ドラゴンボール学園ラブコメ! オラ、恋愛わかんねぇ!
カプセル中学校へようこそ――日本のごく普通の学校。だけど、このクラスは何ひとつ普通じゃない。
転校生のカカロットは、野生の黒髪にいつもニコニコ笑顔、そして唯一の情熱は「昼食のおかわりをできるだけ多くもらうこと」。彼はのんびり屋で心優しく、食べ物と友情以外のことにはまったく無頓着。ところが、なぜか周りの女の子たちが次々と彼に恋心を抱き始めているのだ。
まずは幼なじみのチチ。賢く真面目で、いつか医者になることを夢見ている彼女は、ずっとカカロットのことが好き。毎朝告白の練習を欠かさないけれど、告白しようとすると必ずカカロットに「ねぇチチ、ハンバーグちょうだい?」と邪魔されてしまう。彼女は毎日心の中で悲鳴をあげている。
次にベジータ――ライバルで隣人、そして歩くプライドの塊。誰かを好きだなんて絶対認めないけど、クラスで一番自信満々なブルマに(下手に)アピールしようと奮闘中。その方法は? 彼女を罵倒すること。もちろん全然うまくいっていない。
カカロットの親友クリリンは、ひそかにチチに恋をしている。でもカカロットが親友だから、何も言えずにただ見守り、拳を握りしめるばかり。
第4話では大事
ドラゴンボール学園ラブコメ! オラ、恋愛わかんねぇ! - 科学部の天才少女ブルマ登場! 爆発と嫉妬と恋の四角形
あの日、チチに怒鳴られてから、カカロットはずっとなんとなく気になっていた。
何がいけなかったのかは、今もよくわからない。でも、チチが怒った時の顔は覚えている。グレーの目が赤くなっていて、声がちょっと震えていた。
なんかいいことあった? って聞けばよかっただろうか。いや、怒ってたんだからよくないことがあったんだろうな。
そんなことを考えながら、カカロットは月曜の朝、学校の廊下を歩いていた。10月に入って、空気が少し冷たくなってきた。
——その時だった。
ドカン!!
校舎全体がびりびりと震えた。廊下の窓がガタガタと鳴る。どこかのクラスで悲鳴が上がった。
「[excited]なんだ!?」
カカロットは反射的に廊下に飛び出した。爆発音がした方向——部室棟だ。北側の2階建ての建物。煙が、確かに煙が上がっている。
「[surprised]えっ、今の爆発!?」
後ろから声がした。チチだ。深緑の髪を揺らして、教室から飛び出してきた。目が大きくなっている。
「[serious]行くぞ」
短い声。振り返ると、濃紺の髪を逆立てたベジータが、もうすでに部室棟の方向に向かって大股で歩いていた。さっきまで最前列の席で教科書を読んでいたのに、もう動いている。
「[gentle]待って、みんな一緒に——」
水色の丸坊主頭のクリリンが追いかけながら言う。四人は連れ立って部室棟へ走った。
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煙は部室棟2階の奥——科学部の部室から出ていた。
廊下に白い煙が漂っている。刺激臭というほどじゃないが、なんか焦げたような、金属っぽいような、不思議な匂いがする。
扉の前まで来た時、扉がガチャっと開いた。
出てきたのは、白衣を着た女の子だった。
顔に煤がついている。右の頬と額に黒い筋が走っていて、白衣の袖も煤けている。でも、その子は全然慌てていなかった。むしろ、どこか満足そうな顔をしていた。
ブルマだ——とチチが小声でつぶやいた。
2年3組にいる子で、科学部の部長だという話はカカロットも聞いたことがある。ブルマの実家はミソラ市で電子部品を作っているカプスラ電子工業という会社で、彼女はその一人娘だとか。科学部の部室で実験をしていて、去年一回ボヤ騒ぎを起こしたとか。
ブルマは薄い水色の長い髪を耳にかけながら、四人を見回した。澄んだ青い目。少し首をかしげると、「あら、野次馬?」と言いたそうな表情になった。
「[cold]新型バッテリーの実験が、予定より少し早く成功しただけよ」
涼しい顔だった。
「[surprised]成功って……爆発したんじゃないか?」
「[sarcastic]爆発したんじゃなくて、急速放電が予定より3倍の速さで起きただけ。結果的には正しいデータが取れたわ」
カカロットは部室の中をちらっと見た。机の上に銀色の小さな装置が置いてあって、その周りが少し焦げている。天井に前からある焦げ跡が2つあって、今日新しいのが1つ増えた感じだ。
「[excited]すげえ! 爆発ってかっこいいな!」
ブルマがこちらを見た。
少しの間があった。
「[surprised]……普通、怖がるでしょ」
「[gentle]かっこよくないか? バーンって光って、煙が出て」
