呪いで逆転?! アンジュとカトリーナのドタバタ☆入れ替わり学園
呪いで逆転?! アンジュとカトリーナのドタバタ☆入れ替わり学園
ある朝、目を覚ましたアンジュは、自分の声がやけに低くなっていることに気づく。鏡を覗き込むと、そこには親友カトリーナの顔が! 隣の部屋から悲鳴が響く。慌てて駆けつけると、アンジュの体になったカトリーナが、顔を真っ赤にしてパジャマと格闘していた。
異変は二人だけではなかった。謎の呪いが学園を襲い、ほぼ全員が異性の体に入れ替わってしまったのだ。頼れる委員長のリゼは、小柄で可愛らしい男の子の姿に。普段は無口なエルは、少女の体で無言のまま目を見開いてパニックに。学園は笑いと混乱の坩堝と化す。
原因を探るうち、アンジュとカトリーナは気づく。「これって、私たちのせい?」 前日、二人は古い鏡の前で冗談めかして「君みたいになれたら」と願いを口にしていた。それが学園中を巻き込む魔法の呪文を発動させてしまったらしい。
呪いが解けるまで、皆は入れ替わった体で生活しなければならない。カトリーナとして過ごすアンジュ、アンジュとして過ごすカトリーナ。慣れない体での体育の授業、ドキドキの着替え、そして密かな想い人との突然の接近遭遇。かくして、笑い
呪いで逆転?! アンジュとカトリーナのドタバタ☆入れ替わり学園 - 目が覚めたら親友の体!? 学園中が大パニック!
「きゃああああっ!」
自分の声なのに、自分じゃないみたいだった。なんていうか、すごく低くて落ち着いてて、それでいて今にも泣き出しそうな悲鳴。アンジュは飛び起きて、頭を振った。心臓がバクバク鳴ってる。
「なに、今の……声?」
ゴシゴシと目をこする。女子寮の朝はいつも戦争だ。特にアンジュは朝に弱い。二度寝は当たり前、スヌーズを三回叩いて、それからやっとベッドから出る。でも今日は、声を出した瞬間、全身に鳥肌が立った。
おかしい。
すごく、おかしい。
部屋の中は薄暗くて、窓から差し込む朝日がカーテンをオレンジ色に染めてる。見慣れた二段ベッド、壁に貼った写真、床に落ちた読みかけのマンガ。いつもの205号室だ。なのに、なにかが決定的に違う。
アンジュはベッドから降りた。
あれ?
床が近いような、遠いような。
変な感じ。自分の体なのに、足の長さが変わったみたい。一歩踏み出すたびに、重心がいつもより上にある気がする。
鏡台の前に立って、自分の顔を見た。
「……え?」
鏡に映ってるのは──カトリーナだった。
腰まで届く銀色の長い髪が、寝ぐせで少し跳ねてる。深い紫色の大きな瞳が、パチパチと瞬きしてる。きれいな鼻筋に、かたちのいい唇。朝の光を浴びて、髪がほんの少しだけ星みたいに輝いた。
「カト……?」
思わず声に出して、またビクッとする。この落ち着いた声、間違いなくカトリーナの声だ。アンジュは自分の頬をつまんだ。
いたい。
夢じゃない。
それから両手で、ゆっくりと自分の胸を触った。
「うわああああっ!?」
柔らかい。
超柔らかい。アンジュのいつもの胸より、ずっと大きい。あわてて手を離すけど、今度は腰のあたりが気になって、そこも軽く触る。
「うぇっ……!?」
カトリーナの体だ。この尻のライン、くびれ、全部カトリーナのものだ。
頭の中が真っ白になった。
そのとき、隣のベッドで小さな音がした。
「……あれ?」
自分の声が聞こえた気がして、アンジュは振り返る。隣のベッドの上で、アンジュの体がゆっくりと起き上がった。
茶色い髪、右側の三つ編みが寝ぐれでグチャグチャ。大きな丸い茶色の瞳が、今は不安そうに揺れてる。小柄で華奢な体。そして、いつも朝が弱くてなかなか起きられない、その様子。
「アンジュ……?」
その口が、そう言った。
でも、口調が違う。もっとゆっくりで、ていねいで、すごく不安そう。
「……カト?」
アンジュの口から、カトリーナの声が出ていく。
二人はじっと見つめあった。
「「きゃあああああっ!」」
女子寮205号室に、朝っぱらから二人分の悲鳴が響いた。
窓の外で、小鳥が驚いて飛び立っていく。
***
廊下は大混乱だった。
