ビデオたい!ゼンレスゾーンのゆるすぎる一日
ニューエリドに、ちょっとおバカな平和が訪れた。きっかけは、ビリーが持ち込んだ一枚のポスター。「第1回ペアビデオ大会 優勝賞金500万デニー!」――目を輝かせるビリーを、ニコは「はいはい、どうせまたアホなこと考えてんでしょ」と一蹴する。だが、借金返済の文字がちらついたアンビーは、無言でエントリーボタンをポチリ。こうして、ビデオたい!ゼンレスゾーンのゆるすぎる一日を賭けた、ランダムプレイハウスの曲者たちによる、史上最もユルくてカオスなビデオ合戦が幕を開けた!
完璧なイメージを守りたいカリスマ配信者を狙うは、どこからともなく現れては全てを台無しにする、正体不明の愉快犯。猫シリオンコンビは猫動画で勝負するも、気まぐれな相方が言うことを聞かず、撮影はまさにカオス。アンビーは真顔で壮大なRPG風動画『冒険の書。編集は任せた』を撮り始め、周囲を困惑させる。そしてもちろん、街の裏路地では、やけにノリノリなバンブーたちが、あの手この手で撮影現場をメチャクチャにしようと暗躍中。
バラバラすぎる動画は、なぜか動画サイトで爆発的な再生数を叩き出し、街中がパニックとお祭り騒ぎに。笑いとため息、そして時折ドキ
ビデオたい!ゼンレスゾーンのゆるすぎる一日 - バズれ!借金冒険譚と500万ディニーの奇跡
ランダムフォン屋の二階、休憩室。
窓の外はもう、白み始めている。商店街のネオンが、ひとつ、またひとつと消えていった。
ニコの指が、キーボードから離れた。
かさかさに乾いた唇。細めた目は血走っている。でも、その口元は、かすかに緩んでいた。
「……できた」
声は、かすれていた。
パソコンのモニターには、動画配信サイト「ミルヴィー」のアップロード画面。タイトルは『借金冒険譚』。
床で丸まっていた銀色の毛玉が、ぴくりと動く。ネコチャンネンネコだ。大きなあくびをひとつ。二又の尻尾が、ふわりと揺れた。
「[tired]……やっと終わったにゃ? あたし、夢の中で三回もにゃんにゃんビーム撃ったにゃ」
「[serious]うるさい。お前は途中で寝ただろ」
ニコは肩を回す。ゴキゴキと、骨の鳴る音がした。
部屋の隅。ジャンクフォンの山にもたれて、ビリーは大の字で眠っている。口を半開きにして、すーすーと寝息を立てていた。ぼさぼさの茶髪は、さらに爆発している。
ニコはしゃがみ込むと、ビリーの額を、思い切り指で弾いた。
パチンッ!
「[angry]起きろ!! お前の企画だろ!!」
「[surprised]ふごっ!?」
ビリーが飛び起きる。寝ぼけた茶色の目が、キョロキョロとあたりを見回した。左の頬の古い傷が、朝日に照らされて薄く光る。
「できたんだよ、動画」
ビリーは、一瞬、ぽかんとした。
それから、寝ぐせだらけの頭をガシガシとかく。
「[excited]……できたのか!?」
「できた」
「[excited]すげえ!! さすがニコ!!」
ビリーは叫ぶと、パソコンの前に飛びついた。ニコの肩に抱きつこうとする。
「[angry]近づくな! 息がくせえ!!」
ニコはビリーの顔を手のひらで押し返す。
「[gentle]……アンビーは?」
ニコがそう言った、その時だった。
カウンターの隅。
腰まで伸びた暗い灰色の髪が、日の光を吸い込んで、ゆっくりと揺れた。
アンビーは、ずっと起きていた。
深い紫色の大きな目は、相変わらず無表情だ。でも、彼女の手は、ぎゅっと、固く握られていた。
「[gentle]……見ました」
声は、ロウソクの火が消えるみたいに小さい。
「ニコさんの編集、計算より、三倍、上手です」
ニコは、一瞬、言葉に詰まった。
それから、照れくさそうに、切れ長の目を細める。
「……お前の脚本があったからだろ」
ビリーは、ふたりの顔を交互に見た。
八重歯を見せて、にかりと笑う。
「[excited]よし! 投稿するぜ! みんな、いくぞ! せーのっ!」
ビリーの人差し指が、高らかに、マウスの左ボタンを押し込んだ。
カチッ。
静かな朝の、小さな音。
動画が、世界に放たれた瞬間だった。
——
「……ゼロ?」
五分後。
ビリーは、自分のフォンの画面にへばりついていた。
視聴数は、0のまま動かない。
