異世界に転生したペロリスト魔狼は、超絶チート唾液で合法的にペロペロしたい
ある日、天界の大法廷にて、至高神は一人の被告を呼び出した。男の名はショウタ――人を舐めることに至上の喜びを感じる、ド級の変態である。「貴様、本気でキモい!」と神は断じ、罰としてショウタを異世界へと送り飛ばす。だが、ただの追放ではない。転生した姿は、巨大で恐ろしげな魔狼「ガルム」だったのだ。
神の考えは単純。これだけ怖ろしい見た目なら、人間は逃げ出すか、見つけ次第殺そうとするだろう。誰も舐められるわけがない。
……そう、神は思っていた。
だが、ショウタの変態性は神の想像を遥かに超えていた。「舐められない?なら進化して舐められるようになればいい!」という執念だけで、彼の唾液には奇跡のような効能が宿る――アンチエイジング、解毒、傷や病の治癒、抗菌作用、美肌、消臭、さらには花の香りまで!
さらに、自らのゴワゴワの毛並みを舐め続けた結果、それはふわっふわでシルクのような輝きを放つ、究極のモフモフへと変貌を遂げる!
「よし!このモフモフで人を誘き寄せて、力ずくで舐めまくってやる!」
かくして、欲望と本能のままにショウタの旅は始まる。最初の標的は、森で魔物に襲われていたエルフの少女ミリル
異世界に転生したペロリスト魔狼は、超絶チート唾液で合法的にペロペロしたい - 討伐隊、全滅じゃなくてツルツル——渋々相棒、誕生の瞬間
腕利き冒険者、クロウは、手にした一枚の羊皮紙を見つめていた。
翠央の大森海の北の入り口。深い霧が立ち込め、昼間なのに薄暗い。湿った空気が肌にまとわりつく。
仲間の四人が、クロウの後ろでざわついている。
「本当にこれか? S級討伐依頼ってやつは」
クロウは短く刈り込んだ茶髪をかきながら、改めて羊皮紙を見た。ペルグリム連盟の正式な討伐依頼書だ。
対象:魔狼ガルム(個体名:ペロリル)
危険度:S級
報奨金:金貨500枚
金貨500枚。銅貨に直せざるを得ないほどの、とんでもない金額だ。酒場でこの依頼を見つけた時、クロウは冗談だと思った。
でも、掲示板に貼られたそれは、本物の連盟印が押してあって、偽物じゃなかった。
「でもよ、クロウ。被害者は全員健康になってるって話だぜ」
ルーカスが、弓を肩に担ぎながら笑う。細身で、素早い動きが得意な若者だ。
「舐めるだけの獣なら、俺たちの鋼の牙が怖がることないだろ」
「……まあ、な」
クロウは羊皮紙を丸めて、腰のポーチにしまった。
この五人組、鋼の牙は、銀等級の冒険者パーティだ。クロウをリーダーに、魔法使いのティナ、盾役のバロン、回復役のエルザ、そして弓使いのルーカス。これまで数々の危険な依頼をこなしてきた実績がある。
「作戦を説明するぞ」
クロウは地面にしゃがみ、小枝で図を描き始めた。皆が覗き込む。
「まずルーカスが囮になる。お前がわざとらしく森を歩けば、あのバカでかい狼は寄ってくる」
「おう、任せろ!」
「そいつを、この地点まで誘導する。ここには麻痺罠を仕掛けてある。さらに上からは、バロンが網を発射する」
「で、俺が押さえ込むんだな」
バロンは、分厚い鋼の盾をどんと地面に置いた。大柄で、熊みたいにがっしりした男だ。
「ああ。動きを止めたところを、ティナの魔法でとどめを刺す」
「了解。爆炎の魔法を用意しておくわ」
ティナは、長い黒髪をなびかせながら、魔法杖を握りしめた。
「私はいつも通り、後ろで回復に備えますね」
エルザが優しい笑顔で言う。金髪を後ろでまとめた、心優しい少女だ。
作戦図は完璧に見えた。
でも、そこには一つだけ、致命的な欠陥があった。
——全員でペロペロされた場合の対処法が、一切書かれていなかったのである。
クロウは顔をあげ、皆を見渡した。
「よし、始めるぞ! 金貨500枚は俺たちのもんだ!」
そうはならなかった。
――――
ルーカスが、わざとらしく森の中を歩く。
枯れ枝を踏みしめる音。湿った葉っぱの匂い。遠くで鳥が鳴いている。
(こんなところにS級魔物が本当にいるのか?)
