不知火フレア ifルート 〜灰被りのあなたへ捧ぐ終わらない歌〜
不知火フレア ifルート 〜灰被りのあなたへ捧ぐ終わらない歌〜
私、不知火フレア。トップバーチャルエルフストリーマーとして、ファンと最高に楽しい時間を過ごしていたら、画面が真っ白になって――気がついたら、見知らぬ街にいたの。
ここはラズベリル王国。人間がエルフを差別している世界。マジで?! 私が差別される側とか、配信のネタにもならないんですけど。でも、騒動に巻き込まれて、牢屋にぶち込まれちゃった。そんな時、助けてくれたのが、超変わり者の人間の商人、ルーカス。
ルーカスはエルフだとか一切気にしない。「商才があるなら、俺の相棒になれ」って、冗談でしょ。でも、彼のトンデモ発明品がなぜか売れ始めて、一緒に過ごす日々は、予想外に笑っちゃうくらい楽しくて。しかも、彼には婚約者がいるって知った時、胸がチクリと痛んだ……って、これ、もしかして恋?! ヤバい、超ヤバい! 私の心、めちゃくちゃだよ!
でも、この世界はそんなに甘くなかった。エルフを狩る奴隷商人たちが私を狙い始めたの。ルーカスは私をかばって大怪我を負って、彼の婚約者サラが血相を変えて病院に駆けつけてきた。みんなの想いが絡まって、私は全
不知火フレア ifルート 〜灰被りのあなたへ捧ぐ終わらない歌〜 - 運命の出会いは路地裏で!エルフ差別なんて知ったこっちゃない変わり者商人、爆誕!
石畳の冷たさが、まだほっぺたに残ってる。
衛兵にひねり上げられた肩も、じんじん痛む。地面に押しつけられたひざも、擦りむいたみたいだ。
でも。
「[serious]で、話ってなんだ?」
目の前の男は、まるで今さっき散歩の途中で立ち寄ったみたいな顔をしてる。
くせっ毛のくすんだ金髪は無造作に一つ結び。垂れ目がちの茶色い瞳は、怒ってるわけでも、哀れんでるわけでもない。ただ純粋に「おもしろそうなものを見つけた」って顔だ。
首から下げた真鍮の天秤ペンダントが、ランテルナ亭のランプの灯りで揺れてる。
不知火フレアは、ぐしょぐしょの顔をあげた。
涙でにじむ視界で、ルーカスの姿をあらためて見る。背が高い。ひょろっとした長身に、動きやすそうな旅装束。でも、肩からさげた革の鞄はやけに立派な金具がついてて、それが商人だってすぐにわかる。
「[crying]な、なんで……なんでエルフの私を助けたの?」
声が震えた。
さっきまでの恐怖が、お腹の底からせり上がってくる。
あのまま強制労働所に連れて行かれてたら、今ごろどうなってたか。
考えるだけで、背中がぞくっとする。
「[serious]種族はどうでもいい」
ルーカスはあっさりと言い放った。
「[surprised]え?」
「[laughing]それより、君のさっきの話し方だ。衛兵に弁解してた時のやつだな。あれ、すごいな」
「[surprised]は……話し方?」
「[serious]初対面の相手に、一方的にまくし立てる。自分の状況を説明しながら、相手の表情を読んでる。言葉を選んで、ちょっと笑わせようとしてる。あれはただの言い訳じゃない。営業トークだ」
ルーカスは腕を組んだ。
天秤のペンダントが、またチリンと鳴る。
フレアの頭が混乱する。
(営業トーク? 弁解しようと必死だっただけなんだけど)
「[gentle]それに、なかなかの度胸だ。普通のエルフなら、衛兵に囲まれた時点でガタガタ震えて終わりだ。君は違った」
「[sad]震えてたよ、最後は……」
「[laughing]そりゃそうだ。あれは誰でも震える。でも、震えながらもまだ何か言おうとしてただろ? それがいいんだよ」
フレアは自分の手を見た。
指がまだ少し震えてる。
でも——この人は、その震えてる私を「いい」と言った。
「[serious]俺は変わり者でね。種族も身分もどうでもいい。大事なのは、儲かるかどうか。そしておもしろいかどうかだ」
「[surprised]儲かるかどうか……」
