泉にまた土足で踏み込んだ。どの面を下げて『水をくれ』と?」
リアノンの声は、鈴の音のように澄んでいるのに、刃物みたいに冷たかった。
「[sad]それは……その……」
イギリスの拳が、ぎゅっと握られる。
(俺は、なんでいつもこうなんだ)
謝らなければ。心から、土下座してでも。
でも、口が動かない。
「[sarcastic]もういい。謝る気がないなら、去れ。泉には蓋をさせてもらう」
リアノンが手を上げた。泉の水面が、みるみる濁っていく。
「[angry]待て!俺は——」
その時だ。
「[crying]待って!!!」
茂みから、イタリアが飛び出してきた。
くるんと巻いた茶色の髪は乱れて、藍色のワンピースの裾は泥だらけだ。後ろには日本がいて、息を切らしながら追いかけてくる。
「[surprised]イタリア!? お前、ヴェネツィアにいたはずじゃ——」
「[crying]イギリスさんは、本当はちゃんと謝りたいんだ! ずっと、ずっと眠れなかったんだよ!」
イタリアは泉の前に膝をついた。
琥珀色の大きな目から、涙がボロボロこぼれ落ちる。
「[crying]呪いが解けなかったらどうしようって、みんなに迷惑かけたって、胃をキリキリさせてたんだ! でも、素直に言えないだけで……イギリスさんは、悪い人じゃないんだよ!」
「[sad]お、おい、イタリア……やめろ、そんな……」
イギリスがたじろぐ。
「[crying]お願い! 泉の水をください! みんなを、元に戻してあげたいの!」
イタリアの涙が、地面にポタポタと落ちて、黒い染みを作る。
リアノンは、じっとイタリアを見つめた。
「[gentle]……人間みたいな子だね、お前は」
静かな声だった。
さっきまでの冷たさが、少しだけ和らいでいる。
「[gentle]国の擬人化は、もっとドライなものかと思っていたよ。お前のように、他人のために泣ける子がいるんだね」
リアノンは、ちらりとイギリスを見た。
「[cold]そこのツンデレ魔法使いは、お前に足を向けて寝られないね」
「[angry]だ、誰がツンデレだ! 誰が!」
イギリスが真っ赤になって叫ぶ。
「[laughing]あはは、顔がトマトみたい!」
イタリアが涙をぬぐいながら笑った。
泉の水が、再び透き通っていく。
蓋を閉じる魔法は、解けたのだ。
「[gentle]汲んでお行き。ただし、今度森を焦がしたら、百年は出入り禁止だからね」
「[sad]……わかった。感謝する」
イギリスは口をきつく結んだまま、泉の水を銀の小瓶に汲んだ。
耳が、まだ真っ赤だ。
「[whispers]あれ、イギリスが泣きそう?」
いつの間にか後ろにいたアメリカが、日本に耳打ちする。
「[gentle]声が大きいですよ、アメリカさん」
日本が静かにたしなめた。
アメリカは、ニヤリと笑って肩をすくめる。
「[laughing]さーて、材料その一、ゲットだぜ!」
ガッツポーズをするアメリカ。
イギリスが、聞こえないふりをして歩き出す。
「[excited]イギリスさん! よかったね、泉の水もらえて!」
イタリアが駆け寄る。
「[sad]……うるさい。お前に言われる筋合いはない」
「えへへ」
イタリアは笑った。
その背中を、日本は静かに見つめる。
(イタリアさんは、すごいな)
心の中で、そう思った。
(私は、ドイツさんへの気持ちを、まだ誰にも言えないでいる。でも、イタリアさんは、あんなにまっすぐに、自分の想いを言葉にできる)
風が、樫の古木の葉を揺らした。
日本は、胸に手を当てる。
ドクン、ドクン。
(ドイツさんは、今頃、山頂に着いただろうか)
心配している自分に気づく。
心配している理由が、恋心からだと、もうわかっている。
(この気持ちを、押し込めるのは、もうやめよう)
日本は、小さく深呼吸をした。
(ちゃんと、自分で認めよう。私は、ドイツさんが好きだ)
誰にも気づかれない、小さな決意。
日本の黒い瞳が、まっすぐに前を向いた。
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標高二千七百八十メートル。
エーデルモント山の北面、岩棚。
「[serious]着いたぞ。ここが月光花の群生地だ」
ドイツが足を止めた。
金髪のオールバックは乱れて、息は白い。
岩棚には、銀白色のつぼみが三十ほど、風に揺れていた。
「[laughing]やっと着いたね。ドイツ、君のペース速すぎだよ」
美青年のフランスが、プラチナブロンドをかき上げながらつぶやく。
「[serious]満月の光が差し込むまで、あと少しだ。急げと言ったはずだ」
「[sarcastic]まあ、でも、君が急いだ理由の半分は、イタリアが山に来るからでしょ?」
「[angry]違う!」
ドイツが怒鳴った。
その時だ。
「[sad]ドイツぅ……フランスぅ……」
斜面の下から、弱々しい声が聞こえてきた。
