不知火フレア ifルート 〜灰被りのあなたへ捧ぐ終わらない歌〜
不知火フレア ifルート 〜灰被りのあなたへ捧ぐ終わらない歌〜
私、不知火フレア。トップバーチャルエルフストリーマーとして、ファンと最高に楽しい時間を過ごしていたら、画面が真っ白になって――気がついたら、見知らぬ街にいたの。
ここはラズベリル王国。人間がエルフを差別している世界。マジで?! 私が差別される側とか、配信のネタにもならないんですけど。でも、騒動に巻き込まれて、牢屋にぶち込まれちゃった。そんな時、助けてくれたのが、超変わり者の人間の商人、ルーカス。
ルーカスはエルフだとか一切気にしない。「商才があるなら、俺の相棒になれ」って、冗談でしょ。でも、彼のトンデモ発明品がなぜか売れ始めて、一緒に過ごす日々は、予想外に笑っちゃうくらい楽しくて。しかも、彼には婚約者がいるって知った時、胸がチクリと痛んだ……って、これ、もしかして恋?! ヤバい、超ヤバい! 私の心、めちゃくちゃだよ!
でも、この世界はそんなに甘くなかった。エルフを狩る奴隷商人たちが私を狙い始めたの。ルーカスは私をかばって大怪我を負って、彼の婚約者サラが血相を変えて病院に駆けつけてきた。みんなの想いが絡まって、私は全
不知火フレア ifルート 〜灰被りのあなたへ捧ぐ終わらない歌〜 - 泣いてる場合じゃない——三人で作る、逆転の作戦会議
救護院の廊下に朝日が差し込んでいた。
石造りの壁に寄りかかって、不知火フレアは膝を抱えたまま、動けなくなっていた。指の間にこびりついたルーカスの血はもう乾いて、黒く固まっている。
(私が消えればよかった)
頭の中で、その言葉がぐるぐる回ってる。
私がいなければ、ルーカスは襲われなかった。頭を殴られて、一晩中意識が戻らなくて、今もまだ危険な状態だ。サラだって、泣きそうな顔で一晩中祈ってた。バルドだって、あんなに心配して。
全部、私のせいだ。
異世界から来た、珍しいエルフだから。
「[whispers]……私さえ、いなければ」
声に出したら、涙がまた溢れてきた。鼻の奥がツンとして、喉がぎゅっと詰まる。
ポタポタと、膝に落ちる涙が染みを作っていく。
——その時、かすかに扉の開く音がした。
個室からサラ・ティルハーブが出てきたのだ。蜂蜜色のゆるふわウェーブは寝不足で乱れて、深い森みたいな緑色の瞳は赤く充血している。それでも、その目はまっすぐにフレアを見つめていた。
サラは何も言わず、フレアの前にしゃがみ込んだ。
「[gentle]……フレア」
両肩を、そっと掴まれる。
サラの手は冷たかった。ずっとルーカスの手を握っていたからだ。でも、その冷たさが逆に、フレアのぐちゃぐちゃになった思考を少しだけ止めてくれた。
「[gentle]あなたはもう、私たちの家族なのよ」
フレアは顔を上げた。
「[surprised]……家族?」
「[gentle]そう。だから——逃げることは許さない」
サラの声は穏やかだった。でも、その言葉には、鋼みたいな強さがあった。
「[gentle]消えるなんて、絶対に許さない。ルーカスだって、私だって——あなたがいなくなったら、きっと壊れちゃうわ」
「[crying]……でも、私がいたから、ルーカスは」
言い終わる前に——サラがフレアを抱きしめた。
ぎゅっと。
腕に力がこもって、フレアの体全体が包み込まれる。サラの蜂蜜色の髪が、フレアの頬に触れた。いい匂いがした。薬草と、少しだけ甘い花の香り。
「[gentle]違うわ。あなたのせいじゃない。あのチンピラたちが悪いの。イルゼ・ヴァナグルが悪いの」
「[crying]……でも、でもぉ……」
「[gentle]だいじょうぶ。私がついてるから」
その言葉で——何かが、弾けた。
ずっと堪えてたものが、全部、溢れ出した。
「[crying]うわああああん!!」
フレアは大声で泣いた。子供みたいに、わんわん泣いた。鼻水が垂れて、涙で前が見えなくて、それでも泣き続けた。
サラは黙って、フレアの背中をトントンと叩いてくれた。
「[crying]ごめんなさい、ごめんなさい……私、私……」
「[gentle]うん、うん。よく泣いたわね」
サラの腕が、温かかった。
その温かさが——消えればいいっていう考えを、物理的に押しつぶしていく。
(消えなくていいんだ)
(ここにいて、いいんだ)
生まれて初めて、他人に頼ることを許された気がした。
——その時。
コンコン、と靴音が響いた。
「[angry]ちょっと!また騒いでるんですか!」
顔を上げると、救護院の看護師が仁王立ちしている。五十代くらいの、厳しそうな女の人だ。二度目の注意だ。さっきも、声がうるさいって怒られたばかりなのに。
「[surprised]……ひっく」
フレアはしゃっくりを止められないまま、看護師を見上げた。
「[angry]患者さんが休んでるんですよ。泣くなら外で泣いてください!」
「[crying]すみません……ひっく……」
