借金男のハーレム革命 〜ドS魔導書に絶対服従中〜
借金男のハーレム革命 〜ドS魔導書に絶対服従中〜
レオン・クロウフォードは超がつくほどの貧乏冒険者で、借金取りから逃げ回る日々を送っていた。ある日、ギルドのゴミ捨て場から埃まみれの古びた本を拾う。それは伝説の魔導書『黒の黙示録』だった。しかし、契約の挨拶代わりに、そのドSな精霊リリアから平手打ちを食らう!
「この役立たずの虫ケラが!覚悟しなさい、私が一人前の契約者に鍛え上げてやるんだから!」
リリアの容赦ない訓練の下、レオンは涙ながらにスキルを急上昇させていく。初めての本格的な任務で幼なじみで受付嬢のミーシャを救ったことで、彼女の受動的だった恋心は、超積極的な猛アタックへと変貌。さらに事態をややこしくするのが、ギルド最強のSランク戦士エレナ・ヴァレンシュタイン。普段は氷のようにクールな彼女が、レオンが他の女の子と話すたびに、あからさまに不機嫌になるのだ。
突然女の子たちに囲まれるようになった、超がつくほど鈍感なレオンは全く気づかず、「なんで最近みんな俺に冷たいんだ!?」とパニックになるばかり。その隙を突いて、嫉妬に狂った元同僚ザックが、偽のSランク緊急クエストを渡す罠を仕掛ける
借金男のハーレム革命 〜ドS魔導書に絶対服従中〜 - 黒炎の翌朝——余韻と嫉妬と、新たな影
闘技場での戦いから一夜が明けた。
包帯だらけの体で、レオン・クロウフォードはフェルケーテ・カナルベルグ支部の石段を上っていた。左脇腹がまだズキズキと痛む。肋骨にひびが入ってるらしい。でも、不思議と気分は悪くなかった。
(ギルドに戻れるんだ)
それだけで、胸の奥がじわりと温かくなる。
三階の支部長執務室の前で、レオンは深呼吸した。ドアをノックする。
「[gentle]入れ」
重い樫のドアを押し開ける。部屋の中は朝日で明るく、窓からはルーゲン河のきらめきが見えた。支部長バルトス・ヘルマン——五十二歳の元Aランク冒険者——が、大きな机の向こうで書類の束を手にしていた。
「[serious]座れ、レオン・クロウフォード」
バルトスの声は低く、威厳がある。傷跡の残る顔を上げ、鋭い目でレオンを見た。
「[serious]まずは礼を言う。エレナ・ヴァレンシュタインが集めた証拠と、ミーシャ・アーヴィングが三日間かけて集めた証言により、お前の冤罪は完全に証明された」
机の上に、分厚い書類の束が並べられる。依頼書の原本、偽造された写し、河港地区の密売記録、地下闘技場の帳簿の写し——。
「[serious]ギルド追放通告は正式に撤回する。損害賠償の請求も取り下げだ」
レオンはホッと息を吐いた。
「[excited]あ、ありがとうございます!マジで助かります!」
深々と頭を下げる。
「[serious]ただし——」
バルトスの声が一段低くなった。
「[serious]条件がある」
えっ、とレオンは顔を上げる。
「[serious]一ヶ月以内に、Dランク昇格試験に合格しろ」
「[surprised]Dランクっすか!?」
今のランクはG。いきなり三つも飛び級しろと言うのか。
「[serious]黒の黙示録の契約者として覚醒した以上、Gランクのままでいることは許されん」
バルトスは机の引き出しから一枚の書類を取り出した。Dランク昇格試験の申請書だ。
「[serious]賠償金免除の代わりだ。受けられるな?」
レオンは頷いた。
「[serious]やります。絶対に合格してみせます」
——その瞬間。
レオンの手の甲の契約印が、ぼんやりと光を放った。
半透明の姿が空中に浮かび上がる。漆黒のロングヘア、真紅の輝く瞳、常に空中に浮いている小さな姿——リリアだ。
「[cold]当然ね。私のクズ雑魚が冤罪で追放なんて笑えない話だもの」
リリアは尊大に腕を組み、バルトスを見下ろした。
「[cold]どうせこのクズのことだから、試験も一発じゃ受からないわよ。私がみっちり鍛えてやるんだから感謝しなさい」
そう言って、リリアは契約印をピリッと発動させた。
「うわっ!」
体中に微弱な電流が走る。痛くはないが、ビリビリと痺れる。
「[laughing]ほら、返事は?」
「[scared]は、はい!ありがとうございますリリア様!」
バルトスが苦笑いを浮かべた。
「[serious]精霊殿、くれぐれも支部を壊さないよう頼む」
——
一階の受付カウンター。
亜麻色のふんわりボブ、緑の大きな瞳、チャーミングなそばかす——ミーシャ・アーヴィングが、すごい勢いで書類を処理していた。羽根ペンが紙の上を走る音が、カリカリと小気味いい。
「[serious]レオン、ここに印鑑。ここにサイン。ここにも印鑑」
ミーシャは書類の束を次々と差し出す。追放撤回の手続き、損害賠償免除の手続き、仮復帰の仮登録——それぞれに三枚ずつ書類が必要で、合計すると十二枚になる。
「[embarrassed]ちょ、ちょっと待ってくれ。手が震えて——」
緊張と睡眠不足で、指先がプルプルと震えている。印鑑を押そうとするたびに、インクがにじんでしまう。
「[excited]ああもう、レオンってば!」
ミーシャがカウンター越しに身を乗り出し、レオンの手首を上から包み込んだ。
「[gentle]こうやって、一緒に押すの」
彼女の指が、レオンの手の甲に触れる。温かい。ふんわりと石鹸の香りがした。
レオンは固まった。
ミーシャの指が、ゆっくりと印鑑を紙に押し付ける。その間もずっと、手首が触れ合ったままだ。
(な、なんだこれ。胸がドキドキする)
「[cold]書類処理で顔赤くなる冒険者は世界でもあなただけよ」
後ろからリリアの冷ややかな声が飛んできた。
「[angry]う、うるさいな!これはその、朝日がまぶしいだけで!」
「[laughing]窓は西側だけどね」
ミーシャがくすくす笑った。でも、その笑顔の奥で、緑の瞳がチラリとリリアの姿を盗み見る。
(リリアさん、最近レオンに近すぎない……?)
