異世界に転生したペロリスト魔狼は、超絶チート唾液で合法的にペロペロしたい
ある日、天界の大法廷にて、至高神は一人の被告を呼び出した。男の名はショウタ――人を舐めることに至上の喜びを感じる、ド級の変態である。「貴様、本気でキモい!」と神は断じ、罰としてショウタを異世界へと送り飛ばす。だが、ただの追放ではない。転生した姿は、巨大で恐ろしげな魔狼「ガルム」だったのだ。
神の考えは単純。これだけ怖ろしい見た目なら、人間は逃げ出すか、見つけ次第殺そうとするだろう。誰も舐められるわけがない。
……そう、神は思っていた。
だが、ショウタの変態性は神の想像を遥かに超えていた。「舐められない?なら進化して舐められるようになればいい!」という執念だけで、彼の唾液には奇跡のような効能が宿る――アンチエイジング、解毒、傷や病の治癒、抗菌作用、美肌、消臭、さらには花の香りまで!
さらに、自らのゴワゴワの毛並みを舐め続けた結果、それはふわっふわでシルクのような輝きを放つ、究極のモフモフへと変貌を遂げる!
「よし!このモフモフで人を誘き寄せて、力ずくで舐めまくってやる!」
かくして、欲望と本能のままにショウタの旅は始まる。最初の標的は、森で魔物に襲われていたエルフの少女ミリル
異世界に転生したペロリスト魔狼は、超絶チート唾液で合法的にペロペロしたい - 処刑の朝、唾液がぬるぬる溢れ出す——清浄の枷よ、さようなら
牢獄の夜は、深く、そして冷たかった。
消毒液のツンとした匂いだけが、石造りの独房に充満している。壁はどこまでも白く、清潔で、それがかえって息苦しい。
ミリルは、冷たい石床の上で目を閉じていた。長い銀髪が、まるで壊れた絹糸のように床に散らばっている。エメラルドグリーンの瞳は、見開かれたまま、暗闇の一点を見つめていた。
視線の先には、自分の左腕。
ローブの袖口が、わずかに湿っている。
(まだ、残ってる)
それは、昨夜の出来事を思い出させる、生温かい感触。正門前でペロリルが「お前の腕だけでも舐めさせろ」と笑いながら、巨大な舌でべろりと舐めた跡だ。フローラルの微かな香りが、消毒液の臭いに混じって、彼女の鼻腔をくすぐる。
(気持ち悪い)
エルフとしての本能が、叫んでいる。これを振り払えと。清浄なる泉で洗い流せと。だが、彼女は逆のことをした。右の手のひらを、そっと袖口の湿り気にかざす。
「[whispers]……集中して」
目を閉じる。
エルフの高い魔力感受性が、世界のざわめきを捉える。鉄格子に刻まれたマナ封じの魔法陣の不快な振動。遠くの独房で、規則正しい寝息を立てているペロリルの巨大なマナ。そして——
袖口の、かすかな水滴。
その一滴一滴に、ペロリルの意思のようなものが宿っている。まるで、本体から千切れてもなお、主人を求めて震えているかのようだった。
ミリルは、その「震え」に、自分の魔力を重ねた。
(動け)
湿り気が、ピクリと反応する。
水滴が、重力に逆らって、数センチ、袖の上を這い上がった。
「[surprised]……!」
心臓が、早鐘を打つ。
しかし、集中が途切れた瞬間、水滴は元の位置に戻ってしまった。
「[sad]……まだ、ダメ」
額に、じわりと汗が滲む。
(こんな力、本来なら忌むべきものなのに)
彼女は、苦笑いを浮かべた。清潔を何よりも重んじるエルフが、よりにもよって唾液を操る練習をしている。しかも、その唾液で、世界を騒がせている変態を助けるために。矛盾もいいところだわ、と自分でも思う。
だが。
(ペロリルは、私を助けてくれた)
森の中で、フォグレイスの群れから。あの時も、今と同じように気持ち悪くて、でも、確かに命は救われた。
「[serious]借りは返します。……エルフの名において」
彼女は、再び袖口に手をかざした。
今度は、目を閉じない。エメラルドの瞳で、水滴を睨みつけるように見据える。
(あなたは、ペロリルの一部。ならば、あなたの主人はあそこにいる)
魔力が、青白い光となって指先から溢れ出した。マナ封じの魔法陣が反応し、不快なノイズを発する。だが、ミリルは構わず魔力を注ぎ続ける。
水滴は震え、そして——
ゆっくりと、袖口から浮かび上がった。
十センチ。二十センチ。
宙に浮いた透明な雫は、まるで意志を持つかのように、鉄格子の方へと動き出す。
「[excited]いける……!」
しかし、鉄格子に近づいた瞬間、魔法陣が強力な干渉波を放った。
パチンッ!