「[gentle]すみません、もう静かにしますので」
サラが代わりに謝った。でもフレアは、ぐちゃぐちゃの顔のまま首を振る。
「[crying]ち、違うの!私が謝ります!……す、すみませんでした……ひっく……ぅ……」
涙と鼻水としゃっくりで、声がめちゃくちゃだ。
看護師は呆れた顔でため息をつき、去っていった。
サラが小さく吹き出す。
「[laughing]……ふふ」
「[surprised]な、なにがおかしいんですかサラさん!ひっく……」
「[laughing]だって、フレアが『私が謝ります!ひっく』って……かわいすぎるんだもの」
「[sad]……ひどい。笑わないでくださいよぉ……」
でも、サラが笑ってくれたことで、胸の中の重たい石が少しだけ軽くなった気がした。
涙はまだ止まらないけど、さっきまでの「消えたい」という気持ちは——消えていた。
——
昼過ぎ。
救護院の個室に、かすかな変化が起きた。
ルーカスの指が、ピクリと動いたのだ。
「[surprised]……今、動いた?」
フレアは入口の壁に手をついて、立ち上がれずにいた。サラがルーカスの枕元に駆け寄り、その手を握る。
「[gentle]ルーカス……私よ、サラよ」
ルーカスのまぶたが、ゆっくりと開いた。
たれ目の優しい茶色の瞳が、ぼんやりと天井を見つめ、それから——サラを見つけて、ほんの少しだけ細められた。
「[whispers]……サラ……」
かすれた声。でも、たしかにサラの名前を呼んだ。
「[crying]よかった……よかったぁ……」
サラの目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
ルーカスはゆっくりと首を動かして、入口の方を見た。フレアを見つけて、その茶色の瞳が——ふっと、笑った気がした。
「[whispers]……フレア……お前、無事で……」
「[crying]無事じゃないですよ!全然無事じゃなかったんですよ!!」
口から出たのは、怒ってるんだか泣いてるんだかわからない声だった。
「[surprised]……そうか」
ルーカスは苦笑いした。頭に包帯を巻いたまま、それでもその笑顔はいつもの飄々とした雰囲気をほんの少しだけ取り戻している。
「[serious]じゃあ——逃げ道は、三人で作るぞ」
フレアの胸が、ぎゅっと熱くなった。
さっきまで「消えたい」ばかり考えてた自分が、急に恥ずかしくなる。
——逃げ道は、三人で。
一人じゃない。
「[crying]……うん」
フレアは唇を噛んで、涙をこらえた。でも、今度の涙は絶望じゃない。
——覚悟だ。
小さく、でもはっきりと、うなずいた。
サラがルーカスの手を握ったまま、フレアを見る。ルーカスが、サラに向ける安堵の表情。そして、フレアに向ける信頼の眼差し。
同じ部屋の中に、二つの大切な感情が一緒にあった。
(この両方とも、大切にしたい)
フレアは胸の中の複雑な気持ちをぎゅっと押し込めて——笑顔を作った。
「[excited]……よーし!泣いてる場合じゃないのよ!時間がもったいない!」
声が裏返ったけど、気にしない。
——
夕方。
医師が「まだ絶対安静です」と念を押したにもかかわらず、ルーカスは病院を抜け出そうとしていた。
「[serious]設計図がランテルナ亭にある。動けないと、作業ができん」
包帯を巻いた頭で、淡々と言う。
「[angry]ちょっと待ってルーカス!まだ動いちゃダメよ!」
「[angry]規則があるんですよ患者さん!戻ってください!」
「[surprised]ルーカスさんそれはさすがにまずいですって!」
三人がかりで押し戻そうとするが——ルーカスはまったく止まらない。
「[serious]今夜の作業に支障が出る。俺が動くのが一番効率的だろ」
「[surprised]支障ってあんた……自分の命に支障が出てるのよ!?」
結局、ルーカスの押し切りで、全員で宿に移動することになった。サラがルーカスの肩を支え、フレアが荷物を持ち、医師が後ろでブツブツ言いながら見送る。
——
ランテルナ亭に戻ると、宿の主人バルドがカウンターから飛び出してきた。
「[crying]生きてたか若旦那ぁ……!」
白髪交じりの無精髭の顔をくしゃくしゃにして、バルドはルーカスを見るなり泣きそうになっている。
「[sarcastic]バルドさん。そこは若旦那じゃなくてルーカスさんでは……?」
フレアが突っ込むと、バルドは気にせずルーカスの肩をポンと叩いた。
「[laughing]なに言ってやがる。若え商人はみんな若旦那だ!さあさあ、芋のスープ作ってやるから座んな!」
食堂のテーブルに、温かいスープが運ばれてくる。芋と、少しの肉と、薬草が入ったシンプルなスープだ。
フレアはスプーンを手に取った。
温かいものが、胃の中に落ちていく。
(ああ、生きてるって感じがする)
さっきまで廊下で泣いてた自分が、遠い昔のことみたいだった。
