【貞操逆転】おっさん高校生ユキ、モテすぎて困ってます!
【貞操逆転】おっさん高校生ユキ、モテすぎて困ってます!
37歳独身のおっさん、ユキが目を覚ますと、そこはパラレルワールド!しかも、自分と同じ名前の、ちょっと気弱な男子高校生に憑依していた。
喜びもつかの間、彼はこの世界のトンデモなルールを知る。ここは男が極端に少ない「貞操逆転世界」。恋愛も含め、あらゆることに女性が積極的で当たり前なのだ!
高校で待ち受けていたのは、四人の個性的な女子たち。天然お嬢様で、いきなり告白してくる白鳥美桜。本のことになると人が変わったように大胆になる、内気な図書委員の橘静香。誰もが恐れる先輩なのに、ユキの前ではデレデレの甘えん坊になる冴島凛。そして、パーソナルスペースという概念がゼロの、自由奔放なギャル南陽菜。彼女たちが、ユキに全力の恋愛猛攻撃を仕掛けてくる!
「こんなおっさんが、こんなにモテていいのか!?」と内心叫びつつ、大人の余裕でなんとか対応するユキ。しかし、このハーレム生活が平穏に続くはずもなく……。
はたしてユキは元の世界に戻れるのか、それとも、この逆転恋愛世界で人生最大の青春を謳歌するのか!?
【貞操逆転】おっさん高校生ユキ、モテすぎて困ってます! - ハナオト大作戦!ヒロイン四人、協定を結ぶ件について
あの屋上での秘密バレから、もう三日になる。
ユキは廊下を歩きながら、なんともいえない空気を感じていた。
教室のドアを開けると、美桜が「[surprised]あ、ユキくん……ご、ごきげんよう」と言って、慌てて教科書で顔を隠す。陽菜に至っては、目が合った瞬間に「[scared]べ、別にあんたのこと見てたわけじゃないし!」と意味不明な言い訳をしてくる始末だ。
(なんだこのよそよそしさは)
三十七歳の経験が、嫌な予感をヒシヒシと感じさせていた。静香は相変わらず本の陰からチラチラ見てくるし、凛先輩に至っては廊下ですれ違うたびに「[cold]……ふん」と顔を背ける。
(なにか企んでるな、こりゃ)
ユキはため息をついた。大人の勘が、四人が水面下でなにかを動かしていると告げている。
今日は金曜日、放課後だ。ユキは一人、ナミキ通りを歩いていた。商店街のアーケードには夕方の光が差し込み、八百屋のおばちゃんが威勢のいい声を張り上げている。いつもの風景。
だが、その中に——見慣れた四人の背中があった。
ハナオト。美桜の実家が経営する純喫茶店の前だ。腰までの金髪をふわりと揺らした美桜が先頭で、陽菜のポニーテールが跳ね、おさげの静香がおぼつかない足取りでついていく。そして最後尾には、銀髪の凛が腕を組んで立っていた。
「[whispers]なんで四人が……」
ユキはとっさに、商店街の柱の陰に隠れた。心臓がバクバクする。三十七歳のいい大人がなにをやっているのか。
(だって呼ばれてないし)
自分に言い訳しながら、ハナオトの窓に張り付いて中を覗く。レトロな内装、四人用の円卓。そこに四人が座り、美桜がウェイトレス姿で給仕を始める。なにやら真剣な顔だ。
(コーヒーまで頼んで……なにを話してるんだ)
さらに目を凝らしたその瞬間——
「「[angry]ユキっ!!」」
窓がガラリと開き、陽菜の手がユキの腕をガシリと掴んだ。
「[angry]なに隠れて見てんの、アンタ! 入ってきなさいよ!」
「[scared]いや、俺は呼ばれてな——」
「[angry]いいから!」
引っ張られるまま、ユキは店内に引きずり込まれた。
ドアベルがカランカランと鳴る。
ハナオトの店内は、コーヒーの香りとシナモンの匂いが混ざり合っていた。壁には古いレコードジャケットが飾られ、窓から差し込む夕日が木のテーブルをオレンジ色に照らしている。
「[gentle]いらっしゃいませ、ユキくん。ようこそハナオトへですわ」
美桜が、ふんわりした笑顔で案内する。ユキが円卓に通されると——
左に陽菜。右に静香。正面に凛。
逃げ場ゼロだった。
「[scared]……三人とも、近くないか」
冷や汗が背中を伝う。
「[cold]ふん、逃げるなよ」
