異世界に転生したペロリスト魔狼は、超絶チート唾液で合法的にペロペロしたい
ある日、天界の大法廷にて、至高神は一人の被告を呼び出した。男の名はショウタ――人を舐めることに至上の喜びを感じる、ド級の変態である。「貴様、本気でキモい!」と神は断じ、罰としてショウタを異世界へと送り飛ばす。だが、ただの追放ではない。転生した姿は、巨大で恐ろしげな魔狼「ガルム」だったのだ。
神の考えは単純。これだけ怖ろしい見た目なら、人間は逃げ出すか、見つけ次第殺そうとするだろう。誰も舐められるわけがない。
……そう、神は思っていた。
だが、ショウタの変態性は神の想像を遥かに超えていた。「舐められない?なら進化して舐められるようになればいい!」という執念だけで、彼の唾液には奇跡のような効能が宿る――アンチエイジング、解毒、傷や病の治癒、抗菌作用、美肌、消臭、さらには花の香りまで!
さらに、自らのゴワゴワの毛並みを舐め続けた結果、それはふわっふわでシルクのような輝きを放つ、究極のモフモフへと変貌を遂げる!
「よし!このモフモフで人を誘き寄せて、力ずくで舐めまくってやる!」
かくして、欲望と本能のままにショウタの旅は始まる。最初の標的は、森で魔物に襲われていたエルフの少女ミリル
異世界に転生したペロリスト魔狼は、超絶チート唾液で合法的にペロペロしたい - 清浄の牢獄と甘い取引——絶望の底でミリルが気づいたこと
ギギギ……
重い鉄の音が、地下牢の静寂を切り裂いた。
クリナーデン騎士団の清浄な牢獄は、白い殺菌液で磨き上げられた壁が、松明の明かりを冷たく反射している。空気には、消毒用のアルコールのツンとした匂いが充満していた。
美しい牢獄だった。
あまりにも清潔すぎて、かえって息苦しい。
「[excited]おい!ここ、すごいな!床がピカピカだぜ!舐めてみてもいいか!?」
ペロリルは、分厚い鉄格子の向こうで、ふわふわの尻尾をぶんぶん振った。体高五メートルの巨体は、独房の中で少し窮屈そうだ。魔法封じの特殊鋼でできた鉄格子には、複雑な魔法陣が刻まれていて、薄っすらと青白い光を放っている。
「[angry]静かにしなさいっ!なぜそんなにいつも通りのテンションなんですか!」
通路を隔てた向かいの独房から、ミリルの怒鳴り声が響いた。
エルフの少女は、鉄格子を両手で握りしめている。長い銀髪が、汗で額に貼りついていた。拘束された手首には、細い麻縄の跡がくっきりと残っている。
ペロリルは首をかしげた。金色の瞳が、不思議そうに瞬く。
「[surprised]ん?なんで怒ってるんだ?すげえ清潔でいいところだぜ。俺、こんな綺麗な場所、初めてだ」
「[angry]処刑されるんですよ!明日、火炙りで!あなたも私も!!」
「[excited]そうだ!火炙りって、あったかいんだろうな!楽しみだな!」
「[crying]全然違いますうう!!」
ミリルは壁を拳で叩いた。鈍い音。痛みだけが彼女の現実を教える。
――翌朝。
規則正しい足音が、地下牢に近づいてきた。
カツン。カツン。
磨き抜かれた銀のブーツが、石床を叩く。レグルス・ヴァーンだ。彼の後ろには、二人の騎士が、銀の盆に載せた一枚の羊皮紙を捧げ持っている。
レグルスは、ペロリルの独房の前で立ち止まった。
「[cold]ガルム個体・ペロリル」
彼は無意識のように、右手の手袋を直した。白革の手袋は、一つの皺も許さない。左指の先で、右手の甲をピンと伸ばす。その動作を、何よりも大切そうに扱いながら。
「[cold]そなたの唾液と毛皮は、ヴェルダ大陸全土を脅かす生物汚染物質であると断定した。エルフ、人間、獣人――あらゆる種族の尊厳を冒涜する蛮行だ。故に、本日正午。ネブリカ中央広場にて、公開火炙り刑に処す」
鉄格子が、ギシリと震えた。
ペロリルが、生まれて初めて本気で怒ったのだ。
金色の瞳が、爛々と輝く。
「[angry]なんでだよ!俺はみんなを健康にしてるだけだ!肌もツヤツヤになるし、シワも薄くなる!なのに、なんで火炙りなんだ!!」
ガンッ!!