「[serious]……あのさ」
フレアはスプーンを置いて、二人を見た。
「[serious]イルゼって、なんでわざわざ自分で来たんですかね」
サラの手が止まった。ルーカスが顔を上げる。
「[serious]ヴァナグル商会の頭目ですよ?百八十人の部下がいる大ボスが——部下でも、使いでもなく、自分で病院まで来た。自分で脅した」
少しの沈黙。
「[serious]……確かに、合理的な判断じゃないな」
ルーカスが目を細める。
「[serious]脅しって、一番怖いのは顔を見せないことじゃないですか。誰が、どこで見てるかわからない——そういう恐怖が一番効くのに、わざわざ直接来るなんて」
「[serious]それって、感情が動いてるってこと?」
サラが首を傾げた。
「[serious]そう。商売の執着じゃないと思う。珍しい商品なら、部下に回収させれば十分じゃないですか。わざわざ自分で来るのは——もっと別の、個人的な執着がある気がするんですよね」
フレアの言葉に、ルーカスがうなずいた。
「[serious]その読みが正しければ——イルゼは感情で動いている部分がある。感情は隙になる」
ルーカスの声は低くて、静かだった。
でも——部屋の空気が、変わった。
さっきまでの絶望が、ぱっと光で照らされたみたいに。
(逆転できるかもしれない)
フレアは拳を握りしめた。
答えはまだわからない。イルゼがなぜここまで執着するのか——その理由は闇の中だ。
でも。
感情で動く相手なら、突ける隙がある。
——
ランテルナ亭のテーブルに、羊皮紙と薬草の瓶が広げられた。
ルーカスが設計図を広げ、炭で走り書きを始める。頭に包帯を巻いたまま、それでも手は迷わなかった。
「[serious]まず役割を決めるぞ。フレア——お前が囮だ」
「[serious]うん」
「[serious]指定場所に単身で乗り込んで、イルゼと時間を稼げ。サラ——お前は麻痺薬を調合してくれ。護衛を無力化するためのな。二日以内だ」
「[serious]……わかった。任せて」
サラは薬草の瓶を手に取った。その目はもう迷っていない。
「[serious]俺は——これを作る」
ルーカスは設計図の一点を指差した。
「[excited]発光と発煙を同時に起こす玉だ。投げれば周囲十メートルが一瞬で真っ白になる。これを『ビックリ玉』と名付けよう」
「[surprised]……ビックリ玉?」
フレアは首をかしげた。
名前のセンスが相変わらず謎だ。
「[serious]それと——衛兵への密告も準備する。イルゼがフレアを迎えに来たタイミングで、違法なエルフ売買の現行犯として踏み込ませる。これで一網打尽にできる」
「[surprised]ちょっと待って」
フレアは設計図を手に取った。
「[serious]……このビックリ玉、本当に爆発しないですよね?ただ光って煙が出るだけですよね?」
「[serious]七割くらいは大丈夫だ」
「[surprised]七割!?」
フレアが絶叫する。
「[surprised]ルーカス!もう少し確率を上げて!」
サラも声を上げた。
「[serious]大丈夫だ。俺の発明は十個に一個は当たる。今回は当たりを作る」
「[surprised]十個に一個!?それ自爆する確率三割じゃなくて、成功する確率一割ってこと!?」
「[serious]そこはほら、気合いでなんとか」
「[sarcastic]気合いで爆発が止まるなら私も苦労してないんですけど!!」
フレアのツッコミに、サラが吹き出す。
「[laughing]……ふふ。ほんと、あなたたちっていつもこうなんだから」
サラの笑顔につられて、フレアも笑った。
ルーカスも包帯の下で、小さく笑っている。
——その時。
ふと、フレアの視線がルーカスの横顔に吸い寄せられた。
(この人が、いてくれてよかった)
頭に包帯を巻いて、それでも設計図を広げて笑っている。
前は自分を守ってくれた。
(今度は——私が守る番だ)
胸の奥に、静かな感情が灯る。
ルーカスへの恋心。
でも、それだけじゃない。
——覚悟。
「[serious]……タイムリミットは、明日から数えて二日」
フレアは改めて、設計図を見つめた。
ビックリ玉。麻痺薬。衛兵への密告。そして——囮としてイルゼの前に立つ、自分の役割。
「[excited]いける。なんとかなるっしょ!」
声が、自分でも驚くほど明るく出た。
サラがうなずく。ルーカスが設計図をさらに書き足す。
三人の影が、ランテルナ亭の壁に揺れていた。
夜は更けていく。
でも、もう怖くない。
不知火フレアは小さく息をついて、窓の外を見た。星がひとつ、静かに瞬いている。
——絶望の夜は、終わった。
明日からは、反撃の二日間が始まる。Noveliaとは?
Noveliaは、AIでライトノベルや二次創作を「読んで・数タップで作って・キャラクターと会話できる」プラットフォームです。挿絵つきの新作が毎日届き、無料で始められます。