【貞操逆転】おっさん高校生ユキ、モテすぎて困ってます!
【貞操逆転】おっさん高校生ユキ、モテすぎて困ってます!
37歳独身のおっさん、ユキが目を覚ますと、そこはパラレルワールド!しかも、自分と同じ名前の、ちょっと気弱な男子高校生に憑依していた。
喜びもつかの間、彼はこの世界のトンデモなルールを知る。ここは男が極端に少ない「貞操逆転世界」。恋愛も含め、あらゆることに女性が積極的で当たり前なのだ!
高校で待ち受けていたのは、四人の個性的な女子たち。天然お嬢様で、いきなり告白してくる白鳥美桜。本のことになると人が変わったように大胆になる、内気な図書委員の橘静香。誰もが恐れる先輩なのに、ユキの前ではデレデレの甘えん坊になる冴島凛。そして、パーソナルスペースという概念がゼロの、自由奔放なギャル南陽菜。彼女たちが、ユキに全力の恋愛猛攻撃を仕掛けてくる!
「こんなおっさんが、こんなにモテていいのか!?」と内心叫びつつ、大人の余裕でなんとか対応するユキ。しかし、このハーレム生活が平穏に続くはずもなく……。
はたしてユキは元の世界に戻れるのか、それとも、この逆転恋愛世界で人生最大の青春を謳歌するのか!?
【貞操逆転】おっさん高校生ユキ、モテすぎて困ってます! - 転入初日、お嬢様に公衆告白されておっさんパニック
目が覚めたら、知らない天井だった。
いや、天井だけじゃない。壁も、窓から差し込む光の角度も、俺の37年の人生で見たどんな朝とも違う。ユキは上半身を起こした。体が異様に軽い。
「……は?」
思わず声が出た。自分の声じゃない。もっと若い、高校生くらいの声だ。
慌てて周りを見回す。見知らぬ部屋。制服らしき服が椅子にかかっている。机の上には教科書と手帳。
手帳を開く。表紙の内側に学生証が挟まっていた。顔写真——見覚えのない若い男。名前に「ユキ」。コウヨウ学園、2年C組。
「ユキ……?」
それが俺の名前? 違う。俺の名前はユキだけど、こんな顔じゃない。こんな体じゃない。
鏡を探した。洗面所の小さな鏡に映ったのは、黒いショートヘアの若い男。深い茶色の瞳が、驚きに見開かれている。
(俺、こんな顔だったっけ……?)
違う。断じて違う。
37年間生きてきた顔じゃない。あのちょっと疲れた、目尻にシワのあるおっさんの顔はどこへ消えた?
手帳を読み返す。住所欄には「ミナカゼ市丘の上3-7-202」。ミナカゼ市。聞いたことのない地名だ。
窓の外を見る。見知らぬ街並みが広がっている。遠くに海が見えた。太平洋に面した、穏やかな景色。でも、俺の知ってる街じゃない。
(並行世界……?)
冗談みたいな言葉が頭に浮かぶ。でも、それ以外に説明がつかない。
37歳独身おっさんユキは、今朝突然、この世界の高校生ユキの体に憑依したらしい。
元の世界に戻る方法? まったくわからない。
そもそも、どうしてこんなことに? 原因すら不明。
ユキはベッドに腰を下ろし、ため息をついた。
「……どうすりゃいいんだ」
でも、ここでずっと部屋にこもっているわけにもいかない。
まずはボロを出さずに、この世界のユキとして平穏に学園生活を送ること。それが当面の目標だ。
(平穏に。とにかく平穏に)
心の中でそう唱えながら、ユキは制服に袖を通した。
コウヨウ学園。
正門をくぐると、白壁の校舎が目に入った。3階建ての本館と、奥に4階建ての特別棟。広い校庭にはイチョウの木が並んでいる。
想像以上の立派な学園だ。
2年C組の教室は本館2階の東端。ユキが入ると、ざわつきが一瞬で広がった。
「あ、転入生のユキくんだ」「隣の席になるって聞いたよ」「結構かっこよくない?」
教室の中は、ほとんどが女子生徒。
男子は自分を含めて3人だけ。
(なんか、やたら女子が多いな……)
それだけじゃない。みんなの視線が、妙に熱い。まるで珍しい生き物を見るような目つきだ。
担任の年配女性に案内され、窓際の席につく。隣の席には——。
きらきらと光る、腰まであるストレートの金髪。
大きな青い瞳が、じっとユキを見つめていた。
白くて小さな顔。品の良さがにじみ出る仕草。
「わたくし、白鳥美桜と申しますわ」
しっとりとした声。お嬢様言葉が、不思議と耳に心地いい。
「よろしくお願いしますね、ユキくん」
美桜が微笑んだ。その笑顔があまりにも純粋で、曇りがまったくなくて。
ユキは一瞬、言葉を失った。
若い体の心臓が、ドクンと跳ねる。
(落ち着け、中身は37だぞ)
自分に言い聞かせる。大人の余裕で対応しなくちゃ。
「……よろしく」
短く返す。それだけで精一杯だった。
美桜は嬉しそうにうなずき、ノートを取り出す。その仕草ひとつひとつが、なんだかやけに優雅で。
ユキは教科書を開きながら、チラリと隣を見た。
美桜はもう、先生の話を聞く姿勢に入っている。でも、時々こっちを見ている気がする。
目が合うと、また微笑まれた。
(なんだろう、この違和感……)
女の子に慣れている37歳の俺が、高校生の女の子一人にこんなにドキドキするなんて。
(やっぱり体が若いからか?)