凛が低く言い、肘をテーブルに置く。静香は耳まで真っ赤にして俯き、陽菜は腕を組みながら、どこか照れくさそうに唇を尖らせていた。
美桜が、ゆっくりと息を吸う。
「[serious]では、ただ今より——」
一拍の間。
「[serious]ユキくんへのコクリ届。誰が出すか問題、会議を始めますわ」
「「「なにそれ!?」」」
ユキの叫びが喫茶店に響き渡った。
陽菜がテーブルに両手をバンとついた。
「[angry]あたしだよ! 体育祭でペア組んだの、あたしが一番最初じゃん! こんだけ実績あるんだから、当然あたしでしょ!」
陽菜は顔を真っ赤にして捲し立てる。
「[angry]いいえ、わたくしですわ。転入初日に、ユキくんに最初に告白したのはわたくしなのですの!」
美桜も負けていない。いつものおっとりとは違い、大きな青い瞳がキラキラと燃えている。
「[scared]……わ、私も」
小さな声。
「[scared]図書室で、お弁当を渡して……その、好きだって……ちゃんと気持ちがあるんです。本の話も、私が一番たくさん……!」
静香が珍しく食い下がり、早口になる。
「[cold]コクリ届とか関係ねえ」
凛が、肘を組んだまま言い放つ。
「[cold]あたしが一番、ユキのことわかってる。同じ匂いがするんだよ」
「[angry]なにそれ! なんの匂いだよ!」
「[angry]わたくしだって、ユキくんの一番好きな飲み物は緑茶だって知ってますわ!」
「[scared]私だって……ユキくんが、一人で海を見るのが好きだって……!」
四方からの激論が、ぐるぐると渦巻く。
ユキは、ぐったりと項垂れた。
(なんなんだ、この状況は)
女子四人の熱量が、十七歳の身体に容赦なく叩き込まれる。おっさんの精神が悲鳴を上げ始める中、ユキの口は勝手に動いていた。
「[whispers]……俺を好きになっても、いいことないぞ」
低く、呟くような声。
店内が、シンと静まった。
四人の視線が一斉にユキに刺さる。
「[sad]元の世界に帰るかもしれないんだ」
ユキは俯いたまま、淡々と言葉を継いだ。
「[sad]中身は三十七のおっさんだ。こんな体に憑依してるだけで、本当の高校生でもない。高校生としてここで生きていける保証もない。なのに——」
言葉が詰まる。
「[crying]なのに、お前らみたいな本気に……応えられると思ってるのかよ」
初めて見せる弱音だった。
大人としての冷静さが、高校生の不安定な身体に押し負けた瞬間だった。
静寂。
誰も、言葉を発さない。
美桜の青い瞳が、大きく見開かれていた。陽菜が唇を噛み締め、静香はぎゅっと制服の裾を握りしめる。凛は——ただじっと、ユキの横顔を見つめていた。
そして、凛が口を開いた。
「[gentle]……だったら」
肘をついたまま、ぶっきらぼうに。
「[gentle]みんなでユキくんを幸せにしちゃえば、いいんじゃないの」
爆弾発言。
「[surprised]……は?」
陽菜の口がポカンと開く。
「[whispers]ウラガワじゃ、別に……変でもないんだし」
凛は耳まで真っ赤だった。顔を背けながら、必死に平然を装っている。でも声が震えている。
「[surprised]……一夫多妻制度のこと、ですわね」
美桜が、ゆっくりと復唱した。
陽菜が目を丸くする。
「[surprised]え、ちょっと待って、それ……ありなん?」
「[whispers]……私が、ユキくんと一緒にいられるなら」
静香が、うつむいたまま小さく言う。
「[whispers]それでも……いいです」
美桜が、凛を見つめた。
「[serious]先輩が言うなら、わたくしは……反対しませんわ。でも」
美桜がユキに向き直る。青い瞳が、まっすぐに彼を射抜いた。
「[serious]ユキくん自身は、どうですの?」
四人の視線が、一斉にユキに突き刺さる。
十七歳の身体が、四人分の熱量に完全に動揺する。心臓がうるさい。耳の先がカッと熱くなり、声が裏返りそうになるのを必死に抑える。
(まいったな、これは)
おっさんの経験フル稼働で、彼は冷静に——なれなかった。
「[scared]……わ、わかった」