「[angry]更新だ! 更新ボタンはどこだ!?」
「[serious]落ち着け。五分で数字なんか動くか」
ニコはこめかみを押さえている。睡眠不足で、イライラが最高潮だ。
ビリーは、フォンの画面を、指でスワイプし続ける。
「[excited]絶対に動いてるはずだ! 俺の心は、もう百万再生くらいのつもりで動いてる!」
「[angry]お前の心はどうでもいい。それでフォンが壊れたら、修理代はお前のポケットマネーから引くからな」
「怖いこと言うなよ! 俺、今月もう赤字だぜ!?」
ビリーは渋々、フォンをテーブルに伏せた。
三秒後。
裏返した。
「まだ0だ!」
「[angry]当たり前だ!! 三秒で見られるか!!」
ニコが怒鳴る。
アンビーが、無言で立ち上がった。
ビリーのフォンを、人差し指と中指でつまむ。
それから、テーブルの端まで、つつつ……と歩く。
四十センチ、遠ざけた。
「……少し、離れてください。あなたの念が、邪魔です」
「[surprised]念!? 俺、超能力者じゃないぜ!?」
「[laughing]にゃはは! でもビリー、画面をにらむ顔が怖いにゃ。魚市場のボス猫より眼光が鋭いにゃ」
ネコチャンが、床で丸まりながら笑う。
ビリーは口をへの字に曲げて、床に座り込んだ。
しばらく、時計の針だけが、かち、かち、と進む。
視聴数が、ようやく「2」を表示する。
「[excited]来た!! 二人も見てる!!」
ビリーが立ち上がる。
その時、フォンが震えた。
ニコのフォンも、アンビーのフォンも、同時だ。
画面には『ミルヴィー』の通知。
ニコが、無表情で言った。
「……今の、俺が見た通知だ」
「俺もだ」
「……私もです」
「あたしは寝てたからまだ見てないにゃ」
しん、と、部屋が静まり返った。
視聴数は「5」。
「……五人中、四人は俺たちか?」
ビリーの声が、かすれる。
ニコは、深いため息をついた。
「……あと一回分は、隣のおばちゃんが、たい焼き焼きながら見たんだろうな」
「計算上、外部視聴者ゼロです」
アンビーが、淡々と言った。
「……詰みです」
空気が、一気に重くなった。
ビリーは、ぎゅっと拳を握る。
「まだ……まだ朝だし! みんな寝てるんだよ!」
「俺は徹夜で編集してたけどな」
「……あなたも今から寝ます」
「寝かせてくれないのは誰だ!」
ネコチャンは、尻尾をゆらゆらさせながら、フォンをのぞき込んだ。
「[gentle]でもさ、これ、まだ始まったばかりにゃ。あたしが前にバズった動画も、最初の一時間は十回くらいだったにゃ」
十回。
この動画は、まだ、半分だ。
ビリーは、床に手をついた。
「……よし」
顔を上げる。
「待とう。信じて、待つんだ」
ニコは、何も言わずに、カーテンを閉めた。
部屋が、うす暗くなる。
「……寝るぞ。何かあったら起こせ」
ニコは、壁にもたれて目を閉じた。寝不足で、顔色が悪い。眉間のしわは、寝ても消えそうになかった。
ビリーは、アンビーを見る。
彼女は、フォンを見つめたまま、微動だにしない。
深い紫色の目が、画面の数字を映していた。
——19回。
そのうちの何回かは、自分たちだ。
「……怖いか?」
ビリーの問いに、アンビーは、しばらく答えなかった。
それから、こくりと、小さくうなずいた。
「……あなたがたに、迷惑をかけました。だから、これでダメなら、私」
「ダメじゃない」
ビリーは、彼女の言葉を遮った。
いつもの、ヘラヘラした顔じゃない。
「俺たち、まだ諦めてない。だから、お前も、諦めるな」
アンビーは、じっとビリーを見つめた。
それから、かすかに、息を吸う。
「……わかりました」
——
昼前。
休憩室に、ふたたび沈黙が戻っていた。
ニコは壁にもたれて寝ている。ネコチャンは床で丸まり、ビリーも机に突っ伏していた。
ただひとり、アンビーだけが、フォンを持ったまま座っている。
その時。
プルル、と、フォンが小さく震えた。
画面の上部に、通知が現れる。
『新着コメント:意味わからないけど笑いすぎて腹痛い、借金400万の子が本気すぎる』
アンビーの指が、ぴたりと止まった。
それから、まばたきを一度だけする。
もう一度、フォンが震えた。
今度は、連続で。
プルル、プルルルル、プルルルルルルル!