巨体が鉄格子に体当たりした。鎖が軋む。マナ封じの魔法陣が、眩い光を放つ。前足の爪が、床石を削る。
だが。
鉄格子は、微動だにしない。
「[angry]くそっ!!解けない!全然、ビクともしねえ!!」
レグルスは、冷たい灰色の瞳で、その無様な格闘を眺めていた。
「[cold]その首を刎ねるだけでも構わぬ。しかし衛生のため、焼却する。今やこの広場は、そなたの唾液で――穢れている」
彼は背を向ける。
白い礼装が、一瞬だけ翻った。銀髪の混じる髪が、松明の灯りを反射した。そして、数歩離れた場所で一旦立ち止まり、ミリルの独房に顔を向ける。
「[cold]エルフの娘。共犯者として、そなたも明日の正午に同様の処刑を言い渡す」
「[angry]私は違います!!私は、その……ペロリルを止めようとしてただけです!共犯じゃありません!」
ミリルは鉄格子にしがみつき、必死に叫んだ。
エメラルドの瞳が、涙で歪む。
レグルスは、振り返らなかった。
ただ。
手袋をはめた指先だけが、ピクリと動いた。
「[cold]全てを清浄にするのが我らの使命である」
カツン。カツン。
足音が、遠ざかっていく。
やがて、地下牢に、重苦しい沈黙が戻った。
ミリルは独房の隅で、膝を抱えて泣き崩れた。
(なんで、こんなことに)
(私はただ、ペロリルの暴走を止めたかっただけなのに)
(死にたくない……)
涙が止まらない。彼女の銀髪が、床の石に散らばる。エルフとしての誇りも、清潔への拘りも、今は無意味だった。
ただ、
死が怖かった。
――夜半。
廊下の明かりが消えた。
闇の中で、微かな衣擦れの音が響く。
香水の香り。
高貴で、少し甘ったるい、大人の女の匂い。
「[gentle]こんばんは、ガルムくん」
フェリシア・ミェーレが、ペロリルの独房の前に立っていた。
彼女は、深紅のドレスを着ている。琥珀の瞳が、暗闇の中で猫のように輝いていた。右手に、看守から買収した鍵束を握りしめている。
「[gentle]私、あなたにビジネスの提案があるのです。私の――ミェーレ商会の専属にならない?」
ペロリルは、伏せていた体を起こした。
「[curious]専属?なにそれ、うまいもん食えるのか?」
「[gentle]ふふ。ええ、もちろん。最高の食事と、清潔な寝床。そして何より――自由を差し上げますわ。今すぐ、独房から出してあげる」
「[surprised]自由!って、あの鉄格子を開けられるのか!?」
「[gentle]ええ。私が買収した看守がいます。手引きは整っている。ただ、条件はただひとつ。あなたの唾液の権利を、全て私に譲渡すること。私はあなたを『商品』として管理する。あなたの唾液で、世界一の美容帝国を築くのですわ」
彼女は微笑みを深くした。
冷たい微笑みだった。
琥珀の奥に、どろりとした欲望が渦巻いている。
ペロリルは、しばらく考え込む仕草をした。
「[serious]……じゃあ質問だ。お前の店の中で、俺が誰でもペロペロしていいか?」
フェリシアの笑顔が、一瞬で消えた。
「[cold]……それは、もちろん、全員に了承を取った上でならば──」
「[excited]却下!!」
ペロリルは、ぶんぶんと首を横に振った。
「[excited]お断りだ!縛られた状態でペロペロなんて面白くねえ!俺は、自分の好きな時に、自分で選んだ相手をペロペロしたいんだ!その自由がないなら、火炙りの方がまだマシだぜ!」
沈黙。
フェリシアは、目を細めた。
指先が、鍵束を握りしめる。
「[cold]……そう。なら、いつでも考え直してね」
彼女は余裕の笑みを浮かべて、踵を返した。
だが。
背中を向けるその一瞬、彼女の唇が「下らない」とだけ動いたのを、ミリルは見逃さなかった。
フェリシアの足音が、闇に消える。
――深夜。
全てが静まり返った頃。
ミリルは泣き疲れて、壁にもたれかかっていた。
その時。
袖口に、冷たい感触。
「[surprised]……?」
彼女は顔をあげた。右手で、左の袖口の内側を探る。
湿っている。
(これは……?)
彼女は袖をまくる。白いローブの内側が、ほんの少しだけ、湿り気を帯びていた。
場所は、左腕の内側。
正門付近で、ペロリルが捕まる直前。「お前の腕だけでも舐めさせろ」と笑いながら、巨大な舌でべろりと舐めた場所だ。
あれから、まだ丸一日も経っていない。
ペロリルの唾液の効果持続時間は、約七十二時間。
(――だから、まだ残っている?でも、おかしい)
ミリルは混乱した。
ここは、マナ封じの魔法鋼で囲まれた牢獄だ。石壁を挟んで、ペロリルのいる独房とは、かなり距離がある。
ありえない。
唾液の活性が、距離を飛び越えて維持されているなんて、普通はありえない。
だが。
ミリルが、息を潜めて袖口に意識を集中させると――。
湿り気が、わずかに増した。
(今……動いた?)
エルフとしての高い魔力感受性が、彼女に告げる。この湿り気の中に、微小なマナ反応がある。生きている。
まるで。
ペロリルの遠隔操作に共鳴するように。
「[scared]……もし、これが、あなたの唾液を――私が操作できるなら」
彼女は涙を拭いた。
独房の床に座り直す。
両手を袖口の湿り気に翳して、深く息を吸う。
(集中して。魔力の流れを感じるの)
白い指先が、青白く光り始めた。
かすかに、けれど確かに。
エルフの魔力が、湿り気と共鳴する。
袖口の水滴が、震える。
ミリルのエメラルドグリーンの瞳に、希望の光が灯った。
処刑まで、あと半日。
彼女は、密かに、魔力の集中を始める。
静かな夜だった。
牢獄の白い壁が、月明かりを反射していた。