イタリアが、日本に支えられながら、よろよろと登ってくる。
顔は真っ青で、唇の色が悪い。
「[scared]頭が、ガンガンするよぉ……」
「高山病だ。無理をするな」
ドイツが、無言でイタリアの腕を肩に回した。
「[gentle]ごめんね、ドイツ。重いでしょ……」
「[serious]気にするな。喋るな。呼吸に集中しろ」
ドイツが低い声で言う。
「[sarcastic]ドイツ、そういうところが好きだよ。イタリアも、そう思わない?」
フランスが、にやにやしながら言った。
「[angry]余計なことを言うな!」
ドイツのこめかみに青筋が立つ。
イタリアは、苦しい息の中で、ぼんやりと考えた。
(フランスが言ってたこと……どういう意味かな)
でも、その前に——。
夜空の雲が、さあっと晴れた。
満月の光が、岩棚を照らし出す。
とたんに、月光花のつぼみが、ゆっくりと開き始めた。
一枚、また一枚。
花びらが開くたびに、銀白色の光が強くなっていく。
「[surprised]わあ……」
イタリアは、言葉を失った。
花びらが発光している。
まるで、月の光そのものを、花が食べて輝いているみたいだ。
「[gentle]きれいだね……ドイツ」
イタリアが、ドイツの肩に頭を預けたまま、小さくつぶやく。
ドイツは、何も言えなかった。
肩に伝わる、イタリアのぬくもり。
胸の奥で、何かが大きく動く。
(これは、なんだ)
ドイツは、革手袋をはめた手で、月光花を一本、丁寧に摘んだ。
「[gentle]ドイツ」
「[serious]なんだ」
「[sad]さっき、フランスが言ってたこと……もし僕が迷惑だったら、ごめんね」
イタリアが、消え入りそうな声で言った。
「[surprised]……何の話だ」
ドイツが手を止める。
「[sad]ずっと、ドイツに助けてもらってばかりで……昔、神聖ローマも、最後は僕のそばから消えてしまったから。大切な人って、いなくなっちゃうかもって、思って」
イタリアが、静かに笑った。
ドイツの手が、止まる。
(そうか)
心の中で、パズルのピースがかちりと合う音がした。
あの日のヴェネツィアで、イタリアが泣いた理由。
底抜けに明るい笑顔の裏に隠された、深い寂しさ。
全部、今、わかった。
「[serious]……いなくならない」
ドイツが、短く言った。
「[surprised]え?」
イタリアが顔を上げる。
「[serious]聞こえなかったのか。いなくならない、と言った」
ドイツは、イタリアの顔を見ずに、ぶっきらぼうに繰り返した。
「[surprised]……うん!」
イタリアが、涙をためたまま、笑顔になった。
その笑顔が、月光花の光を受けて、キラキラと輝いて見えた。
(ああ、俺は)
ドイツは、心の中でつぶやいた。
(こいつの、この笑顔のそばに、ずっといたいんだ)
岩陰から、フランスが親指を立てて、一人で満足げにうなずいている。
「[laughing]よし、完璧」
「[cold]フランス、聞こえているぞ」
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イギリスの地下工房、第三層。儀式場。
銀の大釜の前に、全員が集まっていた。
イタリア、ドイツ、日本、イギリス、フランス、アメリカ。
ヴェネツィアの涙石が、青白く光っている。
ティルナ・フォウンテの泉の水が、小瓶の中で揺れている。
エーデルモント山の月光花が、銀白色の輝きを放っている。
三つの材料が、すべて揃った。
「[excited]ついにここまで来たな!」
アメリカがガッツポーズをした。
「[laughing]この七日間、なかなかドラマチックだったね」
フランスが、バラの花をくるくると回しながら笑う。
その時だ。
イギリスが、一歩前に出た。
「[serious]……全員に、改めて言う」
イギリスは、背筋を伸ばして、全員の顔を見渡した。
エメラルドグリーンの目が、まっすぐにみんなを見ている。
「[serious]今回は、俺の不注意で、迷惑をかけた。すまなかった」
深々と、頭を下げた。
シン、と静まり返る。
誰もが、驚いて言葉を失った。
あのイギリスが、素直に謝った。
「[excited]えへへ、イギリスさんがちゃんと言えた!」
イタリアが、ぱあっと笑顔になる。
「[angry]うるさい! 別に、言うべきことを言っただけだ!」
イギリスが真っ赤になって怒鳴った。
「[laughing]あはは、やっぱりツンデレだな!」
「[angry]誰がツンデレだ!」
儀式場に、笑いが起こる。
日本は、魔法陣の前に立ちながら、隣に立つドイツをそっと横目で見た。
(この七日間で感じたことを、全部、ちゃんと終わった後に、自分の言葉で伝えよう)
黒い瞳が、決意に満ちている。
天窓から、満月の光が差し込み始めた。
銀色の光が、魔法陣を照らし出す。
解呪の儀式まで、あとわずか。