——
仮復帰のささやかな祝いとして、四人は酒場「赤銅の杯」に集まった。
エールの泡立つ匂いと、猪肉の串焼きがジュウジュウと焼ける音。昼前だというのに、二十人ほどの冒険者がすでに酒盛りをしている。店主ゴルド・ベッカーが大きなジョッキを運んでいた。
レオンが先に到着し、丸テーブルの真ん中の席に座る。ほっと一息ついた瞬間——。
「[gentle]レオンの隣、私が座るね」
「[cold]いや、私がそっちだ」
ミーシャとエレナが、同時にレオンの左右の椅子に手をかけた。
一瞬の沈黙。
ミーシャの緑の瞳と、エレナの琥珀色の鋭い目が、バチバチと火花を散らす。
「[embarrassed]あの、隣の席は二つあるし……」
言いかけた時には、二人ともすでに椅子を引いていた。ミーシャが右、エレナが左——レオンを挟み込む形で、同時に腰を下ろす。
(うわっ、両脇からいい匂いが……って、そんな場合じゃない!)
「[quiet]……俺は向かいでいい」
ティナが一番遠い席に、自分で移動した。白い獣耳がペタンと垂れている。琥珀色の瞳が、明らかに「面倒なことになってる」と語っていた。
「[sarcastic]仲良くしてるところ悪いけど、私の席は?」
透明のまま浮かぶリリアが、全員の顔を順番に見回す。その真紅の瞳が、妙に楽しそうに輝いている。
「[scared]えっ、リリアも飲むの!?」
「[cold]飲めないけど、眺めるのは自由でしょ。クズ雑魚がどんな間抜け面で修羅場に巻き込まれるか見物よ」
エールが運ばれてきた。
ミーシャがジョッキを手に取り、一口も飲まないうちに宣言した。
「[serious]レオンは私の幼なじみなんだから、今日くらい私の隣で当然でしょ」
甘えた口調だが、目は本気だ。
エレナが静かにエールを一口飲んだ。琥珀色の瞳が、冷たく細められる。
「[cold]幼なじみは恋人じゃない。対等な条件だ」
「[angry]そういう問題じゃなくて!」
ミーシャが立ち上がりかけた。
「[scared]えっ、えっ、俺なんかした!?」
レオンは左右を見回してオロオロする。
向かいからティナが、エールを一口飲んでから端的に言った。
「[cold]お前が鈍いのが原因だ」
「[surprised]は?」
その言葉の意味を、レオンは三秒かけて理解した。理解した瞬間、飲みかけのエールに噎せる。
「ゲホッ、ゴホッ!」
「[sad]ああもう、背中トントンしてあげるから!」
「[cold]いや、私がやる。お前より手加減できる」
「[angry]なんでそうなるのよ!」
背中を巡って新たな戦いが始まった。
リリアが空中でクスクス笑っている。
——
場の緊張が少し和らいだ頃、ティナが黙って立ち上がった。
「[quiet]俺はもう行く」
レオンが顔を上げる。
「[serious]どこに?」
「[cold]まだ決まってない」
ティナは短く答えた。首の契約印はもう消えている——闘技場でレオンが魔力で鎖を焼き切った時に、あの印も消えたのだ。でも、行く場所がないのは変わらない。
「[gentle]決まるまで、渡り鳥の巣に泊まればいい。女将さんには俺が話す」
「渡り鳥の巣」——レオンがいつも泊まっている格安宿だ。
ティナの獣耳が、ピンと立った。
「[quiet]……金は払う」
「[gentle]いいって。それよりメシだ。お前、ちゃんと食ってなかっただろ」
ティナは少し黙ってから、レオンの袖をほんの少しだけ引っ張った。
「[whispers]今朝、守りに来てくれた。礼だけ言う」
それだけ言い残し、ティナは酒場を出て行った。足音が遠ざかる。
レオンは照れて頬を掻いた。
「[angry]ちょっと、私だって毎日心配してたんですけど!?」
ミーシャがテーブルに手をついて身を乗り出す。
「[embarrassed]いや、ミーシャには本当に感謝してるって!書類も手伝ってくれたし!」
「[sad]そういうことじゃないの!」
エレナはその騒動を横目に、エールを傾けていた。燃えるような赤いポニーテールが、かすかに揺れる。
気づけば、自分の体がレオンの方へ少し向いている。
(……なぜだ)
エレナはわざと背筋を伸ばし、元の姿勢に戻った。その動作を、リリアだけがじっと観察している。口の端が、わずかに上がった。