声がひっくり返る。
「[whispers]俺も、この世界で生きるって……決める」
短い、でもはっきりとした言葉だった。
その瞬間——
美桜が、テーブルの上にそっと手を置いた。白くて、細い指だ。
「[laughing]じゃあ、同盟成立!」
陽菜がパンッと音を立てて、美桜の手の上に自分の手を重ねる。
「[whispers]……私も」
静香がおずおずと手を乗せる。かすかに震えている。
「[cold]……仕方ねえな」
凛が、ぶっきらぼうに最後の手を重ねた。その唇の端が、わずかに上がっている。
ハナオトのテーブルの上。プリン四皿とコーヒー一杯が並ぶ中で——前代未聞のハーレム同盟協定が、密やかに成立した。
ユキが、ふとテーブルの上を見た。
「[surprised]……待て。プリンが四皿で、俺の分は?」
「[laughing]あたしが食べた!」
陽菜が即答し、満面の笑みでスプーンを見せびらかす。
「[laughing]あっはっは! ユキのプリン、うめー!」
「[surprised]お前が食べたのかよ!」
「[laughing]ごめんごめん! てか呼ばれてないのに来たくせに、プリン食おうとしてんじゃねーよ!」
「[serious]わたくしの手作りプリンでしてよ……」
美桜がぷうっと頬を膨らませる。
店内が、一瞬で爆笑に包まれた。
ユキの心臓は、まだうるさかった。でも——さっきまでの不安や弱音が、四人の笑顔で少しだけ溶けていくのを感じる。
(これが……この俺に起きた、現実なのか)
* * *
喫茶店を出ると、夕陽がミナカゼの街並みを橙色に染めていた。海からの風が、少しだけ潮の匂いを運んでくる。
「[serious]屋上、行こう」
凛がポケットから合鍵を取り出す。
五人は、無言でコウヨウ学園の坂道をのぼった。
屋上の扉を開けると——
息を呑むような光景が広がっていた。
海が、夕陽に燃えている。丘陵地帯の緑が、だんだんと紫色に染まっていく。市街地の家々の窓が、ぽつりぽつりと灯り始める。西の空には、オレンジとピンクのグラデーション。
ユキは手すりに寄りかかり、その景色をぼんやりと見つめた。
「[gentle]……元の世界じゃ、こんな海、見えなかったな」
自然に、こぼれ落ちた言葉。
初めて、懐かしさではなくて——この世界への愛着として。
美桜が、隣に立った。
そっと、ユキの制服の袖を、指一本だけ引っ張る。吐息が触れるほどの距離。
「[whispers]ユキくんが決めてくれて……よかったですわ」
ユキの体温が、じわりと上がる。
「[angry]ちょっとミオ、距離近くない!?」
陽菜が割り込んでくる。
「[serious]距離感の問題ではありませんわ。これは親愛の距離ですの」
「[angry]親愛ってなんだよ、それ!」
「[whispers]……私も、隣がいい」
静香がおずおずと、ユキの反対側に並ぶ。
「[cold]お前ら全員うるさい」
凛が後ろで腕を組んでいる。でも、口端が上がっていた。
海が、きらめいている。
五人の影が、長く伸びて、屋上のコンクリートに映っていた。
* * *
屋上の解散際。
「[laughing]ユキ! 早くしろって! 陽が沈む前に降りんぞ!」
陽菜が階段で叫ぶ。
「[gentle]わたくしたち、先に下りてますわね」
四人が、階段を下りていく。足音が、だんだんと遠ざかる。
ユキは一人、手すりに残った。
夕陽が、海に沈んでいく。
空が、ゆっくりと暗くなっていく。
「[whispers]……なあ」
誰にも聞こえない声で。
「[whispers]この体の元の持ち主って……どこに行ったんだろうな」
初めて体が勝手に反応したあの日。熱いコーヒーに指が震えたあの瞬間。元の高校生ユキの記憶の断片が、時折フラッシュバックする。
(アイツは——どこに消えたんだ)
海が、最後の光を飲み込んだ。
「[angry]ユキ! 早くしろって!」
また、陽菜の叫び声。
「[laughing]今行く!」
ユキは手すりから離れ、階段を走り下りる。
夕闇に包まれた屋上に、風だけが吹き抜けていった。