【貞操逆転】おっさん高校生ユキ、モテすぎて困ってます!
【貞操逆転】おっさん高校生ユキ、モテすぎて困ってます!
37歳独身のおっさん、ユキが目を覚ますと、そこはパラレルワールド!しかも、自分と同じ名前の、ちょっと気弱な男子高校生に憑依していた。
喜びもつかの間、彼はこの世界のトンデモなルールを知る。ここは男が極端に少ない「貞操逆転世界」。恋愛も含め、あらゆることに女性が積極的で当たり前なのだ!
高校で待ち受けていたのは、四人の個性的な女子たち。天然お嬢様で、いきなり告白してくる白鳥美桜。本のことになると人が変わったように大胆になる、内気な図書委員の橘静香。誰もが恐れる先輩なのに、ユキの前ではデレデレの甘えん坊になる冴島凛。そして、パーソナルスペースという概念がゼロの、自由奔放なギャル南陽菜。彼女たちが、ユキに全力の恋愛猛攻撃を仕掛けてくる!
「こんなおっさんが、こんなにモテていいのか!?」と内心叫びつつ、大人の余裕でなんとか対応するユキ。しかし、このハーレム生活が平穏に続くはずもなく……。
はたしてユキは元の世界に戻れるのか、それとも、この逆転恋愛世界で人生最大の青春を謳歌するのか!?
【貞操逆転】おっさん高校生ユキ、モテすぎて困ってます! - 最強の先輩、体育館裏で泣く。おっさんの心が、ついに折れた日
教室のスピーカーから、低く響く呼び出しのチャイムが鳴った。
「2年C組、椎名ユキ。至急、第一会議室まで来るように」
その瞬間、三人の言い争いがピタリと止む。美桜の大きな青い瞳が、陽菜の鋭い目つきが、静香の潤んだ切れ長の瞳が、一斉にユキへと向けられた。
(助かった——のか? いや、逃げ道ができただけか)
ユキは冷や汗で湿った背中を制服に張り付かせたまま、三人の間をすり抜ける。陽菜が何か言いかけたが、言葉になる前に教室のドアが閉まった。
廊下に出た瞬間、全身の力が抜ける。
「まいったな、これは……」
壁に手をつき、深く息を吐く。前日の体育祭から続くこの修羅場。美桜の「コクリ届を出しますわ!」、陽菜の「あたしが先に話してたし!」、静香の「諦めたくないです」。三人の声がまだ耳にこびりついている。
廊下を歩きながら、ユキはぼんやりと考えた。
(第一会議室って、何の用だ? まさかまた誰かが待ち伏せてるとか……やめてくれよ、本当に)
本館から特別棟への渡り廊下。窓の外には、体育祭の翌日らしい静かなグラウンドが広がっていた。昨日までの熱気が嘘のように、誰もいない。サッカーゴールが夕日に長い影を落としている。
特別棟に入ると、空気が一段と冷たく感じられた。第一会議室は二階の突き当たり。普段は生徒会が使う場所だ。
(生徒会が何か……いや、昨日の騒ぎのことで注意か? 男子生徒の安全に関わるからとか)
ドアの前に立つ。深呼吸を一つ。
ノックをしようと手を上げた瞬間、内側からドアが開いた。
「来たか」
低く、短い声。
そこに立っていたのは、校内で最も恐れられている三年生——冴島凛だった。
ショートに切りそろえられた銀髪が、廊下の蛍光灯に冷たく光る。切れ長の赤い瞳が、値踏みするようにユキを見下ろしていた。身長は175センチ。女子としてはもちろん、ユキよりも高い。黒い学ランのような詰め襟の制服を、ボタンを外してラフに着こなしている。
「遅かったな」
凛はそれだけ言うと、ユキに背を向けて歩き出した。
「え、あの、会議室は……」
「ついてこい」
振り返りもしない。有無を言わせぬ声だった。
ユキは仕方なく後を追う。廊下を歩く凛の背中は、隙がない。すれ違う生徒たちが、一様に道を開け、壁に張り付くようにして通り過ぎるのを待つ。
「サエジマ先輩だ……」「二年の男子と一緒にいる」「あの転入生、何かやらかしたのか?」
ひそひそ声が聞こえる。凛は一切気にしない。いや、気にしているが無視している、という方が正しい。
ユキは37年の人生経験で培った観察眼で、凛の後ろ姿を見つめながら考えた。
(悪意はないな。むしろ、何かに怯えてるような……いや、強がってるのか?)