ルーカスは内心でつぶやいた。いくら報奨金が高いとはいえ、S級だ。普通なら金等級以上が相手にするレベルの代物だ。
その時だった。
――ガサリ。
茂みが揺れた。
「!?」
ルーカスが弓を構える。
茂みから、ぬっと現れたのは——巨大な、狼。
体高は優に二メートルを超えている。全身を覆う漆黒の毛皮が、木漏れ日を受けて、やけに輝いていた。
星の光を閉じ込めたみたいに、キラキラと。
そして、ふわりと風に乗ってきたのは——フローラルな、いい香り。
「でけえ……でも、なんか、すっげえフワフワしてそう……」
弓を構えていた腕が、だらんと下がる。
そう。あれは、魔狼ガルム——ペロリルだった。
「やったー! 次のお客さん発見!!」
ペロリルは嬉しそうに尻尾をぶんぶん振りながら、ルーカスに向かって歩き始めた。その毛皮が、一歩ごとにふわふわと揺れる。
即座に、残りの四人が飛び出した。
「今だ、網を!!」
バロンが、腰に提げていた筒を構える。ボンッという音とともに、分厚い麻の網が打ち出された。空気を切り裂きながら、ペロリルを覆い尽くそうとする——が。
ペロリルは、自分からその網の中心に飛び込んだ。
モフッ。
分厚い毛皮が、網の衝撃をまるで綿菓子のように吸収する。さらに四本の足を器用に使って、絡まった網を逆に引き寄せ、バロンに向かって投げ返した。
「うおおっ!?」
バロンが自分の網に足を取られて、どでっと転倒する。
次の瞬間、ペロリルはバロンの身体の上に、巨大な前足をそっと——でも絶対に逃がさないという強さで——乗せた。
ピンク色のぷにぷにした肉球が、バロンの胸板を押さえつける。
「一人目、ゲット」
そして、巨大な舌が、バロンの顔面を、じっくりと舐め上げた。
「やめろおおおお!? クロウ、助けてくれえええ!!」
バロンの絶叫が森に響く。クロウが慌てて剣を抜いた。
「バロンから離れろ!!」
だが、ペロリルは止まらない。むしろ、バロンの顔面を舐め終えると、次は鎧の隙間から見える腕へ、首筋へと、丹念に舐め始めた。
十秒もしないうちに、バロンの叫び声が変わる。
「ちょ、待て……俺の腕、ツルッツルになってないか!? さっきまであったはずの古傷が消えてる!?」
その混乱の声を聞きながら、ペロリルは次の獲物に向かっていた。
魔法を詠唱しようとしていたティナの背後に、音もなく回り込む。
「え、うそ、速——」
言い終わるより早く、ペロリルの舌が、ティナの顔面を舐め上げた。フローラルな香りがティナの鼻をつく。
「いやあああ! 魔法が! 集中できないいいい!」
「いいねえ、この肌! 三日前に舐めたエルフの子には負けるけど、なかなかだぜ!」
ティナを舐め終えたペロリルは、次にエルザとルーカスを、まるで一瞬で移動したかのように捕捉した。片足でルーカスを押さえ込み、尻尾でエルザを絡めとる。
「ひっ……や、やめ——」
「俺、もう無理だ……なんかもう、いいや……」
ルーカスはすでに諦めていた。
ペロペロペロペロ。
森の中に、ただひたすらに舐める音だけが響く。フローラルな香りが、あたり一面に立ち込めていく。
「——これで終わりだ!!」
クロウが、渾身の力を込めて、ペロリルの横腹に剣を叩きつけた。
銀等級の剣士、クロウの全力の一撃。
だのに。
——モフッ。
剣は、ペロリルの毛皮に触れた瞬間、情けない音を立てて止まった。まるで、分厚い羽毛布団にでも突き刺したかのように。
「なっ……硬い!? いや、柔らかいのに硬い!? どういう毛皮だよ、これ!?」
ペロリルは、ゆっくりと首だけで振り返った。金色の瞳が、クロウを見下ろす。
「だって俺の毛皮は、三日三晩かけて自分で舐めて、完璧にモフモフに仕上げたやつだからな。刃物ぐらい軽く止められるぜ」
「は、はあ!?」
「お前もペロペロな!」
ペロリルは、ひょいと前足でクロウを押し倒した。横腹から全身へ、舌が隅々まで這い回る。
「ぎゃああああ!! 犯される!! 俺は冒険者としてやっていけなくなる!!」
クロウの絶望の叫びが、翠央の大森海の奥深くへと消えていった。
――――
それから、十分後。
森の地面に、五人の冒険者がぐったりと座り込んでいた。戦闘不能。
でも、誰一人として傷を負っていなかった。
むしろ——全員の肌が、ありえないほどツヤツヤに輝いている。
「……俺の肌、昔、火傷した痕があったのに。綺麗に消えてる」
「ちょっと待て、俺ずっと肘の皮膚が荒れてたのに、消えてる……」
「私、アンチエイジングの魔法薬を何年も買ってたのに……あっけなく……」
呆然とつぶやく五人をよそに、ペロリルは少し離れた場所で、自分の毛皮を満足そうに舐めて整えていた。