「[excited]君のその話術は、商売の匂いがプンプンする。こんな才能を強制労働所にくれてやるのは、国家レベルの損失だな」
ルーカスは真顔で言った。
冗談なのか本気なのか、まったくわからない。
フレアは思わず、吹き出した。
「[laughing]な、なにそれ……それってつまり、私を勧誘してるの?」
「[serious]そうだ。俺の保証人になる代わりに、一緒に商売をしないか」
ルーカスが右手を差し出した。
ごつごつした、商人の手だった。
傷もある。薬品でちょっと黄ばんだ指先。
いろんな場所を旅して、いろんな商品を扱ってきた手だ。
「[serious]ビジネスパートナー契約だ。対等だ。エルフだからって遠慮はしない。その代わり、俺も遠慮しない。いいな?」
フレアはその手を、じっと見つめた。
(ビジネスパートナー……)
この世界で、エルフが人間と「対等」になれるなんて、あるんだろうか。
でも、この人はそう言った。
それに——この人は、私の「トーク力」を褒めてくれた。
配信者時代に一番大事にしてたものだ。
画面の向こうのリスナーを笑わせたくて、楽しませたくて、毎日毎日しゃべり続けた。
そのスキルが、この世界でも通用するんだ。
そう思ったら、胸の奥がじんわり熱くなった。
「[laughing]……それ、営業トークって言うんだけど」
涙でぐしょぐしょの顔で、フレアは笑った。
そして——ルーカスの手を、ぎゅっと握り返した。
——*——*——
翌朝。
ランテルナ亭の一階、食堂の片隅。
「[excited]——で、これが俺の発明品コレクションだ!」
ルーカスが、ずっしりした革のバックパックを机の上にドサリと置いた。
フレアはパン粥をかきこみながら、それを見つめる。
(なんだろ……期待と不安が半々)
「[excited]まずはこれだ!」
ルーカスが取り出したのは、細長い金属の棒だった。
何本も継ぎ目があって、伸び縮みするらしい。
でも、それだけだ。
「[surprised]……なにこれ」
「[excited]伸ばせば物干し棒になる! 折り畳めばバックパックにすっぽり入る! 旅のお供に最適な携帯用クローゼットバーだ!」
「[sarcastic]それ、ただの折り畳み式の棒じゃない? クローゼットって……」
「[serious]まだあるぞ」
無視された。
次に出てきたのは、小さな陶器の瓶に入った液体。
ルーカスがコルクを抜くと、ぷしゅっ、と音がした。
フレアの耳がぴくんと動く。
(今の音……炭酸?)
「[excited]飲んでみろ。元気が出るぞ」
フレアは瓶を受け取って、ちょっとだけ口に含んだ。
途端に、舌の上でぴりぴりはじける感覚。
「[surprised]な、なにこれ!? 口の中が変なんだけど!?」
「[laughing]薬草を発酵させて炭酸風味にしたんだ。ミントも入ってるから、朝に飲めば目が覚める」
「[surprised]これ……もしかしてすごい発明じゃない?」
「[sad]いや、それがな。ぬるいし、味がクセ強すぎて今まで全然売れなくてな……」
「[sad]ああ、そっか……」
ルーカスはさらに、暗闇でボヤッと光るだけの小さな石や、自動でまくれてるのにすぐに止まる携帯カーテン、匂いがきつすぎる防虫香など、次々と珍商品を机に並べていく。
フレアはそのたびに、頭を抱えた。
「[scared]これを売れってマジっすか!? ていうか、なんでどれもこれも微妙なの!?」
「[serious]大丈夫だ。10個作って1個売れれば上出来だ。君のその口でなんとかしてくれ」
「[surprised]なんとかって……私のトーク力に全ベットするつもり!?」
「[laughing]もちろんだ。俺が保証人になるんだ。君の才能に投資する」
ルーカスは真顔で言い切った。
本気だ。
この人、本気で私の話術だけで全部売ろうとしてる。
そもそも保証人って、ふつうはもっとこう、安全な相手を選ぶものじゃないの?