アンビーは、息をのんだ。
画面の数字が、動き出す。
——21、34、67、128、298。
「……ビリー、さん」
声が、震えた。
「ニコ、さん」
ビリーが、顔を上げる。寝ぼけまなこで、アンビーを見た。
「[tired]……ん? どうした、アンビー。腹減ったのか?」
アンビーは、首を横に振る。
それから、フォンの画面を、ビリーに向けた。
コメント欄が、流れている。
スクロールしても、しても、新しいコメントが現れる。
『あの意味不明な動画の続きだったのか』
『今回は泣きながら笑った』
『さかなフォンって何なんだよ』
『なんで主人公なんだよ』
『この子、最初に借金動画作った子だよね?』
『前回はネタだと思った、ごめん』
『みんなで拡散しよう』
『待って、普通に動画としてクオリティ高くない?』
『編集うますぎる』
指が、止まった。
とあるコメントが、目に入る。
『アンビーちゃん、よく頑張ったね』
見知らぬ誰かからの、たった一言。
アンビーの手が、かたかたと震え始めた。
「……ふ」
声が、もれた。
「……ふ、ふう」
彼女は、唇を引き結ぶ。
泣くのを、必死でこらえている顔だった。
「[excited]ニコ! 起きろ、ニコ!!」
ビリーの叫び声で、ニコが飛び起きる。
「[serious]……なんだ!? ボンプか!?」
「違う! 見ろ、これ!」
ビリーが、自分たちのフォンをニコに突きつける。
視聴数は、もう、二千を超えていた。
「[surprised]……は?」
ニコは、目をゴシゴシとこする。
それから、画面を二度見した。
「[whispers]……嘘だろ」
「嘘じゃない! 見ろ、このコメント! すげえだろ!!」
ビリーが、ニコの肩をバンバン叩く。
いつもなら怒り出すニコが、されるがままになっている。
画面には、続々とコメントが流れてくる。
かつて、アンビーの初動画を「意味不明」「頭おかしい」と笑いものにした掲示板の住人たち。
その連中が、次々と、手のひらを返していく。
『前回ボロクソ言ってすまんかった』
『最初に笑った奴、土下座しろ』
『借金返済をRPGにするとか発想がおかしい(褒めてる)』
『さかなフォンに笑い死んだ』
ネコチャンも、のそりと起き上がってきた。
「[surprised]にゃ……? なんか、フォンがうるさいにゃ……って、うにゃあああ!? あたしのフォロワーが一気に三千増えてるにゃ!!」
ネコチャンが、飛び上がる。
その時——
——
商店街、トリノ通り。
果物屋の軒先で、派手な色のコートを着た四人の男が、うつむいていた。
赤、黄、青、緑。
胸元には「B」の白いワッペン。
ボンプの連中だ。
リーダー格の赤コートの男が、手にしたフォンを見つめている。
画面には、『借金冒険譚』。
ちょうど中盤。
撮影を邪魔しようとして、商店街の店主たちに人垣で囲まれ、「え?」と叫んだ自分たちの姿が、大映しになっている。
「……俺たちだ」
黄色いコートの男が、複雑そうに言った。
「[sad]なんか……俺たち、すげえ間抜けに見えるな」
「見えるってか、間抜けそのものだろ」
「うるせえ!」
赤コートが叫ぶ。
しかし、画面のコメント欄には、こんな言葉が溢れていた。
『この邪魔おじさんたちも好き』
『この人たち演技じゃないよね?』
『ガチのやつじゃん、むしろ最高のスパイス』
赤コートは、何度も、コメントをスクロールする。
「[sad]……邪魔おじさん」
ポツリとつぶやいた。
仲間たちも、それぞれのフォンで、同じ動画を見ている。
沈黙が、流れた。
それから、赤コートは、無言で、自分のフォンの画面をタップした。
高評価ボタンを。
もう一度、タップ。
さらにもう一度。
連打する。
黄色も、青も、緑も、黙って、同じように高評価を連打し始めた。
何度も、何度も。
——
ランダムフォン屋の前。
ガラガラと、戸が開いた。
