借金男のハーレム革命 〜ドS魔導書に絶対服従中〜
借金男のハーレム革命 〜ドS魔導書に絶対服従中〜
レオン・クロウフォードは超がつくほどの貧乏冒険者で、借金取りから逃げ回る日々を送っていた。ある日、ギルドのゴミ捨て場から埃まみれの古びた本を拾う。それは伝説の魔導書『黒の黙示録』だった。しかし、契約の挨拶代わりに、そのドSな精霊リリアから平手打ちを食らう!
「この役立たずの虫ケラが!覚悟しなさい、私が一人前の契約者に鍛え上げてやるんだから!」
リリアの容赦ない訓練の下、レオンは涙ながらにスキルを急上昇させていく。初めての本格的な任務で幼なじみで受付嬢のミーシャを救ったことで、彼女の受動的だった恋心は、超積極的な猛アタックへと変貌。さらに事態をややこしくするのが、ギルド最強のSランク戦士エレナ・ヴァレンシュタイン。普段は氷のようにクールな彼女が、レオンが他の女の子と話すたびに、あからさまに不機嫌になるのだ。
突然女の子たちに囲まれるようになった、超がつくほど鈍感なレオンは全く気づかず、「なんで最近みんな俺に冷たいんだ!?」とパニックになるばかり。その隙を突いて、嫉妬に狂った元同僚ザックが、偽のSランク緊急クエストを渡す罠を仕掛ける
借金男のハーレム革命 〜ドS魔導書に絶対服従中〜 - 覚醒の黒炎——クズ雑魚の本気と三人の少女たち
鉄格子が、ギィィィと耳障りな音を立てて開いた。
押し出されるように、レオン・クロウフォードは闘技場の土の上に足を踏み出す。隣ではティナが、白い獣耳をピンと立てて前を見据えていた。
——熱気。
円形の闘技場を囲む四百人の観客が、篝火に照らされてざわめいている。土と汗と、かすかに血の匂いが混ざった空気が肺を満たした。
グウゥゥゥ。
「……あんた、今度は何の音?」
レオンは腹を押さえた。
「腹、減ってるのは事実だからな」
ティナが小さくため息をつく。でもその琥珀色の瞳に、ほんの少しだけ笑みが浮かんだ気がした。
——その時。
ドォン! ドォン!
対面の鉄格子の向こうから、地面を揺らす足音が響く。檻が開き、巨体が姿を現した。
グランドベアの幼体。それでも体高は三メートルに迫る。黒い毛皮に覆われた筋肉がうねり、小さな目がレオンたちを捉えた。
「グルルルル……」
レオンは黒の黙示録を胸に押し当てた。
「リリア、頼む。返事をしてくれ」
沈黙。
契約印は冷たいままだ。廃教会での戦い以来、リリアは一度も姿を見せていない。魔力は空っぽで、精霊は深い眠りについている——そんな気配だけがあった。
「……やるしかないか」
右手を前に突き出す。不安定な闇の魔力を必死に集める。指先に黒い靄が揺らめいた。
「これで——!」
放つ。
ボフッ。
闇の塊はグランドベアに届く前に霧散した。舞い上がった砂埃だけが、空しく闘技場に漂う。
観客席から笑い声が湧いた。
「なんだありゃ!」
「雑魚すぎるだろ!」
ベアが動いた。
前足が横薙ぎに振るわれる。
レオンはとっさにティナを突き飛ばした。
——直後。
「がはっ……!」
左脇腹に激痛。三メートル吹き飛ばされ、土の壁に背中から激突する。口の中に血の味が広がった。肋骨がギシリと軋む。
「レオン!」
ティナの声が遠くに聞こえる。
(クソ……リリア、まだかよ)
それでも立ち上がる。震える足で、ティナの前に立った。
「ティナは……俺が守る」
誰の命令でもない。初めて自分の意志で動いた足だった。
ティナが無言で、その背中を見上げる。
——その時。
観客席の上段で、ざわめきが起こった。
フードを外した一人の女が立ち上がる。燃えるような赤い長髪。琥珀色の鋭い目。
「そこをどけ」
エレナ・ヴァレンシュタインだった。手には分厚い書類の束。彼女はギルド追放通告の翌日から、ザックの行動を独自に追っていた。河港地区の密売ルートと、地下闘技場運営者フーゲン・マルクの帳簿のつながりを洗い出し、廃教会依頼の原本偽造書類と、運営報酬として銀貨三十枚が動いた取引記録を証拠として確保していたのだ。
エレナは通路へ踏み込もうとする。
——だが。
「お引き取り願おう」
フーゲンの命令で、屈強な警備員三人が立ちはだかった。
エレナの琥珀色の目が、冷たく細められる。
「三人まとめて来なさい。時間の無駄だから」
警備員が一斉に飛びかかった。
一瞬。
ドガッ! バキッ! グシャッ!