(おかしいでしょ、この人)
でも——
フレアは、机の上の微妙な商品たちを見渡した。
これまでの配信でも、何度もピンチはあった。
機材トラブル、放送事故、コメント欄の荒れ——そのたびに、アドリブで乗り切ってきた。
(やってやれないことはない……はず)
「[laughing]……わかった、任せなさい!」
フレアは勢いよく立ち上がった。
「[excited]やるからには全力で売るわよ! エルフ舐めんな! 私のトーク力、思い知らせてやるんだから!」
——*——*——
中央市場、ポルタ広場。
王都クレヴィスタの中心にあるこの広場は、朝からすごい熱気だ。
色とりどりのテントがひしめき合って、果物の甘い匂い、焼きたてパンの香ばしい匂い、干し魚の生臭い匂いが入り混じってる。
商人たちの怒鳴るような客引き。手押し車の車輪が石畳をきしませる音。にわとりの羽音。
フレアはその隅っこに、小さな布を敷いた。
その上に、ルーカスの珍商品を並べていく。
「[whispers]……さて」
まわりを見回す。
すでに何人かの視線がこっちに向いてる。
正確には——私の耳に。
長くてとがった、エルフの耳。
「[whispers]エルフが商売だってよ」「[sarcastic]どうせ変な木の実でも売ってるんだろ」「[cold]保証人はいるのかしらね」
ひそひそ声が、わざと聞こえるように飛んでくる。
(ま、想定内っしょ)
フレアはにっこり笑った。
こんなの、配信の荒らしコメントに比べたら、かわいいものだ。
「[excited]はいはーい! そこのお姉さん! ちょっと見てってくださいよー!」
フレアは、折り畳み金属棒をひょいと手に取った。
大声に、通りすがりの女性がびくっと立ち止まる。
「[excited]これ、何だと思います? 魔法の杖? 武器? 違うんですよー! なんと——伸ばして服を掛ければ、どこでもクローゼット! 旅のおともに最適な『携帯クローゼットバー』!」
フレアは棒をシャキンと伸ばした。
そして、自分の上着をひょいと引っかける。
「[excited]ほら! これで宿屋の部屋が一瞬でおしゃれ空間に! 畳めばこんなにコンパクト! バックパックのすみっこに入っちゃいます!」
「[surprised]へえ……」
「[excited]今ならお買い上げの方に、この発明家お手製の薬草炭酸水を試飲サービス! 飲んでみてください! 朝から目がバッチリ覚めますよ! 新感覚の刺激的飲料『モーニングフィズ』!」
女性はおそるおそる陶器の小瓶を受け取って、一口飲んだ。
途端に、目をぱちぱちさせる。
「[surprised]な、なにこれ。口の中が変な感じ……」
「[laughing]でしょでしょ! そのぴりぴりがクセになる! 朝のだるさを吹き飛ばす『飲む目覚まし時計』です! いかがですか、お一本どうですか!」
フレアの声に、いつの間にか野次馬が集まってきている。
最初は好奇と蔑みの目で見ていた人たちが、今は目を輝かせてフレアの手元を見てる。
野次馬の一人が、炭酸水を試飲して「口がシュワシュワする!」と叫んだ。
「[excited]そのシュワシュワがいいんです! 今日からあなたも、シュワシュワの虜です!」
どっと笑いが起きた。
フレアは調子に乗って、防虫香を取り出した。
「[excited]そしてこちら! 夜、虫の音で眠れないあなたに——『おやすみアロマ香』! ちょっと匂いがきついけど、それは効き目の証拠! これ一つでテントの中が森のリゾート!」
「[laughing]なんだそりゃ!」
「[excited]試してみます? ちょっとだけですよ、匂いが強いから! ほら、店の前が一瞬でハーブ園!」
フレアが香炉に火をつけると、むわっとした匂いが広がった。
「[laughing]くせえ!」
「[excited]くさい、じゃない! 森のリゾート! ほら、目を閉じて——アルプスの草原を想像して! ……ほら、虫よけになるでしょ!」
「[laughing]想像させるんかい!」
また笑いが起きた。
でも、笑いながらも、一人、また一人と商品を手に取っていく。
ルーカスが、開いた口が塞がらないまま、後ろで突っ立ってる。
「[surprised]……あいつ、本当に売りやがった」
——*——*——
夕暮れ。
市場が店じまいを始める頃、フレアの前の商品はきれいになくなってた。
売り上げの銅貨が、小さな布袋にいっぱいだ。
「[excited]ルーカス! 見た!? 全部売れたよ! あの変な光る石まで売れた!」
「[serious]……今日の売り上げは普段の三日分だ」
「[excited]やったー! 私のトーク力、異世界でも通用したー!」
フレアはその場でくるっと一回転した。
長いプラチナブロンドがふわりと舞う。右側の紫のインナーカラーが、夕日にきらめいた。
その時、ルーカスが真顔で言った。
「[serious]……サラに挨拶に行こう」
「[surprised]サラ?」
「[gentle]俺の婚約者だ。薬草店をやってる。君を紹介したい」