水滴は、霧散した。
「[angry]……そ、そうですよね。そんな簡単には」
彼女は唇を噛みしめる。息が荒い。全身から汗が吹き出し、銀髪が額に張り付いていた。
だが、諦めるわけにはいかない。
(もう一度)
夜が、過ぎていく。
失敗するたびに、彼女は「気持ち悪い」と呟き、そしてまた手をかざした。
その繰り返しは、まるで呪いのようで、しかし確かな希望だった。
――やがて、独房の小さな鉄格子の隙間から、朝日が差し込む。
明け方。
ミリルは、ついに掴んだ。
(これなら、いける)
袖口の湿り気が、彼女の意思のままに、しなやかに動く。鉄格子のマナ封じに干渉されながらも、その隙間を縫うようにして、十センチ以上を移動できるようになっていた。
(後は、距離とタイミング)
彼女は、深く息を吐き、そして立ち上がった。
――正午前。
ネブリカ中央広場は、異様な熱気に包まれていた。
広場の中央には、高々と薪の山が組まれている。その頂上に、ペロリルは縛り付けられていた。魔法鋼の鎖と特殊繊維の縄が、極上の漆黒の毛皮に食い込んでいる。
「[angry]ちょっと待て! これ、俺の毛皮が焦げるんだが!?」
ペロリルの抗議の声が、ざわめく群衆の頭上を飛び交った。
だが、誰もその声に応えない。
市民たちは、恐怖と好奇心の入り混じった目で、巨狼を見つめている。その中には、フードを深く被った小柄な影が一つ、静かに混じっていた。
処刑台の前には、レグルス・ヴァーンが立っている。
短く刈り込んだ黒髪に、銀のメッシュ。鋭い灰色の瞳は、冷たくペロリルを見据えていた。彼は無意識のように、白手袋をはめた右手で、左手の手袋の皺を丁寧に伸ばす。
「[cold]点火」
短い命令。
点火係の騎士が、松明を手に、一歩、前に進み出る。
――その時だった。
群衆の中の影が、顔を上げた。
フードの下から、長い銀髪がこぼれ落ちる。澄んだエメラルドグリーンの瞳が、強い決意の光を宿して、処刑台を見据えた。ミリルは、両手を胸の前で組み、全魔力を解放する。
(お願い、届いて!)
――直後。
異変は、拘束具の内側から起きた。
ぬるり。
ペロリルの漆黒の毛皮の下で、透明な液体が、滲み出るようにして溢れ出す。それはまるで、毛穴という毛穴から汗をかくかのように、大量の唾液が、次々と湧き上がってきたのだ。
「[surprised]お?」
唾液は、魔法鋼の鎖の繊維の隙間に入り込み、内部からジュワジュワと溶かし始める。特殊繊維の縄は、みるみるうちに唾液を吸って水分を含み、だらしなく伸びていった。
メリメリ……バキンッ!!
内側から変形した金属鎖が、次々と千切れ、弾け飛ぶ。縄が、重く水分を含んだ音を立てて、ほどけていく。
「[angry]な、なにが起きている!?」
レグルスの凍りついた表情が、初めて動揺に歪んだ。
群衆が、悲鳴を上げる。
松明を持ったまま硬直する点火係の目の前で、ペロリルは、ゆっくりとその巨体を起き上がらせた。
薪の山の上で、仁王立ち。
漆黒の毛皮が、午後の陽光を浴びて、星のように煌めく。金色の瞳が、爛々と輝き、ピンク色の肉球が、ギリリと薪を踏みしめた。
「[excited]よーし、よくも1日も閉じ込めてくれたなあ!! まずは全員分、お礼をしてやるぜ!!」
――反撃の狼煙が、上がった。
怒涛だった。
処刑台から飛び降りた巨体が、着地と同時に一人目の騎士を前足で押さえ込む。
「[scared]ぐえっ!?」
「一発目!」
ベロォォン!