ビリーが顔を出すと、そこには、赤いコートの男が立っていた。
背が高い。顔にはいくつもの傷跡。
でも、その目つきは、いつもの挑発的なものじゃなかった。
「……これ」
男は、ぶっきらぼうに、紙袋を差し出した。
中には、缶コーヒーが四本。
「徹夜したんだろ。差し入れだ」
ビリーは、きょとんとした。
「……え、いいの? お前たち、俺たちのこと、めちゃくちゃ邪魔してたじゃん」
「[angry]うるせえ! 今はそういう気分なんだよ!」
赤コートは、顔を真っ赤にして怒鳴る。
それから、深く息を吸って、吐いた。
「[serious]……もう邪魔しねえ。お前らの動画、面白かった」
短く、それだけ言うと、赤コートは背中を向けた。
歩き出す。
その後ろ姿に向かって、ビリーは大声で叫んだ。
「[excited]ありがとな!! お前も、動画、映っててよかったじゃん!! 一番笑えるってさ!!」
赤コートは、振り返らない。
でも、その肩が、かすかに震えた。
ビリーは、店の中に戻る。
「[excited]ニコ! 見たか!? ボンプがコーヒーくれた!! しかも缶コーヒー!!」
「[serious]……ああ、聞こえてたよ。だから、追いかけるなって。ああいう時は、こっちから追うと、かっこ悪く終わるんだ」
ニコは、缶コーヒーを受け取りながら、苦笑いした。
アンビーは、まだフォンを見つめている。
視聴数は、もう、とんでもないことになっていた。
コメントも、高評価も、数字がどんどん跳ね上がっていく。
「……計算上」
彼女が、ぽつりと言った。
「私たち、勝てるかもしれません」
——
午後六時。
夕日が、トリノ通り商店街を、オレンジ色に染めていた。
コンテスト終了時刻。
ランダムフォン屋の二階。
四人は、テーブルを囲んで、座っていた。
誰も、何も言わない。
壁時計の秒針だけが、かち、かち、と進む。
その時。
プルル、と、フォンが鳴った。
全員のフォンが、同時に。
画面に、通知が現れる。
——『ミルヴィー運営より、コンテスト結果発表』。
ビリーは、フォンを握りしめたまま、動かない。
「[whispers]……ニコ、見てくれ」
「[angry]なんで俺なんだよ! お前が見ろ!」
「[scared]だって、怖いじゃん!」
「あたしは、もう結果を知ってるにゃ。さっき、なんとなく画面をカンニングしたにゃ」
ネコチャンが、悪びれずに言った。
「[serious]……見たのかよ」
「……にゃ」
ネコチャンは、金色の目を細めて、にやりと笑った。
その沈黙が、すべてを物語っていた。
アンビーが、ゆっくりと、フォンの画面を開く。
深い紫色の目が、文字をなぞる。
上から、下へ。
もう一度、上から、下へ。
「……」
彼女の手が、震え始める。
「ビリーさん」
「な、なに!?」
アンビーは、フォンの画面を、ビリーに見せた。
『第一回ペア動画大賞 優勝:ランダムフォン屋チーム×ネコチャン『借金冒険譚』』
『おめでとうございます! 賞金500万ディニーを、チームリーダーの口座にお振込みいたしました』
「[crying]……ふ、ふふ」
アンビーの口から、空気が漏れた。
「[laughing]ふふふふ、あは、あはははははは!!!」
彼女は、腹を押さえて、声を上げて笑い始めた。
初めて聞く、彼女の笑い声。
無表情だった少女が、涙を流しながら、お腹をかかえて、笑っている。
ビリーとニコは、固まった。
それを見ていたネコチャンだけが、嬉しそうに、二又の尻尾をパタパタと揺らしている。
「[laughing]にゃはは! やっぱりね! これで当分、高級マグロが食べ放題にゃ!!」
「[excited]……うおおおおおおおお!!!」
ビリーが、雄叫びを上げた。
そして、隣にいたニコに、思い切り抱きつく。
「[excited]やったああああ!! 俺たち、優勝だああああ!!!」