とにかく、この落ち着かない空気をなんとかしないと。平穏な学園生活のためには——。
昼休み。
チャイムが鳴ってすぐ、ユキは衝撃の光景を目の当たりにした。
美桜が、ユキの机の前に立っている。
その足取りは軽やかで、まるでお茶の時間にでも誘いに来たような自然さ。でも、青い瞳は真剣そのものだ。
「ユキくん」
教室中が静まり返った。
美桜は背筋をピンと伸ばし、両手を胸の前で組んだ。
「わたくし、白鳥美桜は、ユキくんとお付き合いしたいですわ!」
教室が、沸騰した。
「ええっ!?」「美桜がやった!」「早すぎだって!」「でも本気じゃん!」
ユキは固まった。
(お付き合い? いきなり? 転入初日の昼休みに?)
大人の俺が口を開こうとした。やんわり断る、大人の対応を——。
でも、10代の体が言うことを聞かない。顔がカッと熱くなり、言葉が喉に詰まる。
「あ、あの……」
語尾が震える。クソ、こんなの俺の声じゃない。
美桜はまだ話し終えていなかった。
「ですので、コクリ届を出させていただきますわね!」
こくりとどけ——?
初めて聞く単語に、ユキの思考が止まる。
周囲の女子たちも、さらにざわめいた。
「コクリ届ってあれでしょ、自治体に出すやつ」「保証人いるんじゃない?」「3,000エンかかるんだよね」「美桜、本気だ……」
ユキはなんとか口を開いた。
「ちょ、ちょっと待って」
美桜が首をかしげる。その仕草が、また無邪気でかわいくて。
「どうされました?」
「コクリ届って……なに?」
聞いてから、しまったと思った。この世界の常識かもしれないのに。
でも美桜は気にした様子もなく、ていねいに説明を始めた。
「女性が男性に本気でお付き合いを申し込む時に、自治体に届け出る制度ですの。保証人が1名と、3,000エンの費用が必要ですけれど、わたくし、もう美紗おばあさまにお願いしてありますの」
こくり、というよりコクリ。
女性が——男性に——自治体に届け出る。
ユキの頭の中で、ゆっくりと状況が組み上がっていく。
(この世界、そういうことか)
女の子の方がグイグイ来る。告白も全部、女の子から。この貞操逆転社会の具体的な制度が、今、目の前にある。
戦慄した。
平穏な学園生活? さよならだ。
「あ、あの、美桜さん」
「美桜でいいですわ」
「美桜……さん、ちょっとだけ、待ってほしい」
精一杯の制止だった。
美桜はまた首をかしげ、でも、しばらく考えたあと、素直にうなずいた。
「……わかりましたわ。でも、わたくし、必ずコクリ届を出しますからね」
そう言って、自分の席に戻っていく。
教室中の視線が、まだユキに突き刺さっている。女子たちのささやきが聞こえた。
「美桜がコクリ届って、結構なニュースだよね」「他のクラスの子たちも気にするよ」「転入生、大変そう……」
ユキは机にうつぶせになった。
頭がぐるぐる回る。
(平穏な学園生活……初日で終わった)
放課後。
ユキが逃げるように廊下に出ると、すぐに美桜が追いかけてきた。
連れて行かれたのは、本館2階の一角。ドアの前に「ヤスラギルーム」と書かれたプレートがある。男子生徒専用の休憩室らしい。
「わたくし、本気ですの」
美桜はユキの目の前に立ち、上目遣いで見つめてくる。青い瞳が、夕陽を受けてきらめいていた。
「コクリ届は、わたくしの本気の証です。ユキくんとお付き合いして、ユキくんを幸せにしたいんです」
真っ直ぐな言葉。純粋で、曇りがなくて。
嘘も計算も感じられない。
ユキは、自分の若い体がまた赤面するのを感じた。心臓がうるさい。
(ダメだ。この体、正直すぎる)
大人の俺なら、もっとうまくやれるのに。
本当はこの場で「気持ちは嬉しいけど、まだ転入したばかりで……」くらい言えるはずなんだ。
でも——。
「ま、待ってください。本当に」
俺の声は、また若者だった。
美桜はじっとユキを見つめ、それから、ふわりと微笑んだ。
「わかりましたわ。でも、待つだけですから。わたくしの気持ちは変わりませんの」
そう言って、軽く会釈をして去っていく。
ユキはヤスラギルームの壁にもたれかかった。
夕陽が廊下に長い影を落としている。
風が窓から入ってきて、カーテンを揺らした。
遠くで、下校する生徒たちの声が聞こえる。
初日から、噂はもう学園中に広がっているだろう。美桜が転入生にコクリ届を出す——と。
これからどうなる? 他の女子たちはどう動く?
平穏なんて、夢のまた夢だった。
ユキは頭をかかえ、ため息をひとつついた。
廊下の突き当たりの窓から、ミナカゼ市の街並みと、その先の太平洋が見える。海が、ゆっくりと暮れていこうとしていた。Noveliaとは?
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