巨大な舌が、顔面を舐め上げる。
重装備の騎士が、なす術もなく転がされる。ペロリルは既に次の獲物へ飛びかかっていた。S級危険種である所以は、その巨体だけではない。五メートルの巨体が、戦場を稲妻のように駆け巡る。
「[angry]包囲を縮めろ! 怯むな!」
レグルスが叫ぶが、遅い。
二人目の騎士が、剣を振るう前に横から抱き込まれ、首筋をべろりと舐められる。
「[crying]うわあああ! やめろおお!」
「次!」
流れ作業だった。
押さえ込み、舐め、そして放り投げる。その度に、騎士たちは「ひぃっ」と悲鳴を上げ、地面に座り込む。
滑稽な光景が、広場に広がっていく。
舐められた騎士たちは、一様に呆然としていた。
「[surprised]……え? 俺、肌が……ツルツルになってる?」
「[crying]顔が、さっぱりしてる……なんだこれ、気持ち悪い……」
「[angry]戦意を喪失するな! ただ舐められただけだぞ!」
レグルスの怒号も、部下たちの耳には届かない。彼らは、剣を握る力もなく、ただ自分たちのツルツルになった顔を撫で回していた。
観客席からは、いつしか悲鳴ではなく、困惑と笑いの声が上がり始めている。
「[laughing]なにあれ、強ぇ!」
「[surprised]ちょっと、あの騎士の人、肌が綺麗になってない!?」
「[angry]……穢らわしい!!」
レグルスは、腰のポーチから聖水の瓶を取り出し、ペロリルに向かって投げつけた。
パシャンッ!
瓶がモフモフの毛皮に当たり、割れる。聖水は、一瞬で毛皮に吸い込まれた。
「[excited]あ、いい香りだな!」
ペロリルは、聖水のフローラルな香りを嗅いで、嬉しそうに尻尾を振った。
何も起きない。
「[angry]き、貴様ぁ……!」
レグルスの顔が、屈辱と怒りで真っ赤に染まる。
部下の半数以上が無力化された。包囲網は、完全に瓦解している。
その時だった。
「[serious]ペロリル!」
群衆の中から、ミリルがフードを脱ぎ捨てた。
「[cold]エルフの娘……! 共犯者だ、取り押さえろ!」
レグルスが指を差すが、誰も動けない。残った部下たちは、ペロリルの追撃から逃げるのに精一杯だった。
ペロリルは、ミリルの姿を見つけると、金色の瞳を輝かせた。
「[excited]お、ミリル! やっぱり来たか! よくやったな! ご褒美に、お前もついでにペロペロしてやる!」
そして、巨体を翻し、ミリルに向かって突進し始める。
「[angry]それが感謝の言葉ですか!? 絶対嫌です!!」
ミリルは、全力で逃げ出した。
こうして、処刑場の広場を、巨狼がエルフの少女を追いかけるという、とんでもなくシュールな追いかけっこが始まった。
「[angry]今は私じゃなくて、あっちです!!」
ミリルが、レグルスを指差しながら絶叫する。
「[excited]ちっ、後でな!」
ペロリルは、名残惜しそうに舌打ちすると、向きを変えた。
その視線の先には、レグルス・ヴァーン。
彼は、白手袋を外し、素手を掲げていた。見たこともない複雑な魔法陣が、彼の周囲に展開され、白い浄化の光が、騎士団長の全身を包み始める。
「[cold]もはや生け捕りにはせぬ。浄化魔法『極光の洗礼』で、分子の一つ残らず消し去ってくれる」
空気が、ピリピリと震える。
観客たちが、事の重大さに気づき、悲鳴を上げて逃げ惑い始めた。広場が、再び混乱の坩堝と化す。
詠唱は、佳境に入っていた。
レグルスの灰色の瞳に、狂気にも似た清浄への執念が燃え上がる。
ペロリルは、ゆっくりと四つ足で地を蹴り、レグルスの正面に立った。漆黒の毛皮が逆立ち、金色の瞳が細められる。
「[serious]面白れえ。やってみろよ、レグルス」
一騎打ち。
唾液まみれのS級変態獣と、絶対清浄の騎士団長が、今、正面から向かい合った。