「誰か、わたしのブラが閉まらないんだけど!」
「うぅ……なんで俺、スカート履いてるんだよぉ……」
走り回る生徒たちの顔が、みんな別人になってる。いつもクールな委員長のリゼ先輩が、なぜか小さな男子の体で真っ赤になってるし、普段は無口なエル先輩が、スタイル抜群の女子の体で無表情のままプルプル震えてる。
あちこちから悲鳴と泣き声と笑い声が混ざって、もうなにがなんだかわからない。
「これ、めちゃくちゃおもしろくない!?」
アンジュが廊下で声をあげた。でも声がカトリーナだから、すごく落ち着いて聞こえる。それに気づいて、自分で吹き出した。
「おもしろくないわ……」
隣で、アンジュの体に入ったカトリーナが青ざめてる。自分の小さな手を見つめて、指を一本一本折り曲げたり伸ばしたり。
「なんでこんなに指が短いの……?」
「それ、私の手だよ!」
「わかってるわ」
カトリーナがうつむいて、ギュッと拳を握った。その仕草がすごく可愛くて、でもそれが自分の体なんだと思うと、アンジュは胸のあたりがムズムズした。
男子寮の方から、絶叫が飛んでくる。
「誰か女子の制服の着方を教えてくれー!」
「あははっ、男子寮もすごいことになってる!」
大笑いしながら中庭に目をやると、女子寮と男子寮の生徒たちが入り乱れて、お互いの姿を指さしながら叫び合ってる。誰かが噴水に落ちて、水しぶきがキラキラと朝日に光った。
アンジュはお腹を抱えて笑った。
「ちょっと、すごくない? 学園中が入れ替わってるよ?」
「……笑い事じゃないわよ、アンジュ」
カトリーナの声が震えた。自分の声なのに、それをこんなに弱々しく使われると、なんか胸がチクッとする。
「これ……魔法よね、きっと」
魔法。
その言葉に、アンジュの笑顔が一瞬で消えた。
この世界には、昔は魔法があった。今はもうなくなったって言われてるけど、古い建物や道具にはまだちょっとだけ残ってるって聞いたことがある。確か、それをなんて言うんだっけ──残留魔力、とか。
アンジュの頭の中で、なにかがチカッと光った。
なにかを思い出しそうな、モヤモヤした感覚。
学園全体に校内放送が流れたのは、そのときだった。
『全生徒の皆さん、落ち着いてください。一旦、各教室に集合してください。繰り返します、全生徒──』
でもアンジュの耳には、その声は遠くに聞こえた。
昨日。
掃除当番。
旧校舎。
「……あっ」
アンジュは目を大きく見開いた。
***
放課後。掃除当番で旧校舎の倉庫整理を任されたあの日。
「カト! 見てこれ、めっちゃ古い!」
アンジュが棚の奥を覗くと、大きな鏡が立てかけてあった。全身が映るくらいのサイズで、枠は黒くて、銀色の蔦の模様が絡まってる。
「きれい……」
二人は鏡の前に立って、しばらく見とれた。なんていうか、この鏡だけ空気が違った。しんと静まり返った地下室で、鏡の周りだけほんの少し肌がピリピリするような、そんな感じ。
アンジュは鏡の中の自分を見た。茶色の髪を三つ編みにして、動きやすいようにまとめてる自分。小柄で華奢で、でもカトリーナと並ぶと、すごく小さく見える。
「アンジュはいつも明るくて自由で、私にはないものを持ってるわ」
隣で、カトリーナがそう言った。銀色の長い髪が、地下の薄暗い光の中で揺らいでる。深い紫色の瞳が、やさしくアンジュを見てた。
「私なんて、いつもおどおどしてて人前で話すの苦手なのに……アンジュみたいに、誰とでもすぐ仲良くなれる人が羨ましい」
「えー? カトこそ、スタイルも顔も完璧で、私の欲しいもの全部持ってるじゃん!」
アンジュが笑って言い返すと、カトリーナが恥ずかしそうにうつむいた。
その瞬間だった。
鏡が、ほんの一瞬だけ淡い光を放った。
でも二人とも気づかなかった。気づいたのは、もしかしたら──
いま、このとき。
「あの鏡のせいだ!」
アンジュはカトリーナの腕をギュッと掴んだ。
「「あの鏡のせいかもしれない!」」
なぜか二人の声が重なった。
目が合う。
カトリーナの大きな紫色の瞳が、アンジュの小さな茶色い目を見て、それからうなずいた。
「旧校舎に行こう!」