——
帰り道。
夜の石畳を、三人が並んで歩く。街灯の魔石ランプが、オレンジ色の柔らかい光を投げかけていた。遠くから、ルーゲン河の水音がかすかに聞こえる。
ミーシャが、そっとレオンの腕に自分の腕を絡ませた。
「[gentle]レオン、明日も書類あるからね。早起きしてよ」
「[embarrassed]お、おう……」
腕に当たる柔らかな感触に、レオンの心臓がバクバクと鳴る。
エレナが視界の端でそれを確認した。琥珀色の瞳が、ほんの一瞬だけ揺れる。
——半歩だけ、レオン側に寄った。
肩が触れるか触れないかの距離。エレナの体温が、かすかに伝わってくる。
でも、彼女は何も言わない。ただ真っ直ぐ前を見て歩くだけだ。
(右からミーシャ、左からエレナの体温が……どっちも暖かい。どっちが暖かいかって、そんなの比べられるわけないだろ!)
レオンは内心でパニックになりながら、目だけで宙に浮かぶリリアに助けを求めた。
リリアは口だけ動かす。
『自分でどうにかしなさい、クズ雑魚』
そして、楽しそうに笑った。
——
宿「渡り鳥の巣」の一室。
レオンが一人になった部屋で、窓の外にはカナルベルグの夜景が広がっていた。七つの橋に灯る魔石ランプが、河面に揺れて美しい。
「[serious]リリア、話がある」
リリアが空中に浮かび上がる。いつもの高飛車な表情だ。
「[serious]バルトスさんが言ってた。ザックに俺を嵌めるよう指示した奴がいるって。ヘクセンツィルケルって組織の使者らしい」
「ヘクセンツィルケル」という名前が出た瞬間——。
リリアの真紅の瞳が、わずかに細められた。
それは一瞬の変化だった。でもレオンでも気づける程度の、明らかな反応。
「[serious]知ってるのか?」
リリアは一拍置いてから答えた。
「[cold]知ってた。でも今のあなたに話す必要はない」
「[angry]なんでだよ!俺にも関係あることだろ!」
「[cold]話したところで、あなたには何もできない。まだ弱すぎる」
リリアの声は冷たかった。でも、その奥に何か——かすかな焦りのようなものが混じっている。
彼女は話題を切り替えるように、黒の黙示録の表紙を指で叩いた。
「[cold]それより、次のページを開くための試練を宣告する」
「[scared]えっ、また試練!?」
「[laughing]当然でしょ。Dランク昇格試験なんてぬるい話じゃ足りない」
リリアは楽しそうに笑った。その笑顔が逆に怖い。
「[cold]一週間後、グロウデンの森の奥——古代遺跡『ヴァイスの祠』まで一人で往復してきなさい。Bランク推奨の魔獣の縄張りよ」
「[surprised]Bランク!?一週間後!?それって昇格試験の準備期間と被るじゃないですか!」
「[laughing]両方こなせばいいでしょ。私のクズ雑魚でしょ?」
レオンは机に突っ伏した。
「[sad]マジかよ……」
その横で、リリアが窓の外を見つめている。夜景を見ているようでいて、その目はもっと遠くを見ていた。
「[whispers]ヘクセンツィルケルが動き出したなら……急がないとね」
小さな独り言。
その声がレオンに届いたかどうか——定かではない。
部屋に、静かな沈黙が満ちた。
——
翌朝。
レオンが目を覚ますと、ドアの下に二枚の封筒が差し込まれていた。
一枚目を開ける。ミーシャの丸文字で、こう書いてある。
『Dランク試験の申請書、預かってるからね。今日中に受付に来ること!』
二枚目を開ける。エレナの鋭い筆跡で、短いメモが一枚。
『模擬戦の相手になってやる。準備しろ』
レオンはその二枚を見比べながら、手の甲の契約印をぼんやりと撫でた。
「[gentle]……やるしかない、か」
黒の黙示録が、朝日の中でかすかに輝いている。
昨日まで追放された身だった男の周りに、今は三人の女性がいる。幼なじみで世話好きのミーシャ、クールで実力主義のエレナ、そして——謎を抱えた獣人のティナ。
そして、ドSな精霊リリアに鍛えられながら、一ヶ月後に迫ったDランク昇格試験。
さらにその先に、ヘクセンツィルケルの影が静かに広がっている。
アーク1の幕は閉じた。
でも、これは終わりじゃない。
すべての関係が変わった、新しい出発点に過ぎなかった。