——*——*——
薬草店「ティルハーブ」は、市場から少し離れた静かな通りにあった。
扉を開けると、むわっとした薬草の香り。
乾燥したハーブの束が天井から吊り下げられ、壁際の棚には陶器の瓶がずらりと並んでる。
「[gentle]あらあら、ルーカス。また変なもの作って……」
カウンターの奥から、蜂蜜色のゆるふわウェーブが現れた。
小柄で、深い森みたいな緑色の瞳。左耳の上に小さな三つ編み。
左手の薬指には、銀の薬草ペンダントの指輪が光ってる。
サラ・ティルハーブは、見ているだけで安心するような笑顔を浮かべてた。
「[gentle]あなたがフレアね。ルーカスから聞いてるわ。エルフを助けたって」
「[surprised]話が早い……」
「[laughing]ルーカスはね、おもしろいことがあるとすぐに報告したがるのよ。今朝なんて、朝食のパンをかじりながらずっとフレアの話ばかり。『すごい才能を見つけた』って」
「[surprised]そうなんですか!?」
フレアはルーカスを見た。
ルーカスは気まずそうに、後ろ頭をかいてる。くせっ毛の束が、ぼさっと広がった。
「[sad]……サラ、あんまり言うな」
「[laughing]あら、照れなくてもいいじゃない」
サラはそう言って、フレアに向き直った。
「[gentle]フレア、これから大変だと思うけど——だいじょうぶ、私がついてるからね。この街で困ったことがあったら、いつでもここに来て」
サラはフレアの手を両手で包み込んだ。
あったかい手だった。
薬草でちょっと荒れてるけど、すごく優しい手。
(この人も、エルフを嫌ってない)
フレアは胸がじんわりするのを感じた。
この世界に来て、ずっとビクビクしてた。
でも——ルーカスとサラは、私を一人の人間として見てくれる。
エルフとか、人間とか、そういうの抜きで。
「[gentle]……ありがとう、サラさん」
「[gentle]サラでいいわ。フレアはもう家族みたいなものだもの」
「[surprised]か、家族!?」
「[laughing]ルーカスのビジネスパートナーは、つまり私のビジネスパートナーだもの。家族も同然よ」
「[sad]……サラ、ちょっと拡大解釈すぎないか」
「[laughing]あら、ルーカスこそ、フレアのことを『最高の発明品かもしれない』って言ってたじゃない」
「[angry]サラ!」
「[laughing]あはは、ルーカスが怒った!」
三人で笑った。
薬草の香りが、笑い声ごと包み込んでくれるみたいだった。
——*——*——
サラの店を出たのは、日がとっぷり暮れた後だった。
路地裏を二人で歩く。
石畳を踏む足音が、こつこつと響く。遠くで夜の市場をたたむ音がしてる。
どこかの家から、シチューの匂いが流れてきた。
「[serious]フレア」
急にルーカスが立ち止まった。
「[surprised]ん?」
「[serious]今日の売り上げ、言った通り普段の三日分だった」
「[laughing]うん! すごかったね、私のトーク力!」
「[gentle]……君は、俺の最高の発明品かもしれない」
ぶっきらぼうな言い方だった。
でも、まっすぐこっちを見てる。
垂れ目がちの茶色い瞳が、ランプの明かりを受けてきらりと光ってる。
(発明品って……微妙な言い方だけど)
でも、それが素直に言えないこの人の精一杯の褒め言葉だって、わかった。
フレアは胸の真ん中がじわりと温かくなるのを感じた。
「[laughing]発明品って言われても微妙ですけどね!」
「[serious]……これからも、よろしく頼む」
ルーカスが右手を差し出した。
ごつごつした、商人の手。
昨日の夜、初めて握り返した手だ。
フレアは笑顔で、その手をぎゅっと握り返した。
「[excited]こちらこそ! よろしく、相棒!」
二人は固い握手を交わした。
ランテルナ亭のあかりが、路地の向こうに見えてくる。
——その、ずっと奥。
宿の窓からもれたあかりが、石畳に細長く伸びている。
その光の端っこに、黒い影が立ってる。
ローブを着て、フードを深くかぶった小柄な男。
男は、ルーカスの方を見ていた。
正確には——その隣の、尖った耳の少女を。
「[whispers]異世界から来た、本物のエルフ……ね」
情報屋は、冷たい笑みを浮かべて、路地の闇に溶けるように消えていった。
ヴァナグル商会——希少鉱石の仲介商を表向きに、裏ではエルフを商品として売り買いする闇組織。
その下っ端情報屋の耳には、もうフレアの噂が届いていた。
「おもしろいエルフが市場に現れた」——その一言だけで十分だった。
ランテルナ亭の窓のあかりは、いつも通りあたたかそうに揺れてる。
でも今夜は——そのあかりにすら、何か不気味な予感が、ぴったりと張りついていた。Noveliaとは?
Noveliaは、AIでライトノベルや二次創作を「読んで・数タップで作って・キャラクターと会話できる」プラットフォームです。挿絵つきの新作が毎日届き、無料で始められます。