アンジュがそう言う前に、二人はすでに走り出していた。
***
旧校舎への道は、中庭を突っ切るのが一番早い。アンジュはカトリーナの長い脚で、思いっきり地面を蹴った。
「わっ……カトの体って、足が長いから一歩でこんなに進むんだ!」
「ちょ、ちょっとアンジュ! 私の体なのに、転ばないでよ!」
後ろから走ってくるカトリーナの声が、自分の声なのに怒っててちょっとおかしい。振り返ると、アンジュの小さな体で、カトリーナが必死に追いかけてくる。
短くなった脚で、スカートを押さえながら走るその姿は、なんだかすごくぎこちなかった。
「私の足、そんなに短いんだ!」
「笑い事じゃないって言ってるでしょ!」
そう言って、カトリーナが転びそうになる。あわてて抱きとめた。
「大丈夫だよ、カト。私がなんとかするから」
肩を抱きしめてそう言ったけど、自分の声がカトリーナのやさしいトーンだから、なんだかくすぐったい。体はカトリーナの長身で、腕の中にいるのは自分の小柄な体。
なんだこれ。
めちゃくちゃだけど、
「……あれ?」
急に胸のあたりがドキドキしてきた。
自分の体なのに、カトリーナが入ってる。そのせいで、アンジュの体がいつもよりすごく可愛く見える。
(いやいやいや、それ私の体だし!)
アンジュは頭をブンブン振った。
「たぶん、あの地下室よ」
腕の中から、カトリーナの小さな声がした。顔を上げると、アンジュの茶色い瞳が真剣に見つめてくる。
「行くよ!」
二人はもう一度手を握りしめて、旧校舎の陰に隠された地下の階段を降りていった。
地下室の空気はひんやりと冷たくて、かび臭いにおいが鼻を刺す。昨日と同じように、棚の裏に隠された階段はそのまま残ってて、でもなんだか昨日よりも長く感じた。
「あった……」
封印室の扉を開けると、そこにあの鏡が立ってた。
縦1.8メートル、横0.9メートル。黒檀の枠に、銀の蔦が絡まってる。昨日と同じように、しんと静まり返ってるけど──アンジュは気づいた。
「……蔦の模様が、増えてる」
銀の線が、昨日よりもずっと複雑に絡み合ってる。
「これ……見て」
カトリーナが鏡の足元から、古い紙片を拾い上げた。黄ばんで端が破れてる。震える指で広げて、そこに書かれた文字を読み上げた。
「互いに羨む心が写し鏡に映るとき、七日間の試練が始まる。鏡は真実を映す──」
続きは破れて読めない。
七日間。
「七日……」
「一週間じゃん!」
カトリーナが涙目になってるのを見て、アンジュはあわてて笑顔を作った。でも、心の奥でちょっとだけ不安が湧き上がる。
(七日間、カトの体のままか……)
それでふと気づいた。
テオのこと、どうしよう。
隣のクラスのテオ・グランツ。サッカー部のエースで、笑顔がすごく爽やかで、いつもあいさつすると気さくに手を振ってくれる。アンジュがこっそり片思いしてる相手。
いまはカトリーナの体だから、テオにどう接していいかわからない。
(カトの体でテオに話しかけるの、なんかやだな……なんか、やだな)
自分の気持ちなのに、ぐちゃぐちゃでよくわかんなくなった。
そのとき、生徒会室から放送が入った。
『入れ替わりの原因と思われる物品について、心当たりのある者は至急、生徒会室まで連絡されたし』
「……七日間だけなら、私たちでなんとか乗り切ろう」
アンジュはもう一度、カトリーナの肩を抱いた。カトリーナの落ち着いた声で、自分の気持ちを伝える。不思議な感じだけど、なんだか言いたいことがまっすぐ言える気がした。
「大丈夫よ、アンジュ」
カトリーナも、アンジュの声で答える。小さい手が、アンジュの大きな手をギュッと握り返してきた。
鏡の前で、二人はしばらく立っていた。
地下の冷たい空気の中、銀の蔦は静かに光って、まるで全てを見ているみたいだった。
窓の外から、まだ混乱の声が聞こえる。誰かが笑って、誰かが泣いてる。
でもこの地下室だけは、時間が止まったみたいに静かだった。Noveliaとは?
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