「[angry]離せ! 暑い! お前、汗かいてるだろ!! くっつくな!!」
ニコは、全力でビリーを振り払おうとしている。でも、その顔は、笑っていた。
アンビーは、まだ笑っている。
笑いすぎて、涙が止まらない。
「[laughing]……だって、さかなフォンが……さかなフォンが一番評価されてて……あはは……なんで……!?」
「[angry]あ? データ上は、確かに、さかなフォンのアップが一番高評価だった。……俺の渾身の編集、ちょっと負けた気分だ」
「にゃはは! あたしの『にゃんにゃんビーム』は!?」
「五分五分だな」
「五分にゃの!? あの渾身のアドリブが!?」
部屋が、笑い声でいっぱいになる。
ひとしきり笑った後、アンビーは、ゆっくりと立ち上がった。
まだ、目には涙が浮かんでいる。
彼女は、ビリーとニコの前に立った。
腰まで伸びた灰色の髪が、夕日に透けて、きらきらと光っている。
「[gentle]……ありがとう、二人とも」
深く、頭を下げた。
「私、一人で、なんとかしなきゃって。ずっと、そう思ってました」
「でも、違いました」
「あなたたちと、一緒で、本当に、よかった」
ビリーは、鼻の頭をかいた。
照れくさそうに、へらりと笑う。
「[gentle]……だから、なんとかなっただろ? 俺、言ったじゃん。なんとかなるって!」
「[sarcastic]どの口が言うか。三十分前まで、視聴数十九回でへこんでたくせに」
「うるさい! あれは、あれだよ! 戦略的沈黙ってやつ!」
その時だった。
プルル、と、またフォンが鳴った。
今度は、ビリーのフォンだけ。
『受信メッセージ:差出人不明』
「……誰だ?」
ビリーが、タップする。
画面に、短い文が浮かんだ。
『面白い連中を見つけた。近々会いに行く。——K』
「[surprised]……は? K? 誰だよ、Kって!! おい、ニコ、お前の知り合いか!?」
ビリーが叫ぶ。
ニコは眉をひそめて、画面をのぞき込む。
「[serious]……いや、知らねえ。でも、『面白い連中』ってことは、動画を見たやつか?」
「[excited]もしかして、ファン第一号!? 俺たち、もう有名人!? サインの練習しとく!?」
「[gentle]……K」
アンビーが、ぽつりと言った。
「なんか、ちょっと、怖いですね」
「あたしも、このメッセージ、ちょっとだけ、気になるにゃ。でも、今は、お祝いだにゃ!」
ネコチャンが、高らかに宣言した。
「[excited]たい焼き奢りにゃ! 全員、カリモチ堂に行くにゃ!!」
「ちょっと待て、それ、俺に奢らせる流れか!?」
「当たり前にゃ! 優勝したんだから、リーダーがおごるのが、相場にゃ!」
「俺、まだ賞金、一銭も受け取ってないんだけど!?」
「借金返済の前に、打ち上げです。計算上、必要経費です」
アンビーが、真顔で言った。
ニコは、深いため息をつく。
「[gentle]……まあ、たまには、いいだろ」
四人は、階段を降りていく。
ランダムフォン屋の外に出ると、夕焼けが、すべてを赤く染めていた。
トリノ通りには、たい焼きの甘い香りが、ふんわりと漂っている。
隣のカリモチ堂から、タエおばちゃんが顔を出した。
「[excited]あんたたち! 優勝おめでとう!! 今日は、たい焼き、サービスしちゃうよ!!」
「[excited]マジで!? おばちゃん、愛してる!!」
「調子いいねえ! はい、あんこたっぷり、特別大盛りだよ!」
ビリーたちが、店に吸い込まれていく。
その時——
ビリーのフォンは、再び、暗くなった。
でも、画面の隅で、小さく、受信ランプが、赤く点滅している。
——K。
次の騒動の気配だけが、静かに、ランダムフォン屋に残された。Noveliaとは?
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