三秒後、三人は全員が通路に転がっていた。
観客席がシンと静まり返る。
エレナは書類を握りしめたまま、鉄格子越しにレオンの血まみれの背中を見た。
(なぜだ……あいつが傷つくのを見ると、胸が痛む)
彼女はそれを仕事の義務感だと自分に言い聞かせた。でも、証拠書類を握る手が、かすかに震えていることに気づいていない。
——その直後。
「特別な余興だ!」
フーゲンのマイク越しの声が響く。
ティナだけが別の鎖で引きずられ、奥の大きな檻——成体のグランドベアが閉じ込められている処刑用の檻の前に連れて行かれた。
観客が殺気立った歓声を上げる。
「……っ!」
レオンは唇を噛んだ。血が滲む。
胸の黒の黙示録を一秒だけ見下ろす。
「リリア、命令してくれなくていい」
走り出す。
命令ではない。契約印の強制でもない。完全に自分の意志だけで動く足だった。
「うるせえ! ティナは俺が守る!!」
叫び声が、闘技場の石の壁に反響した刹那——。
手の甲の契約印が、白熱するほどの輝きを放った。
灼熱。
黒の黙示録の表紙が独りでに開く。封じられていた漆黒のページが次々と開放され、闇の渦がレオンの全身を包み込む。
高笑いが、どこからともなく降ってきた。
「よく言ったわ、私のクズ雑魚! 上出来よ!」
銀髪を揺らしたリリアが、闇の渦の中から再臨する。真紅の瞳が楽しげに輝いていた。
漆黒のオーラが、レオンの全身を駆け巡る。灼熱と快感が混じった奇妙な感覚。体の奥底から力が溢れ出し、制御された闇の魔力が右腕に収束していく。
(これが……リリアの力)
成体のグランドベアが檻を破って現れた瞬間——。
レオンは右腕を突き出した。
「終わりだァァァ!!」
ズドォォォォン!!!
一条の黒い閃光が闘技場を貫く。巨体が轟音と共に昏倒し、土煙が舞い上がった。
闘技場が、完全な沈黙に包まれる。
レオンはベアの前に立ち、ティナの鎖を闇の魔力で焼き切った。
「大丈夫か」
「……あんた」
ティナの琥珀色の瞳が、大きく見開かれる。
——その時。
「レオン!!」
闘技場の出入口から、亜麻色のボブを揺らしたミーシャが飛び込んできた。後ろには支部長バルトスと衛兵二人。彼女はエレナがギルドに残していった伝言メモを発見し、ギルド追放当日から三日間ずっと動き回って証人を集めていたのだ。
エレナが証拠書類一式をバルトスへ手渡す。
「ザック・ハイデンハイム。依頼書偽造、ならびに冒険者責任法違反の容疑で拘束する」
ザックが観客席から逃げようとした瞬間——。
「うわっ!」
逃げ惑う観客と正面衝突し、もんどり打って階段を転げ落ちる。そのまま衛兵に取り押さえられた。
「レオン、その顔! 血まみれじゃない!」
ミーシャがレオンに走り寄り、彼の頬を両手で包み込む。緑の大きな瞳に涙が溜まっていた。
「ちょっと、痛い——」
「よかった、よかった……」
ミーシャは唇を噛んで、それだけを繰り返す。レオンは何も言えなくなった。
離れた場所で、エレナが腕を組んで視線を逸らす。
「遅かった甲斐はあったようね」
その横顔に、リリアが品定めするような目を向けた。
「あら、もう一人いたの?」
ぞっとするほど楽しそうな声。エレナが初めてリリアの存在に気づき、僅かに目を見開く。
バルトスが重々しく口を開いた。
「レオン・クロウフォード。ギルド追放は撤回する。だが——」
言葉を切る。
「賠償金貨八枚の未払いがある。それは変わらん」
その時、フーゲンの取調べをしていた衛兵の一人が、小さく呟いた。
「……ザックに最初にレオンを嵌めるよう指示したのは、ヘクセンツィルケルの構成員らしき人物からの情報提供だった」
リリアの真紅の瞳が、すっと細められる。
レオンは、まだ血の味が残る口元を拭った。
賠償金貨八枚。そして——闇の組織が、自分の覚醒に気づいている可能性。
二つの不安が、静かに心の奥底に沈んでいく。
でも、今は。
「……まずはメシだな」
ティナが呆れた顔で、それでも小さく笑った。
ミーシャが涙を拭いながら、レオンの腕にぎゅっとしがみつく。
エレナは背を向けたまま、でもその足は去らずにそこにある。
リリアが宙に浮かびながら、高飛車に宣言した。
「さあ、帰るわよクズ雑魚。明日から地獄の特訓の続きだから」
レオンは苦笑いしながら、頷いた。
篝火の灯りが、静かに揺れている。
闘技場の熱気は、まだ冷めていなかった。Noveliaとは?
Noveliaは、AIでライトノベルや二次創作を「読んで・数タップで作って・キャラクターと会話できる」プラットフォームです。挿絵つきの新作が毎日届き、無料で始められます。