その様子を、木陰からじっと見つめる、小さな影が一つ。
――ミリル・エルフィネアだった。
長い銀色の髪が、風に揺れる。エメラルドグリーンの瞳は、呆然と座り込む冒険者たちと、自分の毛を舐める巨大な狼とを、交互に見比べていた。
三日前のあの悪夢のような感触が、肌をかすめる。
(また被害者が……)
そう思ったが、すぐに首を振る。
違う。あの冒険者たちは、ペルグリム連盟の討伐隊だ。S級の討伐依頼を受けて、ここに来たはずの、精鋭たちだ。
その人たちが、たった一瞬で全滅している。
ゾッとするような悪寒が、背中を走った。
(——この力は、個人の問題じゃない)
エルフの理性が、頭の中でカチリと音を立てた。
(次は街全体が標的になる)
アンチエイジング。デトックス。治癒。殺菌、抗菌、美肌。
七つの効果を持つ、あの唾液。
これがネブリカ自由都市で撒き散らされたら、どうなるか。
清潔を何より大事にするエルフとして、考えただけでぞっとした。でも、同時に、もう一つの考えが浮かぶ。
(誰かが監視しなければ……被害を最小限に抑えなければ)
それは、彼女自身だ。
「……うぅ」
胃がキリキリと痛む。
あんなに嫌だったのに。あんなに泣き叫んだのに。
(清潔じゃない選択肢が、最も清潔な結果をもたらす……)
その矛盾した結論に、ミリルは盛大に頭を抱えた。
「なんでこんなことに……」
それでも、彼女は木陰から一歩、踏み出した。
「……ペロリルさん」
ペロリルが、毛を舐めるのをやめて顔を向ける。ミリルの姿を認めると、尻尾をぶんぶん振った。
「おお、この間のエルフの子! どうしたんだ?」
ミリルは、全身に鳥肌を立てながらも、毅然と前を見た。
「あなたの、その……行動を、監視します。あなたがこれ以上、迷惑をかけないよう、私がついていきます」
ペロリルは、一瞬きょとんとした。
「ついてくるのか?」
「これは私の意思による選択です」
「まあ、勝手にしろ。でもお前、また舐めてもいいか? お前の肌、三日前にペロペロしたけど、追加でやりたい」
「絶対に駄目です!!! それが問題なんです!!!」
「じゃあ、小指だけ」
「指一本でも駄目です!!! 指の先の先でも駄目です!!!」
後ろで座り込んでいた冒険者のクロウが、震える声で聞いてきた。
「お、おい……その嬢ちゃん、本気で、その化け物と一緒に行くのか……?」
ミリルは振り返らず、静かに答えた。
「行きます。止めないでください」
二人は、街道へ向かい歩き始めた。
ミリルは、隣を歩く巨体を見上げて言った。
「ネブリカ自由都市まで、約六十キロです。その間、むやみに人を舐めないと約束してください」
「うーん……街に着くまでは我慢する」
「……分かりました」
「街に着いたら、全員ペロペロだな!」
「だから、それが駄目だって言ってるんですーーー!!!」
ミリルの絶叫が、街道に木霊した。
彼女の大いなる後悔を乗せて、二人の旅が、今始まった。
――――
同日夜。
ネブリカ自由都市、ペルグリム連盟本部。
受付長のソニア・ハルトは、鷹からの速達に目を通すと、深くため息をついた。
「……またか」
『鋼の牙、作戦失敗。ペロリル、目下エルフの少女を伴い、街道を南下中』
これでS級討伐失敗は三件目である。
ペロリルの被害は増える一方なのに、誰も止められない。
ソニアは、壁に貼ってある討伐依頼書を手に取ると、そこに書かれた報奨金の額を、ペンで書き換えた。
金貨七百枚。
「……これで誰かやってくれるかしら」
その時、カウンターの呼び鈴がチリンと鳴った。
顔をあげると、誰もいない。
代わりに、一枚の手紙が、そっと置かれていた。高価な封蝋で閉じられた、高級な紙。
ソニアは怪訝な顔で封を開ける。
中身を読んだ瞬間、彼女の目が大きく見開かれた。
『討伐ではなく、生け捕りを希望する。
報酬として、金貨壱千枚をお支払いする用意がある。
依頼人:ミェーレ商会』
「……金貨、千枚」
規約上、連盟が仲介できる案件ではない。受理はできない。そう頭では分かっていても、その金額があまりにも大きくて、ソニアの握った手紙が、かすかに震えた。
同じ頃、街の別の区画では、整然と移動する集団があった。
鎧を着た騎士たちの隊列が、無言で大通りを進んでいる。
彼らの旗には、クリナーデン騎士団の紋章——清浄なる盾と剣——が、月明かりに冷たく輝いていた。
物語は静かに、そして確実に、動き始めていた。Noveliaとは?
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