ブルマは一瞬固まって、それからふっと笑った。
「[laughing]変わってるわね、あんた」
笑うと雰囲気が変わった。さっきまでのクールな感じが消えて、なんか普通の女の子みたいになった。
「[gentle]カカロット。転校生の」
「ブルマよ。覚えといて」
その時、ベジータが前に出た。
「[angry]ふざけるな」
低い声だった。眉をひそめて、腕を組んで、ブルマをまっすぐ見ている。
「[serious]校舎全体が揺れたんだぞ。他の生徒が怪我をしていたらどうするつもりだ。こんな危険な実験は即刻停止。生徒会に報告して、科学部の活動を見直させる」
「[cold]……あなたって」
ブルマがベジータを見た。目が細くなった。
「[cold]成績はいいんでしょうね。でも、人の研究にケチをつけるのは最低よ」
スパン、と言い切った。
ベジータの顔がわずかに動いた。眉がぴくっとなって、頬に——赤みが差した。
「べ、別に……お前の……」
言葉がうまく出てこない。それがベジータにとっては珍しいことだと、クリリンがわずかに目を丸くした。
「[angry]……危ないと思っただけだろうが!」
それだけ言って、大股で廊下を歩いていった。角を曲がったところで見えなくなる。
カカロットは首をかしげた。
「[gentle]ベジータ、怒ってたな」
「[laughing]怒ってたわね」
ブルマはくすっと笑った。でも、その笑いの中にちょっと何かが混じっていた気がした。カカロットには何かよくわからなかったけど。
実は廊下の角のところで、ベジータは壁にもたれていた。
息をついて、自分の頬に手を当てた。熱い。
(……なんで赤くなってんだ、俺)
全然わからない。わかりたくもない。でも確実に、顔が熱かった。
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ホームルームが始まっても、クラスの中はざわついていた。
「爆発だって」「また科学部?」「毎回すごいな」という話があちこちから聞こえてくる。モリノ先生が黒板の前で「……少し静かにしてもらえますか。もう少し……できませんよね」とつぶやきながら胃薬を飲んでいた。
チチは自分の席に座りながら、窓の外を見ていた。
廊下の向こう、部室棟の前。
ブルマとカカロットが、まだ話している。
ブルマが何か言って笑う。カカロットが頭を掻きながら答える。また二人で笑う。
(……何を話してるの)
胸の中が、じわじわと熱くなってきた。
カカロットはいつもああいう感じだ。誰とでも話す。誰とでも笑う。でも今はなんか、いつもと違う気がした。ブルマの方が、明らかに楽しそうだった。
「[gentle]チチ、大丈夫?」
隣から声がした。クリリンが顔を覗き込んでいる。丸い金色の目が、心配そうだった。
「[serious]大丈夫です。別に」
「……そうかな」
クリリンは何も言わなかった。チチの視線の先——カカロットとブルマを見て、少しの間そのまま黙っていた。
チチはノートの端を折り曲げながら思った。
(早く動かないと。今度こそ、絶対に)
14回失敗した。15回目も失敗した。でもまだ間に合う。カカロットはまだ誰も選んでいない。
選ぶとか選ばないとか、そういう話じゃないかもしれないけど。でも、カカロットの隣にいる権利を、誰かに渡したくなかった。
クリリンはその様子を横で見ながら、窓の外に視線を逃がした。
(チチが好きなのは、カカロットで)
(カカロットは、俺の一番の友達で)
胸の奥が、鈍く痛んだ。
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昼休みが終わって、2年3組の廊下に戻ってきた時だった。
「あ、ポスター貼ってある」
誰かの声で、みんながそっちを向いた。
廊下の掲示板に、新しいポスターが貼り出されていた。
**カプセル中学 秋の恒例行事「ペアダンス大会」**
**10月第3土曜日・体育館にて開催**
**男女ペアで参加・ペアは自由に決めてOK**
**優勝ペアには「ゴールデンシューズ賞」+給食1週間デザート2倍券!**
クラスがどっとざわついた。
「ペアダンス!」「去年は3組が優勝したって聞いたよ」「誰と組もうかな」「デザート2倍ってやばくない!?」
カカロットはポスターを眺めた。
(デザート2倍……)
(それはいいな)
「[gentle]ダンスって、給食より大変そうだな」
カカロットのその一言で、周囲の何人かがため息をついた。クリリンが苦笑いする。「そこ?」という顔だ。
チチはポスターを見た瞬間、頭の中でぱっと火花が散った。
(ペアダンス大会……!!)