階段を下り、一階へ。体育館へと続く渡り廊下を抜け、さらに外へ。
辿り着いたのは、体育館の裏側だった。
陽の当たらない北側。コンクリートの壁に囲まれた、死角だらけの空間。地面にはタバコの吸殻が落ち、ペイントの剥げた用具庫の壁には、誰かが描いた落書きが残っている。
ここが、凛の縄張りだった。
立ち止まった凛が、ゆっくりと振り返る。
「ここなら誰も来ない」
赤い瞳が、ユキを捕らえる。その瞳の奥に、何かが揺れているのを、ユキは見逃さなかった。
(これは……ただの呼び出しじゃないな)
ユキが口を開く前に、凛の表情が——変わった。
それまでの、校内一怖い先輩の顔が、すーっと消えた。
眉がハの字に下がり、目が伏せられる。唇がかすかに震えて、凛はぎゅっと両腕を自分の体に巻きつけた。まるで、自分自身を抱きしめるように。
「……昨日、不良に絡まれてたの」
小さな声だった。
「お前が、体育館の角から出てきた気配で、連中、スッと引いたんだよ。わかってるか?」
ユキは記憶を探る。確かに昨日、体育祭の昼休みに、ここで一人で休んでいた。誰かが来たような気がしたが、気のせいだと思ってそのまま教室に戻った。
「いや、俺、特に何もしてないですけど」
正直に答える。
凛はしばらく黙っていた。俯いたまま、唇を噛みしめる。
「……お前が来ると、あたし……」
銀髪の間から、ちらりとユキを見上げる。赤い瞳が、うっすらと濡れている。
「なんか、落ち着くんだよ」
声が、震えていた。
あの、全校生徒が恐れる冴島凛の声が。
一滴の涙が、凛の目尻からこぼれ落ちた。コンクリートの地面に、小さな染みを作る。
「お前の前だけは……強がれない」
凛が吐き捨てるように言う。でも涙は止まらない。次から次へと溢れて、頬を伝い、顎から落ちていく。
「バカみたいだろ」
強がりの言葉の裏で、声は完全に泣き声だった。
ユキの中で、37年間の人生経験が警鐘を鳴らした。
(これは——まずい。本気だ。本気のやつだ)
おっさんの精神が、かわいそうに、と柔らかく揺れた。同時に、若い身体の心臓がギュッと締め付けられるように痛む。経験したことのない感覚。大人の理性と、高校生の肉体の矛盾。
その時、凛の手が伸びた。
ユキの制服の袖を、ぎゅっと掴む。
指が、手首の少し上を握りしめる。細いはずの指は、驚くほど力強い。
「……離すなよ」
かすれた声。
体育館裏の薄暗がり。吐息が触れるほどの距離。凛の体温が袖越しに伝わってくる。普段の強面からは想像もつかない弱さを見せている横顔。涙で濡れたまつげが、震えている。
37歳のおっさんは理解していた。これはとても危険な状況だと。理性で理解しているのに、若い身体は別だ。凛に掴まれた腕が、じんじんと熱くなっていくのを止められない。
「あ、あの……」
ユキが何か言いかけた瞬間、凛がハッとしたように手を離した。
「っ……ごめん、何でもない」
慌てて顔を背ける凛の耳が、ほんのりと赤くなっている。
その様子を、ユキは見てしまった。
そして——限界が来た。
ユキの頭の中で、声が響き始める。
「コクリ届、出しますわ!」
「あたしが先に話してたし!」
「諦めたくないです」
「お前の前だけは……強がれない」
四人の声。四人分の想い。37歳の平凡なサラリーマンに過ぎなかった自分に、四人の女子から向けられる本気の感情。
(どうすればいいんだ)
足から力が抜ける。
ユキはゆっくりと、その場にしゃがみ込んだ。
「おい、大丈夫か?」
凛が目を丸くして声をかける。
答えられない。
ユキは膝を抱え、壁に背中をもたれさせて、うつむいた。
「俺、どうすりゃいいんだよ……」
声が震える。37歳の男が、高校生の身体で、泣きそうになっている。みっともない。情けない。でも、止められない。
「みんな本気で……俺には、どうしようもないのに……」
隣で、凛が自分の涙を拭いながら、呆然とユキを見下ろしている。
そして、ユキの口から——無意識に、言葉がこぼれた。
「帰りたい……元の世界に、帰りたかっただけなのに」
小さな独り言だった。自分でも、何を言ったかわからないくらいの。
だが——
体育館の角。影になっている場所に、もう一つ、人影があった。
腰まであるストレートの金髪。大きな青い瞳。
白鳥美桜が、口に手を当てて、そこに立っていた。
前日の修羅場の後、ユキが呼び出された場所を遠くから見ていたのだ。ユキのことが心配で、何か危険な目に遭っていないかと、気になって——気になって、仕方なくて。
(今……ユキくん、なんて言いましたの?)
美桜の青い瞳が、大きく見開かれる。
凛が、しゃがみ込むユキの肩をポンと叩いた。
「……お前も、なんか抱えてんだな」
少しだけ、いつもの凛に戻った声だった。
「顔を洗ってくる。お前は……ちょっと、ここで落ち着いてろ」
凛はそう言うと、体育館裏から早足で去っていった。
一人、壁にもたれたままのユキ。
静かな足音が、近づいてくる。
「……ユキくん」
顔を上げる。
夕日に照らされた美桜の顔が、そこにあった。金色の髪が、オレンジ色に輝いている。青い瞳が、ユキをまっすぐに見つめていた。
「今、元の世界って……言いましたわよね?」
静かな声だった。でも、その言葉の一つ一つが、ユキの胸に突き刺さる。
ユキの全身が固まる。
「それって……どういう意味ですの?」
言い訳を探す。
(違う、今のは言い間違いで……)
ダメだ。誤魔化せるレベルじゃない。
(元の世界って言ったけど、アニメの話で……)
無理だ。美桜はそんな嘘、見抜く。
(昔住んでた町のことを……)
意味が通らない。全然通らない。
三回、頭の中で言い訳を作って、三回全部が崩れ落ちた。
「わたくし……ユキくんが何か隠してることは、ずっと気づいてましたわ」
美桜が一歩、近づく。
「転入してきた初日から……どこか、大人びてて。でも時々、本当に困ったような顔をするから」
もう一歩。
「どうしてそんな顔をするのか、ずっと知りたかったんですの」
美桜の手が、そっとユキの手に触れた。
「ユキくん……教えてくれませんか?」
ユキの口は、開いたまま言葉が出ない。
沈黙だけが、体育館裏に満ちていく。
積み上げてきた「バレなければ平穏でいられる」という防衛ラインが、音を立てて崩れ始めていた。
(終わった)
遠くで、下校を告げるチャイムが聞こえた。
夕日が、二人の影を長く伸ばす。
美桜の青い瞳だけが、真実を知ろうと、静かに、でも確かに——ユキを捕らえていた。Noveliaとは?
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