ペアは自由。男女で参加。一緒に練習して、放課後も一緒で——実質デートじゃないか。
(これしかない。これを逃したら……!)
顔が熱くなってきた。カカロットをペアに誘えば、一週間は一緒に練習できる。二人きりで体育館で。音楽に合わせて、手を繋いで——
「ふーん」
すぐ隣に、ブルマが立っていた。いつの間に来たのか、ポスターを眺めながら独り言みたいにつぶやいている。
「[cold]面白そうね。データ取りがてら出てみようかしら。相手は……カカロットくん、かな」
最後の一言が、チチの耳にはっきり届いた。
チチはブルマの方を向いた。
ブルマもチチの方を向いた。
廊下の雑音が、少し遠くなった気がした。
二人はしばらく、何も言わなかった。言葉は必要なかった。視線だけで、全部伝わった。
——お互いに、同じ人のことを考えているんだ。
それだけで十分だった。
「[gentle]ダンス、かっこいいな。でも俺、リズム感ないかも」
カカロット本人は、二人の間の空気に全く気づかず、ポスターの文字を指でなぞりながらのんきに言った。
チチとブルマが同時にため息をついた。
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放課後、クリリンは一人で屋上に上がった。
本来は立入禁止の場所だけど、非常階段から上がれることを全員が知っている。クリリンがここに来るのは、一人で考えたい時だ。
フェンスに両手をかけて、ミソラ市の夕暮れを見下ろす。東側にはコモレビ丘陵のなだらかな稜線。南の方にはハヤセ川が光っている。ミソラ駅前のハヤセ通りの商店街が、小さく見える。
風が吹いて、水色の短い髪が揺れた。
今日のことを思い返した。
チチが廊下の窓から、ブルマとカカロットを見ていた時の顔。あんなに必死な目をするんだ、チチって、と思った。知らなかった。いや、知ってたけど——あそこまでとは思わなかった。
ブルマという子が現れた。頭が良くて、カカロットに興味を持って、ペアダンスで誘うかもしれない。
そして自分は、カカロットの一番の友達で、チチのことが好きで。
フェンスをぎゅっと握った。金属が冷たい。
(チチの背中を押してやることが、友達のすることだよな)
(カカロットに「チチのこと気にしてやれよ」って言えばいい)
(それが正しいことだよな)
わかってる。頭ではわかってる。
でも、できない。
なんで、できないんだろう。
「[whispers]……オレはどうすりゃいいんだ」
誰にも聞こえない声だった。夕風が吹いて、その言葉をどこかへ連れていった。
コモレビ丘陵の向こうに太陽が沈んでいく。空がオレンジになって、少しずつ紫になって、最後には暗くなる。
ペア届出の締め切りは来週の金曜日だ。
チチとブルマ、どちらが先にカカロットに声をかけるか——クリリンには、それがどこか遠い国の話みたいに感じられた。でも実際には、すぐそこで起きていることだった。
フェンスから手を離して、クリリンは空を見上げた。
一番星が、もう出ていた。